2016年 03月 11日 ( 3 )

大津地裁の高浜原発稼働禁止仮処分決定を考える。

 2016年3月9日の大津地裁の高浜原発稼働禁止仮処分決定について、考える。
 今回は、各新聞社が、この問題をどのように捉えているかをみる。
各紙の見出は次のものである。

①北海道新聞社説-「高浜」差し止め 決定を重く受け止めよ
②河北新報社説-高浜原発運転差し止め/なし崩し的な再稼働へ警鐘
③岩手日報論説-<震災5年>原発の「解禁」 福島の原点に立ち戻れ
④茨城新聞論説-高浜原発運転差し止め 原発のリスクに向き合え
⑤⑦信濃毎日新聞社説-高浜差し止め 決定を重く受け止めよ
⑥中日新聞社説-高浜原発に停止命令 フクシマを繰り返すな
⑦福井新聞論説-高浜原発運転差し止め 事故リスクに厳格な姿勢
⑧神戸新聞社説-高浜差し止め/原発の安全見直すべきだ
⑨山陽新聞社説-高浜原発差し止め 「福島」踏まえた重い警鐘
⑩山陰中央新報論説-東日本大震災と防災対策/総点検し万全の備えを
⑪愛媛新聞社説-高浜運転差し止め 国は脱原発にかじを切るべきだ
⑫高知新聞社説-【高浜差し止め】再稼働の在り方再検討を
⑬南日本新聞社説- [高浜差し止め] 原発回帰に見直し迫る
⑭沖縄タイムス社説-[大震災5年 原発事故]教訓生かされていない
⑮大分合同新聞論説-高浜原発運転差し止め 原発のリスクに向き合え
⑯朝日新聞社説-原発事故から5年 許されぬ安全神話の復活
⑰毎日新聞社説-高浜差し止め 政府も重く受け止めよ
⑱東京新聞社説-高浜原発に停止命令 フクシマを繰り返すな
⑲読売新聞社説-高浜差し止め 判例を逸脱した不合理な決定

 これは、2016年3月10日に、①から⑭までは「社説・論説 47ニュース」から、⑮以降はそれぞれのホームページから、大津地裁の高浜原発稼働禁止仮処分決定に関しての社説等を引用したものである。
 この見出しの一覧は、この高浜地裁の判断への評価をあらわしている。
ここで取りあげた19社の新聞社のうち、実に17社が、「なし崩し的な再稼働へ警鐘」といった表現を含めて、一定の評価を与えている。
 逆に言えば、読売の「判例を逸脱した不合理な決定」という言葉の使用例が、余りにも突出している。
 読売は、本当にどこに行こうとしているのか。
 さて、今回はこの内でわかりやすかった茨城新聞社と信濃毎日新聞社の社説を取りあげる。


