2017年 02月 18日 ( 2 )

沖縄-辺野古-高江-から-2017年2月18日

 沖縄で起こっていること、その現場の事実をきちんと確認すること。
 2017年も、琉球新報と沖縄タイムスの記事を、「沖縄-辺野古-高江-から」を、報告します。


 普天間「5年以内運用停止」の問題について、安倍晋三政権は「困難」とする。
 「辺野古移設への地元の協力が前提だ」とのリンク論は、もともと成就できないことへの厚かましい言い訳に過ぎなかっただけに、この言い訳は、日本という国の主体性のなさを暴露するものでしかない。
 安倍晋三政権が主張する「沖縄の負担軽減」は、沖縄タイムスの「普天間飛行場とは別に、沖縄本島の米軍施設・区域にあるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)は88カ所。オスプレイの使用可能なヘリパッドは72カ所で、そのうち53カ所の『戦術着陸帯』を年2万回使用することになっている。普天間を離陸した航空機は県全域で訓練しており、騒音被害も墜落などの危険性も県全域で存在する。」、という指摘にどのように答えることができるのか。


 2017年2月18日、沖縄-辺野古-高江の今を、沖縄タイムス、琉球新報は次のように表した。


(1)琉球新報-辺野古、国が生コン設備着工 県は埋め立て工事転用懸念-2017年2月18日 08:30


 琉球新報は、標題について次のように報じた。


①「米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴い米軍キャンプ・シュワブ陸上部で進められている関連施設の建設に絡み、沖縄防衛局が工事加速のために生コンクリートプラント(製造機)の建設に着工したことが17日までに分かった。生コン製造機を巡って防衛局は、シュワブ陸上部の工事のために建設すると県に説明してきた。これに対して県や市民団体はシュワブ沿岸部で進む辺野古新基地建設の埋め立て工事にも将来的に転用される懸念があるなどと指摘し反対してきたが、防衛局は着工に踏み切った。建設場所はキャンプ・シュワブ内の南側で辺野古漁港側に面した沿岸域に近い付近。17日は重機が整地のような作業をしている様子が確認された。」
②「昨年3月に辺野古埋め立て承認取り消しを巡る代執行訴訟で政府と県の和解を受け、辺野古新基地建設に関する工事が中断した。その後、防衛局側は埋め立てと無関係の陸上部の隊舎建設などの工事再開で県に理解を求めてきたが、その中に陸上の生コン製造機建設も盛り込まれていた。これに対し県は、基地内で埋め立てに必要な資材が準備される懸念があるとしてプラントの建設には反対の姿勢を示していた。」
③「生コン製造機は抗議運動の影響を避ける目的で和解で作業が止まる前から計画していた。従来から進めていた陸上部の工事では、ゲート前の抗議活動により陸上部の工事に必要な生コン車の出入りが円滑に進まず、生コンが固まって使えなくなる事態が続き、2014年12月ごろから作業を中断していた。辺野古埋め立てを巡る和解を受けて、県は移設計画に関係する一切の工事は認めないと主張。防衛局は海上作業を中断した。その一環で陸上部の隊舎建設も中止し、陸上の生コン製造機建設も作業を見送っていた。だが昨年12月の最高裁判決で県が敗訴したことを受け、政府はプラントの建設に着手した。」


(2)沖縄タイムス-辺野古新基地:工事関係車両8台がシュワブ内へ 海上でも抗議-2017年2月18日 12:29


 沖縄タイムスは、「午前10時すぎ、市民約60人を機動隊約60人が排除し、木材を積んだトラックなど工事関係車両8台がシュワブ内に入った。市民らは『県民の声を聞け』『工事をやめろ』と抗議した。海上では市民ら約70人が船やカヌーに乗り『SAVE THE DUGONGS(ジュゴンを守れ)』と書かれた横断幕を掲げ、ブロック投下に抗議。瀬嵩の浜には約300人が集まり『新基地建設を止めるぞ』とシュプレヒコールした。」、と報じた。


