「辺野古が唯一の解決策」を考える。(4)-今こそ辺野古に変わる選択を~NDからの提言(第1部「辺野古に変わる選択肢」)より-

 新外交イニシアティブ(以下、NDとする)は、2017年2月、「今こそ辺野古に変わる選択を-新外交イニシアティブ(ND)からの提言」を発表した。
 ここでは、 第1部「辺野古に変わる選択肢」を読む。要約する。



Ⅰ.沖縄は日米政府の「不正義」に怒っている


(1)2015年9月、翁長雄志沖縄県知事は、ジュネーブの国連人権理事会総会で以下のように述べた。「沖縄県内の米軍基地は、第二次世界大戦後、米軍に強制接収されて出来た基地です。沖縄が自ら望んで土地を提供したものではありません。沖縄は日本国土の0.6%の面積しかありませんが、在日米軍専用施設の73.8%(2017年12月の北部訓練場過半の返還により、2017年2月現在は70.6%)が存在しています。戦後70年間、いまだ米軍基地から派生する事件・事故や環境問題が県民生活に大きな影響を与え続けています」。
(2)沖縄は、軍用機の騒音・爆音、墜落事故、山火事、有害物質の流出による環境汚染、性犯罪、殺人事件などの犯罪など、米軍基地から派生する様々な問題に悩まされてきた。例えば、米兵の犯罪率は高く、施政権が日本に返還された1972~2013年の間に限っても、米兵による犯罪件数は5,833件(年平均142件)で、うち 1割は殺人、強盗、強姦、放火などの重大犯罪であった。また、同期間において、飛行機事故は594件(年平均14件)起きている。米軍基地の過度な集中が犯罪件数の発生数につながっていることは容易に想像できる。
(3)日米地位協定により、基地への立ち入りが極めて限定的で、基地内で起きる猛毒のダイオキシン汚染、PCB汚染、日常的なオイル漏れなど、県民の健康と生活に直接影響を及ぼしかねない環境汚染に地元自治体が直接関与できないのは地方自治の見地からも到底、適切とはいえない。


 結局、「基地の島」とも呼ばれる沖縄では、沖縄本島の約20%が米軍基地に占められている。これらの米軍基地は、第二次大戦中の米軍の占領や1950~60年代の日本本土からの基地移転により建設され、現在まで使用され続けているものである。


Ⅱ.基地の歴史と現状


(1)普天間基地は、大戦中の1945年6月頃、米軍が沖縄上陸ののち、宜野湾村(当時)の農村集落を占領し、日本本土を爆撃する最前線基地として利用するため建設した基地である。同年8月の終戦後,収容所や避難先から戻った住民が家に帰ると、一帯はすでに強制接収され、滑走路が出来上がっており、住民の立入りが禁止されていた。
(2)第二次大戦後も沖縄では米国による支配が続き,米軍が住民の土地を強制的に収用できるとする米占領当局の布令により、土地収奪が続けられた。
(3)1951年のサンフランシスコ平和条約締結以降、日本本土では基地反対の世論が高まった。これを鎮め、同時に、米国の軍事費を削減するため、日本本土の米陸軍部隊や米海兵隊が沖縄へ移された。現在沖縄に配備されている米海兵隊も、岐阜県、山梨県、静岡県などから沖縄に配置されたものである。1972年に沖縄が日本に返還されたのちも、こうした現状は変わっていない。
(4)沖縄の人々は普天間基地の沖縄県内移設に強く反対し、大規模な反対運動を行ってきた。2004年4月に始まった辺野古建設現場における座り込みも12年以上続いている。日本政府は、反対する住民を排除するため、東京の治安対策部隊である警視庁機動隊を投入している。


 結局、普天間基地返還の条件と称して、これまでと同様の手法で新たな基地を押し付ける日米両政府の強制的な姿勢が、沖縄県民に負の記憶を呼び覚ましている。


Ⅲ.辺野古が最善の選択肢という論理は破たんしている


 日米両政府が2013年4月の日米安全保障協議委員会(2+2)で合意した普天間代替施設の判断基準は、以下の4点であった。
 (1) 運用上有効であること。
 (2) 政治的に実現可能であること。
 (3) 財政的に負担可能であること。
 (4) 戦略的に妥当であること。


ⅰ.運用上の有効性(基地の規模と設備が、所在、来訪する航空機の運用上のニーズを満たし、飛行に制約がないことを意味。)


(1)現在建設が進められようとしている辺野古の新基地には、集落の上空を飛行しないように2本の滑走路を建設する計画が示されている。この設計では、天候の急変の際、作戦上の柔軟な運用が妨げられる可能性がある。規模と設備の面でみれば、現在および将来の配備機種・機数に見合う地積さえ確保できればよい。こうした候補地は、沖縄のような狭い島でなくとも、世界中に存在している。
(2)オスプレイが輸送する地上部隊との適正な距離も、運用上の判断基準である。地上部隊が必要とするのは隊舎と訓練場であって、31MEUの地上部隊と航空部隊がパッケージで移転することを前提とすれば、やはり候補地は世界中に存在する。


