2014年 11月 09日 ( 1 )

原発問題-川内原発再稼働を考える

県議会が再稼働を求める陳情を採択したことを受けて、鹿児島県の伊藤祐一郎知事は九州電力川内原発1、2号機の再稼働に同意した。
 この再稼働について、2014年11月8日付の主立った新聞社の社説から、①指摘された問題点、②稼働判断の意義等、③各紙の主張に分けて考えてみる。
 まず、再稼働の判断への各社の問題点については、次のようにまとめられる。

①指摘された問題点
・南日本新聞
「宮沢経産相が鹿児島県庁で『万一の事故の際は、国が関係法令に基づき責任をもって対処する』と語ったことも、知事や議会は大きく評価した。しかし、経産相の説明は、今年4月閣議決定した国のエネルギー基本計画の文言をなぞっただけである。再稼働を必要とする理由に挙げた中東の原油輸入の厳しさなどもそうだ。誠実さに欠ける説明で、重みも感じられない。」
「ひとたび過酷事故が起きれば、被災地になるというのに、国や関係機関の『お墨付き頼み』が過ぎはしないか。」

・東京新聞
「法的根拠はないものの、地元の同意が再稼働への最後の関門だとされている。第一に、地元とはどこなのか。伊藤知事は『県と(原発が立地する)薩摩川内市だけで十分』というのが、かねての持論である。『(原発による)苦労の度合いが違う』というのが理由である。気持ちはわからないでもない。」
「九州は、火山国日本を代表する火山地帯である。川内原発の近くには、カルデラ(陥没地帯)が五カ所ある。巨大噴火の痕跡だ。約四十キロ離れた姶良(あいら)カルデラの噴火では、原発の敷地内に火砕流が到達していた恐れがある。ところが規制委は、巨大噴火は予知できるという九州電力側の言い分を丸ごと受け入れてしまった。一方、「巨大噴火の予知は不可能」というのが、専門家である火山噴火予知連絡会の見解である。これほどの対立を残したままで、火山対策を含めて安全と言い切る規制委の判断は、本当に科学的だと言えるのか。適正な手続きと言えるのだろうか。三つ目は、避難計画の不備である。県の試算では、三十キロ圏内、九市町の住民が自動車で圏外へ出るだけで、三十時間近くかかってしまうという。入院患者や福祉施設の人々は、どうすればいいのだろうか。福島では、多くの要援護者が避難の際に命を落としているではないか。」
「知事の自信と現場の不安。ここにも深い溝を残したままである。」
「原発事故の被害は広い範囲にわたり、長期に及ぶというのも、福島の貴重な教訓である。」

・朝日新聞
「まず、避難計画だ。住民の安全に直結するものなのに、いまだに避難に必要なバスの確保や渋滞対策に見通しがつけられていない。いずれも、福島での事故の際に現場が最も混乱し、住民が危険にさらされた要因となった問題だ。」
「そもそも、原子力規制委員会の手続きが終わっていない。再稼働までには、審査書に基づく工事計画と保安規定の認可を受ける必要がある。それなのに、なぜ、これほど急いで同意を表明する必要があるのか。来春の県議選での争点化を避けようとしたとの見方もあり、十分な検討を尽くした結果なのか、疑問が残る。」
「私たちは再稼働を認めるにはいくつか条件があると主張してきた。特に、過酷事故が起きた時に住民の生命と健康を守ることは、地元の首長にとって絶対条件のはずだ。しかし、それに備えた避難計画は、要援護者への対応や、避難者の受け入れ体制などに不十分なところが残されている。計画を国が審査する体制もなく、実効性が担保されたとはいえない。このままでは事故時に混乱が避けられないのではないか。」

・毎日新聞
「そもそも、原子力規制委員会の手続きが終わっていない。再稼働までには、審査書に基づく工事計画と保安規定の認可を受ける必要がある。それなのに、なぜ、これほど急いで同意を表明する必要があるのか。来春の県議選での争点化を避けようとしたとの見方もあり、十分な検討を尽くした結果なのか、疑問が残る。」
「私たちは再稼働を認めるにはいくつか条件があると主張してきた。特に、過酷事故が起きた時に住民の生命と健康を守ることは、地元の首長にとって絶対条件のはずだ。しかし、それに備えた避難計画は、要援護者への対応や、避難者の受け入れ体制などに不十分なところが残されている。計画を国が審査する体制もなく、実効性が担保されたとはいえない。このままでは事故時に混乱が避けられないのではないか。」


