辺野古工事再開(2016年12月27日)をどう捉えるか。

 琉球新報は2016年12月27日、辺野古工事再開を、「沖縄防衛局は27日、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に向けた工事を再開した。国と県が辺野古代執行訴訟で和解し、工事が中断した今年3月4日以来、約10カ月ぶり。本格的な工事は年明けに再開する見通し。来年1月以降に海底掘削(ボーリング)調査を実施。汚濁防止膜設置に伴うコンクリートブロックを海中へ投下し、護岸設置に向けた作業を進める。翁長雄志知事は政府の強硬姿勢に強く抗議し、今後、あらゆる権限を駆使して工事を止める考えを示唆しており、工事が今後円滑に進むかどうかは不透明だ。」、と報じた。
このことについて、沖縄タイムスは「民意が踏みにじられ、軽んじられ、国策が強行される。住民運動を力で排除し、公金をばらまき、地域をずたずたに分断して。」と断定しし、琉球新報は「新基地建設に反対する県民の願いが年の瀬に踏みにじられた。年内工事再開の事実を突き付け、建設阻止を諦めさせる狙いが政府にあるならば大きな誤りだ。」と切り込んだ。
この2紙の主張をもとにこの問題を考える。
 二紙は、その主張を次のようにまとめている。

Ⅰ.主張
(沖縄タイムス)
(1)行政上、仲井真弘多前知事の「埋め立て承認」が復活したことになるが、民主主義や地方自治の観点から検証すると、この移設計画には依然として問題が多い。
(2)戦後、これだけ基地を押し付けておきながら、なぜこれから先も沖縄だけが負担を強いられなければならないのか。どう考えても理不尽である。
(3)沖縄の人々が望んでいるのは、憲法で保障された普通の生活だ。基地の過重負担を解消してほしいというのは、決して過大な要求ではない。政府は埋め立ての法的権限をサヤに収め、対話による解決を図るべきである。
(琉球新報)
(4)多くの県民はこの暴挙を政府の虚勢だと受け止めているはずだ。新基地建設ノーの強固な意思は、政府の強行策によって揺らぐことはない。むしろ県民の怒りの火に油を注ぐ結果を招くものだ。
(5)海上保安官による過剰警備に象徴されるように、選挙などで幾度も示された新基地拒否の民意と、それに基づく建設反対運動を政府は力ずくで抑え付けた。沖縄の自己決定権を否定するものであり、法の下の平等、言論の自由を規定する憲法の精神にも背くものだ。
(6)今回の県判断に対し、異論があるのも事実だ。「最高裁判決には執行力はない」という指摘である。「県民への裏切り行為だ」という批判もある。県内識者の間でも見解が分かれている。しかし、今回の取り消し通知によって新基地反対運動に足並みの乱れや分裂が生じることがあってはならない。そのためにも県は判断に至った経緯を丁寧に説明しながら、政府への対抗措置を早急に整える必要がある。県民の不安を払拭(ふっしょく)してほしい。
(7)県の対抗措置を無効化するため、政府は知事承認が必要となる埋め立て計画の設計概要の変更申請を避けることなどを検討している。それを実行すれば政府自ら無法状態を引き起こすことになる。断じて容認できない。


