2016年 07月 05日 ( 1 )

原発問題-高知新聞の【迫る伊方再稼働】を読む。

 高知新聞は、2016年6月27日から5日間連続で、「迫る伊方再稼働」として、下記内容で特集を組んだ。


(1)【迫る伊方再稼働】(1)戸別訪問で「本音」聞けたか
(2)【迫る伊方再稼働】(2)「揺れ」への評価に「想定外」ないか
(3)【迫る伊方再稼働】(3)避難計画「本当に逃げられるか?」
(4)【迫る伊方再稼働】(4)資産と会計 「特別な配慮」透明化を
(5)【迫る伊方再稼働】(5=終)司法判断 運転差し止め訴訟相次ぐ


 この特集を読む。
 まずは、要約する。


(1)【迫る伊方再稼働】(1)戸別訪問で「本音」聞けたか
Ⅰ.事実
①「四国電力は1988年から、伊方原発(愛媛県伊方町)周辺の住民宅を対象に「戸別訪問」を続けている。2016年は5月11日から1カ月間。延べ約1400人の社員が四国4県から加わった。」
②「一連の戸別訪問を四国電力は『訪問対話活動』と呼び、『他の電力会社にはない地元を大事にする取り組み』(笹谷誠志・広報部副部長)と位置付ける。戸別訪問が始まったのは、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故から2年後で、伊方原発でも不安が高まっていた。『訪問対話』の狙いは地元の声を聞き、理解を求め、原発事業をスムーズに進めることにある。」
③「2011年に東京電力福島第1原発がチェルノブイリと同じ『レベル7』の事故を起こすと、2011年から訪問の範囲を広げ、伊方原発から20キロ圏内の住民全てを対象にした。同時に、それまでは非公開だった訪問結果の公表を始めた。」
④「四国電力によると、2015年は約2万8千戸を訪問し、在宅率は52%。原発の印象は『厳しい』が7%、『一定の理解』が65%だったという。」
Ⅱ.疑問
①「戸別訪問の結果に住民の本音は表れているのか。」
②「松山市の『伊方原発50キロ圏内住民有志の会』は2015年2~11月、伊方町に絞って全集落を歩き、3号機再稼働の賛否を直接尋ねた。訪問先は計3591戸。メンバーの藤原丸子さん(68)=八幡浜市=によると、回答1427戸のうち、『反対』は53・2%。『賛成』の2倍になった。藤原さんは伊方町で生まれ、父、弟とも四国電力社員だったという。『【大っぴらには言えんけど怖い】と話す人が多かった。仕事の関係で再稼働に賛成の人も、不安を抱えていました』」
Ⅲ.問い掛け
①「3号機の再稼働手続きで必要とされた『地元同意』は、伊方町と愛媛県だけだった。四国電力の戸別訪問先の6割近くを占める八幡浜市も含まれていない。『地元住民』は果たして、本当に納得しているのか。」
②「戸別訪問について笹谷副部長はこう話す。『おおむね再稼働に理解をいただきました。しかし訪問結果が原子力事業に直接影響を与えるわけではありません。対話が大事なんです』」