・北海道新聞
「しかし、国も地元も手続きを急ぐあまり、重大事故が発生した際の対応については課題を置き去りにしたままである。住民の不安は脇に置いた同意は、拙速のそしりを免れまい。」
「最大の問題は住民の避難計画である。要援護者の避難や一斉に避難する際の渋滞対策などが依然として不十分だ。説明会でも住民から批判が相次いで出された。実効性ある避難計画は安全対策の肝だ。これを放置するというのは納得いかない。」
「宮沢洋一経済産業相は今月、伊藤知事に『万が一、事故が起きた場合、国が責任を持って対処する』と明言した。だが、具体的にどう責任を持つと言うのか。例えば火山対策だ。周辺に複数のカルデラ地形がある川内原発は噴火災害の危険性が心配される。規制委は九電の火山監視でも対応可能とする見解を示した。これに対し専門家から異論が出されている。御嶽山(おんたけさん)をみても、噴火の予知は極めて難しい。」

・河北新報
「安倍晋三首相や、原子力規制委員会の田中俊一委員長は過酷事故に対して「世界でもっとも厳しい」と評する新基準をクリアしたとするが、火山噴火の影響など原発の安全性や避難計画の不備といった防災への不安が解消されたわけではない。
 先月あった審査結果についての住民説明会で、参加者から批判と反発の声が相次いだ。聞くにつけ、国、県、九電に不安を訴える住民に真摯(しんし)に向き合い、思いをくみ取る姿勢が十分だったとは言えそうにない。
 事故の際、被害が及ぶ可能性がある原発の半径30キロ圏に位置し、避難計画の策定を求められながら、再稼働の地元同意をめぐり、蚊帳の外に置かれた近隣自治体の住民らの不満も強い。」

・秋田魁新報
「再稼働となれば、原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発として初めてとなる。このまま再稼働させていいのか。ここは立ち止まってじっくり考えるべきだ。」
「策定済みの住民避難計画には不備が目立ち、避難用バスを十分に確保できるかどうか疑わしい。原発から半径10キロ圏外では、高齢者らの避難先が未定で弱者切り捨てとなりかねない。福島原発事故で住民らは放射性物質の脅威にさらされてパニックに陥った。川内原発で過酷事故が起きれば同じ状況になるのは目に見えている。にもかかわらず、避難計画は原子力規制委の審査対象になっておらず、実効性があるのか疑問だ。」

 次に、②稼働判断の意義等についてであるが、ここでは、読売新聞だけである。
②稼働判断の意義等
・読売新聞
「川内原発の周辺自治体の一部は、自らの同意も必要だと主張している。伊藤知事が、九電と安全協定を結んでいる鹿児島県と薩摩川内市が同意すれば十分だ、と判断したのは妥当である。」

 三点目の③各紙の主張は、次のものである。

③各紙の主張
・南日本新聞
「あれだけ過酷な原発事故の後である。知事も議会も難しい決断だっただろう。だが多くの疑問を残したままの見切り発車が、事故後の再稼働手続きにふさわしいモデルとなるかどうかは疑わしい。」
「福島原発事故での地域への被害拡大を思えば、少なくとも同意の範囲は、避難計画の作成を義務付けられた半径30キロ圏の自治体まで広げるべきである。」
「川内原発がこのまま再稼働したとしても、今後は廃炉に向けた備えこそ重要である。」

・東京新聞
「原発事故の被害は広い範囲にわたり、長期に及ぶというのも、福島の貴重な教訓である。」
「そもそも、新潟県の泉田裕彦知事が言うように、福島の事故原因は、まだ分かっていない。原因不明のまま動かすというのは、同じ事態が起き得るということであり、対策が取れないということだ。根拠のない自信によって立つ再稼働。3・11以前への回帰であり、安全神話の復活である。」

・朝日新聞
「全国では12原発18基が規制委の審査にかかっている。合格した原発はすべて再稼働するとしている安倍政権は、川内を今後のひな型と位置づける考えだ。しかし、川内原発の再稼働を巡る手続きを振り返ると、とてもこのままでいいとは考えられない。原発の過酷事故に対する備えが不十分なまま再稼働に進んでいるからだ。」
「むしろ国が立地地域に対して責任をもってやるべきことはほかにある。脱原発のための支援だ。安倍政権も原発依存の低減を掲げているではないか。立地自治体がおしなべて再稼働に前向きなのは、過疎化が進み、原発を受け入れて交付金や税収を得ることでしか『まち』を維持できないからだ。原発依存から脱していくためには、原発に頼らざるをえない現実を変えていく努力が欠かせない。当然、立地自治体だけでは解決できない難題であり、だからこそ今から取り組むことが必要であるはずだ。」
「原発政策には使用済み核燃料の貯蔵や放射性廃棄物の処分など、地域と全体が対立しかねない問題が山積している。」
「川内原発再稼働を巡る論議は、地域と国民全体の民意をどうすりあわせるのか、という問題を投げかけてもいる。」