Ⅱ.問題点の指摘
(沖縄タイムス)
(1)2010年、仲井真氏は「普天間飛行場の県外移設」を公約に掲げ再選を果たした。以降、毎年のように慰霊の日の平和宣言で「一日も早い普天間飛行場の県外移設」を求めた。知事が会長を務める軍転協も、同様に政府に県外移設を要請してきた。政府・自民党の圧力で、自民党国会議員5人が「県外移設」の公約をかなぐり捨て、仲井真氏が県民への事前説明もほとんどないまま埋め立てを承認したのは、3年前のちょうどこの時期だ。すべての混乱の原因はここにある。政治家の「裏切り」に県民の怒りが爆発し、その後の県知事選、衆院選、参院選では新基地建設に反対する候補者が当選したのだ。しかし今やその民意さえお構いなしに、辺野古埋め立てが強行されようとしている。
(2)普天間移設計画は当初の「基地内移設」から「基地の外への新基地建設」に変わり、住民の頭越しに進めないという方針も反故(ほご)にされた。
(3)県が15年に実施した県民意識調査で、米軍基地が沖縄に集中する現状を約7割の人たちが「差別的だと思う」と回答した。私たちが「差別」という重い言葉で本土の人たちに問うのは、基地負担の不均衡の解消である。自分たちが受け入れられないものを未来にわたって沖縄に押し付けようというのは公平・公正・正義に反する。
(4)沖縄と本土との埋めがたい溝が、沖縄に基地を集中させる見返りに金をばらまくという「補償型政治」によってもたらされていることも忘れてはならない。米軍再編交付金は、米軍再編への協力度合いに応じて支払われるという究極の「アメとムチ」政策である。埋め立て予定地に近い「久辺3区」に直接補助金を出すのもなりふり構わないやり方だ。
(琉球新報)
(5)菅義偉官房長官との会談で翁長雄志知事は「事前協議を含め、話し合いを続けてほしい」と要請した。菅官房長官は「工事再開に向けて必要な準備を行っている。わが国は法治国家で、確定判決の趣旨に従って工事を進める」と拒否した。まさしく問答無用であり、およそ民主国家が取るべき態度ではない。ここに安倍政権の専横が露骨に表れている。翁長知事が「強硬的にならざるを得ない」と対抗措置を示唆したのも当然だ。菅官房長官は「法治国家」を説き、工事再開の根拠に最高裁判決を挙げた。しかし、沖縄を相手に法治国家を逸脱する行為を重ねてきたのは、ほかならぬ政府の方だ。
(6)政府と最高裁が結託して新基地建設を推し進めているかのような態度は、まさしく法治国家の瓦解(がかい)を自ら表明するものだ。菅官房長官が、工事再開前の協議を求めた翁長知事の要請を拒否したのも、その一端でしかない。法治国家を破壊するような政権の屋台骨を支える官房長官が工事再開にあたって法治国家を掲げる姿は、もはや茶番だ。沖縄以外でも同じような理不尽な態度を取れるのか、菅氏に問いたい。


 まず、押さえておかないいけないのは、安倍晋三政権の今後の強権手法である。
 このことについては、「県の対抗措置を無効化するため、政府は知事承認が必要となる埋め立て計画の設計概要の変更申請を避けることなどを検討している。それを実行すれば政府自ら無法状態を引き起こすことになる。断じて容認できない。」(琉球新報)、ということである。
 いずれにしろ、安倍晋三政権は、「民意が踏みにじられ、軽んじられ、国策が強行される。住民運動を力で排除し、公金をばらまき、地域をずたずたに分断して。」(沖縄タイムス)との沖縄の声を、きちんと腹に据えなけねばならない。


 以下、沖縄タイムス、琉球新報の引用。








(1)沖縄タイムス社説-社説[辺野古工事再開]法的権限サヤに収めよ-2016年12月28日 07:21


 民意が踏みにじられ、軽んじられ、国策が強行される。住民運動を力で排除し、公金をばらまき、地域をずたずたに分断して。 

 新基地建設を巡り、翁長雄志知事が「辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消し処分」を取り下げたことを受け、政府は27日、埋め立てに向けた工事を再開した。

 行政上、仲井真弘多前知事の「埋め立て承認」が復活したことになるが、民主主義や地方自治の観点から検証すると、この移設計画には依然として問題が多い。

 もう一度、辺野古問題の経緯を振り返りたい。

 2010年、仲井真氏は「普天間飛行場の県外移設」を公約に掲げ再選を果たした。以降、毎年のように慰霊の日の平和宣言で「一日も早い普天間飛行場の県外移設」を求めた。知事が会長を務める軍転協も、同様に政府に県外移設を要請してきた。

 政府・自民党の圧力で、自民党国会議員5人が「県外移設」の公約をかなぐり捨て、仲井真氏が県民への事前説明もほとんどないまま埋め立てを承認したのは、3年前のちょうどこの時期だ。すべての混乱の原因はここにある。

 政治家の「裏切り」に県民の怒りが爆発し、その後の県知事選、衆院選、参院選では新基地建設に反対する候補者が当選したのだ。

 しかし今やその民意さえお構いなしに、辺野古埋め立てが強行されようとしている。

 普天間移設計画は当初の「基地内移設」から「基地の外への新基地建設」に変わり、住民の頭越しに進めないという方針も反故(ほご)にされた。
■    ■
 県が15年に実施した県民意識調査で、米軍基地が沖縄に集中する現状を約7割の人たちが「差別的だと思う」と回答した。

 私たちが「差別」という重い言葉で本土の人たちに問うのは、基地負担の不均衡の解消である。自分たちが受け入れられないものを未来にわたって沖縄に押し付けようというのは公平・公正・正義に反する。

 沖縄と本土との埋めがたい溝が、沖縄に基地を集中させる見返りに金をばらまくという「補償型政治」によってもたらされていることも忘れてはならない。

 米軍再編交付金は、米軍再編への協力度合いに応じて支払われるという究極の「アメとムチ」政策である。

 埋め立て予定地に近い「久辺3区」に直接補助金を出すのもなりふり構わないやり方だ。
■    ■
 工事再開を前に翁長知事は菅義偉官房長官を訪ね「事前協議」を求めた。しかし話し合いは物別れに終わった。

