2017年 01月 08日 ( 1 )

2017年1月1日、社説・論説を読む。(4)-世界情勢、日本の状況から-

 2017年が明けた。
 さて、どのような事態にどのように立ち向かうことになるのか。
まずは、窮乏化する同じ大地に立つこと。
そして、反撃の術を見極めること。
各紙の2017年1月1日の社説及び論説を読む。


 各紙の世界の情勢や日本の状況分析から、2017を考える。
 ここでは、高知新聞、京都新聞、河北新報、北海道新聞、毎日新聞、読売新聞の社説等を読む。
高知新聞は「【新年に・世界】協調し混迷抜け出せるか」、京都新聞は「新年を迎えて  分断克服し共存への対話を」、河北新報は「ポピュリズムの時代/格差と分断 克服へ一歩を」、北海道新聞は「あすへの指針 分断を修復する努力こそ」、毎日新聞は「歴史の転機 日本の針路は 世界とつながってこそ」、読売新聞は「反グローバリズムの拡大防げ」、と見出しを掲げてそれぞれが主張を展開した。
 実は、京都新聞は巻頭で、「『日本の没落』を意識するときがある。少子高齢化が進み、人口は減少に転じている。米国を追い上げた経済力は中国に抜かれ、低成長が続く。所得は伸び悩み、格差拡大で相対的貧困率は16%に達する。公的債務は1千兆円を超える一方、医療・福祉費は膨らみ続け、年金も目減りする。こうした現実は、旧式の言い方を借りれば『国力の衰退』を表している。それを痛感しているのは他ならぬ安倍晋三首相だろう。」、と指摘する。
 この表現は、2017を言いかなり当てているではないか。だが、むしろ、現状は、「国力の衰退」と言うよりも、人間の尊厳を奪う社会状況に陥っていると言い換えた方がより相応しい。
 各紙の論調は次のとおりである。


Ⅰ.問題点の指摘


(高知新聞)
(1)昨年、世界を驚かせたのは英米両国民の選択だ。英国では6月の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱派が多数を占め、11月の米大統領選では予想を覆して政治、行政経験のない実業家の共和党トランプ氏が勝利した。
(2)「ショック」と形容してよい出来事の背景は、むろん単純ではないだろう。ただし、欧米などで頻発するテロ、シリア内戦などによる難民や移民の急増、グローバル化に伴う格差の拡大などに対する人々の不安や不満が噴き出たのは間違いない。
(3)その矛先は政治家をはじめとするエスタブリッシュメント(既存の支配層)に向けられた。「米国第一」が象徴する保護主義や排外主義的な政策を前面に出し、不安や怒りをすくい取ったトランプ氏の手法は、ポピュリズム(大衆迎合政治)というほかない。
(4)英国民の選択も反EUや反移民から生まれたが、その流れは欧州全体に広がっている。今春にフランス大統領選、秋にはドイツ連邦議会(下院)選と、欧州統合を率いてきた両国などで大型国政選挙が相次ぐ。ポピュリズム的手法の政党や政治家がさらに勢いを増せば、EUの結束は危機にひんしかねない。
(5)トランプ氏は1月20日に大統領に就任する。選挙中の過激な主張は一部で修正が始まっているとはいえ、政策としてどう具体化されるかはまだ不透明だ。内政、外交ともにオバマ政権時と様変わりするのは避けられないだろう。
(6)国際社会は数多くの難題に直面している。過激派組織「イスラム国」(IS)などによるテロ、その温床といえるシリアの内戦、膨れ上がる難民や移民への対応、北朝鮮の核開発など、どれもが国際協調なしには解決が難しい。
(7)要となる国連安全保障理事会は米国とロシア、中国の対立によって、長く機能不全に陥ってきた。内向きが強まるとみられるトランプ政権の外交次第で、米ロや米中の関係が悪化し、世界は混迷の度合いがより深まる恐れさえある。
(8)その国連では今月、グテレス事務総長(元ポルトガル首相)の下で新しい体制がスタートする。混迷から抜け出すために、国際協調を構築できるか否か、新総長のリーダーシップが問われることになる。


