沖縄県は、2017年7月24日、辺野古工事差し止め訴訟に入る。(1)

 沖縄県は、2017年7月24日、辺野古工事差し止め訴訟を、那覇地方裁判所に提訴した。
この模様を、沖縄タイムスは次のように伝えた。


 「沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、無許可で岩礁を破砕するのは県漁業調整規則に違反しているとして、県は24日午後、国を相手に岩礁破砕を伴う工事の差し止めを求める訴訟を那覇地裁に起こした。県側は判決が出るまで、工事を一時的に禁止する仮処分も地裁に申し立てた。新基地に関する県と国の対立は、昨年12月の違法確認訴訟上告審で県敗訴が確定して以来、5度目の訴訟に持ち込まれた。」


 また、沖縄タイムスは2017年6月9日、この訴訟と仮処分について、「工事差し止め仮処分、知事権限の保全が争点【「辺野古」訴訟ポイント】」、と次のように解説している。


(1)辺野古差し止め訴訟で県は国が翁長雄志知事の許可を経ないまま岩礁破砕を進めるのは県漁業調整規則が定めた知事の権利を侵害しているとして、那覇地裁に判決まで破砕行為をしないよう仮処分を申し立てる方針だ。審査では地裁が知事の権限を保全されるべき権利(被保全権利)と認めるかなどが争点となる。
(2)2015年4月、福井地裁は「安全技術には多方面にわたる脆弱(ぜいじゃく)性がある」などとして、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働を認めない決定を出した。樋口英明裁判長は「運転によって生命や身体などの人格的な利益(人格権)が侵害される危険がある」と指摘。被保全権利が存在するとして、周辺住民の訴えを認めた。
(3)一方、2016年12月、東村高江周辺の米軍北部訓練場で、ヘリパッド工事に反対する高江区の住民が国に工事の一時差し止めを求めた仮処分申し立てで、那覇地裁は住民側の訴えを却下した。森鍵一裁判長は「工事完成後に米軍機が運航を始めても、住民が健康被害を受ける恐れがあるとは言い難い」と判断。被保全権利の侵害を認めなかった。
(4)提訴される辺野古差し止め訴訟で県側代理人弁護士は、知事には漁業調整規則に基づき国へ許可を申請するよう求める権利があると主張。知事の請求権は被保全権利に当たると指摘している。


 さらに、沖縄タイムスは2017年7月24日、次のように差止訴訟をめぐる県と国の相違点について、次のように分析している。


Ⅰ:漁業権の解釈

(1)国は、岩礁破砕許可が不要とする理由として、米軍キャンプ・シュワブ埋め立て海域の漁業権の消滅を挙げる。今年1月までに、名護漁協は国からの補償金を得て漁業権を放棄した。水産庁は漁業権に関する過去の見解を変え、今回の場合の漁業権「放棄」には「知事の許可は不要」と沖縄防衛局の判断にお墨付きを与えている。
(2)県は名護漁協は漁業権の一部を放棄しただけで、今回は『漁場の変更』に当たると指摘。変更には、知事が認める『免許』の手続きを経なければならないため、現状では漁業権は残り、岩礁破砕許可も必要だと訴える。また、水産庁が3月14日に示した新たな見解はあくまでも『情報提供』だとし、漁業権の変更には知事免許が必要とした2012年の『技術的助言』や過去の政府答弁を重視すべきだと主張。漁業権は地方公共団体が責任を負って処理する自治事務である点も踏まえ『解釈権は県にある』と訴えている。」


Ⅱ.過去訴訟の効力

(1)国は、昨年3月の辺野古新基地を巡る訴訟の和解と、昨年12月の県敗訴の最高裁判決を踏まえ、『問題は決着済みで、県は従うべきだ』と差し止め訴訟を提起する県を批判する。」、「だが県は、和解で『従う』としたのは是正指示取り消し訴訟で、実際に県と国が争ったのは違法確認訴訟だったため、そもそも和解条項は『枠外』との認識。最高裁判決も違法確認訴訟という別裁判の判決であり、無関係だと訴える。
(2)県は、最高裁の『承認取り消しは違法』との判決に従い、翁長雄志知事は取り消し処分を取り消したと指摘。今回は、防衛局が県漁業調整規則に反して岩礁破砕許可を得ないまま工事を進めていることが問題点だとし『法令に反することを放置できないのは行政として当然だ』と訴える。」