 戦後、これだけ基地を押し付けておきながら、なぜこれから先も沖縄だけが負担を強いられなければならないのか。どう考えても理不尽である。

 沖縄の人々が望んでいるのは、憲法で保障された普通の生活だ。基地の過重負担を解消してほしいというのは、決して過大な要求ではない。 

 政府は埋め立ての法的権限をサヤに収め、対話による解決を図るべきである。


(2)琉球新報社説-<社説>辺野古工事再開 法治国家否定する暴挙だ 政府の虚勢に民意揺るがず-2016年12月28日 06:02



 新基地建設に反対する県民の願いが年の瀬に踏みにじられた。年内工事再開の事実を突き付け、建設阻止を諦めさせる狙いが政府にあるならば大きな誤りだ。

 沖縄防衛局は米軍普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古への新基地建設に向け、工事を約10カ月ぶりに再開した。キャンプ・シュワブ内に保管しているフロート(浮具)を海上に設置する作業を進めた。
 多くの県民はこの暴挙を政府の虚勢だと受け止めているはずだ。新基地建設ノーの強固な意思は、政府の強行策によって揺らぐことはない。むしろ県民の怒りの火に油を注ぐ結果を招くものだ。

 政権の専横が露骨に

 菅義偉官房長官との会談で翁長雄志知事は「事前協議を含め、話し合いを続けてほしい」と要請した。菅官房長官は「工事再開に向けて必要な準備を行っている。わが国は法治国家で、確定判決の趣旨に従って工事を進める」と拒否した。
 まさしく問答無用であり、およそ民主国家が取るべき態度ではない。ここに安倍政権の専横が露骨に表れている。翁長知事が「強硬的にならざるを得ない」と対抗措置を示唆したのも当然だ。
 菅官房長官は「法治国家」を説き、工事再開の根拠に最高裁判決を挙げた。しかし、沖縄を相手に法治国家を逸脱する行為を重ねてきたのは、ほかならぬ政府の方だ。
 海上保安官による過剰警備に象徴されるように、選挙などで幾度も示された新基地拒否の民意と、それに基づく建設反対運動を政府は力ずくで抑え付けた。沖縄の自己決定権を否定するものであり、法の下の平等、言論の自由を規定する憲法の精神にも背くものだ。
 そもそも翁長知事による名護市辺野古埋め立て承認取り消しを違法とする判断を下した最高裁判決も、新基地建設を強行する政府の主張を無批判に踏襲するものだ。
 弁論を開かず、環境破壊や基地負担増の可能性を十分に吟味しないまま「辺野古新基地の面積は普天間飛行場の面積より縮小する」として建設は妥当との結論を導いた。まさに国策追従判決だ。
 政府と最高裁が結託して新基地建設を推し進めているかのような態度は、まさしく法治国家の瓦解(がかい)を自ら表明するものだ。菅官房長官が、工事再開前の協議を求めた翁長知事の要請を拒否したのも、その一端でしかない。
 法治国家を破壊するような政権の屋台骨を支える官房長官が工事再開にあたって法治国家を掲げる姿は、もはや茶番だ。沖縄以外でも同じような理不尽な態度を取れるのか、菅氏に問いたい。

 早急に対抗措置整えよ

 工事再開は、翁長知事が最高裁判決を受け、埋め立て承認取り消し処分の取り消しを沖縄防衛局に通知したことに基づく。裁判の過程で翁長知事は「確定判決には従う」と明言していた。沖縄側は法治国家の精神を守ったと言える。
 判決に従うことで行政機関の信頼性を担保し、新基地建設阻止に向けた長期戦に備えるとの判断が働いた。取り消し処分をそのまま維持した場合、政府と司法がさらに強硬姿勢を取る恐れもあった。
 今回の県判断に対し、異論があるのも事実だ。「最高裁判決には執行力はない」という指摘である。「県民への裏切り行為だ」という批判もある。県内識者の間でも見解が分かれている。
 しかし、今回の取り消し通知によって新基地反対運動に足並みの乱れや分裂が生じることがあってはならない。
 そのためにも県は判断に至った経緯を丁寧に説明しながら、政府への対抗措置を早急に整える必要がある。県民の不安を払拭(ふっしょく)してほしい。
 県の対抗措置を無効化するため、政府は知事承認が必要となる埋め立て計画の設計概要の変更申請を避けることなどを検討している。それを実行すれば政府自ら無法状態を引き起こすことになる。断じて容認できない。


by asyagi-df-2014 | 2017-01-04 08:35 | 沖縄から | Comments(0)

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