沖縄の「決断」。「撤回」を考える。-沖縄タイムス20170326-(1)

 琉球新報電子版は2017年3月25日、翁長雄志沖縄県知事による「撤回」発言について、次のように報じた。


 「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に伴う新基地建設計画に反対する「違法な埋め立て工事の即時中止・辺野古新基地建設断念を求める県民集会」(辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議主催)が25日、米軍キャンプ・シュワブゲート前で開かれ、主催者発表で3500人超が参加した。
 出席した翁長雄志知事は新基地建設に必要な辺野古沖の埋め立て承認について「撤回を力強く、必ずやる」と述べ、埋め立て承認の撤回を初めて明言した。翁長知事が辺野古での市民集会に参加するのは就任以来初めて。」


 また、このことに対応して、沖縄タイムスは、「『撤回と訴訟』新基地阻止の切り札 表明に集会の場を選んだ知事」、と2017年3月26日に記事を掲載した。
 これを基に、沖縄の「決断」、この「撤回」を考える。
 まず、沖縄タイムスは、「沖縄県の翁長雄志知事は25日、埋め立て承認の撤回を表明する場として、県民集会の大舞台を選んだ。知事は国が岩礁破砕許可を得ずに新基地建設工事を進めた場合、工事の差し止め訴訟を提起する方針も示している。「新基地阻止」を実現できていない知事は、撤回と訴訟の二大カードをてこに、反転攻勢を期す構えだ。撤回と訴訟は早ければ4月中にも実現する可能性がある。4月はくしくも、辺野古で基地建設に反対する市民の座り込み行動から、千日を迎える節目。行政、市民とも、年度開け早々に闘争のヤマ場を迎える。」、と伝えた。
 また、この県民集会での翁長雄志沖縄県知事あいさつは次のように報じた。


(1)辺野古新基地阻止の闘争は、新たなステージに入っている。今日は山城博治さんの姿もあったようだ。今日を期して沖縄の新しい戦いが始まる、という意味で私も参加した。国のやり方は、米軍占領下を思い出す。銃剣とブルドーザーで家屋敷をたたき壊し、新しい基地を造って県民の住む場所を奪った。まったく同じ手法で、あの美しい大浦湾を埋め立てようとしている。
(2)米軍基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因だ。本土の人はよく「あんたがたは基地で食べてるんでしょ」「だから基地を預かるのは当たり前じゃないか」と言う。では、抑止力のために菅義偉官房長官のふるさとである秋田県の十和田湖を埋めるのか。宮城県の松島を埋めるのか。びわ湖を埋めるのか。本州と四国を結ぶ橋は1本1兆円、九州の新幹線も1兆円だ。那覇空港の第2滑走路に関しては「沖縄が基地を預かっているから特別に造ってあげてるんだ」という話をする人がいる。四国も九州も、米軍基地を預かってるから橋を架け、新幹線を走らせるのか。こういう話はやめてほしい。
(3)私たちは心を一つにして包容力を持ち、新辺野古基地は絶対に造らせないとやっていきたい。国は岩礁破砕の許可も無視をして通り過ぎようとしている。私はあらゆる手法を持って、撤回を力強く、必ずやる。チバラナヤーサイ(頑張りましょう)、ナマカラルヤイビンドー(これからですよ)。


 こうした一連の翁長沖縄県知事の思惑について、次のように解説する。


Ⅰ.知事はなぜ、県民集会をこれほど重視したのか。


(1)今月16日。知事は工事差し止め訴訟の検討を表明した記者会見で、記者から「県が撤回権限を行使しないことに県民のいら立ちが募っている」と問われ、「いら立ちもあると思う。全部耳に入っている」と認めた。
(2)新基地建設を阻止する闘争で、知事が最重視するのは世論の支持だ。国の海上工事が進み、知事は有権者による不信の高まりを肌感覚でとらえていた。知事はもともと昨年末の最高裁敗訴を機に、基地建設の阻止闘争が「第2ステージに進む」と宣言し、周囲は「行政の長から政治家への軸足を移す」と解説。市民集会に積極的に参加する方向へかじを切っていた。工事の進捗(しんちょく)で知事の危機感はさらに高まり、集会への参加と撤回の表明に踏み切ることが必要だったのだ。
(3)国は早ければ4月下旬にも辺野古海域で護岸工事に着手する。撤回カードを切るタイミングを模索する県は、国が岩礁破砕許可を得ずに工事を進めたり、前知事が埋め立て承認した際に付した留意事項にある事前協議が不十分だったりする「信義則違反」の積み重ねを、撤回処分の根拠にすることを検討している。
(4)知事は集会で撤回に言及する直前、こう述べた。「(国は)いろんな申請を無視して通り過ぎようとしている。その一つ一つが私の胸に貯金として入っている」。
(5)「撤回と訴訟」新基地阻止の切り札 表明に集会の場を選んだ知事。


