2017年 03月 12日 ( 3 )

「『沖縄の全ての基地』を対象に『自衛隊と共同使用すべきだ』」との米軍の呼びかけに、稲田朋美防衛相は「今後充実させるべきだ」、と乗る。

 琉球新報は2017年3月9日に、ローレンス・ニコルソン在沖米四軍調整官の「8日、米軍キャンプ瑞慶覧で記者会見した。在沖米軍基地の在り方について『沖縄の全ての基地』を対象に『自衛隊と共同使用すべきだ』と述べた。」、伝えていた。また、この発言については、「米軍基地の自衛隊との共同使用化については『軍人としての個人的意見で日米両政府の政策ではない』とも強調した。」、とも報じた。
 稲田朋美防衛相は2017年3月10日、すぐさまこのことに反応した。
 琉球新報は、この様子を次のように伝えた。


(1)稲田朋美防衛相は10日の衆院安全保障委員会で、在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官が県内全ての米軍基地を自衛隊と「共同使用すべき」と主張したことに関して「今後充実させるべきだ」と同調した。
(2)防衛省は、米軍基地・施設での自衛隊の訓練数や研修が増加していることも明らかにした。特にキャンプ・ハンセンでの訓練数は急増している。赤嶺政賢氏(共産)の質問に答えた。
(3)赤嶺氏は「米軍再編は『沖縄の負担軽減』といいながら、自衛隊が米軍基地を使って訓練している。負担はどんどん重くなっている」と指摘した。
(4)稲田氏はその他の米軍基地の共同使用について「何ら決まったことはない」と強調した。ただ、共同使用する施設は増えている。日米両政府は2006年5月に合意した米軍再編ロードマップ(行程表)でハンセンについて「陸上自衛隊の訓練に使用される」と明記。ハンセンは07年度に共同使用が始まり、ホワイトビーチでも11年度から行われている。15年10月には日米合同委員会で北大東村の「沖大東島」と周辺水域・空域を自衛隊が恒常的に共同使用することも合意された。
(5)ハンセンでは沖縄に配備されている陸上自衛隊第15旅団の部隊が射撃や市街地戦闘、爆破訓練などを実施。年度ごとの訓練回数は07年度1回、08年度6回、09年度8回、10年度8回、11年度14回、12年度24回、13年度36回、14年度47回、15年度95回、16年度は2月24日までに85回。1回の訓練で最長は10日だった。
(6)沖大東島では13年11月に陸海空自衛隊の統合部隊訓練、15年11月と16年6月に海自護衛艦による対地射撃訓練などが行われた。
(7)米軍基地内での自衛隊の研修も増えている。陸自は08年度の8件から徐々に増え15年度は21件となった。海自は08~15年度まで毎年度1件。空自は08年度は17件、15年度には26件あった。


 確かに、赤嶺政賢氏(共産)の「米軍再編は『沖縄の負担軽減』といいながら、自衛隊が米軍基地を使って訓練している。負担はどんどん重くなっている」との指摘は、米軍再編の実像を物語っている。
 日本政府は、米軍再編を契機に、辺野古新基地建設、高江ヘリパッド建設、与那国島、石垣島、宮古島の自衛隊の基地化等々の沖縄における自衛隊の拡大強化を図っている。
 もちろん、そこでは「沖縄の負担軽減」は考慮されない。
稲田朋美防衛相の「今後充実させるべきだ」の「同調」の声が、このことを明らかに証明する。
 稲田朋美防衛相の理解には、防衛省からの沖縄の「共同使用」の着々と進められている実態の説明は受けても、そのことによってもたらされる「負担の増」は説明されることはないし、自らが理解しようとすることもない。
 やはり、きちんと、米軍再編の実像を洗い出し直す必要がある。




by asyagi-df-2014 | 2017-03-12 20:03 | 米軍再編 | Comments(0)

在沖縄米軍トップ発言は、沖縄県内の米軍基地での深夜・早朝の離着陸は「運用上やむを得ない」と、認識を示す。つまり、「騒音規制措置に拘束力なし」(沖縄タイムス)。

 標題について、沖縄タイムスは2017年3月9日、「在沖縄米軍トップのニコルソン四軍調整官は8日、米軍嘉手納飛行場などで米軍機による深夜、未明の離着陸が相次いでいることに関し『パイロットは昼夜、一定の時間を飛ばないといけない』と述べ、運用上、やむを得ないとの認識を示した。嘉手納や普天間飛行場では日米が合意した騒音規制措置が守られず騒音被害が増しており、住民が反発するのは必至だ。キャンプ瑞慶覧で開いた報道機関との意見交換会で述べた。」、と報じた。
 このことについて、沖縄タイムスは同日、次のように解説した。、