(京都新聞)
(1)「日本の没落」を意識するときがある。少子高齢化が進み、人口は減少に転じている。米国を追い上げた経済力は中国に抜かれ、低成長が続く。所得は伸び悩み、格差拡大で相対的貧困率は16%に達する。公的債務は1千兆円を超える一方、医療・福祉費は膨らみ続け、年金も目減りする。
 こうした現実は、旧式の言い方を借りれば「国力の衰退」を表している。それを痛感しているのは他ならぬ安倍晋三首相だろう。
 「日本を取り戻す」(2012年衆院選)、「私たちの自信と日本の誇りを取り戻そう」(13年参院選)、「強い経済を取り戻せ」(14年衆院選)、「誇りある日本を取り戻す」(16年参院選)。
 主な選挙のたびに繰り返される「~を取り戻そう」という首相のメッセージからは、日本の現状に対するいらだちと、過去の繁栄への郷愁が読み取れる。
(2)かつて欧州諸国も自信を失い、没落の不安に覆われた時代があった。人類史上未曽有の惨禍をもたらした第1次世界大戦が終わった後のことだ。
(3)当時、スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットは著書で、野蛮な大衆社会では「みんなと違う人、みんなと同じように考えない人は排除される」とし、没落の不安を背景に反知性主義に陥った大衆の反逆(蜂起)が危険な急進主義を招くと論じた。警告どおり、欧州はやがて非人間的なファシズムに踏みにじられることになる。
(4)この両大戦間の欧州の空気はどこか現代に似ていないだろうか。


(河北新報)
(1)米国の経済学者ジョン・ガルブレイス氏(1908~2006年)が、著書『不確実性の時代』を世に問うたのは1977年のことだった。
 歴史的な視点から世界経済を分析しながら、もはや人々の判断力の支えとなるような「哲学」が存在し得ない時代に入ったことを解き明かした。
 「人類が現に直面している諸問題の驚くべき複雑さを考えるなら、前世紀の確実性が残っていると考える方が、かえっておかしいくらいである」
 出版から今年でちょうど40年。ガルブレイス氏が指摘した不確実性の流れは加速を続け、今や国際社会は「カオス」(混沌(こんとん))のまっただ中にあると言っても過言ではあるまい。
(2)その渦をかき回すのが「ポピュリズム」(大衆迎合主義)である。昨年起きた象徴的な出来事は世界に衝撃を与えた。
 英国は国民投票の結果、欧州連合(EU)からの離脱を決めた。米大統領選では当初、泡沫(ほうまつ)候補扱いされていたドナルド・トランプ氏が本命のヒラリー・クリントン氏を打ち破った。
 今年は欧州で重要な国政選挙が相次いで予定されており、台頭する排斥主義のポピュリスト政党から目が離せない。
 単純明快な論理を振りかざすリーダー、排他・排外主義の主張、群衆の情念に訴える政治手法…。いやが応でも、この手ごわい「怪物」と向き合わなければならない時代を迎えた。
 地殻変動を起こした要因は何なのか。経済のグローバル化の反動だろう。


(北海道新聞)
 英国のEU離脱とトランプ氏当選で目の当たりにしたのは、社会が分断されている現実だ。経済のグローバル化がもたらした格差が国民の間に深い溝を生んでいる。
 たとえば英国だ。欧州の金融センターとしてヒト、カネ、モノが国境を越えて自由に動くグローバル化の恩恵を享受していると見られていた。だが、実際は違った。
 「多文化主義」というEUの基本理念の下、流入する移民や難民に自分たちの仕事を奪われるとの危機感が足元で高まっていた。それを指導層が見誤り、国民投票が不満や怒りのはけ口になった。
 政治経験ゼロのトランプ氏を米大統領に押し上げたのも、工場が海外に移転し職や収入を失った白人層だ。グローバル化の「痛み」に手を打ってこなかった既存のワシントン政治への反乱と映る。