ⅱ. 政治的実現可能性(地元の自治体や共同体が基地の存在を許容することを意味。)


(2)辺野古の新基地建設は、計画が公表されて以降20年間、県、名護市および辺野古周辺地区の住民を分断する政治的対立の火種であり続けている。
(3)賛成する住民も、積極的に歓迎しているのではなく、住民を分断する対立状態に耐えられなかったり「世界一危険」と言われる普天間基地の返還の実現のためにやむなく受け入れようとしているに過ぎない。そのような消極的賛成の世論を根拠に基地を建設しても、基地運用への十分な支持が期待できないばかりか、予期せざる事故や事件の発生によって一気に反対の世論に発展する可能性がある。
(4)ましてや建設に反対している住民の怒りはすさまじく、基地の安定使用は望むべくもない。


 結局、辺野古は、最も政治的に実現可能性がない地域と言うべきである。


ⅲ.財政的負担可能性


(1)日本政府の試算によれば、辺野古移設のために必要な財政負担は3,500億円である。この金額は、今後の設計変更などによってさらに増額されると考えられている。これは、日本の防衛関係費1年分の7%に上る額であり、決して小さな額ではないが、日本政府は、これを負担可能であると判断している。したがって、この3,500億円以下の経費で実現可能な計画であれば、財政的に負担可能ということになる。
(2)例えば、海兵隊主力のグアム移転に伴い日本政府が負担する金額2,700億円は、辺野古の基地新設よりも少ない。


 結局、このグアム移転計画のように、既存の施設の拡張計画に併せて、大規模な埋め立てを必要としない施設を新設する代案であれば、現行計画よりも少ない財政負担で済む。そのような既存施設は、米本土をはじめ、アジア太平洋地域に数多く存在している。


ⅳ.戦略的妥当性


 結局、辺野古案の最大の問題は、戦略的妥当性を主張できないことにある。


 後に詳述するように、移動速度が遅く、ミサイル攻撃に対して防御力に欠ける海兵隊陸上部隊が中国の中距離弾道ミサイルの射程内に存在することは、米政府のアジア地域におけるリバランス政策において最も弱い「脆弱性の窓」となる可能性があり、米国の戦略にとって妥当とは言い難い。


Ⅳ.米国の戦略上の利益のためには海兵隊が沖縄にいるべきではない


(1)1996年、普天間返還合意当時の米国の戦略は、中東および北東アジアの二つの大規模紛争(2 MajorRegional Conflicts)に対処することを念頭に、欧州および極東にそれぞれ10万人の前方展開兵力を維持するというものであった。20年後の今日、米政府は、アフガニスタンおよびイラクにおける戦争の長期化の中で、膨大な財政赤字に対処するため国防費の強制削減に取り組んできた。大規模な軍事介入を控えるとともに前方展開兵力の配備を見直し、日本や北大西洋条約機構(NATO)などとの協力を必要としている。
(2)アジア太平洋においては、近年、中国の軍事的進出が急速に進んでいる現状を踏まえ、力のバランスを長期にわたって維持する再均衡化(Rebalance)を目指している。
(3)再均衡化戦略を特徴づける要素は、以下の4点である。
ⅰ.中国を封じ込めるのではなく、共有されたルールの下での共存を目標とする。
ⅱ.万一中国に対する軍事的対応(Hedge)が必要となった場合には、戦略目標を明確にしたうえで、それに見合う軍事力を展開する。
ⅲ.そのため、米軍の態勢としては、宇宙・サイバーを含むC4ISR(指揮、統制、通信、コンピュータ、情報、監視、偵察)の優位性を維持するとともに、大規模な前方展開兵力よりも、必要な時に適切な規模の軍事力を必要な場所に展開できる輸送能力とアクセス可能な基地ネットワークを構築する。
ⅳ.同盟国・友好国の自助能力を高める。


 結局、こうした軍事戦略の流れは、米国が「世界の警察官」としての役割を減らそうとする場合にも、米国自身の安全保障上の国益を長期にわたって維持するために必要であり、かつ自らの負担を軽減する意味でも、将来にわたって合理的だあり続ける。


Ⅴ.海兵隊の位置づけ


 海兵隊の配備は、こうした戦略的トレンドの中で考慮しなければならない。その際、考慮すべき要素として、以下の点があげられる。
ⅰ.東アジアにおける再均衡化の焦点は、南シナ海、東シナ海および西太平洋という広域な戦域における力のバランスの維持である。
ⅱ.海洋のコントロールを担うパワーは海軍力と空軍力であり、これに対する脅威は、基地および空母を標的とするミサイルおよび潜水艦である。
ⅲ.陸上拠点となる基地および周辺海域の防衛は、主として受け入れ国の役割であり、日本の自衛隊は、防空作戦、対水上艦戦、対潜水艦戦および米軍と連携したミサイル防衛の能力を向上させている。