(1)ニコルソン米四軍調整官が県内米軍基地での深夜・早朝の離着陸は「運用上やむを得ない」との認識を示したことは、日米の騒音規制措置(騒音防止協定)が米側に何ら拘束力を持たないことを、図らずも浮き彫りにした。第3次嘉手納爆音訴訟でも司法から騒音を放置する姿勢を批判された日本政府には、主権国家として他国軍の運用を制限するための実効性ある措置を講ずる責任がある。(政経部・大野亨恭)
(2)日米両政府は1996年の日米合同委員会で、嘉手納基地と普天間飛行場で午後10時から翌朝6時までの飛行を制限することで合意した。ただ、「米国の運用上、必要なものに制限する」との免罪符がついた。そもそも、米軍の深夜・早朝の飛行を止められる協定ではなかったということだ。
(3)近年、嘉手納には米本国を任務地とする米州軍の戦闘機が暫定配備されるなど、外来機の飛来が激増し、騒音被害が悪化の一途をたどっている。普天間でもオスプレイが夜間訓練を実施するなど市民の生活に暗い影を落としている。嘉手納で年間千回を超える協定違反が続いている現状を見れば、協定の著しい形骸化は明らかだ。
(4)騒音が激化するたびに周辺市町村は外務省、防衛省に被害軽減を訴えるが、日本政府は「運用には口出しできない」とにべもない。ニコルソン氏は騒音に関する住民の訴えは理解するが、夜間訓練は必要だと明言する。
(5)結局、住民の声は置き去りにされ、騒音被害だけが重くのしかかる。沖縄の負担軽減のために「できることは何でもする」と繰り返す日本政府だが、騒音規制に関し、何もしていないに等しい。協定の見直しを含め、実効性ある対策が急務だ。


 今回の沖縄タイムスの報道で改めて明確になったことは、次のこと。


Ⅰ.日米の騒音規制措置(騒音防止協定)が米側に何ら拘束力を持たないこと
Ⅱ.実態としても、「外来機の飛来が激増し、騒音被害が悪化の一途をたどっている。普天間でもオスプレイが夜間訓練を実施するなど市民の生活に暗い影を落としている。嘉手納で年間千回を超える協定違反が続いている現状を見れば、協定の著しい形骸化は明らかだ。」、ということ。
Ⅲ.「住民の声は置き去りにされ、騒音被害だけが重くのしかかる。沖縄の負担軽減のために『できることは何でもする』と繰り返す日本政府だが、騒音規制に関し、何もしていないに等しい。」ことから、この協定の見直しを含め、実効性ある抜本的な対策必要であること。


 ただ、もう一つの重要な観点がある。
 それは、「日米両政府が推進する方針を示している在沖米軍施設の自衛隊との共同使用に関し『将来的にはキャンプ・シュワブを自衛隊のオスプレイが使用すべきだ』と述べ、自衛隊との共同使用、共同訓練が重要との認識を示した。ニコルソン氏は『私見』と前置きした上で、共同使用は『沖縄の全基地で可能だ』と述べた。また、米軍北部訓練場内で陸上自衛隊が訓練を実施していることも明らかにした。」、との報道。
 このことについての明確な視点も必要である。
 例えばそれは、辺野古新基地建設は、安倍新政権にとっては必要な材料なのだということ。




by asyagi-df-2014 | 2017-03-12 12:41 | 沖縄から | Comments(0)

「辺野古が唯一の解決策」を考える。(5)-今こそ辺野古に変わる選択を~NDからの提言(第2部「海兵隊新ローテーション方式の提案」)より-

 新外交イニシアティブ(以下、NDとする)は、2017年2月、「今こそ辺野古に変わる選択を-新外交イニシアティブ(ND)からの提言」を発表した。
 第2部「海兵隊新ローテーション方式の提案」を読む。要約する。
 まず、最初に、「海兵隊新ローテーション方式」を提案する。
このことについては、次のように説明する。


