沖縄名護市辺野古沖のコンクリートブロック投下を、社説等から見る。

 標題について、2017年2月7日に朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、産経新聞、読売新聞が社説及び主張を展開した。
 その見出しは次のものである。


(1)朝日新聞社説-辺野古着工 沖縄より米国優先か
(2)毎日新聞社説-辺野古工事 民意軽視では続かない
(3)東京新聞社説-辺野古海上工事 民意は置き去りなのか
(4)産経新聞主張-辺野古海上工事 「平和と安全」への一歩だ
(5)読売新聞社説-辺野古海上工事 普天間返還の遅滞を避けたい


 まあ、いつもの結果ではある。
 各紙の主張は、次のとおり。


Ⅰ.主張


(朝日新聞)
(1)沖縄県民の民意を置き去りにし、米国との関係を優先する。安倍政権の強引な手法が、いっそうあらわになった。昨年末の最高裁判決で沖縄県側の敗訴が確定し、陸上の工事は再開していた。このタイミングでの海上工事着手は、米国への強い配慮がにじむ。
(2)工事の進め方も県民の理解を得ようという姿勢とは程遠い。
(3)見解に食い違いがあれば話し合い、一致点を見いだすのが当たり前の姿だ。政府が許可を申請せずに工事を続ければ、県は行政指導や法的な対抗手段をとることを想定する。
政府と県の対立がさらに深まれば、日米関係そのものが不安定になりかねない。
(4)政府がなすべきは、沖縄の声をトランプ米新政権に伝え、辺野古以外の選択肢を真剣に検討することだ。工事を強行することではない。


(毎日新聞)
(1)これでは国と沖縄の分断はますます深まり、基地問題の解決にはつながらないだろう。
(2)確かに法的な手続きに問題はないだろう。最高裁は昨年12月、辺野古の埋め立て承認の取り消しを「違法」とする判決を下した。判決を受けて、翁長雄志(おながたけし)知事は埋め立て承認の取り消しを撤回し、承認の効力が復活した。政府は約10カ月ぶりに工事を再開し、今回、海上での本体工事に着手したというのが経緯だ。だが、この問題の本質は、法律や行政手続き上の適否ではない。
(3)安全保障上の必要性から辺野古移設を推進しようとする国と、沖縄の歴史や地方自治の観点から反対を訴える地元の民意が食い違った状況で、これをどう解決するかという政治の知恵が問われている。だが辺野古移設は、沖縄県民から見れば、県内で危険をたらい回ししているようにしか感じられない。県民の理解がなければ、たとえ代替基地ができても、日米安保体制を安定的に維持するのは難しい。
(4)硬直した思考に陥らず、トランプ政権の発足を仕切り直しの契機ととらえ、日米で辺野古以外の選択肢を柔軟に話し合うべきだ。


(東京新聞)
(1)日本は法治国家だが民主主義国家でもある。安全保障は国の専管事項でも、選挙に表れた沖縄県民の民意を置き去りにしては、日米安全保障条約で課せられた基地提供の義務は円滑には果たせまい。
(2)沖縄県や名護市など、地元自治体が強く反対する中での工事の着手である。到底、容認できない。
(3)安倍内閣は自由、民主主義、人権、法の支配という基本的価値を重んじると言いながら、翁長雄志県知事や稲嶺進名護市長に託された「県内移設」反対の民意をなぜないがしろにできるのか。
(4)安倍内閣はマティス米国防長官と、辺野古移設が唯一の解決策と確認したが、硬直的な発想は問題解決を遠のかせる。政府は工事強行ではなく、いま一度、沖縄県民を代表する翁長氏と話し合いのテーブルに着いたらどうか。
(5)稲嶺氏は、海上での工事着手を「異常事態だ。日本政府はわれわれを国民として見ているのか」と批判した。怒りの矛先は、法治国家と言いながら、憲法に定められた基本的人権を沖縄県民には認めようとしない政府に向けられている。本土に住む私たちも、そのことを自覚しなければならない。