Ⅲ.法律上の争訟-裁判審理対象か

(1)国は、行政機関が法や規則に従うよう『義務の履行』を求める訴訟は裁判の審理対象ではないとする2002年の最高裁判決を念頭に、今回の訴訟は審理の対象外だと主張する。
(2)県は、今回の訴訟は財産権の主体として財産上の権利利益の保護救済を求める訴訟には当たらず『法律上の争訟に該当しないことにはならない』と反論。県側弁護士も、判例は『自治体と国民の訴訟に限定したものだ』と指摘し、国民より高いレベルの法令順守義務を課されている国には、最高裁判決の射程は及ばないとしている。


 こうした今回の辺野古差し止め訴訟について、沖縄タイムスは2017年7月16日の社説で、名護市辺野古の新基地建設を巡って、「県と政府が再び、法廷で争うことになった。
県と国の辺野古訴訟はこれで5件目となる。あまりにも異常な事態だ。」、と表した。
あわせて、沖縄タイムスは、「地元の合意や理解、協力の得られない強権的な米軍基地建設は必ず、住民の尊厳をかけた抵抗運動を生み、米軍基地の存在を不安定化する。」、と規定する中で、この訴訟提訴の意味を次のように記す。


(1)現状に慣れてしまうと人は異常を異常と思わなくなる。仕方がないとあきらめる。政府が護岸工事を急いでいるのは来年の名護市長選、県知事選に向け、そのような空気をつくり出すためである。
(2)政府の国地方係争処理委員会は昨年6月、「双方が納得できる結果を導き出す努力をすること」を求めたが、政府は話し合い解決を拒否した。
(3)県の提訴は、安倍1強体制の下で、法解釈の変更と機動隊による強制排除によって、日米合意を押しつけようとする政府に対する、地方自治体のやむにやまれぬ異議申し立てである。


 沖縄タイムスは、沖縄県にとってのこの訴訟の位置づけを次のよう解説する。


(1)大型埋め立て工事は、環境影響評価の段階から本体工事を経て完成に至るまで、「住民参加」と「情報公開」が求められる。言葉を換えて言えば、民主的であること、科学的であること、住民意思が適切に反映されることが、同時に要請されるのである。だが、新基地建設を巡る環境アセスは、地元の合意や理解、協力が得られないまま進められたため、悪しき前例をつくってしまった。
(2)オスプレイ配備を知っていながら明らかにせず、評価書段階で後出しした。方法書には軍用機の機種も運用計画も示されていなかった。
(3)沖縄防衛局は県の協議申し入れに従わず、米軍は県が求める臨時制限区域内の調査に応じなかった。
(4)岩礁破砕許可を巡っては、水産庁がかつて県に示した見解とは百八十度異なる見解が示された。官邸との協議で従来の解釈を都合良く変更したのだ。
(5)橋本龍太郎元首相は当初、普天間返還の条件として「既に存在している米軍基地の中にヘリポートを建設する」と説明し、「地元の頭越しに進めない」と語っていた。これが原点だ。
(6)稲田朋美防衛相は、辺野古が完成しても緊急時の民間空港の利用について米側との調整がつかなければ普天間は返還されない、と国会で答弁した。


 また、沖縄タイムスは、「日米両政府はコロコロ計画を変更する。県民はそのたびに蚊帳の外に置かれ、振り回される。この計画、どこから見てもほんとに異常である。」、と日本政府を痛烈に批判する。
 加えて、沖縄タイムスは、2017年7月18日、「[Q&A]辺野古工事差し止め訴訟って何? 国と沖縄県の裁判、今回は知事の許可が必要かどうかを争うことに」、と読者向けに掲載した。
 全文を掲載する。番号は、筆者。


(1)-沖縄県が差し止め訴訟を始めるって聞いたけど、どういうこと?

 「沖縄防衛局が名護市辺野古の海を埋めて、新しい基地を造る計画があるよね。埋め立てる作業では、サンゴ礁など海の底を傷つけるから、魚の住めない環境になる可能性が高い。漁業に影響が出るので、好き勝手に海の底を傷つけないよう、知事の『岩礁破砕等許可』を得なければならないんだ」

 「防衛局はもともと2014年8月から今年3月までの許可を得ていたけど、期限が切れた後も、新たな許可を得ずに、そのまま工事を続けている。県は許可を得なさいと言ったけど、防衛局は従わなかった。県は『許可を得る必要がありますよね』と裁判所に確認するため、訴訟を起こすんだ。県議会は14日、訴訟で県側の弁護士に支払う費用などを認めた。県は18日以降に裁判所に提訴するよ」

(2)-防衛局はなぜ許可を得ないの?