(1)決定の意味(茨城新聞社)
①関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転禁止を、隣接する滋賀県の住民が申し立てた仮処分で、大津地裁はこれを認める決定をした。仮処分の決定で運転中の原発が止まるのは初めてだ。
②東京電力福島第1原発事故から5年になるのを目前に、事故を受けて原子力規制委員会がまとめた新たな規制基準への審査に合格して再稼働した原発の運転に、司法が待ったをかけた形だ。
(2)決定内容の指摘(茨城新聞社)
①福島の事故の原因となった非常用電源対策として新規制基準が求めた対策について「このような備えで十分であるとの社会一般の合意が形成されたとはいってよいか、ちゅうちょせざるを得ない」と指摘。新規制基準やそれに基づく設置変更許可が「直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない」とした。
②申し立てをしたのは高浜原発から約70キロまでの滋賀県内の住民で、原発立地県ではない住民に対する広域的なリスクをどう判断するかも大きな焦点だった。これについて決定は、過酷事故の影響を受ける範囲は広く、計画通りの避難が困難で、住民が被ばくする可能性が高いとの見解を示し「住民の生命・身体の安全に対する権利が侵害されることになる」として仮処分を認めた。
③決定は、地方自治体が個別に策定する防災対策では不十分で「国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要だ」と指摘した。国はこれを深刻に受け止めねばならない。原発防災対策を地方自治体任せにするのではなく、原発を運転する電力会社とそれを認めた国が、責任を持って具体的な防災計画をまとめるまで原発の再稼働を見合わせることも検討すべきだ。
④原発事故の原因究明も、責任の追及も不十分なまま新規制基準がつくられ、電力会社は再稼働に積極的だ。国も「原発を重要なベースロード電源」と位置づけ、エネルギー供給の中で重視する姿勢だ。だが、決定が指摘するように安全対策も防災対策も不十分で、規制基準を金科玉条として、新たな安全神話が生まれつつあるのが実情だ。
⑤決定は、事故が起これば「環境破壊の及ぶ範囲は我が国を越えてしまう可能性さえある」と指摘した。
(3)茨城新聞の結論
①すべての関係者が5年前のあの日を思い起こし、原発のリスクやコストに真剣に向き合うきっかけにしたい。新規制基準をパスした原発を再稼働させるという政府のエネルギー政策を見直し、あらためて国民的な議論を始めるべきだ。
②福島第1原発事故が日本人に教えた原発の巨大なリスクを軽視し、原発回帰を進める政府と電力会社への厳しい警告だと受け止めるべきだ。
③福島第1原発事故後に裁判所が運転を禁じた判断は3回目である。原発再稼働に否定的な司法判断が示され、脱原発を求める世論が過半であることなどを考慮すれば、原発回帰を進める現在のエネルギー政策が正当性を持つとは言い難い。2030年に原発の発電比率を20〜22%にするとの政府目標の達成も難しい。
④決定が指摘した原子力のリスクや原発を取り巻く現実に正面から向き合い、民主的で社会的公正に配慮したエネルギー政策の実現に方向転換すべきだ。
(4)判断の理由(信濃毎日新聞社)
①規制基準に対し、想定を超える災害に対応できる「十二分の余裕」を要求。対策の見落としで過酷事故が生じても「致命的な状態に陥らない思想で基準を策定するべきだ」と指摘した。その上で、新規制基準と高浜3、4号機の審査適合が「公共の安寧の基礎」になると考えるにはためらいがある、としている。
②地震対策や津波対策などが、考えられる最大限のリスクを考慮していない、という判断だ。
③福島原発事故は想定外の災害が発生すれば、幾重にも張り巡らせた対策が無力になることを浮き彫りにした。安全対策に対する地裁の判断は当然だ。
④大津地裁は2014年11月に同様の申し立てを却下している。その際にも同じ問題点は指摘していた。却下したのは「規制委がいたずらに早急に、再稼働を容認するとは考えがたい」と判断したからだ。今回の決定は規制委が地裁の信頼を裏切った結果だ。
(5)信濃毎日新聞社の主張
①仮処分決定で稼働中の原発が停止するのは初めてだ。経済的損失が出ても安全性に少しでも懸念があれば停止させる、との強い意思を司法が示したといえる。
②原発立地県以外の住民の請求を認めた意義も大きい。事故が起きれば、県境を越えて放射性物質が拡散し、広範囲に被害が及ぶ。それなのに原発の再稼働に対する同意権は立地自治体にしかない。少なくとも、避難計画の策定が必要な30キロ圏内の自治体には同意権を与えるべきだ。


 私たちはこの決定を受けて、まず、「福島第1原発事故が日本人に教えた原発の巨大なリスクを軽視し、原発回帰を進める政府と電力会社への厳しい警告だと受け止めるべきだ。」(茨城新聞社)、と捉え直す必要がある。
 このことは、企業・電力会社や政府だけでなく、日本国民の一人一人が、「危険は現に差し迫っているのである。」「効率より安全、経済より命-。憲法が保障する人格権に基づいて住民を守るという基本への回帰。」(中日新聞社)、という指摘を常に反芻することである。
 そしてそれは、「『原発ゼロ社会』の実現」(朝日新聞社)のために。

 以下、各新聞社の社説、論説、時評の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-03-11 15:07 | 書くことから-原発 | Comments(0)

労働問題-辺野古集会に、年休を取得して参加した国道事務所職員を予算委員会で問題視。厳重注意を受ける。

 表題について、沖縄タイムスは2016年3月10日、「昨年8月、沖縄県名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で新基地建設に反対する集会に参加し、マイクを握った北部国道事務所の男性職員が上司から厳重注意を受けていたことが9日、分かった。参院予算委員会で内閣府の河内隆官房長が明らかにした。」、と報じた。
また、沖縄タイムスはこのことについて「、男性は労組委員長を務める。8月31日にゲート前で市民監視の業務に関し『本来の仕事ではない。県民のための仕事がしたい』と話した。9日の予算委で日本のこころを大切にする党の和田政宗氏は『国家公務員法、人事院規則に違反している』と主張し、処分の有無を確認。河内官房長は政治行為には当たらず、年休を取得して参加していることから法や規則には抵触しないとの考えを示した。
 その上で『国民の信頼を失う恐れのある軽率な行為だった』と述べ、9月2日に上司が厳重注意したと説明した。厳重注意は懲戒処分には含まれない。職員は『休暇を取り労働組合の立場で参加した。官房長の答弁通り法や規則違反はなく、何ら問題はないと考えている』と話した。」、と伝えた。
 さらに、「県労連の嶺間信一事務局長(62)は『業務外という公務員の立場を離れた時に、自分の信条に基づいた行動ができないのはおかしい』と政府の対応を批判。年休での集会参加は『業務中ではなく、何ら問題もない』と強調、国会での追及に対して『国や地方の公務員の基本的人権を制限するのか』と怒りをあらわにした。」、と報じた。