(3)沖縄タイムス-危険除去の約束どこへ 普天間「5年以内運用停止」まであと2年-2017年2月18日 11:46


 沖縄タイムスは、標題について次のように報じた。


①「政府が沖縄県と約束した米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止まで、18日で残り『2年』となった。2013年12月に、仲井真弘多知事(当時)が名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認した際の事実上の条件で、安倍晋三首相は『できることは全てやる』と取り組む姿勢を示してきた。しかし、首相は今月14日、運用停止は『困難』との認識を初めて示した。約束をほごにし、普天間の危険性を放置する国の姿勢に、県内から反発が強まっている。」
②「安倍首相は14日の衆院予算委員会で運用停止に関し『難しい状況になっている』と明言。新基地建設へ協力姿勢を示していた仲井真前知事に対し、『翁長知事は根本のところで全く協力いただけていない』述べ、翁長知事の反対の姿勢が原因で運用停止が実現しないとの考えを示した。一方、翁長知事は翌15日、県議会の所信表明演説で『5年以内の運用停止を含めた危険性除去を政府に強く求めていく』と改めて強調した。」
③「5年以内の運用停止に関し、安倍首相は新基地建設反対を掲げて当選した翁長知事と初会談した15年4月に『(約束は)生きている』と明言し、埋め立て承認の条件であるとの認識を示してきた。しかし知事就任後、国は運用停止を協議する『普天間飛行場負担軽減推進会議』の開催を先送り。昨年7月に1年9カ月ぶりに開催した会議で、菅義偉官房長官は『辺野古移設への地元の協力が前提だ』と新基地建設の進捗(しんちょく)とリンクさせた。以降、推進会議は開かれていない。
④「沖縄防衛局が調査した普天間飛行場周辺の航空機騒音状況をみると、騒音発生回数が最も多い宜野湾市大謝名地区の1日平均で2013年度25回、14年度23回、15年度23回、16年度(16年4月~17年1月)27回と減少につながっていない。」
⑤「政府は14年2月に普天間の5年以内の運用停止を約束し、同年8月までにKC130空中給油機15機を山口県の岩国基地へ移駐、オスプレイ訓練の県外実施などで『目に見える形で負担軽減を進めている』というが、実態が伴っていない。次に多い同市新城では13年度20回、14年度20回、15年度21回、16年度23回となっている。」
⑥「普天間飛行場とは別に、沖縄本島の米軍施設・区域にあるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)は88カ所。オスプレイの使用可能なヘリパッドは72カ所で、そのうち53カ所の『戦術着陸帯』を年2万回使用することになっている。普天間を離陸した航空機は県全域で訓練しており、騒音被害も墜落などの危険性も県全域で存在する。」


(4)沖縄タイムス-沖縄県が普天間の運用実態調査 24時間態勢で発着を記録、負担軽減求める根拠に-2017年2月18日 09:26


 沖縄タイムスは、標題について次のように報じた。


①「米軍普天間飛行場の運用実態を把握するため、沖縄県が2月から24時間態勢で全航空機を対象とした発着回数の調査を始めたことが分かった。県は時間帯や機種別の飛行データを解析した上で、日米両政府へ訓練移転や運用停止などを求めていく際の具体的な根拠としたい考えだ。これまで普天間飛行場の運用実態の全容は明らかになっていない。県が普天間飛行場で実態調査に乗り出すのは初めて。」(政経部・大野亨恭)
②「現在、沖縄防衛局は普天間飛行場と嘉手納基地で午前6時から午後6時まで目視調査をしているが夜間を含め実態の全容は分かっていない。防衛局は普天間のオスプレイの離着陸回数のみ公表している。県は、深夜や早朝の離着陸情報を宜野湾市や市民からの情報に頼っているのが現状で、米軍の運用の問題点などを明確にするために実態を把握する必要があると判断した。機種ごとの時間帯別の飛行実態を把握することで、政府が約束した5年以内の運用停止などを求めたり訓練移転などを要請する際の具体的な提案の根拠とすることも検討している。訓練移転など国による負担軽減策の効果を検証する際の基礎データ収集の側面もある。」
③「調査は離着陸する航空機をとらえるため、飛行場の2カ所に高精細カメラを設置し、24時間態勢で録画。委託業者が発着時間や回数、機種などを分析する。2月1日から開始しており、当面3月31日まで実施する。4月以降継続するかは、3月までの調査結果を解析して検討するという。普天間飛行場の運用実態を巡っては、県議会でも県独自の調査で全容を把握するべきとの意見が上がっていた。」