(毎日新聞)
(1)私たちは歴史の曲がり角に立っている。明日の世界は、昨日までとは異なっているかもしれない。そんな思いにとらわれる新年だ。
(2)理念よりも損得というトランプ氏がいよいよ米大統領に就任する。時代の変化は周辺部で始まり、想像を超えて中心部に及ぶことがある。1989年11月にベルリンの壁が壊された時、どれだけの人が2年後のソ連崩壊を予測できたろう。今回は初めから国際秩序の中枢が舞台だ。冷戦の終結に匹敵する大波が生まれても不思議ではない。
(3)トランプ氏の勝利と、それに先立つ英国の欧州連合(EU)離脱決定は、ヒトやカネの自由な行き来に対する大衆の逆襲だ。グローバルな資本の論理と、民主主義の衝突と言い換えることもできるだろう。
(4)フランスの経済学者ジャック・アタリ氏は「21世紀の歴史」(2006年)で、歴史を動かしてきたのはマネーの威力だと指摘した。その法則を21世紀に当てはめると、地球規模で広がる資本主義の力は、国境で区切られた国家主権を上回るようになり、やがては米国ですら世界の管理から手を引く。その先に出現するのは市場中心で民主主義が不在の「超帝国」だと説いた。
(5)先進国を潤すはずのグローバル経済が、ある時点から先進国を脅かし始める。各国から政策の選択肢を奪い、国内の雇用を傷める。ここまではアタリ氏の見立て通りだが、私たちが昨年目撃したのは国家の「偉大なる復権」をあおり立てるポピュリズム政治家の台頭だ。しかも彼らの主張は、国際協調の放棄や排外的ナショナリズムといった「毒素」を含んでいた。欧州の極右勢力も勢いづいている。
(6)軍事力、経済力ともに抜きんでた米国がこうした潮流をけん引する影響は計り知れない。国際秩序は流動化し、国際経済は収縮に向かう。


(読売新聞)
(1)「反グローバリズム」の波が世界でうねりを増し、排他的な主張で大衆を扇動するポピュリズムが広がっている。国際社会は、結束を強め、分断の危機を乗り越えなければならない。
(2)保護主義を唱え、「米国第一」を掲げるドナルド・トランプ氏が20日に米大統領に就任する。力による独善的な行動を強めるロシアや中国に、トランプ氏はどう対応するのか。既存の国際秩序の維持よりも、自国の利益を追求する「取引」に重きをおくのであれば、心配だ。米国が、自由や民主主義といった普遍的な価値観で世界をリードする役を降りれば、その空白を埋める存在は見当たらない。
(3)市民のテロへの恐怖心をも利用して、難民や移民を拒否すれば安全や生活の安定が保てるかのように唱える。排外主義を煽あおるポピュリズムの拡大は、人や物の自由な移動を進めるグローバリズムの最大の障壁になりつつある。
(4)米欧で反グローバリズムやポピュリズムが伸長する背景には、リーマン・ショックを契機とした世界的な経済成長の停滞がある。自由貿易の拡大は、各国に産業構造の変化をもたらした。国際競争力の低い産業は衰え、生産や雇用が国外に流出する。高成長が確保されている間は、他の産業が雇用を吸収するなどしてしのげる。だが、成長が滞るとそれも難しくなる。自分たちはグローバル化の犠牲になったと感じる人々が増えた。移民や難民に職を奪われることへの危機感も相まって、排外主義や保護主義に同調している。


Ⅱ.主張


(高知新聞)
(1)重要な鍵の一つは、欧米で勢いを増す排外主義的な動きに歯止めをかけられるかどうか、ではないか。ポピュリズムが潜在的に持っている危険性を自覚しながら、他者に対する寛容さという普遍的な精神を取り戻す必要がある。
(2)ことしも激動の年になることは避けられそうにないが、世界が少しでもよい方向に進んでほしい、と誰もが願っているだろう。その歯車を回すのは国籍や人種、民族が異なっても地球市民の一人一人だ。