以下、沖縄タイムスの引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-03-11 11:14 | 書くことから-労働 | Comments(0)

国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は7日、日本政府に対する勧告を含む「最終見解」を公表。

 この最終報告について、朝日新聞は2016年3月8日、「女性差別撤廃条約の実施状況を審査する国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は7日、日本政府に対する勧告を含む『最終見解』を公表した。昨年成立した『女性活躍推進法』など、前回2009年の勧告以降の取り組みを評価する一方、夫婦同姓や再婚禁止期間など民法の規定について改正を求め、『過去の勧告が十分に実行されていない』と厳しく指摘した。」、「一方『「女性活躍推進法』のほか、待遇改善に向けた14年の『パートタイム労働法』の改正など、前回勧告以降の法的な枠組みの整備は、肯定的な評価を受けた。慰安婦問題には約1ページが割かれ、前回の勧告より詳細な記述になった。被害者への補償や加害者の訴追など、前回の勧告を繰り返した上で、日本政府が『被害者の権利を認識し、完全で効果的な癒やしと償いを適切な形で提供する』ことなどを求めた。慰安婦問題の責任をめぐる最近の指導者、当局者の発言や、日韓両政府が昨年12月末に結んだ合意について『被害者中心のアプローチが十分にとられていない』ことなどに遺憾を表明。日韓合意の履行にあたって被害者の意向を十分に考慮するよう求めるなど、日本政府の姿勢に注文をつけた。」、と報じた。
 この勧告の骨子については、①女性だけの再婚禁止期間の廃止、選択的夫婦別姓の採用など、民法の改正、②妊娠・出産に関わるハラスメントを含む雇用差別、職場でのセクハラを禁止し、防ぐための法整備をする、③2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にするための効果的な手段を確保する、④慰安婦問題では、被害者の権利を認識し、補償や公的な謝罪、尊厳の回復を含む、完全で効果的な癒やしと償いを提供する。日韓合意の履行にあたり、被害者の意向を十分に考慮する、⑤女性差別的なポルノやゲーム、アニメなどの規制、と伝えた。
 特に、慰安婦問題については、次のように指摘した。


「国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が7日公表した日本への勧告は、今回も厳しい内容だった。慰安婦問題では、昨年末の日韓合意について、問題解決のあり方を問われる形になった。
 7日、委員会を代表して記者会見したジャハン委員(バングラデシュ)は慰安婦問題の日韓合意に言及し、「我々の最終見解は(慰安婦問題を)まだ解決されていない問題だと見なしている」と発言。日韓合意に元慰安婦たちが関与し、その意向が反映されるべきだとの考えを示した。
 今回の最終見解は、日本政府が慰安婦問題を解決する努力や日韓合意について『留意する』とする一方、『指導者や当局者が責任を軽くみる発言をし、被害者に再び心的な傷を負わせるような行為を控える』といった新たな勧告も盛り込んだ。委員会は『意図したわけではない』とするが、最近の動きを踏まえて慰安婦問題の記述は分量が増え、より具体的になった形だ。
 また、日本が、慰安婦問題は女性差別撤廃条約を締結した以前に起きたために委員会が取り上げるべきではないと主張していることについても、『遺憾に思う』とした。2月にあった委員会の対日審査では、オーストリアの委員が『何が被害者中心のアプローチになり得るのか』『加害者の訴追や、歴史教科書掲載の必要性といった過去の国連機関の勧告をどう実行に移すのか』と質問した。これに対し、日本政府代表の杉山晋輔・外務審議官は、日韓合意の内容や、『日本政府が発見した資料の中では、いわゆる【強制連行】を確認できるものはなかった】といった立場を強調して説明した。
 元軍縮大使で、かつて国連委員会で慰安婦問題に関わった美根慶樹・平和外交研究所代表は『国連委員会が慰安婦問題について質問したのは、日本政府と強制連行の有無を論争したかったからではなく、問題解決に対する姿勢を知りたかったからだ。ことさら強制性の有無に焦点を当て、否定する杉山氏の説明は【日本は責任逃れをする意図があるのでは】という疑念を生じさせかねない危ういものだ】と話す。」


 国連の女性差別撤廃委員会の慰安婦問題への勧告-被害者の権利を認識し、補償や公的な謝罪、尊厳の回復を含む、完全で効果的な癒やしと償いを提供する。日韓合意の履行にあたり、被害者の意向を十分に考慮する-は、基本的な考えとなるものである。
 それは、「何が被害者中心のアプローチになり得るのか」「加害者の訴追や、歴史教科書掲載の必要性といった過去の国連機関の勧告をどう実行に移すのか」といった問いかけを日本側が常に行うということでもある。


 以下、朝日新聞の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-03-11 06:06 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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