(産経新聞)
(1)米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先である名護市辺野古で、国が海上部分の本体工事に着手した。移設の要となる埋め立てに直結する工事である。確実に進めてほしい。辺野古移設こそ、日本やアジア太平洋地域の平和を保ち、普天間飛行場周辺に暮らす住民の安全を優先する方策である。
(2)激しい反対運動が存在するが、工事の進捗(しんちょく)と安全の確保のため、警察当局や防衛省は、法に基づく厳正な警備をしてほしい。
(3)極めて残念なのは、翁長氏が、最高裁の判断後は「協力して誠実に対応」することになっていた国との和解条項を顧みず、移設阻止を叫び続け、海上工事の中止も求めたことである。日本が法治国家であることを、疑わせるような振る舞いにほかならない。
(4)海上工事について翁長氏は「反対する県民の感情的高まりは米軍全体への抗議に変わり、日米安全保障体制に大きな禍根を残す事態を招く」と語った。これが中国が狙う尖閣諸島(同県石垣市)を抱え、東シナ海に接する沖縄の知事の発言とは信じ難い。
(5)翁長氏は、地勢上、いや応なく防衛の最前線となった自治体を預かっている。安全保障を国民から託されている国と協力する姿勢をとってもらいたい。沖縄を含む日本の平和を、命がけの任務として守っている在日米軍の重要性について、県民に説く姿をみたい。
尖閣の奪取と海洋覇権を目指す中国や、核・弾道ミサイル開発を強行する北朝鮮は、沖縄と日米同盟の混乱をうかがっている。現実に向き合うのが首長の責務だ。


(読売新聞)
(1)米軍普天間飛行場の返還をこれ以上、遅らせてはなるまい。辺野古移設を着実に進めたい。
(2)辺野古移設は、普天間問題の唯一の現実的な解決策である。移設の遅れは、危険な現状がそれだけ継続することを意味する。昨年12月の最高裁判決で、翁長雄志沖縄県知事の埋め立て承認取り消しが「違法」とされた以上、政府が作業を急ぐのは当然だ。
(3)政府は、3月末に期限が切れる岩礁破砕許可を県に再申請しない方針を固めた。地元漁協が周辺海域での漁業権を放棄したため、再申請は不要と判断した。更新を不許可にするという翁長氏の対抗手段を封じるためもあろう。一連の工事には、反対派の妨害活動も予想される。法に基づく適正な取り締まりが欠かせない。
(4)工事開始に対し、翁長氏は「認められない。直ちに停止すべきだ」と反発した。埋め立て承認の「取り消し」でなく、状況の変化を理由とした「撤回」を検討し、あくまで移設を阻止する構えだ。だが、県は昨年3月の国との和解で、最高裁判決に従い、「誠実に対応する」と確約したはずだ。政府は工事を10か月近く中断し、和解条項を履行した。翁長氏は埋め立てを受け入れるべきだ。
(5)仮に埋め立て承認を撤回するなら、知事権限の乱用だろう。
(6)翁長氏は先月末から約1週間、米国を訪問し、下院議員や米政府の担当者と面会して、辺野古移設への反対を訴えた。訪米は3回目で、翁長氏は「柔軟な議論ができた」と成果を自賛した。しかし、来日したマティス米国防長官が辺野古移設を推進する方針を表明するなどし、翁長氏の訪米は空回りに終わった。代替案も示さずに、「反対一辺倒」を唱えるだけでは、米側の理解は広がらない。知事の責任も果たせない。


Ⅱ.事実(背景)


(朝日新聞)
(1)3日に来日したマティス米国防長官に、安倍首相が「辺野古が唯一の解決策。着実に工事を進める」と約束し、同意をとりつけた。10日の日米首脳会談を前に、その言葉を実行に移しておきたい――。
(2)1996年に日米間で合意した普天間の移設計画は、そもそも沖縄県民の基地負担を減らす目的で始まったはずだ。それがさまざまな経緯のなかで、政府と県民の分断を生んだ。たび重なる選挙結果で、辺野古移設に反対する民意は明らかだ。それなのに、政府の姿勢は辺野古移設への既成事実を強引に積み重ね、県民があきらめるのを待つかのようだ。これでは分断は埋まるどころか、いっそう深まるばかりだ。
(3)前知事の埋め立て承認の際、工事前に政府と県とが事前協議をするはずだった。だが今回、政府から関連文書が県に届いたのは先週末の3日。十分なやりとりをする時間はない。翁長知事が「荒々しいやり方」だと批判したのも無理はない。
(4)工事は海底の地形を変化させ、水産資源に影響を与える恐れがある。このため県漁業調整規則にもとづき知事の「岩礁破砕許可」が必要だが、前知事が出した許可は3月末に切れる。政府は「地元漁協が漁業権を放棄した」として、許可の更新は必要ないとする。これに対し県は「漁業権の一部変更であって、消失していない」と更新が必要だと主張する。