Ⅱ.知事発言の意味


(1)翁長雄志知事が辺野古の県民集会に初めて参加し、さらに埋め立て承認の撤回を明言した背景には、国による新基地建設工事が着々と進むことで低下した求心力を回復する狙いがある。行政の長としての立場と市民運動を区分してきた従来の姿勢を転換し、県民との一体感を重視することで、新基地建設の阻止闘争で国に対して後手に回ってきた印象を払拭(ふっしょく)したい考えだ。
(2)知事は2015年に那覇市のセルラースタジアムで新基地建設阻止を掲げる県民大会に参加したが、辺野古集会への出席には慎重な姿勢を保っていた。知事周辺はこれまで「建設現場の辺野古に赴き、県民の期待感を高めた後に基地建設が進んでしまえば、期待が失望に変わるリスクが大きい」と理由を解説してきた。ただ、昨年末の最高裁敗訴で埋め立て承認の取り消しを取り消さざるを得なくなり、国は2月に辺野古海域へコンクリートブロックを投入。海上工事に着手した。早ければ4月末にも護岸工事を始める見通しだ。
知事公約の一丁目一番地である新基地建設阻止で有効な手だてが打てず、25日の集会前、知事を支持する県民の間にもいら立ちが強まっていた。
(3)こうした世論の動きを知事は敏感に察知しており、辺野古集会への参加だけではなく、県民に待望論が強い撤回の表明が不可欠と判断した。焦点は撤回要件の確立と、処分へと踏み切る時期に移る。
(4)撤回カードを切ったとしても、国による代執行訴訟が待ち構えるのは確実。県は二の矢、三の矢を放つ中長期戦略を練る必要性にも迫られる。


 さて、新垣勉弁護士の説明によって、この「撤回」については、次のことを学んできた。


Ⅰ.最高裁判決は、前知事が行った埋立承認には「裁量権の逸脱」はなく許される一つの  政策判断であったと判断した。しかし、この司法判断は前知事が「適切な判断」を行  ったことを意味するものではない。単にそれが「違法・不当」ではなかったと判断し  たにとどまる。「違法・不当」でないということとそれが「適切な判断」であったか  どうかとは異なる。
Ⅱ.埋立承認に「違法・不当がないと判断された現在、残された課題は埋立承認を「今後  も維持するのか、撤回するのか」の判断である。
Ⅲ.埋立承認が「適切であったか否か」を問う最も直接的な法的対抗措置は、県民の民意  を根拠とする「撤回」処分ある。この撤回処分は、埋立承認後の新知事誕生に伴う政  策変更(民意)を理由とするものであり、法的に十分理由が存在するものである。
Ⅳ.この場合の「撤回」の法理は、「埋立承認を撤回することにより生じる国の不利益」  と「撤回して新基地建設を行わないことにより生じる県民の公益性」を比較考慮し、  公社の必要性が前者を上回ると評価できれば、法的に「撤回」を行うことができるこ  とを示す。また、「埋立承認は維持すべきでない」との判断の是非を司法の場で判断  してもらうためには、「撤回」処分が効果的であり有用である。
Ⅴ.知事の権限としての埋立承認の「撤回」権限に基づく「撤回」処分は、「埋立承認を  将来に向かって取り消す行政行為」である。また、この「撤回」処分は、「これまで  の一連の判決の影響を受けない「新しい処分」である。



 確かに、埋立承認の「撤回」は、沖縄県の判断である。





by asyagi-df-2014 | 2017-03-29 07:34 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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