沖縄から-三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記第62回

沖縄の地で、体を張って新しい歴史を作ろうとしている人たちがいる。
そこには、その煌めきの記録を残そうとしているジャーナリストがいる。
だとしたら、その生きざまの瞬間を私たちは受け取る必要がある。
三上知恵の沖縄撮影日記。


 今回の報告は、「残酷な12月~オスプレイ墜落と高江完成と辺野古再開まで~」、と2016年最後の報告。
報告は、「ところがこの12月の沖縄の、これでもかと降ってくる試練は一体何なんだ。」で始まる。
 確かに、沖縄の2016年12月は、余りにも波瀾万丈で、恐らく記憶に残される月日となるのだろう。
三上さんは、その月日が引き起こしたものを、このように披露する。


・安部集落の地先にオスプレイが落ちた。なんと同じ日に別の機体が胴体着陸。
・辺野古の埋め立てを巡る訴訟で、沖縄県敗訴の最高裁判決。
・事故原因も特定しないまま、米軍はオスプレイの運用を再開。
・今回の機体大破の原因になった空中給油まで再開! 佐賀ではやらないと明言したの!
・高江のヘリパッドが完成したとして「北部訓練場返還式典」が政府主催で開かれた。
・そして今日、今年の3月4日の和解以来止まっていた辺野古の工事が再開した。


 また、沖縄にこんな試練を課した輩の姿を、辛辣に描いてみせる。


 「お前らは負けたんだ。国に対抗しようなんて所詮無理なんだ。今度こそ思い知ったろう?」抵抗する沖縄を踏み潰しながら、政府は言う。
 続けて、アメリカに対してはこう言った。「お望みのオスプレイ訓練場は出来上がりましてございます。ケネディさん、あなたのおかげで復帰後最大の負担軽減が実現しました。沖縄県民も喜んでいます」
 自分の国土に外国の軍用機を落とされ、胴体着陸もされて、そんな彼らのためのオスプレイ訓練場の完成を祝賀する馬鹿がどこにいるだろうか。
 式典の中で政府要人とケネディ駐日大使が、沖縄本島北部のやんばるの森が描かれた額入りの絵をもらってポーズをとっていた。それはすでに漫画でしかなかった。そもそも、その青い森を県民から奪ったのはアメリカだ。その半分を返してやるから感謝しろと、よくも手柄顔ができるものだ。ケネディ氏はこのお土産をアメリカの自宅で眺めながら、「これは私が返してあげた土地なの」と来客に自慢でもするつもりなのか?
 官房長官だってそうだ。まともであれば、あんなに抵抗した沖縄県民の姿が浮かび上がってきて、この絵を正視できないはずだ。あなたが穴をあけた森はもう元には戻らない。私たちは森の命と自分たちの生活を守りたかっただけだ。なのに、県民の正当な抵抗をゲリラ扱いして1000人の機動隊を送り込み、不当逮捕と拘束を続けた末に沖縄を「平定」したつもりなのか。沖縄県民を黙らせた自分の権力の記念として山原の地図を眺めて暮らすのか。悪趣味もいいとこだ。


