2014年 07月 05日 ( 1 )

集団的自衛権-補足資料(NPJ通信 井上正信弁護士)

 「閣議決定」に反対するために、補足資料載せます。
 以下、「NPJ通信 井上正信弁護士」の引用。 

2014年7月1日閣議決定への分析・批判(緊急)

閣議決定全文を新聞で読み、緊急に分析をしましたので、以下に紹介します。

1 これまでの憲法解釈のどこを変更したのか

安倍首相は記者会見で、「現行憲法の解釈の基本的考え方は変わらない。海外派兵は一般的には許されないという従来の原則は変わらない。」、「今回の新三要件も、今までの三要件と基本的な考え方はほとんど同じと言ってよく、表現もほとんど変わっていない。憲法解釈の基本的な考え方は変わらない。」と述べた。本当にそうなのか?

従来の三要件は次の通り。

自衛権発動の三要件
①我が国に対する急迫不正の侵害あること、すなわち武力攻撃が発生したこと
②この場合これを排除するために他に適当な手段がないこと
③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
新三要件は次のとおり。
武力行使(自衛のための措置)の三要件
①我が国に対する武力攻撃が発生した場合、我が国と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生した場合、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合
②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない場合
③必要最小限度の実力行使

新三要件は、第一要件で集団的自衛権が行使できること、「明白な危険」という新しい要件を付け加えたことで、これまでの三要件とは異質なものである。第二要件でも第一要件に対応して、「我が国の存立を全うし、国民を守るため」が加えられている。

海外派兵は一般的に許されないのか?

海外派兵とは政府解釈によると、「武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣すること」(昭和55年10月28日政府答弁書)である。閣議決定文書では新三要件のうち、③要件がそれに該当する可能性があるが、「他国の領土、領海、領空には派遣しない」とはどこにも述べていない。政府見解(想定問答集)でも、その点は曖昧であり、機雷掃海では他国の領海内でも活動できるとしている。そうすると、海外派兵の上記定義を前提にする限り、海外派兵は許されないとの従来の原則は放棄されたものである。

2 集団的自衛権の限定行使か?歯止めになるのか?

閣議決定は、「安全保障環境が根本的に変容し、変化し続けている状況を踏まえれば、今後他国に対して発生する武力攻撃であっても、その目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こりうる。」とのべ、新三要件の①「我が国と密接な関係にある他国」という要件も外している(閣議決定に内在する矛盾でもある)。つまり地理的限定はないのである。閣議決定はこの安全保障環境の変容につき、「脅威がどの地域において発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼしうる状況になっている。」と述べていることを受けたものである。

集団的自衛権行使の際の武力行使についても閣議決定は何らの限定を加えていない。「後方支援と武力行使の一体化」についての閣議決定は、集団的自衛権行使とは別分野である。新三要件の③要件の記述のみである。従来の自衛権発動三要件の下での③要件は、専守防衛の観点から限定になっていたが、閣議決定の新三要件の③要件は、集団的自衛権行使を含むものであるから、限定にはならない。「我が国と密接な関係にある他国」という限定要件が既に閣議決定では無視されている。「我が国の存立を脅かす」場合には「我が国と密接な関係にある他国への武力行使」と判断するのであろう。

武力行使に歯止めはあるのか。歯止めという以上、政府による自衛隊派遣、武力行使の判断に対する歯止めである必要がある。「これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」と二重要件で歯止めをかけているような記述だが、政府見解(想定問答集)では、国家と国民は一体であるとして加重要件ではないと明確に否定している。そうであるなら、「我が国の存立が脅かされる」という判断だけで集団的自衛権が発動されることとなる。ではその政府の判断に対する歯止めはあるのか。「我が国の存立が脅かされる」という判断と、その「明白な危険」が歯止めの記述と思われるが、いずれも曖昧な概念であり、政府の恣意的判断が容易な概念である。さらに、その判断に至った情報が特定秘密保護法で国民や報道機関、国会までも隠されれば、歯止めなき海外派兵になる。

3 国連の集団的措置(軍事的措置)への参加は可能か?

閣議決定には国連の集団的措置(軍事的措置)への参加はしないとはどこにも記述がない。むしろ閣議決定は国連の集団的措置(軍事的措置)へ参加する途を開いているのだ。閣議決定は「自衛権発動の三要件」とはせず、わざわざ「自衛のための措置」という新しい概念を導入している。自衛権行使と自衛のための措置とでは国際法上の意味は全く異なる。我が国が国際法上個別的自衛権や集団的自衛権を行使している際に、当該武力紛争に対して安保理が憲章第42条の軍事的措置を決議した場合、憲章第51条により、それ以降の自衛権行使は違法となる。閣議決定は「国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある。」と述べていることに注目すべきである。つまり、憲法解釈上は「自衛の措置」だが、国際法上の根拠はこれとは異なるというものである。閣議決定は自衛の措置が「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。」と述べている。つまり、集団的措置は排除されていないのだ。政府解釈(想定問答集)は、「新三要件」を満たすならできるとしている。

4 国際平和協力活動

閣議決定は「2国際社会の平和と安定への一層の貢献」という表題で、「後方支援と武力行使一体化」原則の変更と、「国際的な平和協力活動に伴う武器使用」を拡大しようとしている。

「後方支援と武力行使一体化」原則の変更は、国連安保理による軍事的措置へ参加する場合に適用される記述と考えられる。ここで述べているのは、戦場で戦闘行為が行われている場合以外には後方支援活動が可能であるというものである。後方支援活動中に戦闘が始まれば、自衛隊は活動を中止するというが、敵部隊は自衛隊部隊を攻撃するはずであるから、当然それに備えた部隊編成と装備で後方支援を行うはずである。そうなれば、後方支援といいながら際限なき武力行使の突破口に過ぎないことになる。

「国際的な平和協力活動に伴う武器使用」では、「駆け付け警護」と「任務遂行のための武器使用」権限を付与しようとしている。その結果、治安維持活動まで行うことを想定している記述となっている。これはイラクにおいて米・英軍が行った掃討作戦と何ら異ならない軍事活動になり得る。

閣議決定は「2国際社会の平和と安定への一層の貢献」において、在外邦人救出活動を含めている。この活動は、こてこての国益を前面に出した活動であり、これを「2国際社会の平和と安定への一層の貢献」へ入れている閣議決定は、きわめて出来の悪い文書となっているのである。


by asyagi-df-2014 | 2014-07-05 05:50 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
画像一覧