(1)沖縄の基地の約7割を占有する海兵隊を沖縄以外へ移転しても、運用所要を満たす施設さえあれば、任務を果たすことは可能である。沖縄の過重な基地負担を抜本的に解決する代替案(オルタナティブ)は、可能であり、早急に検討されなければならない。
(2)本報告書が提案する「新ローテーション方式」は、海兵隊に財政負担を求めることなくその運用所要を維持し、日本政府の追加的財政負担を要求することなく日米同盟の深化に有益な結果をもたらすことを追求したものであり、日本、米国、そして沖縄のいずれにとっても有益となる win-win-win の実現を目指している。「新ローテーション方式」は以下のアイディアから成り立っている。


 また、「海兵隊新ローテーション方式」については、「まとめ」で、次のように押さえている。


 以上述べたように、高速輸送船で分散移転の不便を解消し、接受国支援を地域支援に拡充し、自衛隊が、海兵隊が担う地域の信頼醸成やHA/DRの役割を分担することで、地域安保の基盤としての日米同盟をアピールする。この3要件を同時に満たすことを前提に沖縄から31MEUを移転すれば、普天間の代替飛行場を新設する必要はない。海兵隊の移転は、ランデブーポイントをグアムやオーストラリアなど県外・国外へ移転するだけのことに
過ぎないからである。
 第1海兵遠征軍がMEUをカリフォルニアから太平洋を越えてインド洋へ派遣しているように、ハワイや米本国から31MEUを展開することも可能である。


 具体的内容については、次のように説明する。


前提Ⅰ.米海兵隊の現状


(1)米太平洋軍はアジア・太平洋地域に約10万人を配している。沖縄にはその約4分の1にあたる約25,000人の米兵が駐留する。
(2)米軍再編(2006年の日米合意を2012年に日米で見直した部隊再配備計画)によって、在沖米軍兵力の6割を占める海兵隊19,000人のうち約9,000人がグアムなどへ分散配置される。戦闘力の中軸である第4海兵連隊と補給部隊など4,100人がグアムへ、第12海兵連隊や後方支援部隊の約2,700人がハワイへ、1,300人がオーストラリアへ、800人が米本国へ移転する。連隊規模の兵力はすべて転出し、3MEFなどの司令
部機能と31MEUが残ることとなった。
(3)海兵隊は地上戦闘部隊、航空部隊、後方支援部隊の三つの機能で編成されている。紛争が起きた時の内容や規模によって3つの機能の中から部隊を選出して派遣する。編成規模は海兵遠征軍(MEF、約45,000人)と海兵遠征旅団(MEB、約17,500人)、海兵遠征隊(MEU、2,000人)の三段階がある。MEFはカリフォルニア、ノースカロライナ、沖縄に1個ずつの計3つあるが、沖縄に残留する部隊は、海兵隊が海軍艦艇で遠征する最小規模部隊のMEUのみとなる予定であり、有事には本国から増援する体制となる。
(3)MEUはカリフォルニアに3個、ノースカロライナに3個、沖縄に1個の計7個あり、活動エリアとしてはカリフォルニアMEUがインド洋、中東、アフリカ東海岸を、ノースカロライナMEUが大西洋、地中海、アフリカを、そして沖縄MEUがアジア太平洋地域をカバーしている。任務は非戦闘員救出作戦(NEO)、人道支援・災害救援活動(HA/DR)や同盟国軍との共同訓練などだ。
(4)沖縄のMEUは長崎県佐世保の揚陸艦に乗りグアム、オーストラリア、フィリピン、タイ、韓国などの同盟国のほかアジア太平洋地域の諸国を巡回し、共同訓練を通して軍同士の交流を行いながら信頼醸成を図っている。各地域をカバーするMEUがそれぞれの地域で6カ月ごとに洋上展開、訓練、休憩を繰り返す。