 長期拘留されたままの山城さんについてこう触れる。


(1)2007年から座り込んで10年目の高江。オスプレイは来ないとうそを言いながら住民をごまかし、集落ごと演習の標的にするという、恐ろしい高江のヘリパッド計画。必ずこれを白日のもとに晒してやる。絶対に許してはならないと頑張ってきたつもりだが、ついにずるずると工事を進められてしまった。10月中旬にリーダーが逮捕されてしまったことも大きな痛手になった。そのリーダーは2カ月たってもまだ出してもらえない。今沖縄で行われているのはあからさまな弾圧だ。続々と逮捕者が出て、不当に長期拘留するのが常になりつつある。来年の2月に裁判をすると聞いた。4、5カ月も拘束し、その間に辺野古の建設を進めてしまおうという魂胆なのだろう。
(2)それほど山城博治に、てこずっていたということだ。一方、器物損壊や10カ月前の公務執行妨害など、微罪の古いカードを切りながら不都合な人間を閉じ込めておく日本政府。社会が反発しなかったら、いったいどんな世の中が待っているのか。なぜこんなに世間の反応がぬるいのか、私は恐ろしくて仕方がない。
(3)(・・・)、その中に、リーダー博治さんの写真とともに立っている男性がいた。この2カ月、家族はおろか誰とも接見さえ許されない異常な監禁状態である。しかも悪性リンパ腫を克服した病み上がりの身体なので心配は尽きない。その男性は、怒ってばかりいてもダメなら、と名護署で手を合わせて嘆願して来たという。「せめて…正月は家に帰してやってくれ」と大粒の涙をこらえながら叫んでいた。
(4)私もまったく同じ気持ちで、聞いていて泣けてきた。囚われ人となっている間にヘリパッドが完成してしまい、オスプレイは墜落し、最高裁は負けた。そして間もなく辺野古の工事再開だと聞いて、狭くて暗い部屋の中で博治さんはどんな思いでいるだろう。なぜここまでの仕打ちをわれらの島が受けねばならないのか、ともがき苦しんでいるかもしれない。自分を出してくれるまでの世論が沸き上がっていないことを残念に思っているかもしれない。政府の残酷な決定にあらがう県民を代表して、見せしめのような仕打ちに耐えている博治さんに対して、いったい私に何ができるのか。
(5)新しい映画を見てもらえれば、泣いて、吠えて、笑って踊る博治さんの、愛すべき人間性をだれもがわかってくれるだろう。ネット上の悪意にあふれた誹謗中傷が、博治さんの本質からかけ離れていることも一目瞭然に理解されるだろう。早く映画を公開したい。彼の魅力を伝えて、仲間をどんどん増やしたい。こんな政府の「これでもかスケジュール」の中で、博治さんがここにいたら、今日の出来事をどう総括し、どう勝利だと騒ぎ、どうやってみんなを鼓舞するのか。いつも心の中でシミュレーションをしている自分がいる。


 なお、琉球新報は2016年12月29日、「名護市辺野古への新基地建設や東村高江へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設への反対運動に絡み逮捕・起訴され、70日以上身体拘束が続く沖縄平和運動センターの山城博治議長の釈放を求めて、全国の刑事法研究者41人が28日、緊急声明を発表した。刑事法研究者が個別事案について声明を出すのは異例。『正当な理由のない拘禁であり、速やかに釈放されねばならない』とした。山城議長の長期勾留について『従来から問題視されてきた日本の【人質司法】が、在日米軍基地を巡る政府と県の対立の深まる中で、政治的に問題化したとみられる非常に憂慮すべき事態だ』とした。」、と報じている。


 最後に、三上さんは、「コテンパンにやられた感のある2016年が終わろうとしている。20歳の女性の命を奪われ、高江の基地が完成し、自衛隊の先島配備が進行していった激動の2016年を締めくくるにふさわしい過酷な日々の中にある。」、と綴ったうえで、次のように書き込む。
 三上さんは、どんな顔してこれを書き込んでいるのか。
 不敵に笑っているのか。それとも。


 来年はここに書き続ける力が残っているのか? と弱気にもなるものの、沖縄の鈍角の闘いはまだまだこれからだと笑顔を見せる人たちが現場には大勢いる。新聞を見ていると落ち込むが、現場に行くと元気になって帰ってくる。これまでで一番気の重い年越しだが、明けてしまえば来年も、現場から勇気をもらいながら、結局は体当たりで乗り越えていくのかもしれない。


 以下、三上智恵の沖縄(辺野古・高江)撮影日記第62回の引用。




 





第62回残酷な12月~オスプレイ墜落と高江完成と辺野古再開まで~



 今朝も4時に起きて、真っ暗な沖縄自動車道を飛ばし、辺野古に向かった。

 工事再開。9カ月ぶり。また緊張の日々が始まる。まだ悪夢は続いていく。

 3作目のドキュメンタリー映画はもうできあがった。先週、プレス向けの試写会も始まったところだ。編集期間の無理がたたって身体はボロボロ、だから年末は少し休んで人間らしい生活をしようと決めていた。多少の動きがあっても、絶対に取材に行かないぞ。マガジン9での連載再開も年明けにしちゃおう。眠るんだ。本も読むんだ。家の掃除がしたいんだ。ところがこの12月の沖縄の、これでもかと降ってくる試練は一体何なんだ。

・安部集落の地先にオスプレイが落ちた。なんと同じ日に別の機体が胴体着陸。

・辺野古の埋め立てを巡る訴訟で、沖縄県敗訴の最高裁判決。

・事故原因も特定しないまま、米軍はオスプレイの運用を再開。

・今回の機体大破の原因になった空中給油まで再開! 佐賀ではやらないと明言したのに!