(5)琉球新報-海と陸から抗議の声上げ 辺野古新基地建設 集会とデモに約400人-2017年2月18日 11:31


 琉球新報は、標題について次のように報じた。


①「米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、反対する市民らは18日午前9時すぎ、10隻の抗議船と22艇のカヌーで海上パレードを実施した。抗議船には約50人が分乗して乗船した。海上の様子が見える名護市瀬嵩の浜ではパレードに呼応して集会が開かれ、約300人が集まった。ゲート前でも工事車両を止めようと約40人が集まり、合計で400人近くが海と陸で抗議の声を上げた。」
②「沖縄防衛局は午前10時すぎから大型クレーン船で大型コンクリート製ブロックを海底に投下する作業を始めた。海上に移動した市民らは『ブロック投下ヤメロ』『美ら海を守れ』『オスプレイ墜落許さない』と書かれた横断幕を海上フェンスに次々と設置し、プラカードを掲げて抗議の声を上げた。ゴムボートに乗った海上保安官は臨時制限区域で市民の動きを警戒した。」
③「カヌー隊が『SAVE THE DUGONGS(ジュゴンを救おう)』というメッセージが書かれた大型の横断幕を掲げ、瀬嵩の浜で集会を行っている市民らにアピールし、海上と陸上の双方でシュプレヒコールを上げた。」
④「海上パレードに参加した日本共産党の山下芳生(よしき)党副委員長は、海上から集会に参加している市民らに向けてあいさつ。『沖縄県民と全国の連帯が日米両政府を追い詰める一番の力になる。新基地建設の強行を必ず打ち破ろう』と呼び掛けた。」
⑤「一方、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブでは18日午前10時すぎ、再生砕石などを載せたとみられる大型ダンプカーなど8台が工事車両用ゲートから基地内に入った。資材搬入を警戒し、ゲート前にも約40人の市民らが残ったが、県警の機動隊にごぼう抜きなどで排除された。」


(6)琉球新報-山城議長の即時釈放を 県選出6国会議員が声明-2017年2月18日 14:16


 琉球新報は、標題について次のように報じた。


①「照屋寛徳衆議院議員ら県選出6国会議員は18日午後、県庁で記者会見を開き、米軍北部訓練場のヘリパッド建設と名護市辺野古の新基地建設の抗議行動で威力業務妨害容疑などで逮捕・起訴され、約4カ月にわたり勾留されている沖縄平和運動センターの山城博治議長の即時釈放を求める声明を発表した。声明は照屋議員のほか、衆議院の仲里利信議員、赤嶺政賢議員、玉城デニー議員、参議院の糸数慶子議員、伊波洋一議員の連名。」
②「6議員は声明で『軽微な容疑にもかかわらず、存在しない【証拠隠滅や逃亡の恐れ】を口実に長期拘留と接見禁止が続けられていることは、辺野古および高江の闘いとウチナーンチュの平和と尊厳回復を求める非暴力の抵抗をつぶす目的の政治弾圧だ』と政府を批判した上で、裁判所に山城議長の即時釈放を求めた。」
③「弁護士として山城議長との接見を続けている照屋議員は『使い捨てカイロを差し入れようとして丸5日もかかるなど、異常で不当な長期拘留だ』と批判した。また山城議長が3月17日に内定している第1回公判に向け、健康管理を徹底している現状なども報告した。」





by asyagi-df-2014 | 2017-02-18 17:06 | 沖縄から | Comments(0)

沖縄から-三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記第65回

沖縄の地で、体を張って新しい歴史を作ろうとしている人たちがいる。
そこには、その煌めきの記録を残そうとしているジャーナリストがいる。
だとしたら、その生きざまの瞬間を私たちは受け取る必要がある。
三上知恵の沖縄撮影日記。

 
 今回の報告は、「ウタの呪力について~辺野古海上工事再開」。
 三上さんは、「言葉は呪力、ウタもまた然り。」、と。
 その力は「『やすぃんざ』(野心家・権力者ども)のたくらみを跳ね返す」ほどのものだと描き出す。