(京都新聞)
(1)いま私たちがとるべき態度は、自分にとって心地よい情報や意見を選び、信じることではない。ありのままの現実と向き合い、異論に謙虚に耳を傾け、自分の頭で考えることだ。今年は憲法施行70年、日中戦争80年、ロシア革命100年…と、歴史的な節目がいくつも控えている。こうした機会に過去を見つめ直し、「市民」の精神で日本の未来像を描いていきたい。
(2)そのために鍵となる課題が二つある。ひとつは憲法と戦後社会をどう評価するかである。「戦後レジームからの脱却」を目指す安倍首相はこれまで、愛国心を強調する教育改革を進める一方、表現の自由を制約しかねない特定秘密保護法を制定し、安全保障法制で違憲が疑われる集団的自衛権を解禁してきた。一連の流れが現行憲法の理念に必ずしもそぐわないのは明らかだろう。
(3)国会で改憲論議の本格化が見込まれるが、世論調査では国民の過半数が9条改正に反対している。日本らしい国際貢献のあり方とともに、戦後の平和と繁栄に果たした憲法の役割を改めて考えたい。
(4)もうひとつは、戦後70年余を経てなお関係国との和解を阻んでいる歴史認識ギャップである。北方領土を巡るロシアとの交渉や安倍首相の米ハワイ真珠湾訪問を振り返れば、先の戦争に対する日本の立ち位置の特殊性が際立つ。歴代政権は「痛切な反省と心からのおわび」を繰り返し表明してきたが、安倍首相ら多くの議員が「侵略戦争ではなかった」とする議員連盟に加わっていては不信を払拭できまい。戦没者追悼は当然としても、幅広い国々と和解を進めたいのなら相当の覚悟が要る。
(5)哲学者の内田樹・京都精華大客員教授によると、オルテガは対話を通じて「理解も共感も絶した他者と、それでもなお共存してゆく能力」が分断を克服する基礎だとした。まさに現代に生きる私たちに必要な力であり、「没落」への処方箋ではないだろうか。


(河北新報)
(1)一握りの人々に巨万の富がもたらされる一方、取り残された者との格差は広がっていく。雇用や生活の不安を背景に、移民や難民に対する排除が声高に叫ばれ、批判の矛先はエリートの支配層に向けられた。
 現代では国境を越えた経済活動は不可避であって、孤立主義は成り立たない。しかし、各国の指導者は的確な「羅針盤」を持たないまま、グローバル化の荒海で漂流を続けているのが実態ではないか。日本もまた例外ではなかろう。
(2)「アベノミクス」の恩恵は地方に滴り落ちておらず、富裕層と貧困層の二極分化に拍車がかかる。非正規労働者の増大、高齢者、子どもの貧困が社会問題化している。このままでは社会の土台が揺るぎかねない。
(3)ナショナリズムをてこに、排外主義が付け入る下地は十分にある。実際、特定の民族などへのヘイトスピーチ(憎悪表現)の対策法までつくられた。不確実性の中にあって、確かなものは何か。それは「自分」という存在だろう。自ら何をなすべきか、が問われる時だ。
(4)国家に自らの利益と自由を求めるだけでは、問題は解決しない。一人一人がそれぞれの立場で格差と分断を乗り越え、連帯、共存に向けた新たな一歩を踏み出すことが求められる。
(5)「ポピュリズムはデモクラシーの後を影のようについてくる」。こんな言葉がある。今年は総選挙があるやも知れぬ。ポピュリズムの「正体」を見破る目も養わなければならない。