 結局、このように海兵隊の配備先は、任務を担当する地域と一致する必要はない。高度な機動力と即応能力こそ、海兵隊の最大の利点である。


前提Ⅱ.31MEUと普天間飛行場


(1)31MEUに航空輸送力を提供するのが普天間基地に配属されている航空部隊である。普天間基地には航空機が48機配備されており、内訳はMV22オスプレイ24機、CH53E大型輸送ヘリコプター8機、UH1汎用ヘリ3機、AH1攻撃ヘリ9機、UC12汎用軽輸送機(要人輸送)1機、UC35汎用軽輸送機3機である。31MEUと連動し、揚陸艦(ミニ空母)に搭載する航空機は計23機で、内訳はオスプレイ12機、CH53大型ヘリ4機、攻撃ヘリ4機、汎用ヘリ3機である(このほかに山口県岩国基地に固定翼のF35戦闘機、空中給油機などが配備されている)。
(2)上記の通り、普天間基地に配備されている航空機の約半分は31MEUと帯同している。残り半分は予備機として配備されている。このため、31MEUを沖縄に配備することが、普天間基地の航空機能を沖縄に存続させ、辺野古に新基地を建設しなければならない根拠になっている。ちなみに湾岸戦争で海兵隊は回転翼機(ヘリなど)177機、固定翼機194機を投入した。


 結局、このことと比較すれば、普天間基地の航空輸送力は極めて小さく、MEUを支援するのみの配備であることが分かる。


Ⅰ. 運用―ランデブーポイントと高速輸送船


(1)海兵隊の各種部隊は6カ月単位のローテーションで沖縄に配備されている。
(2)米軍再編によって主力部隊がグアムなどへ移転した後、沖縄に残るのは司令部機能と31MEUである。
(3)31MEUは、長崎県佐世保の米海軍の揚陸艦でアジア太平洋地域を巡回する。年間6~9カ月の間、同盟国、友好国を訪問し、多国間の共同訓練を実施する。アジアにおける米軍プレゼンスを維持しつつ、軍事交流を深めることで安全保障ネットワークを構築する重要な任務を帯びている。


 結局、その任務は、日本が期待するような尖閣を含む日本防衛に拘束されない。アジア全域の安全保障の維持・管理の中に日本の安全保障が包含されていると理解すべきである。この理解がないと、地理的概念に囚われ、沖縄基地問題の実相を見誤り、問題解決の前提となる現状認識さえままならない。


ⅰ.海兵隊配備のカギはランデブーポイント


(1)重要なのが、沖縄の海兵隊基地からローテーションで展開してくる部隊と、佐世保の揚陸艦を合流させる「ランデブーポイント」(落合場所)である。現在、海兵隊が移動に使う艦艇は佐世保の揚陸艦のほか、オーストラリアの民間船舶会社からチャーターしている高速輸送船1隻がある。
(2)海兵隊にとって沖縄が便利なのは、2,000人規模のMEUが3、4隻の艦揚陸でアジア地域を洋上巡回する足場になっているからだ。米本国に後退すると移動距離が格段に長くなり、効率性を低下させる。もっとも、巡回の主目的は米軍プレゼンスの維持なので、その要員・装備が不足した場合には、海軍が駆逐艦などを出すほか、アジア地域の基地に陸軍や空軍を一時的に展開させる方法もある。
(3)在沖海兵隊を消防に例えよう。現在は、消防車(=揚陸艦)を長崎に置きながら隊員(=海兵隊員)は沖縄にいる。消防車が沖縄で隊員を迎えて、任務地のアジア太平洋へ出動していく。隊員は米本国から入れ替わりでローテーション配備されている。
(4)こうした部隊運用において、揚陸艦が海兵隊員と合流する「ランデブーポイント」は沖縄でなくてもいい。米本国から派遣される海兵隊員は航空機で日本にやってきて、長崎で揚陸艦と合流させればいい、という考えも成り立つのである。待ち合わせの方法を変えるだけの運用見直しで、沖縄基地問題は普天間移設問題を含め大幅に解消される。仮に31MEUの拠点を米本国へ移転させた場合、アジアへの巡回経費は増大するだろうが、生じるのはその分の費用をどうするかという問題のみである。


 結局、米軍再編で部隊が分散配置されることにより、海兵隊は高速輸送船を必要としている。この高速輸送船を日本が提供すれば、海兵隊にとって財政負担がなく、しかも速やかに移動できるという大きな利点になる。


