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社説、論説から。~岩手日報20180119~

全国の新聞社の気になる社説、論説を不定期に取り上げて考える。
多くの内容は、「社説・論説-47NEWS」からの紹介となる




 岩手日報は2018年1月19日、「迫る仮設退去期限 心癒やす風で包みたい」、と論説で評した。
心癒やす風で包むとは、どいうことなのか。
岩手日報は、このことについて、「心の復興のスタートラインが見えないまま、仮設住宅の退去期限だけが近づいてくる。東日本大震災から7年の今なお、生活再建の見通しが立っていない入居者の胸中は、察するに余りある。」、と語り始める。


(1)仮設の利用期間は原則2年で、1年ごとに国と県が協議して延長してきた。住宅再建の進行に伴い、宮古市では2017年度、山田町以南の5市町は18年度に「特定延長」に移行。自治体全体ではなく、持ち家や災害公営住宅の完成を待つ世帯に限られる。
(2)「そのため、沿岸6市町の約1700世帯が18年内に退去期限を迎える。それに対し、少なくとも126世帯の転居先が『未定』であることが今月、本紙取材で分かった。


 岩手日報は、この事実を前にして、「空き室が目立つ仮設団地で、人生の岐路に立たされる入居者たち。ただ、社会そのものも岐路に立っていることを忘れてはならない。阪神大震災被災者のケアに尽力した故・安(あん)克昌(かつまさ)医師の言葉は、東日本の今こそ、重い。」、と次のように問いかける。


(1)「『被災地のコミュニティの問題は、日本全体の問題でもある。傷ついた人が心を癒(いや)すことのできる社会を選ぶのか、それとも傷ついた人を切り捨てていくきびしい社会を選ぶのか…』」
(2)「東日本はどちらに向かっているだろうか。仮設入居者からは『早くここを出たいのに、家賃を払わなくていいから残っていると言われて、傷ついた』といった悲しみの声が漏れる。取り巻く風は、冷たく、厳しい。」
(3)「仮設の解消は、被災地の復興にとって目に見える節目になるに違いない。だが、解消を急ぐあまり、入居者の心がないがしろにされては、その傷をさらに深めるだけだ。転居先のコミュニティーでの孤立など、新たな問題も生まれかねない。」
(4)「資金面がネックで転居方針が定まらなかったり、賃貸アパートを希望しているが物件が見つからないなど『未定』の理由はさまざまだ。県や市町など関係機関は、入居者の個別事情に十分に配慮し、心の復興を後押ししてほしい。」


 岩手日報は、こう結ぶ。

「今、日本社会が抱える課題は数多い。生活困窮者の自立支援、高齢者の地域包括ケアシステムの構築、障害者の施設・病院からの地域移行などで模索が続く。いずれも住まいがポイントとなる。その点、被災地には広大な高台造成地が整備され、災害公営住宅も立ち並ぶ。受け皿は十分にある。問題はマッチングだ。仮設入居者の課題は、社会全体が直面する課題の集約とも言える。「公営住宅に入居したいが通院先から遠くなる」といった個々の不安を、ハード・ソフト両面から一つ一つ解決していく。その積み重ねが未来に生きるはずだ。」


 確かに、私たちは、心の復興がまずは重要であるにもかかわらず、実は、心の復興のスタートラインが見えないままであることが、現在日本社会が抱える重要な課題であることを、認識する必要がある。
 例えば、岩手日報が指摘するように、「岩手県の沿岸6市町の約1700世帯が18年内に退去期限を迎える。そのうち、少なくとも126世帯の転居先が『未定』であること、またその『未定』は、資金面がネックで転居方針が定まらなかったり、賃貸アパートを希望しているが物件が見つからないなど多くの理由が横たわっていること。」、を多くの日本人が共有する必要がある。
 また、復興に際しては、県や市町などの関係機関は、入居者の個別事情に十分に配慮し、心の復興を後押しするという姿勢が重要であるという立場に立つことが必要である。





by asyagi-df-2014 | 2018-01-26 07:16 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人