2017年 10月 10日 ( 3 )

福島地裁は、東京電力福島第一原発の過酷事故に、国の責任を認め、国と東電に賠償を命じる判決を言い渡した。しかし、生活環境の回復を求める訴えは却下。

 朝日新聞は2017年10月10日、表題について次のように報じた。


(1)「東京電力福島第一原発事故でふるさとの生活が奪われたとして、福島県の住民ら約3800人が国と東電に生活環境の回復や慰謝料など総額約160億円の賠償を求めた訴訟で、福島地裁(金沢秀樹裁判長)は10日、国の責任を認め、国と東電に賠償を命じる判決を言い渡した。生活環境の回復を求める訴えは却下した。」
(2)「原発事故を巡る同様の集団訴訟は全国で約30あり、福島地裁での判決は前橋、千葉の両地裁に続き3例目。」
(3)福島訴訟では、国の避難指示が出た区域の原告は約1割。大半は福島県内の避難指示が出なかった地域の住民で、宮城や茨城、栃木の住民もいる。」
(4)原告は『原発事故前の暮らしを取り戻したい』として、居住地の空間放射線量を事故前の水準とする毎時0・04マイクロシーベルト以下に引き下げる『原状回復』を要求。実現するまで、毎月5万円の慰謝料を求めた。また、原告の一部は原発事故で仕事や人間関係を失ったとして、1人2千万円の『ふるさと喪失』慰謝料も求めた。」
(5)これに対し、国や東電は放射線量を引き下げる具体的な方法が不明確で、金銭的にも不可能などと反論。賠償も国の基準の中間指針に基づいて支払った金額で十分だとしていた。」
(6)原発事故に対する国と東電の責任については、原告は地震調査研究推進本部が公表した「長期評価」などを根拠に、国側は原発の敷地高さを超える津波を予測できたと主張。国側は長期評価には様々な反論があったとして、『科学的根拠に乏しい』と反論した。今年3月に最初に判決が言い渡された前橋地裁は、国と東電についてともに津波を予見できたと指摘。対策を怠ったと認め、計3855万円の支払いを命じた。一方、9月の千葉地裁は国の賠償方針を上回る支払いを命じたが、国の責任は否定。東電についても重大な過失があったとは認めなかった。」




by asyagi-df-2014 | 2017-10-10 20:25 | 書くことから-原発 | Comments(0)

沖縄-辺野 高江-から-2017年10月10日

「推薦地周辺に緩やかな規制をかけ、利用を制限する『緩衝地帯』が十分にあるかも審査で重視される。」、と沖縄タイムス。世界自然遺産の審査についてである。 
確かに、やんばるの森は『世界の宝、になり得るが、そもそも他国の軍事基地が世界自然遺産に馴染むものなのか。



 沖縄で起こっていること、その現場の事実をきちんと確認すること。
 2017年も、琉球新報と沖縄タイムスの記事を、「沖縄-辺野古-高江-から」を、報告します。

 2017年10月10日、沖縄-辺野古-高江の今を、沖縄タイムス、琉球新報は次のように表した。


(1)沖縄タイムス-世界自然遺産:緩衝地帯、米軍施設…“異例”どう評価-2017年10月9日 19:18


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


①「推薦地周辺に緩やかな規制をかけ、利用を制限する『緩衝地帯』が十分にあるかも審査で重視される。現行案は4地域とも、地元との調整がつかないなどで緩衝地帯を設けられずむき出しの推薦地がある。本島北部に至っては米軍北部訓練場や跡地が隣り合うため東側のほぼ全てがむき出しの状態にある。」
②「返還跡地は国立公園化に向け準備が進むが、環境省は米軍訓練の影響を含め残された訓練場の存在にどう向き合うか具体的な姿勢を明らかにしないまま。推薦書にも記載していない。」
③「環境省によれば『自国の軍事基地が近接する遺産は把握しているが、他国の基地は聞いたことがない』。IUCNが“異例”ともいえる事態をどう評価するか注目される。推薦地の保全に米軍がどう協力するか示すよう求める宿題が出される公算は大きいとの見方もあり、そのハードルの高さによっては登録の時期に影響が出そうだ。」
④「緩衝地帯に限らず、登録後に見込まれる観光客急増への体制も十分とはいえない。希少種の密猟や車などにひかれて命を落とすロードキルを防ぐためのルール作り・確立も急がれ、住民の協力が不可欠だ。」
⑤「国内の他の世界自然遺産に比べ、奄美・琉球は希少種の生息環境と、住民の生活圏が近いのが特徴だ。林業や農業など産業活動の場も重なり、どこまでを自然遺産として法的規制の網を掛けて守るべきか、周辺住民らと線引きの合意形成に時間を要し、推薦に至るまでに10年以上を要した経緯がある。『ぎりぎりの線』(環境省)で合意にこぎつけた推薦地の範囲がどう評価されるか注目される。IUCNから登録までの宿題として推薦地の拡張を求められる可能性もある。」 
⑥「推薦地が自然遺産にふさわしい価値を持つ全ての区域を含んだ上、保全に十分な面積があるかは、審査基準の一つだ。環境省は『遺産リスト入りの条件は満たす』と自信をのぞかせるが、自然保護団体はやんばるの原型的な森林が推薦地に入っていないなど『狭すぎる』と指摘する。」
⑦「照葉樹林からマングローブ、サンゴ礁の連続した生態系が奄美・琉球の生物多様性を象徴するにもかかわらず、陸域のみが推薦地なのを疑問視する見方もある。推薦地の絞り込みなどを議論する環境省の有識者科学委員会でも推薦直前まで『海域を含めるべき』との意見が出ていた。小笠原諸島(東京都)は、IUCNの宿題に応じる形で推薦する海域を広げて遺産登録に至っている。」


