沖縄県は、2017年7月24日、辺野古工事差し止め訴訟に入る。(2)

 沖縄県は、2017年7月24日、辺野古工事差し止め訴訟を、那覇地方裁判所に提訴した。
このことについて、沖縄タイムスと琉球新報の社説で考える。
 まずは、要約する。


Ⅰ.主張


(琉球新報)
(1)翁長雄志知事は「あらゆる手段を使い、辺野古新基地建設を阻止する」と言明してきた。提訴は当然である。司法には公正な判断を求める。判決が出るまでの工事差し止めの仮処分も速やかに認めるべきである。
(2)漁業権放棄と岩礁破砕許可を巡る法的対立がある以上、国は少なくとも県が求める事前協議に応じるべきだった。
(3)知事が主張するように、国はなりふり構わず埋め立て工事の着手という既成事実を積み重ねようとしている。しかし、豊かな生物多様性を誇り、かけがえのない財産である辺野古・大浦湾の海を埋め立て、県民の手が届かない国有地に「耐用年数200年」ともいわれる新基地を建設することは到底容認できない。
(4)辺野古新基地建設を巡っては、2015年10月の翁長知事による埋め立て承認取り消しを受けて国が代執行訴訟を提起。その後和解が成立したが、改めて国が知事を相手に不作為の違法確認訴訟を起こし、昨年12月に最高裁で県敗訴の判決が確定した。
(5)最高裁判決は、日米安保条約、不平等な日米地位協定に基づく沖縄への基地集中をただす姿勢が見られず国策に追従するものだった。
(6)今回の訴訟を通じて、沖縄の民意に反する工事を強行する国の不当性に、司法はしっかり向き合うべきだ。


(沖縄タイムス)
(1)憲法と地方自治法が施行されて今年でちょうど70年になる。憲法と地方自治法がまっとうに運用され、政治が機能していれば、このような県と国の法廷闘争が繰り返されることはない。他府県とあまりにも異なる基地負担の押しつけは、公正・公平であるべき行政を大きく逸脱しており、正当化できない。政府は埋め立て工事を中断し、打開に向け県との話し合いを再開すべきだ。
(2)沖縄では復帰後も、安保・地位協定が優先され、憲法と地方自治法に基づく権利が制約を受けてきた。復帰の際、政府は未契約米軍用地を強制使用するため、沖縄だけに適用される公用地暫定使用法を制定した。だが、憲法でうたわれた住民投票は実施されなかった。米軍用地特措法が改正されたのは、県知事の権限を封じ、未契約米軍用地を継続使用するためだった。そして今また、新基地建設のための強権の乱発である。この異常な事態こそが裁かれるべきだ。


Ⅱ.訴訟の意味
(琉球新報)
(1)今回、県が申し立てた訴訟は直接的に工事の差し止めを求めるものではない。名護市漁業協同組合による漁業権の一部放棄後、漁業権の存在を確認するものだ。
(2)県は工事海域には漁業権が存在し、県による岩礁破砕許可が必要との立場を取る。県漁業調整規則は漁業権の設定されている漁場内で岩礁を破砕する際には知事の許可を受けるよう求めている。
(3)仲井真弘多前知事が国に出した岩礁破砕許可の期限は3月末で切れている。それにもかかわらず、国は工事を強行した。岩礁破砕を伴う違法行為が差し迫る中、裁判で国が漁業権の存在する海域で許可なしに岩礁破砕してはならないことを確認する。漁業権を変更する際は都道府県知事の免許を受けなければならないとする1985年の政府答弁も根拠とする。
(4)国の立場は、岩礁破砕許可の前提となる漁業権が消滅したため、再申請の必要はないというものだ。漁業法第31条などを根拠に、漁業権の変更免許を受けなくても漁業権は消滅すると主張する。71年の衆議院農林水産委員会での水産庁長官の「漁業協同組合の特別決議をもって漁業権の一部の消滅が可能である」という答弁も根拠に挙げる。88年の仙台高裁判決も論拠としているが、正反対の判決も出ており、判例は確定したとは言い難い。