 結局、これらの要素からみて、東アジア・西太平洋のパワーバランスの維持にとって、海兵隊の沖縄駐留が不可欠とは言えない。加えて、沖縄は、中国の中距離弾道ミサイルの射程内にあり、海兵隊を含む地上兵力は、ミサイルの脅威に対して脆弱である。東アジア・西太平洋における海兵隊の前方展開を維持するのであれば、ハワイ、オーストラリアなど、中国の中距離弾道ミサイルの射程外に拠点を置くことが合理的である。


Ⅵ.抑止のメッセージ


(1)日米の安保関係者の中に「海兵隊が沖縄から撤退すれば中国に誤ったメッセージを送ることになる」という懸念を表明する向きがある。これは、客観的に見て妥当な懸念と言えるだろうか。
(2)これまでの日米両政府の合意によれば、最終的に沖縄に残留する海兵隊の実戦部隊は31MEUのみとなる。
(3)上記懸念は、31MEUのような規模、機能を持った部隊が残留すれば、中国に対する十分な抑止力になるという認識を前提としている。加えて、日本では、海兵隊が沖縄にいることが尖閣防衛にとって必要であるとの考え方が一般的である。この考え方は、米政府が、日本と中国との紛争要因となりかねない尖閣諸島の防衛に必ずコミットし、沖縄に残る31MEUが尖閣防衛の抑止力になるという認識を前提としている。
(4)しかしこれらの認識は、2015年の日米防衛協力指針における定義と矛盾する。この指針では、一義的に尖閣を含む離島の防衛は日本の自衛隊の役割であって、米軍は「支援し、補完する」という役割に留まるとしているからだ。
(5)さらに、日中固有の領土問題である尖閣に米政府が海兵隊を使って必ず介入するとの認識を放置すれば、将来の紛争における米政府の対応の自由を奪い、米国の国益を損なう可能性がある。
(6)一方、陸上自衛隊は、尖閣を含む離島防衛を目的として、オスプレイを保有する3,000人規模の水陸機動団を2018年度に新設する計画を持っている。これは、辺野古新基地を使用する予定の31MEUと同等以上の規模であり、沖縄周辺の離島防衛を主任務としている。この部隊は、航空自衛隊の輸送機や、海上自衛隊が保有する揚陸機能を持つ輸送艦に搭乗して遠距離の作戦にも従事できる予定であり、東南アジア地域におけるHA/DRにも対応可能である。


 結局、「中国に対して誤ったメッセージを送らない」という配慮は必要であるるとしても、それは、沖縄の海兵隊でなくても日本自身の防衛努力によって代替可能である。他方、海兵隊の沖縄駐留に固執すると「海兵隊さえいれば、離島防衛は万全」という日本国内に対する誤ったメッセージとなることを考慮しなければならない。


Ⅶ.本格的武力紛争への対応


(1)離島をめぐる領域紛争の枠を超える本格的武力紛争が生起した場合、31MEUが沖縄に所在すれば、台湾、朝鮮半島に比較的短時間で駆けつけることはできる。だが、こうした本格的事態において必要となるのは米本土から動員される1個あたり1万人を越える師団および旅団規模の大規模な兵力であり、沖縄に残留する2,000人の31MEUでは戦局を左右できない。
(2)米国の抑止力にとって不可欠なのは、中国の眼前に小規模の即応戦力を置き続けることではなく、必要な時に来援する大規模兵力を受け入れる基盤を維持することである。それこそが米国の選択的コミットメントの象徴となる。


 結局、全国各地にある自衛隊の基地、駐屯地および演習場は、有事の米軍来援を受け入れる基盤として活用することができる。沖縄から撤退した米海兵隊がこれらの施設を使って共同訓練を行うことによって、米国のコミットメントの意志を示し続けることが可能である。


Ⅷ.東アジアの公共財としての海兵隊


(1)東アジアの安全保障上の懸念は、中国による海洋進出と北朝鮮の核開発にとどまらない。この地域は、台風・地震・津波など世界有数の大規模な自然災害が多発する地域でもある。31MEUは、こうした災害において大きな役割を果たすとともに、日ごろから域内各国を訪問して2国間および多国間の訓練を行い、各国の能力向上と信頼醸成を通じた安全保障環境の改善に貢献している。これは、海・空軍が提供する軍事的な抑止力とともにこの地域の安定を支える二本柱の一つである。
(2)HA/DRの分野では、自衛隊も、その高い能力を活かして米軍とともに活動しており、さらに連携強化する余地がある。第2部で述べる「日米JOINT MEU for HA/DR」は、この地域の現実の脅威である災害対処において、日米が主導する中国を含む多国間の安全保障協力関係を構築する絶好の機会を提供する。
(3)日本は、フィリピン、ベトナム、インドネシアに対する巡視船の提供などを通じ、海洋の安全管理に関する能力向上を支援している。


 結局、こうした一連の施策によって、日米同盟は地域安全保障の中核的な公共財として深化を遂げることができる。





by asyagi-df-2014 | 2017-03-11 08:03 | 沖縄から

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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