ⅱ.海兵隊の予算難を救うカギは高速輸送船


(1)海兵隊の内実は厳しい。オバマ政権の大幅な国防費カットは、海軍にぶら下がる海兵隊により大きく影響する。海兵隊は将来の陣容と装備に不安を抱えている。
(2)海兵隊が沖縄からグアムやオーストラリアへ分散すれば、距離を埋めるための高速輸送船の必要性が高まるだろうし、実際、海兵隊は高速輸送船の追加配備を望んでいる。フィリピンの台風災害で高速輸送船を使えたら、事態への対応はまったく違っていたはずである。
(3)米海兵隊は現在、高速輸送船のチャーターに年間約14億円を支出している。また2005年10月29日に日米合意した『未来のための変革と再編』(米軍再編中間報告)には、日米両政府が協力する分野として「輸送協力には航空輸送および高速輸送艦(HSV)の能力によるものを含めた海上輸送を拡大し、共に実施することが含まれる」とある。さらに高速輸送船については、防衛省が2016年3月、自衛隊の訓練や災害派遣などに優先使用できるよう、もう1隻の輸送船とあわせ約250億円の契約金額で2025年12月末まで民間会社と契約を結んだ。なおこの高速輸送船は新造すると1隻500億円以上の費用がかかる。


 結局、以上の数字を考えると、後述する「提供施設整備費」などを併せても、日本側の支出は現在よりかなり低く抑えることができる。


Ⅱ. 財政負担の転換―ホストリージョナルサポート


(1)日本が負担する在日米軍の駐留経費年間約3,725億円のうち、防音対策などの周辺対策、訓練移転、漁業補償といった基地の外側での費用がほぼ半額を占める。基地内では従業員の給与が多くを占め、米軍が直接使用する提供施設の整備費は在日米軍全体で年間約220億円であり、全体に占める割合は5%に過ぎない。このうち在沖米軍基地の提供施設整備費は約50億円で、海兵隊基地への配分はさらに少ない。海兵隊が沖縄から移転する場合、同等額の援助を移転先の国や地域へ投下することになれば、海兵隊への日本政府の支出額は維持されることになる。
(2)沖縄の基地の約7割を使う海兵隊の転出によって、日本の基地周辺対策費は大幅に軽減される。この財源を活用すれば、海兵隊への支出額を増加しつつ、日本政府が負担する駐留経費を削減することができる。


 結局、これを実施するためには、日本政府における新たな立法措置が必要となる。しかし、この処置は、日本防衛のコストとしてみなされてきた駐留経費(ホストネーションサポート=接受国支援)をアジア全域の安全保障に活用する(ホストリージョナルサポート=接受域支援)ことを意味しており、地域の安定に寄与する日米同盟という性格をアピールすることができる。


Ⅲ. 同盟深化―日米Joint MEU for HA/DR


(1)アジア太平洋地域における米海兵隊の役割は、これまで述べてきた通り、日本防衛というよりアジア太平洋地域の安全保障環境の改善にある。具体的には、友好国との共同訓練のほか、アジア地域で近年頻発する大規模な自然災害への緊急対処が重要な役割になっている。これらは自衛隊の得意分野であり、世界で高い評価を受けている。海兵隊が実施している共同訓練、災害救援、人道支援活動の領域で自衛隊は今まで以上に大きな役割を担うことが期待できる。
(2)米海兵隊と日本の自衛隊が、沖縄に残留する海兵隊司令部を通じて緊密に連携・調整し、東アジア地域のHA/DRの訓練や実働任務を共同して、あるいは地域を分担して実施する体制を整備することで、「日米JointMEU for HA/DR」というべき新たな協力の枠組みが構築されることが望ましい。
 

 結局、2,000人の米海兵隊に加え、自衛隊は同等以上の規模のHA/DR部隊の提供が可能であり、日本近傍の地域の救援・訓練の所要により柔軟かつ実効的に対応することができるようになる。あるいは、自然災害に加えて戦闘任務を伴う事態が同時に発生した場合には、戦闘に優先的に投入される海兵隊に代わって自衛隊が救援任務を担当するなど、機能に着目した協働的な作戦が可能となる。


ⅰ.自衛隊にはすでに実績がある


(1)2004年のスマトラ島沖の地震・津波では27万人が犠牲となり、約1,000万人が家を失った。自衛隊は、インドネシアのアチェ州へ3隻の艦艇、輸送機2機を含む900人を派遣し、各地で救援活動を行った。
(2)2013年、フィリピンにおける台風被害に際しては、1,000人を超える人員と、KC-767空中給油・輸送機2機、C-130H輸送機7機、U-4多用途支援機1機、CH-47輸送ヘリコプターおよびUH-1多用途ヘリコプター各3機、輸送艦、護衛艦および補給艦の計3隻を派遣し、医療活動等に加えて、防疫活動および現地における救援物資などの輸送を行った。
(3)さらに自衛隊は、米海軍主催の人道支援活動「パシフィック・パートナーシップ」に毎年参加し、関係国との間の相互理解および協力の促進並びに民間団体との協力の促進を図るとともに、国際平和協力業務および国際緊急援助活動にかかわる医療、施設補修および輸送に関する技量の向上を図っている。
 