(沖縄タイムス)
(1)裁判が決着するまで、工事を一時的に中断する仮処分も、合わせて申し立てた。
辺野古を巡る県と国の対立が裁判に持ち込まれるのはこれが5回目である。今回の裁判は、埋め立て承認取り消し処分を巡って争われた過去の辺野古訴訟とは、その性格が異なる。
(2)漁業権が設定された海域で埋め立て工事を実施する場合、県の岩礁破砕許可を得る必要があるが、国は許可期限が切れた後も、許可を得ずに工事を続けている。「このまま工事が進めば無許可のまま岩礁が破壊されるのは確実で、県漁業調整規則に反する」というのが県の主張だ。これに対し政府は、地元の名護漁協が埋め立て海域の漁業権を放棄したため、岩礁破砕許可は必要ない、と指摘する。
(3)裁判の争点ははっきりしているが、本来問われるべき点は別のところにある。他府県では起こり得ないことがなぜ、沖縄で繰り返されるのか。
(4)司法は最終的な解決の場ではない。県が好んで国と対立しているわけでもない。県が再び、司法の場に問題を持ち込んだのは、国が、県や地元名護市の主張に一切耳を貸さず、強引に工事を進めているからである。
(5)日米両政府は、合同委員会という「密室」で、臨時制限水域の設定に合意し、それを根拠に県の立ち入り調査を拒否してきた。環境影響評価(アセスメント)でも情報公開、住民参加の原則は生かされず、肝心のオスプレイ配備が、ある時期まで伏せられた。
(6)水産庁は漁業権に関する過去の見解を変え、岩礁破砕の許可は不要という沖縄防衛局の判断にお墨付きを与えた。
(7)翁長雄志知事が提訴後の記者会見で語った「不条理を感じている」という言葉は、重い。その言葉に真剣に向き合うことなしに問題を解決することはできない。


 確かに、両社の指摘を受けて、次のことは言える。


Ⅰ.辺野古を巡る県と国の対立が裁判に持ち込まれるのはこれが5回目である。今回の裁判は、埋め立て承認取り消し処分を巡って争われた過去の辺野古訴訟とは、その性格が異なっている。県が申し立てた訴訟は直接的に工事の差し止めを求めるものではない。名護市漁業協同組合による漁業権の一部放棄後、漁業権の存在を確認するものだ。
Ⅱ.沖縄県の主張は、「漁業権が設定された海域で埋め立て工事を実施する場合、県の岩礁破砕許可を得る必要があるが、国は許可期限が切れた後も、許可を得ずに工事を続けている。このまま工事が進めば無許可のまま岩礁が破壊されるのは確実で、県漁業調整規則に反する」。
Ⅲ.安倍晋三政権の主張は、「地元の名護漁協が埋め立て海域の漁業権を放棄したため、岩礁破砕許可は必要ない」。
Ⅳ.他府県では起こり得ないことがなぜか、沖縄県では繰り返される。結局、他府県とあまりにも異なる基地負担の押しつけは、公正・公平であるべき行政を大きく逸脱しており、正当化できないものになっている。


 やはり、沖縄タイムスの次の指摘を、押さえるしかない。


 「沖縄では復帰後も、安保・地位協定が優先され、憲法と地方自治法に基づく権利が制約を受けてきた。復帰の際、政府は未契約米軍用地を強制使用するため、沖縄だけに適用される公用地暫定使用法を制定した。だが、憲法でうたわれた住民投票は実施されなかった。米軍用地特措法が改正されたのは、県知事の権限を封じ、未契約米軍用地を継続使用するためだった。そして今また、新基地建設のための強権の乱発である。この異常な事態こそが裁かれるべきだ。」




by asyagi-df-2014 | 2017-07-28 05:51 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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