(北海道新聞)
(1)新自由主義が色濃いグローバル経済は競争原理むき出しで、「勝ち組」「負け組」を生みやすい。放置すればさまざまな場面で摩擦を起こし、はざまで多様性を認める寛容さが失われていく。本来、二極化した層の接点を探るのは政治の役割だ。しかし不平や不満が強いと、それをあおって独り善がりな政策を推し進めようとするポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭する。厄介なのは、ポピュリズムが排外的なナショナリズムと容易に重なり合うことだ。英米両国の投票結果が実証している。
 押し寄せる難民へのいら立ちやテロへの恐怖から、欧州で極右勢力が伸長するのもそのためだ。米国と欧州に内向きのベクトルが働くと、不戦の誓いから出発した国際協調の流れを掘り崩しかねない。そうなれば、ロシアや中国が覇権主義の姿勢を強めるばかりか、中東情勢もより混迷しよう。
(2)格差と分断は日本でも深刻だ。
(3)安倍晋三政権は「1億総活躍社会」を掲げる。しかし、成長ばかり追求するアベノミクスで、待遇が不安定な非正規が増え続け、6人に1人が貧困に直面している。そうした格差を埋めるはずの社会保障は上向かない景気や少子高齢化によって劣化が著しい。雇用や所得再配分のあり方を含め、見直しを急がねばならない。にもかかわらず、安倍政権はグローバル化を加速させる環太平洋連携協定(TPP)に固執する。成長を生み出すためと、ごり押ししたカジノ解禁も拝金主義を助長しかねない。逆行してないか。
(4)先の見えない閉塞(へいそく)感の矛先は、身内の弱者へ向かう。
 「土人」。沖縄の米軍ヘリパッド予定地で、建設を阻止しようとした反対派に向かって、警官が耳を疑うような言葉を浴びせた。怒号飛び交う場面とはいえ、国民を守るはずの権力側の物言いに不穏な兆候を感じざるを得ない。
(5)仮に成長しても、亀裂ある社会は健全ではない。IT(情報技術)の進歩などでグローバル化は止められないにしろ、弱肉強食型の経済構造は改めねばならない。
(6)同時に考えたいのは、社会の分断を修復する手だてである。
(7)「グローカル」という言葉がある。グローバルとローカルを掛け合わせた造語である。世界規模の視点で考え、地域で活動することを意味する企業戦略だ。この用語に新たな発想を吹き込みたい。グローバル化で生まれた格差・分断をローカル的な包摂で是正する―。そんな努力である。顔の見える地域社会は「競争」よりも「共生」を優先する。身近で雇用環境を整え、福祉の拡充も目指したい。そのためには国の権限や財源、そして人材を地方に大幅に移すのが欠かせない。
(8)地方に力がつけば新たな試みが出てこよう。移民受け入れを検討してもいい。1次産業を核とした地産地消システムも構築したい。鉄路存続が危ぶまれ、疲弊する道内も活路が開けるはずだ。


(毎日新聞)
(1)日本はこの転換期にどう立ち向かえばいいのだろうか。
(2)後72年、米国の動向を最大の指標としてきた日本である。その土台が揺さぶられるのは間違いない。特に外交・安全保障政策は試練に直面する。トランプ政権が日米同盟をその都度の取引と考えた場合、中国の海洋進出や北朝鮮の脅威に対抗していくのは難しくなる。
(3)しかし、ここでうろたえずに自らの立ち位置を再認識することが肝要だ。それは、他国との平和的な結びつきこそが日本の生命線であるという大原則にほかならない。米国が揺らぐなら、開かれた国際秩序のもたらす利益の大きさを、日本自身の行動で説くべきだろう。自由貿易を軸とした通商政策やグローバル企業への課税のあり方、地球温暖化の防止対策なども、多国間の協調なしには進められない。グローバル化がもたらす負の課題は、グローバルな取り組みでしか解決し得なくなっているのだ。日本は率先してその認識を広めたい。ただし、戦略的に国際協調の路線を歩むには、足元の安定が欠かせない。日本の弱点がここにある。
(4)日本の少子化、その下での社会保障政策、借金頼みの財政、日銀の異次元緩和というサイクルが長続きしないのは明らかだ。破綻すれば国際協調どころではなくなる。さらに日本がグローバリズムと共存していくには、国民の中間的な所得層をこれ以上細らせないことが最低限の条件になる。民主主義の質に深くかかわるからだ。
(5)民主主義は社会の意思を決めるためにある。多様な意見を持つ個々人が多数決の結論を受け入れるには、社会の構成員として何らかの一体感を持っていなければならない。ところが、所得分布が貧富の両極に分かれていくと、この一体感が損なわれる。トランプ現象で見られたように、選挙が一時の鬱憤(うっぷん)晴らしになれば、民主主義そのものの持続可能性が怪しくなっていく。
 人類は豊かさへの渇望とテクノロジーの開発によってグローバル化を進めてきた。その最先端にいた米国と英国が逆回転を始めたのは歴史の大いなる皮肉だ。この先に何が待っているのか、まだ誰も知らない。
(6)日本にとっては手探りの船出になるだろう。ただ、ささくれだった欧米の政情と比べれば、日本社会はまだ穏健さを保っている。持続が可能な国内システムの再構築に努めながら、臆することなく、世界とのつながりを求めよう。何かが見えてくるのはそれからだ。