(2)沖縄タイムス-世界自然遺産で新ブランド 沖縄の北部3村、登録へ期待と不安-2017年10月10日 05:00


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


①「『さあ世界へ』の掛け声とともに環境省や県などが目指す世界自然遺産登録に向け、国際自然保護連合(IUCN)の県内調査が15日から本島北部を皮切りに始まる。来夏にも登録が認められれば、やんばるの森は『世界の宝』として国内外の注目を集めることになりそうだ。長年、やんばるの自然と生きてきた地元の国頭、東、大宜味3村の住民らはどんな思いでいるのか。現場を歩いた。」(北部報道部・山田優介)
②「人口減少の一途をたどる国頭村。村の人口ビジョンによると、2010年の人口は1980年から2割以上減った。村は人口減少が地域経済の縮小を呼び、さらなる人口減少につながる『負の連鎖』を懸念する。『過疎が進む地域の定住促進につなげたい』。国頭村の世界自然遺産対策室の宮城明正室長は、遺産登録が負の連鎖を断ち切る突破口になりうると期待する。『世界自然遺産の名称を使った新たなブランドを確立し、観光客と地元住民が交流する機会を設けたい』と描く。やんばるの森を生活基盤としてきた林業関係者も新たなビジネスチャンスを模索する。国頭村森林組合では昨年、建築材やチップなどに使う木材を約400トン伐採した。仲原親一組合長は『木材のニーズはある。今まで通りの仕事は続けたい』としつつ『やんばるは【生活のための山】から【自然遺産の山】に変わる』とも語る。『環境保全に配慮し、時代の変化に対応するしかない。山を知り尽くした自分たちにできるのは観光客の案内。ガイドなどの新事業もいいかも』と考えを巡らせる。一方、遺産登録で暮らしがどう変わるのか不安の声も聞こえる。東、大宜味の両村の林業関係者が所属する北部森林組合の玉城政光常務理事は、国内外から環境保全の意識が高まることに複雑な表情だ。『確かに保全は大事だが、たとえ法的な許可を得て伐採しても自然保護団体や観光客から苦情が来そうで、やりづらくなる』と声を落とす。」
③「登録された直後は観光客が一気に増え、適切なルールなしでは逆に環境破壊をもたらしかねない。夜間の林道パトロールなどで希少生物の保護に取り組む大宜味村田嘉里の仲原秀作区長(35)は『村内で密猟者は見掛けないが、知名度が上がれば不安だ。観光客がモラルや節度を持ってもらわないと困る』と注視する。」
④「今月、県がIUCNの現地調査時に名護市辺野古の新基地建設問題を議論する場を設けるよう求めたとの報道があった。3村の関係者は『いまさら米軍基地問題を出し、登録に遅れが出たら困る。今まで県とは基地問題を避けることで足並みをそろえてきた。今後もそうするべきだ』と語った。」


(3)琉球新報-海上作業確認されず ゲート前に40人-2017年10月10日 12:17


 琉球新報は、「米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡る新基地建設で10日、米軍キャンプ・シュワブゲート前には、約40人が座り込み抗議の声を上げた。10日に公示された衆院選についてヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は『安倍政権への審判だ。県民の民意を示さないといけない』とマイクを握って話した。一方、10日正午現在、工事車両の搬入は確認されていない。海上では風が強く作業は確認されていない。」、と報じた。


(4)琉球新報-「辺野古新基地建設絶対に許さない」 辺野古差し止め訴訟で知事が意見陳述-2017年10月10日 15:21


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


①「名護市辺野古の新基地建設工事を巡り無許可の岩礁破砕は違法として、県が国を相手に岩礁破砕の差し止めを求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日午後3時、那覇地裁(森鍵一裁判長)で開かれた。」
②「翁長雄志知事が法廷で意見陳述し『県民は今日まで誇りと尊厳を持って新基地建設反対という声を出し続けている』と強調。『知事として、辺野古に新基地を造ることなど絶対に許すことはできない』と訴えた。さらに『国は漁業関係法令の運用に関する見解を、辺野古案件のため恣意(しい)的にねじ曲げた』と批判。訴状陳述で県側は工事現場水域に漁業権が存在し、岩礁破砕工事をするには県知事に許可を得る必要があるなどと主張し国側の違法性を訴えた。一方、国側は訴えの内容が裁判所の審判対象外などとして県には法律上訴える権利そのものがなく不適法として請求の却下を求めた。」
③「意見陳述で翁長知事は『(破砕許可申請など)義務を履行しないまま工事を進める開き直しを、国が率先して行い、それに司法がお墨付きを与えてしまえば日本の法秩序はどうなってしまうのか、切実な危機感を持っている』も述べ、裁判所の判断を期待した。」
④「開廷前には那覇地裁近くの公園で支援集会も開かれた。」