 言葉が現実を引き寄せる。まつりが予祝の言葉で溢れているのは、その力がれっきとして存在することをいにしえびとが体感していたからに他ならない。来る年の豊年を祝うことでまだ見ぬ未来の恵みが約束される。弥勒世(みるくゆー)がやってくる、とみんなの夢を見る力を唱和し、合わせて、束ねて天に響かせることで、強い力が豊穣を引き寄せてくるのだ。
 その力で「やすぃんざ」(野心家・権力者ども)のたくらみを跳ね返すこと、少なくともたった一人で歌っても相手をフリーズさせるくらいの力があることは、おととい、私が、ゲートの前でこの目で、見た。


三上さんは、「先週から、見たこともない巨大な海底ボーリング作業船『ポセイドン』が大浦湾にやってきて、辺野古の海は戦場の様相に逆戻りしてしまった。」、と切り出し、辺野古海上工事再開の様子を報告する。


 大きな台船2台には、コンクリートブロックが山のように乗せられている。埋め立ての土砂を投入する際には、汚れが海中に拡散して生態系を壊すため「汚濁防止幕」を水面から海底にかけて張っていく。埋め立て工事に伴う汚濁というのはそんな幕では防げないし、海が荒れればすぐに破れるような代物だ。水中でビリビリになって用を足さない様子を水中カメラで報道した経験があるから、なんとも空しい。しかし、工程上張らなくてはならず、海底に固定するために、これから数ヶ月間はおびただしい数のトンブロックが、毎日あの美しい海にじゃんじゃん投下されるのだ。


 また、「去年の3月に国と和解し、工事は止まっていた。なのになぜ、また海を殺す埋め立て作業が進められることになったのか。簡単に振り返ってみる。」、と次のように記す。


(1)2014年11月。保革を問わず、イデオロギーも今回だけは度外視して、沖縄県民は辺野古の基地建設に反対する意思を示そうと翁長知事を誕生させた。沖縄県政史上初のオール沖縄体勢で、圧倒的な支持を集めた知事の誕生。それは政府の方針と反するものではあるが、沖縄県民の生活と安全を守るためにそれしかないと言う局面で、県民が選択した結果である。これが民意の表れでなくてなんであろうか。さらにその直後の衆議院選挙でも、すべての選挙区で、辺野古の基地建設を容認する立場を主張していた自民党現職が議席を失う。重ねて示されたこの民意を受けて、翁長知事は辺野古の埋め立て許可を取り消した。
(2)日本にある米軍専用施設のおよそ74%を負担する沖縄県が、世界一危険と言われた普天間基地だけは返して欲しいと声を上げたとして、それは大それたことだろうか。普天間が消えても、基地負担はそのうちの1%も減りはしない。それなのに、さらに大きな軍港まで備えた新基地建設が、絶対の交換条件につけられるのはあんまりではないのか。これからも7割もの基地を沖縄は引き続き負って行くというのに。
(3)やみくもに「抑止力」という概念にすがりたい人々がこの国に大勢いて、思考を停止して、刻々と変化していくアメリカの戦略や海兵隊の役割や大国の思惑を学ぶことを怠って、「よくわからないけど、沖縄の負担を1ミリでも減らしたら自分たちは不安なのだ」と主張するなら、それは多数派のエゴと言うものだ。しかし、政府は「翁長知事が埋め立てを認めないのは違法だ」として知事を司法機関に訴え、昨年末、最高裁で勝ち、知事の手続きは無効化された。それによって、去年の末に辺野古の新基地建設工事は再開され、埋め立てに向けた海上工事も先週から始まった。辺野古の海上は海保の船、監視船、大小の作業船と抗議の船やカヌーチームも入り乱れて、またまた悲しい戦いの場に戻ってしまった。