・高江のヘリパッドが完成したとして「北部訓練場返還式典」が政府主催で開かれた。

・そして今日、今年の3月4日の和解以来止まっていた辺野古の工事が再開した。

 「お前らは負けたんだ。国に対抗しようなんて所詮無理なんだ。今度こそ思い知ったろう?」抵抗する沖縄を踏み潰しながら、政府は言う。

 続けて、アメリカに対してはこう言った。「お望みのオスプレイ訓練場は出来上がりましてございます。ケネディさん、あなたのおかげで復帰後最大の負担軽減が実現しました。沖縄県民も喜んでいます」

 自分の国土に外国の軍用機を落とされ、胴体着陸もされて、そんな彼らのためのオスプレイ訓練場の完成を祝賀する馬鹿がどこにいるだろうか。

 式典の中で政府要人とケネディ駐日大使が、沖縄本島北部のやんばるの森が描かれた額入りの絵をもらってポーズをとっていた。それはすでに漫画でしかなかった。そもそも、その青い森を県民から奪ったのはアメリカだ。その半分を返してやるから感謝しろと、よくも手柄顔ができるものだ。ケネディ氏はこのお土産をアメリカの自宅で眺めながら、「これは私が返してあげた土地なの」と来客に自慢でもするつもりなのか?

 官房長官だってそうだ。まともであれば、あんなに抵抗した沖縄県民の姿が浮かび上がってきて、この絵を正視できないはずだ。あなたが穴をあけた森はもう元には戻らない。私たちは森の命と自分たちの生活を守りたかっただけだ。なのに、県民の正当な抵抗をゲリラ扱いして1000人の機動隊を送り込み、不当逮捕と拘束を続けた末に沖縄を「平定」したつもりなのか。沖縄県民を黙らせた自分の権力の記念として山原の地図を眺めて暮らすのか。悪趣味もいいとこだ。

 2007年から座り込んで10年目の高江。オスプレイは来ないとうそを言いながら住民をごまかし、集落ごと演習の標的にするという、恐ろしい高江のヘリパッド計画。必ずこれを白日のもとに晒してやる。絶対に許してはならないと頑張ってきたつもりだが、ついにずるずると工事を進められてしまった。10月中旬にリーダーが逮捕されてしまったことも大きな痛手になった。そのリーダーは2カ月たってもまだ出してもらえない。今沖縄で行われているのはあからさまな弾圧だ。続々と逮捕者が出て、不当に長期拘留するのが常になりつつある。来年の2月に裁判をすると聞いた。4、5カ月も拘束し、その間に辺野古の建設を進めてしまおうという魂胆なのだろう。

 それほど山城博治に、てこずっていたということだ。一方、器物損壊や10カ月前の公務執行妨害など、微罪の古いカードを切りながら不都合な人間を閉じ込めておく日本政府。社会が反発しなかったら、いったいどんな世の中が待っているのか。なぜこんなに世間の反応がぬるいのか、私は恐ろしくて仕方がない。

 沖縄県の翁長知事は、北部訓練場返還式典を開催しないよう求めた。そして出席しなかった。会場の外には、さらなる重圧を課しておきながら「負担軽減」だと喧伝する政府に反発する人々が大勢詰めかけた。沖縄県民は喜んでなんかいない。そのことをひと言でもいいたいと大雨の中、立ち尽くしていた。

 その中に、リーダー博治さんの写真とともに立っている男性がいた。この2カ月、家族はおろか誰とも接見さえ許されない異常な監禁状態である。しかも悪性リンパ腫を克服した病み上がりの身体なので心配は尽きない。その男性は、怒ってばかりいてもダメなら、と名護署で手を合わせて嘆願して来たという。「せめて…正月は家に帰してやってくれ」と大粒の涙をこらえながら叫んでいた。

 私もまったく同じ気持ちで、聞いていて泣けてきた。囚われ人となっている間にヘリパッドが完成してしまい、オスプレイは墜落し、最高裁は負けた。そして間もなく辺野古の工事再開だと聞いて、狭くて暗い部屋の中で博治さんはどんな思いでいるだろう。なぜここまでの仕打ちをわれらの島が受けねばならないのか、ともがき苦しんでいるかもしれない。自分を出してくれるまでの世論が沸き上がっていないことを残念に思っているかもしれない。政府の残酷な決定にあらがう県民を代表して、見せしめのような仕打ちに耐えている博治さんに対して、いったい私に何ができるのか。