(5)沖縄タイムス-辺野古ゲート前、JR東労組青年部33人が激励 150人の寄せ書きも-2017年10月10日 13:36


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


①「名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前で10日、新基地建設に反対する市民らは抗議行動を続けている。午後1時半時点で、ゲートから工事車両の搬入は確認されていない。午前はゲート前の集会にJR東労組の青年部33人が訪れ、新基地建設阻止に向けて市民らと連帯する意志を表明し、激励した。」
②「引率した組織担当部長の宮内政典さん(41)=埼玉県=は『基地は経済発展の阻害要因になっていると学んできた。沖縄の闘いに連帯したい』と強調。仙台地方本部約150人による寄せ書きを届けた川名剛生青年部事務長(31)=宮城県=は『辺野古の現場で、決して諦めない沖縄の闘いは勉強になった。地元に持ち帰って、若い人を中心にどういう闘いが必要か考えていきたい』と語った。」
③「一方、海上では市民らが船2隻とカヌー4艇で抗議の声を上げた。海上での作業は確認されなかった。」




by asyagi-df-2014 | 2017-10-10 18:04 | 沖縄から | Comments(0)

本からのもの-「在日米軍」

著書名:「在位米軍」
著作者:梅林宏道
出版社:岩波新書



 梅林宏道さん(以下、梅林とする)の「在日米軍」は、在日米軍及び在沖米海兵隊の実態とこれ方のあり方ををつまびらかにします。
 梅林は、「軍事同盟の色彩が強まっている日米安保体制の趨勢を非軍事的な安全保障体制へと転換させることはどのように可能なのか」、という視点から、在日米軍の問題を捉えます。
 また、安全保障という観点から、日本における在日米軍及び在沖米海兵隊の状況を、次のように描いています。


(1)安全保障という観点からの日本の状況


①「ジョージ・W・ブッシュ米大統領が始めた対テロ戦争は米国の予想をはるかに超えて今も続いている。戦争の負担は財政難を招きつつ米国全体にますます重くのしかかっている。米国からの軍事協力の要求に特別措置立法によって対処してきた日本政府は、安保法制によって状況を一変させた。今や米軍のみならず他の外国軍に対しても自衛隊による海外軍事支援が恒常的に可能になった。中国は世界第二位の経済大国となり軍事力の海外展開能力を急速に強化した。北朝鮮は五回の核実験を経て核武装国家になった。」 
②「『日米同盟』という言葉が、メディアでは日常的に使われるようになった。人々はこの言葉をあたかも『緊密で良好な日米関係』という位の意味合いで理解している。しかし、この言葉の本質的な意味は『日米軍事同盟』である。その意味は一九八一年の鈴木(善幸)・レーガン首脳会談の共同声明で初めてこの言葉が使われた時から何も変わっていない。」
③「日本戦後の平和主義には二つの恥ずべき側面が存在してきた。一つは、『専守防衛』と言いながら在日米軍の攻撃力に依存していること。もう一つは、『唯一の被爆国』と言いながら米国の核兵器で日本を守っていること。」


 この上で、「軍事力に依存しない安全保障が、現実の国際政治のなかで可能であることが、もっともっと具体的に語られるべきである。そのような軍事力に依存しない安全保障が有効性を発揮するメカニズムについて、私たちの構想力がますます問われている。」、と本書の目的を明らかにしています。


(2)米軍海外基地の正体


①「米軍の世界展開が可能になるには、このような責任区域を持った軍組織が存在するだけでは不十分である。軍展開の拠点となる海外基地の存在が不可欠である。米国総務省の資料によると、二〇一四年九月三〇日現在、米軍は米州・領土以外の海外に八七か所の基地を持っている。比較のために揚げると米州・領土に存在する米軍基地数は四二六八か所である。一二%以上の基地を領土外に置いていることになる。」                                                           ②「トップ4はドイツ(一七七)、日本(一一六)、韓国(八四)、イタリア(五〇)である。この4か国で全世界の米海外基地の約四分の三を占める。・・・四つの国になぜ米軍基地が多いのか?その理由は明らかであろう。ドイツ、イタリア、日本はいずれも第二次世界大戦において敗北した枢軸国であり、戦後、占領国としての米軍の支配下にあった。朝鮮半島は戦時には日本の植民地支配下にあり、連合軍の分割統治によって三八度線以南に生まれた韓国は米軍によって占領された。つまり、米軍基地の出生の正体は敗戦国への米軍駐留であり、その既得権を米国は今も手放さないのである。」


