安倍晋三政権は、「核保有国と非保有国の橋渡し役」を放棄した。

 朝日新聞は2017年3月29日、標題について次のように報じた。


(1)米ニューヨークの国連本部で27日に始まった「核兵器禁止条約」の交渉会議で、日本政府代表の高見沢将林軍縮大使は「核兵器国の理解や関与が得られないことは明らかだ」と演説し、交渉への不参加を宣言した。唯一の被爆国としての核軍縮推進と、北朝鮮の核開発など安全保障環境の厳しさをてんびんにかけた結果、自任してきた「核保有国と非保有国の橋渡し役」を放棄した。
(2)「核兵器国と非核兵器国の対立をいっそう深めるという意味で逆効果にもなりかねない。交渉へは参加しないことにした」
 岸田文雄外相は28日、首相官邸で記者団に、核兵器禁止条約への交渉不参加を表明した。被爆地広島出身の外相として、昨年5月のオバマ前米大統領の広島訪問の実現に尽力し、条約制定に向けた交渉開始が決まった昨年10月の記者会見でも「交渉に積極的に参加し、主張すべきことは主張していきたい」と訴えていた姿勢から一転した。
(3)日本政府関係者は「トランプ米大統領を刺激することはすべきではないという首相官邸の意向」があったと話す。親密ぶりが演出された先月の日米首脳会談では、日本の働きかけで共同声明に米国の「核の傘」による日本の防衛が盛り込まれた経緯もあり、条約に反対する米国と歩調を合わせる道が妥当と判断した。
(4)日本政府は当初、交渉に参加し、「核なき世界」の実現に寄り添いながら、北朝鮮の核ミサイル開発の脅威などを挙げ、「今すぐ条約を制定するのはマイナス」と主張し、被爆地と米国双方から一定の理解を得るシナリオを描いていた。だが、いざ交渉に向けた情報収集をしてみると、日本の狙いに賛同してくれそうな交渉参加国が見当たらず、「仲間がいると思ったらいなかった」(日本政府関係者)との誤算もあった。過去の発言との整合性を記者団から問われた岸田氏は、質問を遮りながらこう述べた。「最後の最後まで様々な情報があった。我が国の主張が会議で受け入れられることは難しい。こういった判断だ」(下司佳代子)
■反対派の不参加、織り込み済み
(5)27日午前10時すぎ。核兵器禁止条約の交渉会議が始まった議場の外に、米国のヘイリー国連大使ら約20カ国の代表が並んだ。交渉を批判するためだった。ヘイリー氏は「禁止条約を作るために議場に足を踏み入れた国々は、自国民の利益を考えているのか、自問しなければならない。我々が直面する脅威を理解しているか」と交渉の参加国を批判。両脇に英仏代表が立ち、韓国など「核の傘」に入る国々も同席した。
(6)米国では1月、トランプ政権が誕生した。同政権は「核能力の強化」を掲げ、核軍縮には後ろ向きとされる。国連などでの多国間交渉にも否定的だ。「核なき世界」の理想を掲げたオバマ前政権とは異なる。ロシアも時折、米国との新たな軍拡競争をいとわないかのような姿勢をみせる。核大国の米ロが核軍縮への意欲を失っている。ただ、反対派の不参加は、主要な条約推進国側には織り込み済みだ。「交渉を迅速かつ率直に進める」(メキシコ)ことで、対立状態が長期化して国際的な分断が深まることを避けたい考えだ。さらに核保有国など反対派が将来、条約に加わりやすくするため、条約の文言や構成を工夫するよう知恵を絞る。条約案の最初のたたき台は5月にも示される。(ニューヨーク=松尾一郎、金成隆一)


 あわせて、次の「声」を伝えた。


(1)27日の交渉会議で被爆体験を語った、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の藤森俊希事務局次長は、政府の交渉不参加表明について「とても賛同できない。外務省や政治家は『唯一の戦争被爆国』という枕ことばを使う。今回、(軍縮)大使が『建設的なことができない』と、いわば『帰る』と言いに来たようなもの。唯一の戦争被爆国の政府が言う言葉ではないと私は思う」と話した。
(2)国内の被爆者からも、落胆や憤りの声が上がった。
 「怒り心頭。がっかりです。日本政府は核廃絶の立場にまわるべきだ」。広島県原爆被害者団体協議会(坪井直理事長)の箕牧智之(みまきとしゆき)副理事長(75)は28日、広島市で会見し、こう語った。条約制定を求めて国際署名を集めているだけに失望も大きい。「被爆者の願いは永遠に核被害者がまた出ないこと。会議ではその思いをないがしろにしないことを願っている」
(3)原爆で背中に大やけどを負った長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄(すみてる)会長(88)も長崎市で取材に応じ、「人間の苦しみを分かっていない」と怒りをあらわにした。原爆の熱線で背中を焼かれた自身の写真とともに、核兵器廃絶を訴えてきた。「核廃絶に向かっている国際社会の動きに反している。被爆国としての役割を果たしてほしい」
(4)長崎市の田上富久市長は報道陣に「被爆地として到底理解できず、深い失望を感じている」と語った。広島選出の岸田文雄外相が、会議への参加には前向きな姿勢を示していたことに期待を寄せていた。「被爆国としてテーブルにつき、どういった条約なら前に進むのか、議論をしっかりとリードしてほしかった」とも述べた。
(5)核兵器禁止条約を推進してきたNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のティム・ライトさん(アジア太平洋担当)は「日本は核兵器を受け入れるのか、受け入れないのか。今回の歴史的な交渉への不参加は、日本が核兵器を合法的な兵器と考えていることを示している。日本の不参加は、核なき世界の達成を切望してきた広島と長崎の生存者への侮辱であり、被爆者への裏切りだ」とコメントした。




by asyagi-df-2014 | 2017-04-01 08:33 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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