2017年 09月 23日 ( 1 )

東京地裁は、朝鮮学校を授業料無償化の対象外とした国の措置を巡り、卒業生らの訴えを退けた。(2)

 朝日新聞は2017年9月14日、表題について、「朝鮮学校を授業料無償化の対象外とした国の措置を巡り、東京地裁は13日の判決で『適法』と判断し、卒業生らの訴えを退けた。原告側勝訴とした7月の大阪地裁判決とは正反対の結果に、関係者からは失望と怒りの声が上がった。田中一彦裁判長が法廷で『原告の請求をいずれも棄却する』のみ言い渡して退廷すると、約80人の傍聴者は座ったまま動かず、『負けたということ?』『何だそれ』と口にした。」、と報じた。
 また、朝日新聞は2017年9月15日、「朝鮮学校訴訟 説得力を欠く追認判決」、と社説で論評した。
 このことを、朝日新聞の社説で考える。
朝日新聞は、この判決を、「『結論ありき』で政権が進めた施策を、『結論ありき』で裁判所も追認した。そう言わざるを得ない判決である。」、と断じた。
また、この判決の問題点を遅疑のように指摘した。


(1)高校の授業料無償化をめぐり、朝鮮学校が対象からはずされたことの違法性が争われた裁判で、東京地裁は国側の主張を全面的に認めた。文部科学相がとった措置は「不合理とまではいえない」と述べた。「追認」が際立つのは、「この施策は政治的・外交的理由によってなされたものとは認められない」と判断した部分だ。
(2)朝鮮学校を無償化の対象としないことは、政権交代で第2次安倍内閣が発足した直後に事実上決まった。省内の規定で「意見を聴くものとする」と定められていた学識者による審査会の結論は、まだ出ていなかった。当時の下村博文文科相は記者会見で「拉致問題の進展がないこと」を、まず理由にあげた。民主党政権の下で「外交上の配慮などはせず、教育上の観点から客観的に判断する」という政府統一見解が出ていたが、これについても下村氏は「当然廃止する」と明言した。
(3)だが政治・外交への配慮から対象外にしたとなると、教育の機会均等を図る無償化法の目的に反し、違法の余地が生じる。政府は、大臣発言は国民向けのメッセージであって、本当の理由は「朝鮮学校に支給した金が流用される恐れがあるからだ」と説明するようになった。
(4)取り繕ったのは明らかだ。しかし東京地裁は、納得できる理由を示さないまま、国側の言い分を認めてしまった。行政を監視し、法の支配を実現させるという司法の使命を忘れた判断だ。無償化をめぐる同様の訴訟で「教育とは無関係な外交的、政治的判断があった」と述べ、政府の措置を違法とした7月の大阪地裁判決のほうが事実に即し、説得力に富む。


 朝日新聞は、「改めて確認したい。」、と次のように結論づける。


(1)北朝鮮による拉致行為は許し難い犯罪だ。だがそのことと、朝鮮学校の生徒らに同世代の若者に対するのと同じく教育の機会を保障し、成長を手助けすることとは、別の話である。
(2)朝鮮学校と朝鮮総連の間に一定の関係があるとしても、同校は、一市民として日本社会で生きていくために、必要な知識や考え方を身につける場になっている。通っているのは自分のルーツの民族の言葉や文化を学ぶことを望む生徒で、韓国・朝鮮籍や日本国籍など多様だ。誰もが明日の社会の担い手である点に違いはない。この当たり前のことを胸に刻みたい。社会の成熟度が問われている。


 確かに、朝日新聞の二点の結論は、正鵠を得ている。
 2017年7月28日の朝日新聞は、「朝鮮学校を無償化の対象から外した国の政策の誤りを、厳しく指摘した28日の大阪地裁判決。『国の不指定とした処分を取り消す』。裁判長が判決主文を読み上げると、一瞬間をあけて、生徒や学校関係者らで埋まった傍聴席から、歓声が上がった。」、と報じた。
 また、2017年7月30日の社説で大阪地裁判決の主旨を次のように説明している。


(1)経済的事情で勉学を断念することがないよう、国の負担で教育の機会均等を確保する。判決が判断の軸にしたのは、高校無償化法にあるこの目的だ。
(2)無償化は民主党政権が2010年に始めたが、朝鮮半島情勢を理由に適用を見送った。第2次安倍内閣では下村博文・文科相が拉致問題などを理由に「国民の理解が得られない」とし、13年2月、不支給を決めた。
(3)大阪地裁はこうした国の対応を「教育の機会均等の確保とは無関係な外交的、政治的判断に基づき、法の趣旨を逸脱し、違法で無効だ」と結論づけた。
(4)教育制度を政治・外交課題と同一線上で論じ、混同することを、厳しく戒めたといえる。


 さらに、朝日新聞は次のように押さえていた。


(1)日本で学ぶ全ての生徒に公平に教育の機会を与える、という制度の原点に立った判決だ。
(2)国は司法の判断を重く受けとめ、速やかに支給すべきだ。
(3)いま、朝鮮学校に通う生徒は日本で生まれ育った在日コリアン4世が中心だ。民族の言葉や文化を大切にしながら、日本で生きていきたいと学んでいる。多様なルーツや教育の自主性を尊重するのか。問われているのは、社会のあり方だ。


 あらためて、次のことを確認する。


 教育の機会均等の確保とは無関係な外交的、政治的判断に基づき、法の趣旨を逸脱してはならない。





by asyagi-df-2014 | 2017-09-23 06:00 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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