沖縄の今を知るために。-琉球新報社説(2017年6月9日・10日)より-

 琉球新報からの2本の社説による日本という国への警鐘は、沖縄の今を私たちに語りかける。
 「今は、少しだけでも歩みを止めて考える時ではないか、」、と。いや、事態は、「すぐにでも状況を変えなけれなならないものになっているのではないか」、と。
 それは、琉球新報2017年6月9日の「相次ぐ緊急着陸 米軍機に飛ぶ資格はない」、2017年6月10日の「旧駐機場使用 合同委議事録を公開せよ」。
 それぞれが沖縄の声を絞り出す。


 琉球新報は、沖縄の危険な現実を、「相次ぐ米軍機の緊急着陸は、点検・整備体制がずさんなことの証明である。改善の兆しが見られない以上、米軍が県内で実施する全ての飛行訓練を廃止する以外に、県民の不安を払拭(ふっしょく)し、安全を守る手だてはない。」、と米国及び日本の両政府に突きつける。
沖縄の危険な現実、異常事態は、次のようなものであると説明する。


(1)米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが6日、伊江島補助飛行場に緊急着陸した。1日にもCH53大型ヘリが久米島空港に緊急着陸したばかりである。米軍機の緊急着陸は4月以降、確認されただけでも7回に上る。
(2)まさに異常事態である。県民は日々、米軍の訓練によって危険にさらされていることを米軍は強く認識すべきだ。だが米軍の説明を聞く限り、その意識は希薄である。
(3)米海兵隊は、伊江島での緊急着陸を「事故を未然に防ぐために警告が点灯した『小さな事案』で、その時点で機体に深刻な問題が生じていたわけではない」と説明した。久米島での事案は「操縦室で警告サインが表示されたため、最寄りの久米島空港に『予防着陸』した」としている。


 琉球新報は、このような米軍についてこう分析する。


(1)米軍の説明に共通するのは、県民に不安を与えたことに対する責任感のなさであり、県民軽視の姿勢である。
(2)「小さな事案」「予防着陸」などと、事態を矮小(わいしょう)化する印象操作は看過できない。
(3)整備が万全ならば「警告が点灯」することはないはずだ。米軍にとって「小さな事案」でも、県民にとっては「大きな事案」である。緊急着陸が相次ぐ要因は事態を軽視し、住民の不安を一顧だにしない米軍の姿勢そのものにある。
(4)緊急着陸は事故を防ぎ、県民や乗員の安全を守るために必要な措置である。一方で、緊急着陸を招かないようにすることは「大きな責務」との意識も必要である。米軍にその認識があるのか疑わざるを得ない。
(5)点検・整備に最大限努めていても、緊急着陸が相次ぐならば、担当者の技量に問題があるか、もしくは機体に欠陥があるかのいずれかだ。


 この上で、琉球新報は、次のように指摘する。


(1)人的・物的被害がなければ、問題はないとするような米軍の対応も理解に苦しむ。伊江島に緊急着陸したオスプレイは住民への説明も謝罪もないまま、普天間飛行場に向けて飛び立ち、住民の不安をさらに招いた。
(2)住民に不安を与えること自体、大きな問題である。米軍にはその認識がない。不安を与えた当事者であるとの意識が決定的に欠けている米軍に、県民の頭上を飛ぶ資格はない。このままでは2004年の沖国大米軍ヘリ墜落事故のような事故が再び起きかねない。多くの県民がそれを危惧している。


 沖\琉球新報は、このような沖縄の危険な異常事態解決のために、「日米両政府は緊急着陸が相次ぐ事態を重く受け止め、県民が納得する安全策を講じるべきだ。異常な状況をこれ以上放置することは断じて許されない。」、と要求する。
 ただ、こうした米軍のあり方-県民にとっては「大きな事案」である。緊急着陸が相次ぐ要因は事態を軽視し、住民の不安を一顧だにしない米軍の姿勢-は、軍事的植民地主義の発露でしかない。
 「点検・整備に最大限努めていても、緊急着陸が相次ぐならば、担当者の技量に問題があるか、もしくは機体に欠陥があるかのいずれかだ。」というままでは、沖縄県民の不安は現実になる危険性がある。


 次に、このような沖縄の危険な異常事態を解決するための日本政府のあり方、特に、米国の軍事的植民地主義の下支えをする安倍晋三政権への警鐘。
 今、沖縄でどういうことが起きているのか。ここでは、沖縄タイムスの2017年6月4日の記事を引用する。