(3)日米軍事協力のグローバル化


①「今日の日米安保体制にはもう一つの重要な特徴がある。それは、日米安保体制下における日本の軍事的な役割と責任もまたグローバルに拡大しているという事実である。日本の軍事協力が行われる地理的範囲は、『日米防衛協力のためのガイドライン』の改訂とともに拡大されてきた。米軍はガイドラインを明確化することによって、『在日米軍基地の安定的確保』と『自衛隊の役割の強化』という二つの目的を追求してきた。このうち自衛隊の役割分担への要求は、米軍の財政難が増大することと比例して強まっていった。二〇〇一年の同時多発テロ以後、米国の要求はいっそう顕在化している。アーミテージ国務副長官の言葉として紹介される『ショウ・ザ・フラッグ』『ブーツ・オン・ザ・グランド』といった言葉が、そのような米国の圧力として知られている。」
②「一九七八年の最初のガイドラインが策定された時には、日本の防衛のために自衛隊と米軍の役割分担を明確にすることが主たる目的であった。一九九七年のガイドラインの改定は、冷戦後の日米安保再定義にともなう改訂であった。・・・二〇一五年の改訂では、安倍政権の戦後日本の平和体制を否定する政策と軌を一にして、日米軍事協力の分野は地理的にも内容的にも一気に拡大した。ガイドラインの目的に、日本防衛に加えて、『アジア太平洋地域及びこれを超えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなる。』という目的が明記されたのである。結果として、日本の自衛隊と米軍との協力は地理的に無制限となった。」


(4)平和観が異なる国の間の軍事条約及び軍事条項


①「現在、米軍が日本に恒常的に駐留する法的根拠は、一九六〇年に改訂された新安保条約にある。・・・日米安保条約は、憲法上安全保障についての考え方をまったく異にする国どうしが、その違いの本質について、二国間の踏み込んだ議論を経ることなく、便宜主義的に締結された条約となった。」
②「日米安保条約は在日米軍の役割を、安保条約の第5条、第6条に定めている、」
③地位協定第五条:「各締結国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危機に対処するように行動することを宣言する。(以下略)」
④地位協定第六条:「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」


(5)地位協定と米軍基地


①「安保条約第六条で規定されている『施設及び区域』(いわゆる米軍基地や訓練区域)の日本国内の法的地位を定めるために、日米安保条約と同時に『地位協定』が結ばれた。地位協定の正式名称は『日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定』である。」
②「地位協定によると、米軍基地の法的地位は次の三種類に分類される。
1 米軍が管理し、米軍が使用する施設・区域(地位協定第二条1(a))                            2 米軍が管理し、米軍が使用しない時に日本政府(自衛隊など)が共同使用できる施設・区域(同第二条4(a))                      3 日本政府(自衛隊など) が管理し、米軍が一定条件下で共同管理する施設・区域(同第二条4(b))                           通常、1と2の施設・区域が米軍基地と呼ばれる。」
③「二〇一七年一月一日の時点で七八か所の基地があり、都道府県別では沖縄三一、神奈川一一、長崎一〇、東京六の順となる。」
④「米軍基地の総面積は二六三.六平方キロメートルを占め、これは東京都の総面積の約一二%、大阪府の約一四%に相当する。都道府県別の面積では、沖縄が日本全体の約七一%と圧倒的に多く、青森九%、神奈川六%、東京五%の順となる。」
⑤「地位協定は、米軍基地の返還義務について、『この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない』(同第二条3)と書いている。したがって、冷戦終結のような大きな緊張緩和の情勢を受けて、日本政府にその意思があれば、日米合同委員会において基地削減を求める理由は充分に存在し、強力な交渉が可能であった。そうした意思の欠如はまた、個々の基地を提供する理由や期間について明示的な記述がないという、地位協定そのものの弱点を是正する努力をも欠如させている。たとえば、北大西洋条約機構(NATO)軍のドイツにおける地位を定めた『ドイツにおけるNATO軍地位協定の補足規定』(『ボン補足規定』。(一九五九年署名、一九九三年大幅改正)は、個々の基地の使用期限の明記、その必要性の再点検を申し出るドイツ側の権利の明記など、ドイツの権利が強く主張されている。」


