「普天間返還」とは、「民間施設使用も条件」として那覇空港の使用が条件だったのか。

 普天間飛行場の返還条件における「民間施設の使用の改善」という「条件」とは、何だったのか。
 しかも、こうした「条件」は、日本政府から沖縄県にきちんと説明されてはいなかった。
 結局、この「条件」は「日米密約」と言えるものでしかない。
 稲田防衛省の「普天間の前提条件であるところが整わなければ、返還とはならない」、との2017年6月15日の「明言」は、「緊急時に米軍が民間施設を使える調整が日米間で整わなければ、普天間は返還されない」(沖縄タイムス)、ということを言い放つものである。


 この「民間施設の使用の改善」の「条件」とは、「普天間飛行場の返還条件」であり、2013年4月、日米両政府が合意した嘉手納基地より南の米軍基地の返還・統合計画で決まったものであった。
具体的な内容は次のものである。


Ⅰ.飛行場関連施設等のキャンプ・シュワブへの移転
Ⅱ.航空部隊、司令部機能、関連施設のシュワブへの移設
Ⅲ.必要に応じた飛行場能力の代替に関連する航空自衛隊新田原基地・築城基地の緊急時の使用のための施設整備
Ⅳ.代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善
Ⅴ.地元住民の生活の質を損じかねない交通渋滞、諸問題の発生回避
Ⅵ.隣接する水域の必要な調整の実施(7)施設の完全な運用上の能力の取得
Ⅷ.KC130空中給油機の岩国飛行場の本拠地化-の8項目


 この稲田「明言」について、琉球新報は2017年7月4日、次のように報じた。


(1)6月15日の参院外交防衛委員会。民進の藤田幸久氏への答弁だった。藤田氏は普天間飛行場の返還条件の一つ「長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」を挙げ、米側と調整が進まない場合に普天間が返還されないことがあるか確認した。藤田氏が問いただしたのは(4)の項目だ。普天間飛行場は滑走路約2700メートルだが、辺野古はオーバーランを含めても約1800メートルで、短くなる。そのため米側が「大型の航空機などが使用できる滑走路を求めている」(防衛省関係者)ため、民間空港の使用が想定されるという。
(2)ただ現状では日米間の協議で使用する空港は決まっていない。そこで、稲田氏は仮定の話だとした上で「普天間の前提条件であるところが整わなければ、返還とはならない」と明言し、新基地が建設されても普天間が返還されない可能性を繰り返した。
(3)返還条件の8項目については、防衛省も本紙の取材に対し、条件を満たしているのは(8)(上記Ⅳ)-だけだと回答しており、稲田氏と同様の見解を示している。
(4)今後、普天間飛行場についても、辺野古新基地が建設されても他の返還条件が満たされない場合、米軍が辺野古と同時に使用する可能性は否定できない。4月から新基地の埋め立て本体工事が進められているが、普天間飛行場の返還条件という根本の議論が改めて注視されている。


 この稲田「明言」は、沖縄に、大きな衝撃を与えることになった。
 だが実は、沖縄タイムスはすでに2017年4月17日、「辺野古新基地の滑走路「短い」米政府監査院が指摘 「別滑走路と共用」提案」、と問題の核心について次のように報じていた。


(1)米政府監査院はこのほど公表した米海兵隊のアジア太平洋地域における再編に関する報告書で、米軍普天間飛行場の代替施設の滑走路が普天間より短く設計されているため、固定翼機の訓練や緊急時に対応できないと指摘し、別滑走路との共用を提案した。日米間との協議で県内を含む12案が検討されているとし、確定を促している。
(2)監査院は、普天間の滑走路が約2740メートルで1本となっているのに対し、代替施設はV字型で約1800メートルが2本のため、普天間で行っている固定翼機の訓練や国連などの緊急支援活動への対応が困難となると指摘。」
(3)代替施設の滑走路の長さを巡る日米間の協議は1998年に始まったとし、2014年4月には米国防総省が日本政府に、緊急事態に使用可能な滑走路に関する調査を日米で実施するよう書簡で要請。県内に一つと、沖縄から2400キロ離れた地点の滑走路など12案が特定されたが、調査は完了していないと指摘。「滑走路を決定せずに(普天間が)返還された場合、米国防総省(米軍)の任務能力が妨げられることになる」と分析し、早期の確定を促している。
(4)米国防総省は米政府監査院の同調査に対し、「代替施設における訓練の必要条件を最終的に決定したのは米海兵隊だ」と述べ、「任務遂行能力に支障は生じない」と反論している。


 私自身、この4月17日の記事が掲載された折りには、辺野古新基地建設を止める一つの理由になるのではないかといったことから、その問題点を完全には把握できていなかった。
 しかし、この稲田「明言」とは、日本にとって根本的な問題であった。
 つまり、「民間施設の使用の改善」という「条件」とは、「緊急時に米軍が民間施設を使える調整が日米間で整わなければ、普天間は返還されないということ」、であったのである。
 しかも、「普天間返還を明記した1996年の日米特別行動委員会の最終報告には、緊急時の民間施設使用の条件はない。緊急時に普天間の代替機能を、九州の自衛隊2基地で受け入れることは2006年に日米で合意された。民間施設使用は13年に初めて追加されたが、その理由や経緯を含め一切が明らかになっていない。」(沖縄タイムス社説2017年7月7日)、という代物であった。
 結局、普天間飛行場の返還条件における「民間施設の使用の改善」という「条件」は、①「条件が満たされない場合、新基地が完成しても普天間が返還されないとなれば、本島内に辺野古と普天間の二つの海兵隊飛行場が併存することになること」、②「政府が繰り返す沖縄の『負担軽減』という移設問題の根本を覆すことになること」、③「仲井真弘多前知事が埋め立て承認と引き替えに政府に求め、政府が約束した『5年以内の運用停止』も成立し得ないことで、政府の約束が『空手形』になること」、④「そもそも県内移設にこだわるから8条件を付けられたこと」、ということだったのだ。
 加えて、管官房長官は、「米政府監査院が、辺野古新基地に予定されている滑走路が短いと指摘したことについて、菅義偉官房長官は12日の会見で計画の修正は『全く考えていない』と述べた。米国内での議論について、日本政府としてコメントする問題ではないと評価は避けた。その上で『普天間飛行場の代替施設は、日米政府で合意した内容に従って、建設を進めている』として引き続き現行計画に沿って工事を進める考えを示した。」
、と伝えていた。何とまあ、今更ながら、傲慢な発言である。