 
 結局、こうした自衛隊の能力を活用することは、日本の現行法制で可能である。


ⅱ.HA/DRの実例


(1)前出のスマトラ沖地震に際し、米国は9億5,000万ドルの支援金を拠出し、空母エイブラハム・リンカーンなど艦艇約20隻、航空機60機など、総勢12,600人の兵力を派遣して2カ月間救援支援を行った。
(2)2009年からASEANはリージョナルフォーラムで災害救援訓練(DiRex)を実施している。現状ではアジア太平洋地域でHA/DRへの対処能力を備えているのは日米中豪の4カ国に限られており、国際協力が不可欠だ。
(3)2010年のハイチ地震における中国政府の対応は迅速で、数百万ドルを寄付したほか、遭難レスキュー隊、医療チームを派遣、発電機、浄水設備、テント、衣類を提供した。またシリア、ヨルダン、レバノン難民に1,600万ドルの人道支援金を寄付している。
(4)2013年、フィリピンを襲ったスーパータイフーン「ハイヤン」は約7,000人の命を奪った。米国は48時間以内に即応し、8,600万ドルを提供し、米軍は最初の2週間だけで1,400万ドルの経費を使い救援活動を展開した。日本も国際緊急援助活動としては過去最大の約1,000人を現地に派遣した。中国政府の援助は当初10万ドルにとどまり、中国はアジアに冷たいと非難を浴びたため、175万ドルを追加提供したほか、病院船「ピースアーク」を派遣した。


ⅲ.アジアの安全保障とHA/DR


(1)米太平洋司令部がHA/DRを新たな安保課題と位置づけ、本格関与するようになったのは冷戦後の1989年からだ。その後、東南アジアにおけるほぼすべての大規模災害に即応している。また中国軍も近年、軍事ドクトリンで大規模災害を非伝統的安全保障分野の脅威と認識し、優先度の高い任務と位置づけている。米中がHA/DRで協力関係を広げることで信頼醸成と地域安定化の基盤構築が期待できる。
(2)例えば米中両国が保有する病院船の連携がある。米国の米海軍病院船「マーシー」(1,000床)が出動準備するには約5日、太平洋を横断するには約7日かかる。その間、中国が保有する病院船「和平方舟」(ピースアーク、300床)が初期対応し、米側と連携すればより多くの命を救えるはずだ。アジア太平洋地域で緊張緩和を促進し、安全保障を支える柱の一つになりえるだろう。
(3)米国はフィリピンで「バリカタン」「フィリベック」、タイで「コブラゴールド」、日本で「キーンソード」など多くの共同訓練を実施している。共同訓練でHA/DRを重視したのは2008年からで、米海兵隊だけでなく、太平洋地域に展開する陸海空の各軍とも積極的に取り組んでいる。フィリピンのドゥテルテ大統領は米比間の軍事演習を縮小する方針だが、HA/DRを軸とした共同訓練は継続する意向を表明している。
(4)従来、米国は中国との共同訓練参加に消極的だったが、2013年のアデン湾における海上行動の共同対処が成功してから両国の協力が深まった。同年夏、米中両海軍の双方が駆逐艦、ヘリコプター、特殊部隊を出して海賊対策訓練が行われた。フィリピンでの多国間共同訓練に中国軍が初めて参加したのもこの年だった。さらに同年11月には中国主催でHA/DRの機上訓練が初開催され、翌2014年の環太平洋合同訓練(RIMPAC)への中国初参加へ弾みをつけた。
(5)国際連合の試算によると、アジア太平洋地域は、自然災害の被害に遭う確率がアフリカの3.2倍、中南米の5.5倍、北米の9倍、ヨーロッパの実に67倍も高いとされている。大規模災害に対応する国際体制づくりを今日的な安全保障政策の重要テーマの一つとして位置づけるべきだろう。


 結局、日米安保体制は米国が日本防衛義務を負う片務性が指摘されるが、人道支援・災害救援活動で自衛隊の能力は高く、HA/DRは日本が憲法9条の精神を生かしながらアジアの安全保障に貢献できる分野だ。今日的な安保課題に合わせた同盟関係を再構築することで新たな地平が見えてくるだろう。沖縄基地問題の「解」もそこから導かれるはずだ。