(6)思いやり予算


①「地位協定は、『日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、・・・日本国が負担すべきものを除くほか、・・・日本国に負担をかけないで合衆国が負担する』(第二四条1)と定めている。ここで例外とされているのは、施設・区域そのものとアクセスする権利の無償提供である。基地の地代や地主への補償費を日本が負担する以外は、すべての基地維持費用を米軍が負担するという約束がなされているのである。しかし、一九七八年以降、特別協定の導入を繰り返しながら、日本政府はこの条項を空洞化させていった。当時の金丸防衛庁長官が口にした文言から命名された『思いやり予算』の登場である。」
②「最初は、基地に働く日本人従業員の労務経費の一部負担に始まり、代替施設建設費、軍人・家族の生活改善施設(そのなかにはアッロビクス教室、ビリヤード場、映画館などがある)、そして、作戦施設とも言うべき滑走路や戦闘機格納庫の建設費まで、日本の予算、つまり私たちの税金で支出されるように拡大されていった。これら施設関係費の経費は総称して提供施設整備費と呼ばれる。」
③「一九八七年からは、新たに『地位協定第二四条についての特別措置協定』という枠組みが設けられた。この中身も八七年(八八年に一部改定)、九一年、九五年と協定が改められるごとに、基地従業員労務費から、光熱水料、訓練移転費へと『思いやり』の適用範囲を拡大していった。二〇〇一年四月から発効した新協定(二〇〇〇年に締結)で初めて、国民世論の批判と財政事情の悪化の下で、この異常な拡大に抑制が加えられている。しかし、特別措置協定を結んでの『思いやり』は継続され、二〇〇六年、二〇〇八年、二〇一一年、二〇一六年に協定が更新された。日本に民主党政権が誕生したこともあって、二〇一〇年、この方式についてようやく包括的な見直しが行われた。二〇一一年の協定以後は、五年間の措置に合意する方式がとられるとともに、特別措置の方針についての大枠が定められた。その結果、協定の内容は以前より抑制的はなっているが、米軍再編に関係する部隊や訓練の移転に関する費用負担についての制約は甘く、米国の要求への日本の追随的姿勢は変わっていない。」


(7)SACOと沖縄


①「SACOは、九五年一一月に村山首相・ゴア副大統領の会談で設立された。そして、『日米安保共同宣言』の二日前というタイミングを狙って中間報告を発表し、九六年一二月に最終報告を提出して解散した。その目的は、『日米安保条約の目的達成との調和を図りつつ』、沖縄に集中している在日米軍の施設・区域の整理、統合、縮小を進めるための方策をまとめることであった。」
②「SACO最終報告には、共同使用の解除を含めた土地の返還一一件、訓練及び運用の方法の調整三件、騒音軽減の措置の実施五件、地位協定運用改善九件、合計二八件が含まれた。しかし、土地の返還のほとんど移設条件つきであり、目玉とされた普天間飛行場の返還は、基地のない場所に、新たな基地を建設する提案であった。SACO合意がすべて実行されても、沖縄の基地面積は二割減るだけである。沖縄基地の負担軽減はSACOによっては達成されないことが数年のうちに明らかになった。二〇〇一年には、沖縄県議会は海兵隊の兵力削減を求める決議を初めて全会一致で採択し、知事も公式に政府に要請した、」
③「普天間飛行場の代替施設建設計画は、基地から解放される地域と新たな基地負担を強いられる地域との間に、また、新基地建設と引き換えに地域振興のアメをふるまう政府の方針を、不況下にやむを得ず受け入れようとする者と拒否する者との間に、深刻な分断をもたらした。『日本の安全保障』という大義名分のために、沖縄社会にのみ重圧を加える差別構造が再生産されているのである。紆余曲折の末に、九九年末に日本政府は「キャンプ・シュワブ沖に軍民共用空港を建設する』という代替施設に関する方針を閣議決定した。また、二〇〇一年末には、建設場所をリーフ(珊瑚礁の浅瀬)上とすることに一度は政府と地元の合意を見た。」
④「しかし、沖縄県が求める『一五年の使用期限』の問題、ジュゴン保護など環境問題、工法など、鍵となる問題が未解決のまま残された。」


(8)沖縄海兵隊は必要か


①「沖縄への海兵隊の前身配備必要論者がこれまでにあげてきた理由を整理すると。次の五点のどれか、あるいはそれらを複合したもにになっている。
1.朝鮮半島、台湾海峡、南沙(スプラトリー)諸島など東アジアに戦争の危険がある。米軍の緊急対応体制を保持することが戦争の 抑止になる。
2.インド洋、ペルシャ湾地域への米国駅防衛のための緊急展開に必要である。
3.米軍が撤退すると力の空白ができる。それは地域の軍備競争を生み出し、不安定要因となる。
4.日本自身の軍事大国化を抑制する役割を果たしている。
5.米国防費の抑制のなかで、米戦略が求める前進配備兵力を維持するには、財政負担を軽減できる日本への駐留が合理的である。」
②「沖縄に海兵隊を前進配備する軍事的理由はない。本質は財政的理由であり、それと絡む日米関係にかかわる政治的理由である。普天間代替基地の必要性を東アジアでの戦争抑止力や海兵隊の緊急展開力から主張する議論は根拠に乏しい。」