(毎日新聞)
(1)「あらゆる手段で移設を阻止する」との姿勢を示してきた県は反発している。今後、埋め立て承認後に状況変化があった時に適用できる、承認の「撤回」などに踏み切る可能性がある。その場合、政府は対抗措置として訴訟を起こすことも検討しているという。そうなれば国と県の対立は、再び法廷を舞台に泥沼化しかねない。
(2)代替基地が辺野古にできれば、オスプレイも移る。普天間の危険性を除去し、在日米軍の抑止力を維持するため、日米両政府は辺野古移設が「唯一の解決策」と繰り返し、先日のマティス米国防長官の来日でも確認された。辺野古の海上本体工事は、安倍晋三首相の訪米を控えて着手され、まるでトランプ米大統領への手土産のようにも見える。


(東京新聞)
(1)政府が海上での工事に着手したのは、沖縄県と国とが争っていた裁判で昨年十二月、県側の敗訴が最高裁で確定したためでもある。菅義偉官房長官は会見で「わが国は法治国家だ。最高裁判決や和解の趣旨に従い、国と県が協力して誠実に対応し、埋め立て工事を進める」と工事を正当化した。確定判決に従うのは当然だが、日本は民主主義国家でもある。
(2)訓練に伴う騒音や事故、米兵らによる事件など、米軍基地の存在に伴う地元住民の負担は重い。昨年、米軍北部訓練場が部分返還されたが、それでも沖縄県内には在日米軍専用施設の七割が集中する。日米安保体制を支えるため沖縄県民がより多くの基地負担を強いられる実態は変わらない。
(3)北部訓練場返還はヘリパッドの新設が条件だった。普天間返還も代替施設建設が条件だ。県内で基地を「たらい回し」しても県民の負担は抜本的には軽減されない。国外・県外移設こそ負担を抜本的に軽減する解決策ではないのか。


(産経新聞)
(1)菅義偉官房長官は会見で「日米同盟の抑止力の維持と普天間の危険性を考えたとき、辺野古移設が唯一の解決策だ」と述べ、海上工事を推進する考えを示した。マティス米国防長官も来日時の安倍晋三首相との会談で「(沖縄の)負担軽減策は、一に辺野古、二に辺野古だ」と強調した。
(2)国は、昨年12月の最高裁判決で、翁長雄志(おなが・たけし)知事による埋め立て承認取り消しが違法とされたのを受けて工事を再開した。海上工事へ進むのは当然の流れである。
(3)日米両政府が、沖縄の負担軽減を進めていることも指摘しておきたい。昨年12月には、沖縄の本土復帰後、最大規模となった北部訓練場(同県東村など)の過半の返還も実現させた。



 今回の各紙の見解の中で、やはり気になるのは、産経の「翁長氏は、地勢上、いや応なく防衛の最前線となった自治体を預かっている。」、との主張である。
 しかし、もちろん、日本国憲法の規定する地方自治の本旨とは こうした指摘を基本理念とするものではない。
 また、産経の「激しい反対運動が存在するが、工事の進捗(しんちょく)と安全の確保のため、警察当局や防衛省は、法に基づく厳正な警備をしてほしい。」及び読売の「一連の工事には、反対派の妨害活動も予想される。法に基づく適正な取り締まりが欠かせない。」
、との威圧的主張は、ジャーナリズムの使命(権力の監視)からすると、とても許されるものではない。そもそも、このことについては、現状の警備のあり方こそが問題なのであって、現在の沖縄における過剰警備が「過去に例のない違法なもの」であるとの沖縄からの警告を完全に無視するものである。
 さらに、毎日新聞の「確かに法的な手続きに問題はないだろう。」及び読売新聞の「仮に埋め立て承認を撤回するなら、知事権限の乱用だろう。」、とする見解にも大きな違和感を覚える。
 この取消処分の「撤回」が、明確な法的根拠を持ち、地方自治の本旨の実現を目指したものであることをきちんと把握しなければならない。





by asyagi-df-2014 | 2017-02-13 07:57 | 米軍再編 | Comments(0)

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