まとめ


 以上述べたように、高速輸送船で分散移転の不便を解消し、接受国支援を地域支援に拡充し、自衛隊が、海兵隊が担う地域の信頼醸成やHA/DRの役割を分担することで、地域安保の基盤としての日米同盟をアピールする。この3要件を同時に満たすことを前提に沖縄から31MEUを移転すれば、普天間の代替飛行場を新設する必要はない。海兵隊の移転は、ランデブーポイントをグアムやオーストラリアなど県外・国外へ移転するだけのことに
過ぎないからである。
 第1海兵遠征軍がMEUをカリフォルニアから太平洋を越えてインド洋へ派遣しているように、ハワイや米本国から31MEUを展開することも可能である。


※海兵隊(3MEF)司令部について 
この提言は31MEUの再配置についてのみ言及した。司令部機能については今後の議論に委ねることにした。アジア太平洋地域の主要な活動がHA/DRであることを鑑みて、人道支援や災害救援という今日的な安全保障の課題にアジア各国が対処する拠点として沖縄を活用する道筋も想定されるだろう。各国の代表者が沖縄に集い、人道支援などの連絡調整を行う場所として沖縄を活用することは検討に値する。例えば「国際協力調整センター」(仮称)を設置し、近年多国間共同訓練に積極参加している
中国も含めて、平和的なアジア安保について語り合う空間を沖縄で提供する意義は深いと考えるからである。在沖海兵隊司令部もこの調整機能の主要な役割を担うことに期待したい。


 最後に、結論的なものをここで挙げてみる。


Ⅰ.「このように海兵隊の配備先は、任務を担当する地域と一致する必要はない。高度な機動力と即応能力こそ、海兵隊の最大の利点である。」
Ⅱ.「このことと比較すれば、普天間基地の航空輸送力は極めて小さく、MEUを支援するのみの配備であることが分かる。」
Ⅲ.「その任務は、日本が期待するような尖閣を含む日本防衛に拘束されない。アジア全域の安全保障の維持・管理の中に日本の安全保障が包含されていると理解すべきである。この理解がないと、地理的概念に囚われ、沖縄基地問題の実相を見誤り、問題解決の前提となる現状認識さえままならない。」
Ⅳ.「米軍再編で部隊が分散配置されることにより、海兵隊は高速輸送船を必要としている。この高速輸送船を日本が提供すれば、海兵隊にとって財政負担がなく、しかも速やかに移動できるという大きな利点になる。」
Ⅴ.「以上の数字を考えると、後述する「提供施設整備費」などを併せても、日本側の支出は現在よりかなり低く抑えることができる。」
Ⅵ.「これを実施するためには、日本政府における新たな立法措置が必要となる。しかし、この処置は、日本防衛のコストとしてみなされてきた駐留経費(ホストネーションサポート=接受国支援)をアジア全域の安全保障に活用する(ホストリージョナルサポート=接受域支援)ことを意味しており、地域の安定に寄与する日米同盟という性格をアピールすることができる。」
Ⅶ.「2,000人の米海兵隊に加え、自衛隊は同等以上の規模のHA/DR部隊の提供が可能であり、日本近傍の地域の救援・訓練の所要により柔軟かつ実効的に対応することができるようになる。あるいは、自然災害に加えて戦闘任務を伴う事態が同時に発生した場合には、戦闘に優先的に投入される海兵隊に代わって自衛隊が救援任務を担当するなど、機能に着目した協働的な作戦が可能となる。」
Ⅷ.「こうした自衛隊の能力を活用することは、日本の現行法制で可能である。」
Ⅸ.「日米安保体制は米国が日本防衛義務を負う片務性が指摘されるが、人道支援・災害救援活動で自衛隊の能力は高く、HA/DRは日本が憲法9条の精神を生かしながらアジアの安全保障に貢献できる分野だ。今日的な安保課題に合わせた同盟関係を再構築することで新たな地平が見えてくるだろう。沖縄基地問題の「解」もそこから導かれるはずだ。」


いずれにしろ、共通の出発点は、「 沖縄基地問題の『解』」、ということだ。



by asyagi-df-2014 | 2017-03-12 06:33 | 沖縄から

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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