(9)「東アジア緊急対応」論への反論


①「朝鮮半島に関していえば、暴発的あるいは暴走的軍事衝突の可能性が仮にあったとしても、長期的戦争になる可能性は極めて少ない。いずれの場合も、圧倒的な軍事的優位を持つ米韓合同軍が十分に対応できる。必要ならば、米本土から応援がくる体制を見せることで抑止力を強化できる。」
②「台湾海峡に関していえば、上陸作戦を任務とする海兵隊が必要とされるような局面が緒戦に起こることはない。たとえば、一九九六年三月から四月に台湾海峡の緊張に対応して、米軍は大規模な軍事作戦を展開した。空母インデペンデンスと空母ニミッツの二個空母戦闘団を投入した極めて政治的な示威と、地域ミサイル防衛体制のための訓練という軍事的な実利を狙った作戦であった。しかし、海兵隊の関与はなかった。」
③「南沙諸島に関しては、日米安保体制で、カバーすべき領域ではないという問題がまずある。それを別としても、米国と中国の間での軍事衝突を避けるための外交がもっとも現実的な対応にならざるをえない。不幸にも軍事的なエスカレーションがあったとしても、米国は南沙諸島の領土問題には関与できず、航行の自由の観点からの対応に限定せざるをえない。海兵隊の出る幕は想定しにくく、抑止力にもならない。沖縄海兵隊必要論者の多くも、アジア太平洋全域のための汎用部隊という位置づけであり、東アジア情勢を強調する議論は少ない。」
④「一九九一年、米議会の会計検査院(GAO)の報告書『軍事プレゼンス-太平洋における米軍』は、沖縄の海兵隊についてほとんど同趣旨の位置づけを行っている。                                                 『(日本にいる)太平洋海兵艦隊の海兵隊は、ほとんど沖縄に配備され、二万一六三一人を擁する第第Ⅲ海兵遠征軍に所属している。日本にはいるが、その部隊は責任を持つ太平洋戦域の内にも外にも緊急配備されうるものである。』                    しかし、現実には、沖縄海兵隊がその緊急性において果たしてきた役割は極めて小さい。」


(10)「力の空白」「瓶のフタ」論への反論


①「東アジア地域の軍事的バランス要因として米軍が沖縄に前進配備しているという議論は本末転倒である。米軍がいる結果、中国や北朝鮮の軍拡を促進してきたという側面が大きいからである。最近の安倍内閣による日米防衛協力のための新ガイドラインや集団的自衛権にまで踏み出した安保法制に対する両国の反応を見ても、日本の軍拡を抑えるというような中立的存在として在日米軍を考えてはいない。日米両軍が一体となって地域的軍事力を強める存在としてとらえている。一方、中国の軍事力強化やスプラトリー諸島を含む核心的利益とする主張に対抗するため、米軍のプレゼンスを歓迎する東南アジアの国々があることは事実である。これらの国々を安心させる方法は、地域全体を縮小均衡へと向かわせる発想であり、米軍のプレゼンス強化は逆の効果を生む。」
②「在日米軍に日本の軍拡を抑制する役割を託すという認識が日本国内にあることは確かである。一つは在日米軍が撤退すると、周辺諸国との軍事バランスが崩れるので、日本自身が軍拡をしてそれを埋めようとする。その結果日本が軍事強国となって米国への脅威となる。、という危惧である。もう一つは、日本に根強く存続している過去の戦争を賛美する歴史修正主義とそれに結びつく軍国主義論の台頭を抑えるという立場である。本来の『瓶のフタ』」論と呼ばれるものである。」
③「だが、このような理由による在日米軍の駐留は、日本の軍拡を抑える効果よりもナショナリズムを刺激して逆の効果を生むだけである。このような議論が、沖縄海兵隊、さらには在日米軍の前進配備必要論の合理的理由として通用するとは思われない。」


(11)財政こそ最大の理由


①「いわゆる『思いやり予算』をはじめとする日本の『受け入れ国支援(ホストネーション・サポート)』の魅力は、米軍にとって極めて大きなものである。『財政支援が沖縄海兵隊の前進配備の理由である』と公然と説明されることはないであろうが、実際には極めて大きな決定要因になっていると考えられる。」
②「日本のサポート金額は、年額約六〇〇〇億円であり、それは米軍駐留経費の七〇%以上をカバーし、『米国内に置くよりも日本に軍隊を駐留させる方が安上がりになる』(九五年六月、W・ロード国防次官補の米下院証言)状況を生み出している。その状況は二〇一七年の今日にも変わらず、トランプ政権に『日本の受け入れ国支援はお手本』と言わせたことも前述の通りである。」
③「受け入れ国支援だけでなく、米海兵隊が沖縄に確保している基地のインフラストラクチャーが、沖縄駐留の重要な利点となっている。かってのフルフォード太平洋海兵隊司令官は次のように述べている。                         『現在の緊急展開計画に決定的な重要性を持つ(沖縄)のインフラストラクチャーを保持することは、必要不可欠である。一九九六年、沖縄海兵隊の施設代替価格は七五億ドル、日本本土の海兵隊の施設は二〇億ドル以上と査定される。』(『海兵隊がゼット』一九九九年七月)毎年の『受け入れ国支援』に加えて、合計一兆円以上の基地資産を米海兵隊は日本に確保しているのである。」


