2015年 02月 05日 ( 1 )

「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書骨子案)」に否を。

 2015年1月16日、厚生労働省労働政策審議会において、「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書骨子案)」が公表された。
 この報告書骨子案では、「4 特定専門業務・成果型労働制(高度プロフェショナル労働制)の創設」で、次のように記述されている。

時間ではなく成果で評さされる働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を充分に発揮できるようにするため、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外した新たなロウ時間制度の選択肢として、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェショナル労働制)を設けることが適当。

 このことについて、日本労働弁護団は、「長時間労働野放し法に断固反対する声明」として、「報告書骨子案のいう新しい労働時間制度は、新たな労働時間規制の適用除外制度(エグゼンプション)を設けることにより、歯止めのない長時間労働・深夜労働を野放しにさせ、『残業代ゼロ』を合法化しようとするものに他ならず、絶対に導入を許してはならない。」と、結論づけた。

 この声明で、以下のように指摘する。
Ⅰ 成果労働制と呼ぶことの欺瞞性
(1)現行法のもとでも「時間ではなく成果で評価される」制度を導入することは可能であり、実際に多くの職場ですでに導入されている。よって、「時間ではなく成果で評価される働き方」の実現のために、労働時間の規制を外す必要性は皆無である。
(2)報告書骨子案が示す新しい時間制度は、労働時間規制の適用除外を設けるのみであって、使用者に対して成果型の賃金を義務付ける制度は何ら含まれていない。
(3)結論として、報告書骨子案が示す新しい時間制度は、労働時間規制の適用除外を設けるのみであって、使用者に対して成果型の賃金を義務付ける制度は何ら含まれていない。
 すなわち、報告書骨子案は、単なる労働時間規制の適用除外制度、すなわちホワイトカラー・エグゼンプションにすぎないにもかかわらず、「時間ではなく成果で評価される働き方」のためとの目的を示し、「特定高度専門業務・成果型労働制」とあたかも成果型賃金制度が義務化されたかのような名称を使用することによって、国民を欺くものであり、極めて欺瞞的である。
Ⅱ 長時間労働・深夜労働の野放し
(1)現行法上、この労働時間規制の趣旨は、長時間労働を抑止し、労働者の命と健康を守り、ワークライフバランスの確保を図ることにある。しかし、報告書骨子案が示す新しい時間制度においては、対象となった労働者はこの労働時間規制の適用を「除外」されることになるのであるから、成果をだすために労働者がどれだけ長時間労働をしても、使用者は割増賃金の支払いを免れることができ、長時間労働に歯止めをかけることが不可能となる。
(2)この新しい時間制度においては、我が国における労働時間制度として初めて深夜労働時間に関する規制も適用除外とされているため、歯止めのない深夜時間労働が野放しとなる危険性がある。
(3)結論として、過労死等防止対策基本法が制定されるなど、長時間労働を原因とする過労死・過労自殺・過労うつが社会に蔓延し、その対策が国の責務として求められている中で、長時間労働の歯止めを失わせる制度を新たに設けることは時代に大きく逆行するものである。
Ⅲ 対象業務・労働者拡大の危険性
(1)既に多くの企業が導入している成果主義賃金制度さえあれば「関連性が強くない」として対象業務が徒に拡大する危険がある。
(2)具体的対象業務を省令で定めることとすれば、法改正によらずに適用対象業務が拡大される危険性がある。
(3)1075万円はあくまで「参考」額にすぎず、省令による規定では、法改正によらずに引き下げが可能である。将来、この年収額が引き下げられて適用対象労働者が拡大する危険性は極めて高い。
Ⅳ 健康破壊の危険性 
(1) 新しい労働時間制度の導入にあたって、対象労働者の同意を要件とする点も、使用者と労働者の力関係に鑑みれば、労働者が同意を拒否することは現実的には難しく、採用時の労働条件に含める形や成果主義賃金制度適用の条件とされてしまえば、労働者は事実上拒否することはできず、制度適用の歯止めとはなり得ない。
Ⅴ 結論
(1)報告書骨子案のいう新しい労働時間制度は、新たな労働時間規制の適用除外制度(エグゼンプション)を設けることにより、歯止めのない長時間労働・深夜労働を野放しにさせ、「残業代ゼロ」を合法化しようとするものに他ならず、絶対に導入を許してはならない。

 日本は、「ブラック企業」「ブラックバイト」という言葉が、あたりまえのものとして捉えられている国になってしまっている。この新しい労働時間規制の適用除外制度(エグゼンプション)は、労働者、国民をより窮地に追いやるものでしかない。

 以下、「声明」の引用。




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by asyagi-df-2014 | 2015-02-05 18:29 | 書くことから-労働 | Comments(0)

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