 そして、三上さんは、今の辺野古の闘いを次のように報告する。


 ゲートの前では、この作業に必用な資材や重機や人員を少しでも搬入させないよう阻止行動が本格化した。先週から水曜、木曜に集中行動が展開されている。400人もいたら機動隊もごぼう抜きをあきらめてくれる。しかし人数が少ない日はあっけなく排除され、その都度ゲートが開けられてしまい、基地建設作業を止めることなどできない。それでも、1時間でも座り込みで遅らせることができたら、海の阻止行動は少しでも楽になる。この寒さの中、海に出て行く仲間たちのことを思えば、陸にいるのだからはいつくばって必死に抵抗し続けるしかない。ゲートに座り込む人たちは海にいる仲間の分、拘留されている仲間の分も頑張ろうと言う覚悟で座っている。


 さて、三上さんは、「言葉は呪力、ウタもまた然り。」の実際を次のように映し出す。


(1)おととい、その座り込みに始めて参加するという石垣島の女性と宮古島の男性の姿があった。女性は山里節子さん。私の新作ドキュメンタリー『標的の島 風かたか』の石垣編の大事な主人公の一人であり、自衛隊配備に反対するおばあたちのグループの中心的な存在だ。もう一人は、なんと1月にこの映画の先行上映を宮古島で見て、自衛隊配備問題に取り組む島のお母さんたちのグループ「てぃだぬふぁ」に速攻で参加したという男性。
(2)この砂川さんは宮古島で生まれ育ったミュージシャンで、1歳児のパパでもある。宮古島市議に当選した石嶺香織さんの選挙のときには、彼女と同じように乳飲み子を背中にくくりつけて、毎日選挙応援に駆けつけた。強力なてぃだぬふぁの「黒一点」となった。自衛隊容認の市長が3選を果たし、用地取得と工事着手が秒読みになった宮古島でも、座り込みの局面があるかもしれない。今回、繰り返し排除されても隣の人と強く手を握り、祈るような彼の表情から、その痛いほどの覚悟が伝わってきた。
(3)それは、石垣からやってきた節子さんも同じである。でも節子さんはごぼう抜き経験者だ。世界有数のアオサンゴ群落で知られる石垣市白保の海に新空港が建設されるというときに、白保の人々は長く激しい反対運動を展開した。節子さんはその中にいた。権力者どもが庶民のささやかな生活を潰し、野心家どもが先祖の土地を売り渡す。彼らの手に委ねていたら島の生活は奪われ、戦争への道がまた開かれる。その構図は常に仕掛けられてくるのだということを身に染みて知っているからこそ、覚悟を持って辺野古高江を見つめてきた女性だ。
(4)しかし彼女には、ほかの島の人が持たない大きな武器がひとつある。胸に溢れる思いや信念や覚悟や怒りをエネルギーに代えて外に発散し、人の心を射抜く力さえ持つ、歌の力を身につけていることだ。それは八重山地方の宝である「とぅばらーま」という歌のことだ。今度の新作映画の中で、ロケ中に彼女が突如歌いだすシーンがある。私は石垣の言葉だから半分しかわからなかったが、胸骨の辺りから涙がせり上がってくるのを押さえられなかった。歌にこんな力があるのか、と圧倒された瞬間だった。
(5)うまいから聞かせる、楽しむために歌う、そのどちらでもなく、場を盛り上げるとか心をひとつにするとかでもなく、相手がひるむような歌の威力というのがあるのだということは、奄美の歌の研究で知ってはいた。テレビもラジオもない時代、夕食後の楽しみはもっぱら歌であった時代、他島(たしま=別の集落)まで出かけていって歌で交流するのが最大の娯楽なのだが、中には、歌勝負が昂じて相手を威圧し、エネルギーを奪ったり、歓迎されないことではあるが、相手を呪うような手法もあったという。まさに精神文化の深淵に漂う言葉やウタの持つエネルギーと言うのは、底なしの宇宙をもっていたのだと思う。研究報告書でしか知らなかったそんな力の一端を、節子さんの歌に感じたのは、彼女と自衛隊配備予定地に立った去年の今頃のことだった。
(6)その節子さんが一年経って、辺野古の闘争現場にいる。なんとも不思議な日だった。動画で紹介しているが、彼女が不当な長期拘留が続いている博治さんのことや石垣の状況をとぅばらーまの形で披露したとき、道の向こうに座っていた文子おばあがひときわ大きな拍手をし、合いの手を入れていた。節子さんの歌がたいそう気に入ったようだった。夕方、文子さんの家を訪ねたときにおばあは言った。