(12)核兵器に関する事前協議と秘密合意


①「一九六〇年の日米安保条約改定のとき、岸首相とハーター米国務長官の間で条約第六条の実施に関して次のような交換公文(岸・ハーター交換公文」が交わされた。いわゆる『事前協議』に関する取り決めである。合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行われる戦闘作戦行動(条約第五条の規定に基づいて行われるものを除く)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。
②「この事前協議の取り決めの具体的内容に関して、日米間で一つの秘密合意が行われたことが、数々の米国の公開公文書から明らかになっている。その一つは、核兵器の持ち込みに関するものであり、もう一つは朝鮮有事のときの日本の基地からの直接戦闘作戦行動に関するものである。」
③「米外交文書によると、実は交渉過程の一九六〇年一月六日に、事前協議に関して秘密の『討議記録』が残されていた。その中には、岸・ハーター交換公文となるべき内容(1項)、藤山・マッカーサー口頭了解となるべき内容(2A項)が書かれている他に、次の記録が記録されていた。                           「『事前協議』は、合衆国軍隊の日本国への配慮における重要な変更の場合を除き、合 衆国軍隊とその装備の日本国への配置に関する減の手続き。また合衆国軍用機の日本へ の飛来や合衆国軍艦の日本領海・港湾への立ち入りに関する現行の手続きに影響を与え ると破壊されない。)2C項)」                       ④「この2C項は、軍艦や航空機の領海通過や通常の寄港は、『配慮の重要な変更』ではなく、核兵器搭載の有無にかかわらず、従来通りの扱いで行われることを、日米間で秘密合意したことを意味していた。」


(13)「運用の改善」と「軍属補足協定」


①「一九九五年一〇月二五日、日米合同委員会は『運用の改善』という弥縫策を合意して決着した。その内容は、『米国は、殺人または強姦という凶悪な犯罪では、被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請にも好意的配慮を払う』こと、そして『その他の特定の場合について日本が合同委員会において提供することがある特別の見解を十分に考慮する』というものであった。この語彙は、米国の『好意的配慮』や『十分な考慮』を期待するという姿勢に過ぎず、対等な協定に近づくものではなかった。当然のことながら『運用の改善』の限界は、まもなく露呈された。」
②「二〇一七年一月、日米両政府は軍属の範囲明確化する手順を定めた『日米地位協定の補足協定』に合意した。・・・日本政府は補足協定の意義を強調するものの、日本の主権を少しでも回復する『地位協定の改訂』には否定的な姿勢をとり続けている。」


(14)兵士の特権意識の維持


①「米兵の犯罪についての裁判権問題には、軍隊駐留がはらむ極めて本質的な問題が潜んでいる。兵士が『敵を殺せ』という国家の命令に服し、命令によって『死ぬ』ことを厭わないようにするために、国家は絶えず兵士の精神と技術の訓練を継続しなければならない。そのような軍隊を、利害が完全に一致するわけではない外国の領土に常駐させ、外国の社会での暮らしを強いるという状況は、極めて特異な状況である。」
②「一応の人権救済制度の下にある本国においてでさえ、兵士は精神的緊張と歪みのもとに置かれる。それに加えて、海外駐留では異なる環境が生む身体的・精神的負担が加わる。兵士を送り出す国の政府は、そんな精神状態の兵士の士気を維持するために、兵士に使命感と同時に、特権意識を植え付けなければならない。特権は、彼らが特別に国家の恩恵と庇護の下に置かれていることを示すことによって裏付けられるであろう。ここに、米軍が『地位協定における優位』にあくまで固執する理由がある。日本政府もそれを知っているから、協定の改定に拒否の反応を示し続ける。」


(15)在日米軍の将来


 梅林は、米軍および在日米軍の将来について次のように分析しています。


①「九.一一は米軍に冷戦終結後のさまざまな軍事的事件と比較できない大きな影響を米軍に与えてきたことを、米軍の変化を捉える一つの重要な要素として考える必要がある。ブッシュ政権が始めたイスラム原理主義によるテロリズムとの戦い、いわゆる「対テロ戦争」は、政権を超えて今も米軍全体が引きずる遺産となっている。」
②「二一世紀の在日米軍を展望するとき、米軍全体の変化を特徴づけている二つの流れを考えなければならないであろう。一つは、情報技術を始め技術的な発展に起因して軍事全般にわたって起こり続けている時間軸の長い変化である。もう一つは、対テロ戦争と大国間のヘゲモニー争いが作り出している地政学的なゆるやかな変化である。」
③「対テロ戦争というのは、このように戦闘員の死者を比較するだけでも極めて一方的で非対称な戦争である。対テロ戦争の参戦国と戦闘地域の一般市民や社会的破壊を含めて比較したときには、その非対称性はさらに際立ったものになる。にもかかわらず、長引く対テロ戦争は参戦国にも大きな重圧としてのしかかってきた。」
④「世界の各地で長引く対テロ戦争は米軍に深刻な影響を与えている。」
⑤「ボブ・ワーク国防副長官が、二〇一四年九月、対テロ戦争の負担とその影響の深刻さを次のように語った。「簡単に言って、何かを諦めなければならない。この財政難の中で、このようなハイテンポの軍隊を維持することは持続可能ではない。はっきりしている。将来何が起こるかもしれない緊急事態に対して、我々はまともな準備ができないのだ。こう考えて私は夜中に目が覚めてしまう。国防総省はこのような(まともな)部隊を準備するのが究極の仕事なのに。』」
⑥「米軍のこの状況が。同盟国への要求を高める要因となっていることは第一章で述べた。この傾向は今後も確実に続くであろう。」