 新しい映画を見てもらえれば、泣いて、吠えて、笑って踊る博治さんの、愛すべき人間性をだれもがわかってくれるだろう。ネット上の悪意にあふれた誹謗中傷が、博治さんの本質からかけ離れていることも一目瞭然に理解されるだろう。早く映画を公開したい。彼の魅力を伝えて、仲間をどんどん増やしたい。こんな政府の「これでもかスケジュール」の中で、博治さんがここにいたら、今日の出来事をどう総括し、どう勝利だと騒ぎ、どうやってみんなを鼓舞するのか。いつも心の中でシミュレーションをしている自分がいる。

 今日27日、波が高くてほとんど何も作業はしていないのだが、辺野古の基地建設作業は再開された、とメディアは防衛局の発表通りに伝えた。コテンパンにやられた感のある2016年が終わろうとしている。20歳の女性の命を奪われ、高江の基地が完成し、自衛隊の先島配備が進行していった激動の2016年を締めくくるにふさわしい過酷な日々の中にある。

 来年はここに書き続ける力が残っているのか? と弱気にもなるものの、沖縄の鈍角の闘いはまだまだこれからだと笑顔を見せる人たちが現場には大勢いる。新聞を見ていると落ち込むが、現場に行くと元気になって帰ってくる。これまでで一番気の重い年越しだが、明けてしまえば来年も、現場から勇気をもらいながら、結局は体当たりで乗り越えていくのかもしれない。

 最後にご連絡です。
 新作『標的の島~風かたか~』は2017年3月から全国公開です。ここに登場した場面もたくさん織り込まれています。マガジン9連載の歩みとともに出来上がっていったような作品です。ぜひ、お見逃しなく! 製作費のカンパを引き続き募集しています。3万円以上でエンドロールにお名前・団体名を記載する締め切りは、1月をめどにさせていただきますので、お早めにお願いいたします!


三上智恵監督新作製作のための
製作協力金カンパのお願い

『標的の島 (仮)』(2016年完成予定・17年劇場公開予定)

沖縄の基地問題を描く、三上智恵監督新作『標的の島』(仮)の製作を本年の2016年内の完成を目標に開始します。製作費確保のため、皆様のお力を貸してください。

◎製作協力金10,000円以上、ご協力いただいた方(もしくは団体)は、映画HPにお名前を掲載させていただきます。

◎製作協力金30,000円以上、ご協力いただいた方(もしくは団体)は、映画エンドロール及び、映画HPにお名前を掲載させていただきます。

※公式HPもしくは、エンドロールへの掲載を希望される方はお申し込みの際にお知らせ下さい。


■振込先
郵便振替口座:00190-4-673027
加入者名:沖縄記録映画製作を応援する会

◎銀行からの振込の場合は、
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
店番 :019
預金種目:当座
店名:〇一九 店(ゼロイチキユウ店)
口座番号:0673027
加入者名:沖縄記録映画製作を応援する会


三上智恵(みかみ・ちえ): ジャーナリスト、映画監督/東京生まれ。大学卒業後の1987年、毎日放送にアナウンサーとして入社。95年、琉球朝日放送(QAB)の開局と共に沖縄に移り住む。夕方のローカルワイドニュース「ステーションQ」のメインキャスターを務めながら、「海にすわる〜沖縄・辺野古 反基地600日の闘い」「1945〜島は戦場だった オキナワ365日」「英霊か犬死か〜沖縄から問う靖国裁判」など多数の番組を制作。2010年には、女性放送者懇談会 放送ウーマン賞を受賞。初監督映画『標的の村~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』は、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、キネマ旬報文化映画部門1位、山形国際ドキュメンタリー映画祭監督協会賞・市民賞ダブル受賞など17の賞を獲得。現在も全国での自主上映会が続く。15年には辺野古新基地建設に反対する人々の闘いを追った映画『戦場ぬ止み』を公開。ジャーナリスト、映画監督として活動するほか、沖縄国際大学で非常勤講師として沖縄民俗学を講じる。『戦場ぬ止み 辺野古・高江からの祈り』(大月書店)を上梓。
(プロフィール写真/吉崎貴幸)


by asyagi-df-2014 | 2017-01-02 09:13 | 沖縄から | Comments(0)

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