(読売新聞)
(1)各国が内向き志向を強め、利害対立が激しさを増す。そんな潮流に歯止めをかける必要がある。激変する国際環境の中で、日本は、地域の安定と自国の安全を確保していかねばならない。日米同盟の重要性をトランプ氏と再確認し、さらに強化する道筋をつけるべきだ。
(2)日本は、尖閣諸島周辺などで中国の膨張圧力に直面している。ロシアとの間では北方領土交渉を抱える。トランプ外交の行方にとりわけ目を凝らさざるを得ない。オバマ米大統領は、尖閣諸島が、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であると明言していた。トランプ氏がその立場の継承を確認するかどうかは、日本の安全確保に大きな意味を持つ。
 トランプ氏は、在日米軍経費の負担増に言及したが、日本は同経費の75%を負担している。負担額は米同盟国の中で突出して多い。集団的自衛権の限定行使を可能にした安全保障関連法で、米軍への協力体制も強化された。
 日米同盟による抑止力の強化が、東アジア地域の安定に不可欠で、米国の国益にも適かなうことを、粘り強く説明していくべきだ。
(3)保護主義を強めれば、雇用や生産が復活し、自国民の生活が楽になると考えるのは、短絡的だ。自国市場を高関税で守れば、消費者は割高な商品の購入を強いられる。他国が対抗策をとれば、輸出産業も打撃を受ける。
 経済資源を、国境を越えて効率的に活用するのが自由貿易だ。多国間での取り組みをさらに進め、新興国の活力や技術革新の成果を世界に広げることで、成長の復活を目指すしかない。それが国際政治の安定の基盤ともなろう。


 世界の2017を考える時、大きな問題点の一つは、「ポピュリズムはデモクラシーの後を影のようについてくる」と言われるポピュリズム(大衆迎合政治)に、世界がどのように対応していくのかということだ。
また、「格差」の問題をどのように克服するか、ということが問われる。
 いずれにしろ、「ここでうろたえずに自らの立ち位置を再認識することが肝要だ。それは、他国との平和的な結びつきこそが日本の生命線であるという大原則にほかならない。」(毎日新聞)、との立ち位置の指摘は重い。
また、 河北新報の「一握りの人々に巨万の富がもたらされる一方、取り残された者との格差は広がっていく。雇用や生活の不安を背景に、移民や難民に対する排除が声高に叫ばれ、批判の矛先はエリートの支配層に向けられた。現代では国境を越えた経済活動は不可避であって、孤立主義は成り立たない。しかし、各国の指導者は的確な『羅針盤』を持たないまま、グローバル化の荒海で漂流を続けているのが実態ではないか。日本もまた例外ではなかろう。」、との提起は、重要な問題の指摘である。
 さて、河北新報はジョン・ガルブレイスを取りあげ、読売新聞は「反グローバリズムの拡大防げ」と掲げた。これまた、新自由主義政策やグローバリゼーションについて、2017の大きな検証課題である。
 最後に、読売は「日米同盟による抑止力の強化が、東アジア地域の安定に不可欠で、米国の国益にも適かなうことを、粘り強く説明していくべきだ。」、と説く。この問題については、構造的沖縄差別の解消を含め、大きな克服課題となる。


by asyagi-df-2014 | 2017-01-08 08:43 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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