 次に、梅林は、この状況を受けて、在日米軍基地の将来的な問題を、もう一つの意味づけとしての「自衛隊の強化・拡大」(軍事貢献)として、次のように説明する。


「在日米軍基地が米軍の世界的展開に不可欠なハブとして求められ続けるという状況に加えて、今後の米軍基地にはもう一つの重要な役割が加わると考えられる。それは日米軍事協力の連結基地としての役割である。二〇一五年に作られた日米防衛協力の新ガイドラインと新安保法制によって新しい形の軍事協力が可能になった。トランプ政権は、すべての同盟国に対して米国の負う防衛義務を双務的なものにする主張を強めてきた。日米安保条約の改訂といった困難な挑戦をするとは考えにくいが、日本に対しては新ガイドラインにそった米国の要求を強めることができる。それによって米軍は、米軍基地によって享受している既得権に加えて、自衛隊の実質的な軍事貢献を引き出すことができる。安保法制が制定された経過から考えると、安倍政権は米国の要求を日本の自衛隊の活動領域の拡大の機会として利用しようと考えている。」


 梅林は、地球市民としての安全保障への現実的な取り組みについて、次のように押さえます。


①「在日米軍の必要性を訴えるために、『もしも武力攻撃があったら』から始まる安保論議に大木の市民が曝されている。軍事的な衝突を想定したシナリオが巷には溢れている。新安保法制の議論はほとんどそのように仕組まれていた。それに対して、軍事シナリオに対抗すべき平和構築の議論は残念ながら極めて少ない。そのために、多くの市民が『存立危機事態』『重要影響事態』などの軍事的危機のシナリオの虜となって普通の国へと向かう道に『仕方がない』と分別を見いだしてしまう。」
②「安全保障とは本来、人々が安心して暮らすことを保障するための人々自身の営みである。紛争や緊張関係があとを絶たない国際社会の現実に立脚して、国境を越えて彼我の人々の安全が共通に保障されるよう活動することは地球市民の勤めであると言ってもよい。そのための現実的外交への確信と創意が求められているのである。」
③「ジャヤンタ・ダナパラ国連事務次長(軍縮担当)は、『非核地帯が拡大してきたのは、核軍縮実験の理想があるためだけではない。もっとも懐疑的な現実主義者の抱く懸念に対してさえも、具体的な利益を生んできたからだ』との趣旨を述べた。
 確かに、これまで成立している五つの非核兵器地帯条約のすべては、それぞれの地域における安全保障上の大きな利益となってきた。それぞれによって、地域的な役割の大きさは異なるが、少なくとも地域内のすべての国が対話する機構として役立っていることは間違いない。日本と朝鮮半島を含む北東アジアにおいてもまた、非核兵器地帯は極めて現実的な非軍事的安全保障の出発点となるうる。」
④「さらに一般的に、非核兵器地帯条約で設置される第3項の条約実行機関は、核兵器問題を端緒としながらも、ミサイルを含む広範な安保問題を俎上にのせる場になるであろう。日本の植民地支配と謝罪なき戦後が生み出している根の深い不信が、将来の不幸な争いに発展しないような透明性の高い協議の場が、どこかに確保される必要があるが、条約実行機関はそのような協議の場を作り出す。それは、米軍依存の安全保障構造から主体的な新しい協議的地域安全保障の仕組みへと進む出発点となるのである。」


 梅林は「在日米軍の段階的縮小」について、このように記します。

「しばしば、在日米軍撤退論は、現実を踏まえない議論であるかのように言われるが、問題の大部分は政治意思の問題である。さらに言えば、政治意思とは平和に対する市民的熱意の強さによって生み出されるとすれば、それは私たちの意思と努力にも関係する問題である。北東アジア非核兵器地帯が一定の緊張緩和を生んだとき、政治意思があれば、軍事力のレベルを下げることができる。
 このような地域的な緊張緩和を基礎にした段階的な軍事力削減の場合においては、在に米軍が削減されると自衛隊が増強される、というアジア諸国の懸念が起こりにくい。懸念が起こったとしても、それを打ち消す措置を講じることもまた可能である。また、軍事力レベル低下の機会を、軍事環境悪化への逆戻りを防止するような地域的な新しい合意形成の好機として活かすことも可能である。」


 最後に梅林は、「北東アジア非核兵器地帯の設立は、非軍事的安全保障に向かう一つの有力なアプローチである。しかし、この他にもさまざまな創意工夫がありうるであろう。たとえば、日本の専守防衛政策を、日本国内において行動規範にまで高め、その規範を国際化することも可能である。」、と平和を作る側の新しい取り組みを呼びかけています。


by asyagi-df-2014 | 2017-10-10 05:52 | 本等からのもの | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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