(1)沖縄県米軍嘉手納基地にある旧海軍駐機場の移転は、1996年12月の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で「騒音軽減イニシアティブの実施」として盛り込まれ、日米両政府が合意している。だが、旧海軍駐機場は、現在も合意の趣旨に反した使用が続いている。最終報告には「嘉手納飛行場における海軍航空機の運用および支援施設を、海軍駐機場から主要滑走路の反対側に移転する」と明記している。
(2)旧駐機場は嘉手納町の住宅地に近い場所にあり、エンジン調整や悪臭などの被害が深刻だったことから、町が繰り返し移駐を求めてきた経緯もある。2011年から民間地から離れた沖縄市側に新駐機場の建設が始まり、16年末までに工事が完了した。日本側は新駐機場整備に157億円を負担している。旧駐機場の一部は倉庫や整備工場などとして使われる予定で、老朽化し取り壊される建屋もあるという。
(3)03年、移転を受け入れ、地元住民から批判も受けた仲宗根正和元市長は当時、「苦渋の選択だが、隣町の人たちの苦痛を考えた場合、やむを得ないと判断した」と述べていた。だが、現状は海軍機が新駐機場に移転した後も、逆に外来機が穴を埋める形で旧駐機場を使い騒音を発生させるなど、地元住民の願いや日米合意の趣旨に反する形で運用されているのが実態だ。


 あわせて、沖縄タイムスは地域住民の声も伝える。


(1)嘉手納町民でつくる嘉手納町基地対策協議会の上地安重会長(73)は「20年間、騒音を何とかしてくれという町民の願いがかなったと思っていたが、それが裏切られた。何のための約束だったのか」と憤る。
(2)31日には旧駐機場の使用禁止を沖縄防衛局に求めたばかり。「米軍が今後も何かと理由を付けて、駐機場の使用が常態化するのではないか」と懸念。稲田朋美防衛相が使用中止は求めずに、事実上容認したことについては「何を考えているのか分からない。誰がどう見ても、合意違反であるのは明白だ」と反論した。
(3)旧駐機場近くの嘉手納町屋良に住む仲宗根嶺子さん(65)は「騒音の心配もあるが、事故などいつ何が起こるか分からず不安。使用はすぐにやめてほしいし、合意を守って」と訴えた。
(4)「負担軽減に明らかに逆行している」。移転先の駐機場に近い沖縄市池原自治会の仲嶺朝信会長(65)は怒りをあらわにした。「地元の声を無視して軍の論理で行動するやり方は占領意識丸出しだ」と指摘。「日米合意を守ってもらわなければ困る」と強調した。


 この米軍嘉手納基地の旧海軍駐機場の継続使用に関わって、琉球新報は、「日米両政府の主張が食い違っている。一体どちらが正しいのか。」、と。
 また、琉球新報は、この問題について次の指摘を行う。


(1)この際、日本政府に合同委員会の議事録の全面公開を求める。そうすれば全て明らかになるはずだ。
(2)あるいは、米軍嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の首長らが主張するように、日米間で旧駐機場を使わないよう再確認すべきである。
(3)そもそも日米合同委員会には、基地を過重負担させられている沖縄の代表は参加しない。日米にとって沖縄を巡る秘密の話ができる便利な場所である。
(4)沖縄の施政権が日本に返還された1972年5月15日、日米合同委員会が開かれ、日本政府が引き続き沖縄の米軍基地を提供することを確認した。これらの取り決めを記した日米合同委員会合意議事録は「5・15メモ」と呼ばれ、秘密扱いとすることを日米が確認した。5・15メモで嘉手納飛行場の使用条件は、施設周辺水域が「常時使用される」ことなどを確認した。運用への「制限」を設けることはなかった。米国統治下と同様に自由使用が認められたのである。「日米安保、日米同盟が大変なことになる」との理由で政府は公開を拒み続け、97年になってようやく公開された。
(5)今回問題になっている旧海軍駐機場は、住宅地域への騒音被害軽減を目的に96年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で移転が決定した。新駐機場完成後に併用するという文言はない。しかし、今年1月に主要滑走路の反対側に移転が完了したものの、その後もKC135空中給油機、特殊任務機C146Aなど外来機による使用が相次いでいる。明らかにSACO合意違反だ。
(6)2国間の合意を無視する米軍に対して、稲田朋美防衛相は今回の使用を「例外的」として米軍の使用を全面的に認める考えを示した。旧駐機場の使用中止も求めていない。全く理解できない。


 
 実は、琉球新報の主張は、「騒音と、発がん性物質を含む可能性がある黒色粒子の発生源となる旧駐機場の運用は認められない。」、という当たり前のものである。
安倍晋三政権の「今回の使用を『例外的』として米軍の使用を全面的に認める考えを示した。旧駐機場の使用中止も求めていない。」、との方針は、米国の軍事的植民地主義の下支えをあらためて表明したに過ぎない。
 そこには、「騒音と、発がん性物質を含む可能性がある黒色粒子の発生源となる旧駐機場」とともに生きることを強制された人々への思いは全く含まれない。


もちろん、ここで見えてくるものは、「日米密約」や「SACO合意」等の構造的矛盾がもたらす、軍事的植民地主義下に生きることを強いられる沖縄の人たちの苦悩である。




by asyagi-df-2014 | 2017-06-22 05:55 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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