 「埋め立てる海域には、名護漁協が魚や貝を捕る権利、いわゆる『漁業権』を持っていたけど、今年1月までに放棄した。そのために防衛局は補償金を払った。防衛局は『漁業権のない海域で、知事の許可は必要ない』と主張している。水産庁も同じ考え方なの」

(3)-じゃあ、県が間違っているの?

 「県は、名護漁協は持っている漁業権のうち一部を放棄しただけなので、『漁場の変更』に当たると主張している。変更は知事が認めないと成立しないと法律に書いているので、今の状態では埋め立て海域の漁業権は残っている。漁業権のある海域なので知事の許可が必要と主張している」

 「水産庁の考え方も、これまでと変わっている。県は水産庁に2回、今と過去の考え方のどちらが正しいか、と質問したけど、納得のいく答えが返ってこなかったので、裁判所に判断してもらうことになった」

(4)-県が勝てば、工事は止まるの?

 「県が勝訴するまでにはいくつものポイントがある。過去の裁判で、県のような行政機関が『法や規則に書いていることには従ってくださいね』と確認することは、裁判所での争いにふさわしくないという判決が出ているんだ。今回がそれに当てはまれば、本格的な議論が始まる前に、門前払いされる可能性がある」

 「本格的な議論が始まっても、防衛局や水産庁の主張より、県の主張の方が正しいと証明し、裁判所に認めてもらわなければならない。最終的に県が勝てば、防衛局は岩礁破砕等許可を得るために新たに申請しなければならない。県の許可が出るまでは工事が止まることになりそう」

(5)-仮処分も申し立てるというけど。

 「県の主張が正しくても裁判で判決が出るまでは工事が進むので、判決が出るまでの間の工事を止めてほしいとお願いすることだよ。裁判所が認めれば、工事は止まる。でも、やはりハードルは高いね」

(6)-県と国が争う裁判なんてあまり聞いたことがないよ。

 「翁長雄志知事は辺野古の新基地建設に反対しているよね。15年から16年までの裁判は、辺野古の海を埋め立ててもいいよという『埋め立て承認』を翁長知事が15年10月に取り消したことが正しいか、どうかを争っていた。今回は、防衛局が知事の許可を得る必要があるか、どうかを争うことになる」

 「那覇市の那覇空港第2滑走路建設では、沖縄総合事務局が知事の許可を得て埋め立て工事を進めているのに、辺野古でもめているのは対照的だよね。新基地建設には多くの県民が反対していて、知事も『あらゆる手段で阻止する』と決めているから、なかなかうまくいかないんだ。名護漁協に漁業権を放棄させたのも、防衛局が知事の許可を得ずに済む、つまり『知事の権限を取り上げよう』と考えたと言われている。あちらこちらで争いの火種がくすぶっているよ」


 最後に、「名護市辺野古の新基地建設を巡る違憲確認訴訟で2016年12月20日、県敗訴の最高裁判決が出た。これを受けて2017年12月26日、翁長雄志知事は埋め立て承認取消処分を取り消した。」(沖縄タイムス)ことの押さえが必要である。
 安倍晋三政権は、この訴訟においても、この最高裁判決を最大限に利用してくる。
 このことについては、沖縄タイムスも、裁判審理対象に関して、沖縄県側の考え方を、「県は、今回の訴訟は財産権の主体として財産上の権利利益の保護救済を求める訴訟には当たらず『法律上の争訟に該当しないことにはならない』と反論。県側弁護士も、判例は『自治体と国民の訴訟に限定したものだ』と指摘し、国民より高いレベルの法令順守義務を課されている国には、最高裁判決の射程は及ばないとしている。」(再掲)、と押さえている。
このことについては、あらためて、新垣勉弁護士の「承認撤回」考察時の指摘を再掲することで、最高裁判決の意味をあらためて抑え直す。


 最高裁判決は、前知事が行った埋立承認には「裁量権の逸脱」はなく許される一つの  政策判断であったと判断した。しかし、この司法判断は前知事が「適切な判断」を行  ったことを意味するものではない。単にそれが「違法・不当」ではなかったと判断し  たにとどまる。「違法・不当」でないということとそれが「適切な判断」であったか  どうかとは異なる。




by asyagi-df-2014 | 2017-07-25 06:33 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
画像一覧