(2)【迫る伊方再稼働】(2)「揺れ」への評価に「想定外」ないか
Ⅰ.事実
①「高知大学理学部の松岡裕美准教授(地質学)によると、大地震は過去7千年で少なくとも5回あった。直近は1596年の慶長豊後地震で、震源は別府湾。マグニチュードなどは不明だが、別府湾沿岸は大津波で壊滅的な被害を受けたことが分かっている。数日間のうちに京都などでも大地震が発生したという。」
②「西日本を東西に横断するこの活断層は、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)北側の海域を走る。距離は6~8キロ。地質学上では「活断層の真上」とも言える立地が、再稼働を巡る不安の根底にある。」
④「原子力規制委員会の審査に対し、四国電力は『中央構造線による地震が最も大きな影響を与える』とした。その上で、安全設計の基礎をなす基準地震動について『最大650ガル』と設定した。」
⑤「揺れの『想定外』はこれまで、日本の原発で何度か起きている。2011年の東日本大震災では、東北電力女川原発(宮城県)で基準地震動580ガルを上回る636ガルの揺れを観測した。2007年の新潟県中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原発の揺れが最大1699ガル。想定の4倍近くにもなった。
Ⅱ.疑問
①「女川原発は伊方原発と同じく固い地盤の上にあります。東日本大震災後、女川の基準地震動は千ガルに引き上げた。女川と震源までの距離は約50キロ。それなのに(中央構造線間近の)伊方は650ガル。それでいいのか、と」(松岡准教授)
②「3号機稼働の1994年当時、基準地震動(473ガル)は『中央構造線は活断層ではない』との前提でした。それを基に造った原発を補強しても、ぼろ屋につっかえ棒をするようなものです」(岡村真特任教授)
③「『滑り量』と呼ばれる断層の『ずれ』に関する想定にも疑問が残る。中央構造線は東西に長い。四国電力は、長さ480キロが連動して動いた場合を想定。伊方原発前の海域下では、断層の平均滑り量を2・6~5・8メートルと算出した。これに対しても松岡准教授は『過小評価ではないか』と言う。『長さ480キロで平均滑り量2・6メートル』などとする四国電力の算定は、国内研究者の論文が基になっている。一方、同じ論文で長さ54キロの地震の場合、平均滑り量を2・5メートルとした。断層の動く長さが約9倍になっても『ずれ』の差がほとんどない。」
④「『断層が長くなると滑り量も大きくなるはず。だから【480キロで2・6メートル】は明らかにおかしい。その論文に基づけば、伊方原発付近の平均滑り量は最低でも3メートルほどになります】」(松岡准教授)
⑤「中央構造線で地震が起きた場合、伊方原発は安全なのか。」


(3)【迫る伊方再稼働】(3)避難計画「本当に逃げられるか?」


Ⅰ.「原子力総合防災訓練」を受けた住民と自治体職員の声
①「緊張感? なかったですよ。いつも同じ内容ですから」
②「事故が起これば、あんなにスムーズにできないよ」
③「避難計画は現実的じゃない」
④「半島先端の三崎港からフェリーで避難するなんて、実際はあり得ん。台風やしけの時は船が岸壁に着けん。津波が来たらなおさら無理」
⑤「この避難路、地震が来て使える? 土砂崩れもある。ここは孤立するよ。急傾斜が多い。ヘリが降りる所もない。フェリー乗り場まで行けん。大半が避難を諦めとる」
⑥「一本道。あれがつえたら、どこにも逃げれん」
⑦「高齢者が多く、避難の時間が読めない。移動手段のない人は梼原町がピックアップすることになっているけど、現実的じゃない。そもそも国や高知県からすぐに情報が入ってくるかどうか。情報がなければ、計画を作った意味がありません」(梼原町総務課係長)
Ⅱ.疑問
「原発に異常があると、四国電力は高知県にメールや電話で通報し、情報はその後、『県→市町村→住民』の順で流れる。より重大な過酷事故の場合は、原子力災害対策特別措置法に基づいて首相が『原子力緊急事態宣言』を出し、政府が司令塔になる。しかし、福島の事故では、政府や東京電力が大混乱に陥り、情報伝達が遅れ、住民の避難も遅れた。その記憶は新しい。」