 さて、この稲田「明言」が、沖縄にとって何故衝撃なのかについて、琉球新報はこのように説明する。


「現在、嘉手納基地ではSACO最終報告に違反する形で移設したはずの旧海軍駐機場が使用されている。県や嘉手納町が問題視する中、米軍は2009年の日米合同委員会で『必要に応じて使用』に合意したと主張している。騒音問題に配慮して住宅地近くから嘉手納基地中央部に移されたため、旧海軍駐機場は使用されないとみられていた。だが、1月の移転完了後も外来機の飛来が相次いでいる。日本側は『必要に応じて使用』するとした合意の存在を否定する。一方で米側に対し、旧海軍駐機場の使用を禁止するようには求めておらず黙認している状態だ。」


 つまり、稲田の「明言」とは、「滑走路を決定せずに(普天間が)返還された場合、米国防総省(米軍)の任務能力が妨げられることになる」という米軍からの要求を受けざるを得ない日本政府の実像を明らかにしたのである。


 何故、沖縄が怒っているのか。
 普天閒返還においても、「SACO最終報告に違反する形で移設したはずの旧海軍駐機場が使用されている」状況と同様なことが、起きることが予想されるからである。
結局、この問題の本質は、普天間返還による沖縄の負担軽減よりも、米軍が「普天間飛行場の返還条件として緊急時の民間空港の使用を求めていること」、日本政府が「この米軍の要求を認める中で、自衛隊の強化拡大を企むこと」の二つが優先されているということにある。
 また、「きちんと日本政府から沖縄県の説明されていなかった」、ということにも触れなくてはならない。
 このことについて、沖縄タイムスは2017年7月6日、「謝花喜一郎知事公室長は5日の県議会で、13年に当時の小野寺五典防衛相が来県し仲井真弘多知事に統合計画を説明した際『「返還条件の説明はなかった』」と指摘。これまで政府から詳細な説明はないとし、『大きな衝撃を持って受け止めている』と述べた。」、と報じた。
 この関係が、日本政府と沖縄の偽らざる実態なのである。
 むしろ、逆に、日本政府は、「自衛隊の強化拡大を企む」以上、公にすることは得策でないと判断しているのである。
 こうした日本政府のあり方を、沖縄タイムスは、「安倍政権はよく『丁寧に説明する』『真摯(しんし)な対話を心掛ける』というが、実行されたことはない。特定秘密保護法、安保法制、『共謀罪』法での世論軽視、森友・加計(かけ)問題では疑惑に正面から向き合わないなど、いくつも指摘できるが、米軍普天間飛行場の返還条件を巡っても、丁寧な説明とは程遠い。」、と鋭く批判する。


 最後に、沖縄タイムスは、「『県内1カ所』を米側は公表していないが、この日の議会で謝花氏は、普天間の滑走路の長さを勘案すれば、約3千メートルの滑走路を持つ那覇空港が推察されると述べた。その上で、観光への影響や自衛隊との共有による危険性などを挙げ『那覇空港の米軍使用は認められない』と語った。」、と那覇空港の米軍使用に対する沖縄県の見解を伝えた。
 さらに、このことについて、「翁長雄志知事は5日の県議会6月定例会で『(米軍には)絶対に那覇空港を使わせない』と述べた。一方、稲田朋美防衛相は6月の参院外交防衛委員会で米側との調整が整わなければ普天間飛行場は『返還されないことになる』と明言している。県民の多数が反対している辺野古新基地が建設される上、政府、県、宜野湾市が一致している普天間返還も実現しないことになり、県は、普天間移設事業の根幹に関わる問題だとして政府に説明を求めていく考えだ。」、と報じる。
 沖縄タイムスと琉球新報は、那覇空港の米軍使用について、①「那覇空港は過密で、自衛隊との共用による騒音、事故などの影響が懸念されている。過密解消や観光需要に応えるため第2滑走路の増設が進む」(沖縄タイムス)、②「那覇空港の滑走路は2本になっても飛行機の発着はわずか1・17倍にしかならない。米軍の嘉手納飛行場への進入経路があるからだ。」(琉球新報)、との理由から、「米軍機の緊急使用はもってのほかだ。」、と強く指摘する。


 果たして、今回のことを、日本人は、怒りをもって捉えられるのだろうか。
 「辺野古が唯一の解決策」「沖縄の負担軽減」といった言葉は、この「日米密約」を覆い隠すものでしかなかった。やはり、「米国の目下の政府として、対米従属政策を『国是』としてきた」日本を変えなくてはならない。






by asyagi-df-2014 | 2017-07-14 06:09 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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