・毎日新聞
「住民を危険にさらす過酷事故は起き得る。それが福島第1原発事故の教訓である。この教訓を軽視したまま、再稼働に向けた手続きが着々と進められていくことに大きな疑問を感じる。」
「もちろん、再稼働の責任は地元だけにあるわけではない。本来なら、政府が原発に頼らない社会をどう構築していくかの道筋をきちんと示した上で、個々の原発の再稼働の可否を判断すべきだ。こうした条件が整わないまま、なしくずしに再稼働の手続きを進めることは、拙速であり、見切り発車と言わざるを得ない。」

・読売新聞
「『原発ゼロ』にしっかり終止符を打ち、他の原発の再稼働を円滑に進めるモデルとしたい。九州電力川内原発1、2号機の再稼働に、鹿児島県の伊藤祐一郎知事が同意する考えを表明した。原発が立地する薩摩川内市長と市議会の同意に続いて、県議会も再稼働を求める陳情を、自民党などの賛成多数で採択した。伊藤知事の速やかな決断によって、年明けにも再稼働が実現する道筋がついた意義は大きい。」
「川内原発の再稼働にめどがついたことで、今後の焦点は関西電力高浜原発などに移る。
最も早い川内原発でさえ、安全審査の申請から地元同意まで1年4か月を要した。活断層などの評価を巡り、審査が遅々として進まない原発も少なくない。規制委は安全を大前提に、迅速な審査に努めてもらいたい。」

・北海道新聞
「川内原発の場合、安全対策はまだまだ不十分だ。再稼働は、そうした問題点を一つずつ解決してからでも遅くない」

・河北新報
「原発のリスクをゼロにはできないし、これで絶対安心ということもない。だからこそ、リスク回避に向けての徹底した取り組みが欠かせない。万一の際の『責任の所在』をはっきりさせておく必要もある。説明会では九電や規制委の担当者が答弁に窮したといい、住民らの不安は消えない。宮沢洋一経済産業相は「国の責任」を約束したが、一連の対応を見れば、極めて心もとない。『事故』と『被害』発生の両面でゼロを目指す努力を積み重ね、住民らの理解を深めていくことなしに、安定稼働はあり得ないことを肝に銘じるべきだ。」
「『福島の原発事故の全容も解明されていないのに、なぜ動かすのか』 福島県双葉町から鹿児島市に避難している自営業者は前のめりの対応が納得できない。多くはそれに似た思いではないか。」
「地域経済の活性化は住民の安全確保が大前提だ。再稼働への同意を『やむを得ないと判断した』知事はもとより、強く働き掛け誘導した国も、決断の責任から逃れられない。福島の事故の検証も終わっておらず、教訓を生かす課題も残る。被害実態を踏まえれば、同意を得る範囲を広げるべきだ。」
「再稼働は年明け以降の見通しだが、万一に備えた対策の、より一層の充実を図っていかなければならない。まずは何より、住民避難の実効性を高めることが肝要だ。あらゆる事態を想定し、被害回避に万全の備えを講じるべきだ。」
「手続きの終了はゴールではない。安全審査中の他の原発についても拙速は許されない。」

・秋田魁新報
「 ただ、過酷事故が絶対に起こらないという保証はない。原子力規制委も基準に適合したと判断する一方で、安全性を担保したものではないとする。つまり、事故は起きるという前提に立った対策でなければ、いざというときに役に立たない。」
「だが、過酷事故が起きれば周辺自治体も被害を受けるのは明らかであり、これら自治体の同意も必要だ。安倍政権は再稼働方針を掲げているにもかかわらず県に判断を押し付け、九電に再稼働させようというのか。このまま再稼働させることは、同意は立地自治体と都道府県だけで足り、避難計画や火山対策に不備があっても何ら問題はないと認めるに等しい。それは福島原発事故につながった『安全神話』の復活でしかない。」

 以上が、各社の社説から受け取れるものである。
 多くの新聞社がこの再稼働については、多くの疑問等を提示していることになる。

 実は、7日の報道番組を見ながら、どうしても不信感をぬぐえなかったのが、知事のあの笑顔の理由についてである。
 これについては、「知事の自信と現場の不安。ここにも深い溝を残したままである。」ということを、引き続き突きつけていくしかない。
 また、「川内原発がこのまま再稼働したとしても、今後は廃炉に向けた備えこそ重要である」とういう南日本新聞の指摘は、今後の原発問題を考えていく上で重要である。
 この川内原発の再稼働に向けての動きについては、朝日新聞の「川内原発再稼働を巡る論議は、地域と国民全体の民意をどうすりあわせるのか、という問題を投げかけてもいる。」ということを噛みしめる必要がある。

 やはり、南日本新聞の「原発事故の被害は広い範囲にわたり、長期に及ぶというのも、福島の貴重な教訓である。」という主張は、「3.11」をどのように捉え克復していくのかというという考え方と重なるものであり、このことをすべての始まりとしなければならない。

 以下、各紙社説の引用。




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by asyagi-df-2014 | 2014-11-09 05:40 | 書くことから-原発 | Comments(0)

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