 「石垣の方、節子さんね? あの歌は本物だよ。あれはすごかった。だれがもできるものではない」
 とぅばらーまは八重山地方の歌で、沖縄本島の民謡とはかなり趣も違っているので、プロであっても八重山の人でなければ、とぅばらーまだけは敬遠する人が多い。だからわたしは、「おばあすごいね、八重山のとぅばらーまもわかるんだ」といったら拳を振り上げるフリをしながら怒られた。
 「あんたは、誰に物を言ってるの。とぅばらーまを知らないはずないでしょ! 私はあの人が言うのは全部わかったよ!」
 文子おばあは無類の歌好きである。小学校にも通えず27才まで字が書けなかったと言うが、古い歌の歌詞を今でもたくさん覚えていらっしゃる。記憶力は抜群にいいのだ。若いときから即興で歌を掛け合う「歌掛け」の世界で楽しんできた粋な人で、夫の三線で夜な夜な夫婦で歌遊びをしていたことがとても幸せな記憶としてあるようだ。彼女と1日一緒にいると、うちなーぐちの歌のフレーズやことわざが必ず一つ二つ出てくる。どういう意味?と聞くと、毎回丁寧に教えてくれる。それは、言葉を習うだけでなく、美学や哲学を習うに等しく、去り行く世代から未来へのとても豊かな贈り物である。ちゃんと落ち着いて筆記で残したいといつも思うが、私の民俗学者としての仕事はこのところずっと中途半端なままだ。
(7)節子さんはゲート前で、即興の歌を披露した。私に訳させてもらえばこうなる。
(拘留が続くリーダーの)山城博治さん
彼が体現しているのは沖縄の真心である
彼を罪びとに仕立て上げ 捕えるなんて
私は絶対に許すことができない
天の神さまも お許しにはならないでしょう
(8)この日、2回目のトラックの列がやってきた。排除が続いている横で、文子おばあは堂々と道の真ん中に歩み出て、先頭のトラックの前に立ちはだかった。沖縄県警が「道路交通法違反ですよ」とたしなめると「そうだよねえ。あの車。あれはどうなの。あんたたちの車は交通違反だよね!」と切り返し、その場を動かなかった。トラックの運転手に向かって同じ沖縄の人間でしょう。同じ沖縄の人間なのに! とつぶやいた。節子さんは文子さんより8歳年下で、心配そうにそっと傍に寄り添っていたが、歩道のほうに排除されていった。その時に、また節子さんの歌が私の耳に届いた。
 「あなたはなんなの? メディアなの? 歩道から撮って!」
 その瞬間、私も警察に押され、大型トラックの列は動かないおばあたちを迂回して、イラついたように私の目の前をビュンビュン飛ばしてゲートに吸い込まれていった。その間、節子さんは歌い続けていたのに、轟音でうまく撮れなかった。悔しい。でも、周りの警察官は歌い始めた節子さんを歩道まで押していくことはできなかった。さっきまでのように触れられなかったのだ。彼女の叫ぶ歌が、相手をフリーズさせていた。
 後で聞いたら、文子おばあと隣にいた辺野古に住む当山佐代子さんが、沖縄の言葉で「同じ沖縄の血が流れているのではないのか?」といった表現をその場で聞き取り、即興で歌にしたそうだ。撮りたかった。歌が生まれる瞬間を近くで撮影して、みんなに紹介するのが私の役目なのに、悔しい。
(9)唄島・石垣島。芸達者揃いのこの島の持つ力を、単純に歌詞を見てカラオケで歌うような現代人のやせた感覚で捕えては見誤るだろう。言葉は呪力。ウタもまた然り。


 三上さんのこうした報告を文章で書き写してはいるが、常にこちらの力不足を感じる。
 でみ、やはり、受け取ったものは、文章で起こしてみる。


 権力者どもが庶民のささやかな生活を潰し、野心家どもが先祖の土地を売り渡す。彼らの手に委ねていたら島の生活は奪われ、戦争への道がまた開かれる。その構図は常に仕掛けられてくるのだ。





by asyagi-df-2014 | 2017-02-18 08:34 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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