(4)【迫る伊方再稼働】(4)資産と会計 「特別な配慮」透明化を


Ⅰ.事実
①「全国50基の原発を2012年度に廃炉にすると決めた場合、電力会社10社で総額4兆4千億円の損失が出る」
②「『短期的に燃料費だけをみれば発電コストは安い。一方で建設費は大きいので、投資が終わっている以上は使わないと大損してしまう』(立命館大学の大島堅一教授)」
③「2015年3月期の貸借対照表によって資産価値を見ると、『原子力発電設備』は1075億円に達する。水力や火力の発電設備よりはるかに大きい。『核燃料』も1414億円という巨額資産だ。」
④「四国電力は3号機を再稼働させれば、収支が年間約250億円改善すると見込んでいる。逆に、2015年3月期に3基全てを廃炉にすると仮定したらどうなるか。
 単純計算すると、原発設備の資産価値はゼロ、転売できない核燃料(四国電力によると576億円)も価値が無くなる。廃炉に備えた引当金の不足分約400億円も必要。そうした結果、『純資産』は700億円余りにまで減り、経営は大幅に悪化する。
⑤「原発に関する他の資産なども考慮すれば、全基廃炉で四国電力は債務超過になりかねないとの試算もある。」
⑥「ただ、実際には債務超過にならないよう電力会社向けに特別の“原発会計制度”が存在する。この制度は福島原発事故以降、『廃炉を円滑に進めるため』として、経産省主導で変更を重ねてきた。例えば、廃炉を決めた設備や核燃料の一部は資産とみなして、損失を一括計上せず、10年の分割処理が可能になった。
⑦「『ただし』と言うのは立命館大学の金森絵里教授(会計学)だ。
 電力会社には、あらゆるコストを電気料金に上乗せできる『総括原価方式』がある。損失を将来に先送りする『10年分割』を採用すれば、それによって生じるコストはこの方式で回収できる。
 金森教授は『コストの負担者が電力会社から国民に変わっている。会計ルール違反です。会計基準は中立であるべきなのに、政治の中にある』と手厳しい。
 『廃炉を進める制度を構えるのは良いけど、いくらの費用が国民に転嫁されたか透明性のある制度設計にすべきです。複雑で不透明性を増す制度変更によって(電力業界を)支援するのは、原子力ムラの体質とも言えるでしょう。これでは電力自由化は成功しない。電力会社と国民の間の信頼も損なわれます』」
Ⅱ.疑問
「東京電力だったから福島の事故直後に数兆円を用意できた。四国電力は事故収束費用を用意できるのか。『事故を起こさない』と言うのは幸運を願っているだけ。リスクを負えないのに利益を欲しがるのは、資本主義ではありません」(大島教授)


(5)【迫る伊方再稼働】(5=終)司法判断 運転差し止め訴訟相次ぐ
Ⅰ.事実
①「関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を差し止める仮処分決定を下した。」
②「東京電力福島第1原発事故後、原発の運転差し止めを求める訴訟や仮処分の申し立てが全国で相次いでいる。四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)もその流れの中にある。」
③「大分県でも6月27日に住民が仮処分を申し立てた。」
Ⅱ.問い掛け
「事故のリスクを否定できない以上、それを受け入れさせる理由があるとすれば、公益性しかない。でも、原発ゼロの2年間の経験ができた。リスクを受忍する正当性はどこにありますか」


 この特集から読み取れるものは、次のことである。


(1)当該が自分の利益のために結論づける「地元理解」は、どう考えても、再稼働への根拠にはならないということ。
(2)「3.11」の真実は、企業の「想定外」は、「想定内」と考えなければならないということではなかったのか。
 過小評価ないしは意図的な無視が「3.11」の真実ではなかったのか。
 伊方原発再稼働においても次の問題が解決されていない。
・基準値震動の想定
・滑り量」と呼ばれる断層の「ずれ」に関する想定
・企業の経営規模を超える「リスク」を担えない企業が、本当に原子力産業に関わることができるのか。
(3)現在の「再稼働」に関連して、「避難計画」がおざなりになっているのが実態である。「避難計画」は、「想定外」か「想定内」という問題ではなく、原子力発電の危険性に問題に根本問題にかかわる、人の命を問うものである。
(4)「事故のリスクを否定できない以上、それを受け入れさせる理由があるとすれば、公益性しかない。」。しかし、「原発ゼロの2年間の経験ができた。」ことにより、この公益性の主張は、根拠を失った。したがって、この事故リスクを受忍する正当性はどこにもない。


 以下、高知新聞の引用。






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