2015年 07月 10日 ( 1 )

原発問題-川内原発再稼働の動きを考える。(2)

川内原発再稼働を考える時、一つには、「3.11」福島原発事故からの声をどのように視点として置くことができるかということが重要である。
 河北新報は今の住民の思いを次のように伝える。

「『やめてほしいの一言。距離の離れた福島の痛みが伝わっていないのではないか』。福島県川内村から岡山市に避難する大工の大塚愛さん(41)が怒りをあらわにする。
 『事故から4年4カ月しかたっていない。再稼働は早過ぎる』と話すのは、福島県浪江町の自宅を追われ、いわき市に避難する会社役員新谷保基さん(60)。『コミュニティーを破壊されたわれわれの立場はどうなるのか。国や電力会社の『安全』は信頼できない』と突き放した。

「東北電力東通原発(青森県東通村)を抱える下北地域にとっては、原発停止の歳月が長く、重くのしかかる。むつ商工会議所の其田桂会頭は『ようやくここまで来たという感じだ。下北の経済は冷え込んでいるが、少しだけ明るい希望が出てきた』と歓迎する。
 東日本大震災の津波を受けた東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)は事故を免れたが、住民の思いは複雑だ。
 女川町の無職男性(82)は『地元の判断を尊重するしかない』と語る一方で『事故が起きた時のことを考えると怖く、人ごとではない』と危ぶむ。別の無職男性(73)は『「電力の安定供給のためにはやむを得ない』と話しつつも『川内原発の安全対策が本当に万全なのか』と疑う。」

 こうした声に真摯に向き合うことが求められている。もちろん、再稼働に反対する側もである。

 また、西日本新聞の「天草市の中村五木市長は報道陣に対し『市民の生命、財産を守る観点から、国や県に必要な情報提供を求めていく。県、水俣市、芦北、津奈木両町とつくる事故対策推進会議をもっと開催するよう(現在は年2回)要望したい』と語った。市によると、川内原発から半径50キロ圏内に、同市の牛深町や河浦町の一部などが入り、約1万4千人が居住している。」との記事は、「3.11」福島原発事故を経験した行政担当者としての当然の危惧である。
 こうした声に充分に応えきれていない中での川内原発再稼働の動きなのである。

 もう一つ大事なのは、「安全神話」が崩壊したなかでの政府や経済界の動向を見極める、きちっと検証するということである。
佐賀新聞は、「成長戦略推進へ 背後に経済界の意向」と、安倍晋三政権が原発再稼働に執念を見せる意味を説いてみせる。
 だから経済界のこんな声を載せる。

「待望の原発再稼働が近づき、経済界には明るいムードが広がった。経団連の榊原定征会長は6日の記者会見で『ようやく再稼働にこぎ着けたことを歓迎する』と喜んだ。
 原発停止による電気料金の上昇は、厳しい国際競争にさらされる企業にとって『致命的』(経済同友会の小林喜光代表幹事)。このため経済界は原発活用を訴えてきた。
 また原子力産業はプラントから関連機器まで裾野が広く、産業政策上も波及効果が大きい。ギリシャ危機で世界経済が不透明感を増しているだけに、経済界にとって原発再稼働は数少ない明るい材料といえる。
 同友会の小林氏は7日の記者会見で『(再稼働が)0と1では大違い』としながらも『(規制委の審査が)もう少し早くならないか」と欲張った。」

 この原発をめぐる政府や経済界の理念なき姿は、立憲主義を否定する現在の安保法制の状況と、何と似通っているか。
 まさしく、私たちは、命の問題の前に立たされている。

 また合わせて、気になるのは、「原発40年運転規制 再検討」と「新増設」をという動きである。
 この動きを、東京新聞は「自民党の原発推進派議員でつくる電力安定供給推進議員連盟(細田博之会長)は七日、原則四十年の原発運転期間が妥当かどうか再検討することなどを求める提言案をまとめた。東京電力福島第一原発事故を踏まえた規制強化策を否定する内容が多く、原子力規制委員会が、原発の型式に関わらず一律で四十年にする科学的根拠を明確化すべきだとしている。」と伝えた。
 佐賀新聞も、「再稼働に先立ち、政府は2030年の原発比率を20~22%と決定した。新規制基準で定められた40年の原発の『寿命』を厳格に適用すると、この数字には届かない。このため『政府は新増設を視野に入れている』との見方が電力業界に急速に広がっている。政府は『現時点で想定していない』(宮沢洋一経済産業相)と対応を明確にしていないものの、ある政府筋は『今後、再稼働が続いていけば、世の中の動きを見極めながら新規の原発増設の機運も出て来る可能性がある』と本音をのぞかせる。」と、報じている。
 こうした動きは、恥なき理念なき集団の取る行動としては、当然の帰結ではあるが。

 そして、大事なのは、東京新聞の次の指摘である。

「再稼働への最終局面に入った川内原発だが、国際原子力機関(IAEA)が求めている基準に達しているのかどうか疑問が残る。
 原発の新しい規制基準により、電源や原子炉の冷却機能の多重化など重大事故の対策は拡充された。
 しかし、原子力規制委員会は新基準でフィルター付きベント(排気)設備や緊急時の対策拠点などを求めながら、しばらくの間は代替策で十分としている。
 対策を講じても突破され、さらに深刻な事態になると想定するのがIAEA基準の基本的な考え方。
 規制委は『新基準を満たせば、事故は一定レベル内で収まる』とし、放射線量などにより現場で収束作業ができなくなるような事態は起きないと判断している。住民避難は最終的な事故対策だが、規制委を含めどの機関も避難計画をチェックしない。
 桜島を中心とした姶良(あいら)カルデラなど川内原発を取り囲む火山の巨大噴火リスクを多くの火山の専門家が指摘している。原発立地の可否から再検討されるべきだが、規制委は『運転期間中に巨大噴火はないだろう』とし、核燃料の緊急搬出策を九州電力に現時点では義務づけていない。」

 しかし、IAEAの基本の基準を待つまでもなく、「対策を講じても突破され、さらに深刻な事態になると想定する」という考え方は、「3.11」を経験した後では、基本中の基本ではないか。
 このことの解決なしに、次に進むことは許されない。

あらためて、繰り返すしかない。
 「私たちは、命の問題の前に立たされている。」と。

 以下、各新聞社社説の引用。




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by asyagi-df-2014 | 2015-07-10 05:37 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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