北部訓練場返還という安倍晋三政権の「まやかし」。

 政府主催の北部訓練場返還式典で、菅義偉官房長官は「本土復帰後、最大規模の返還だ。県内の米軍施設の約2割が減少し、沖縄の基地負担軽減に大きく資する」とその意義を強調したという。
 しかし、沖縄の問題は、本土復帰の時点に留まるものではない。この北部訓練場は、普天間飛行場などと同じように、戦後米軍によって強制的に奪われた土地であり、本来、全面返還がなされなければならないものである。このことからしても、決して、「歴史的成果」という代物ではない。
 まして、今回の北部訓練場は、返還される約4千ヘクタールは米軍が「使用不可能」とする土地であり、無条件に返還されて当然の土地でなのである。
 むしろ、この地域の人々やその自然環境は、「墜落」の恐怖や騒音被害に覆われているし、高江の貴重な動植物は「危機的状況」にすでに追い込まれている。
 結局、安倍晋三政権が喧伝する「SACO合意の成果」は、古い基地を返す代わりに、日本側が最新鋭の基地を提供して在沖米軍基地を強化するこであり、「負担軽減」どころか、「負担の拡大」、「負担の恒常化」でしかない。
 今回の日本政府が行った北部訓練場の一部返還は、日本国憲法が定める地方自治の本旨に反するものであり、自治権に基づく自己決定権を侵すものである。
 つまり、北部訓練場の返還とは、安倍晋三政権の得意とする「まやかし」政策である。

 さて、標題について、琉球新報と沖縄タイムスの社説であらためて考える。
今回の「返還」について、琉球新報は「誰のための返還なのか。米軍と安倍政権が仕組んだ欺瞞(ぎまん)に満ちた茶番と断じるほかない。」と断定し、沖縄タイムスは「44年前の復帰の日を思い出させるような状況設定だ。」と指摘する。
それぞれの新聞社は、主張と反論を次のように展開する。


Ⅰ.主張
(琉球新報)
(1)誰のための返還なのか。米軍と安倍政権が仕組んだ欺瞞(ぎまん)に満ちた茶番と断じるほかない。
(2)2016年12月22日を新たな「屈辱の日」に終わらせてはならない。真の負担軽減を勝ち取る「出発の日」として位置付けたい。
(3)知事が欠席したのは当然だ。それに不快感を示すこと自体おかしい。オスプレイ墜落事故直後オスプレイ墜落事故直後に返還式典を強行することで、県民を愚弄したことに気づくべきだ。沖縄が求めていることは子どもたちが健やかに育つ生活環境の保障である。今回の返還が安全な暮らしにつながることはない。抗議集会参加者だけではない。多くの県民がそのことを知っている。沖縄の未来を切り開くのは県民である。県民の力で圧政をはね返すことを改めて誓いたい。
(沖縄タイムス)
 沖縄の基地負担は単なる基地負担ではない。複合的で過重な、人権や自治にもかかわる負担なのである。


Ⅱ.反論
(琉球新報)
(1)米軍北部訓練場過半の返還を記念した式典で、菅義偉官房長官は「今回の返還は本土復帰後最大の返還であり、沖縄の米軍施設の約2割が返還され、沖縄の負担軽減に大きく寄与する」と強調した。在沖米軍基地機能強化による沖縄の負担増を、返還面積の広さで覆い隠し「負担軽減」と偽装することは断じて認められない。
(2)菅氏は式典で、北部訓練場約4千ヘクタールの返還の起点を1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意とした。沖縄戦までさかのぼるべきだ。県民は本土の捨て石にされた悲惨な沖縄戦に巻き込まれた揚げ句、土地を米軍に強制的に接収された。その事実を踏まえれば軽々に「負担軽減」とは言えないはずである。
(2)菅氏は「20年もの歳月を経てようやく返還を実現することができた」と述べた。米軍が「使用不可能」とする土地が返されるまで多くの年月を要したことを、まず謝罪すべきではなかったか。
(3)東村高江の集落を囲む六つのヘリパッド移設が北部訓練場過半返還の条件である。オスプレイは既に訓練を繰り返している。夜間も騒音が激化し、睡眠不足になった児童が学校を欠席する事態を招いたこともある。高江の状況を見れば、ヘリパッド移設を条件にした今回の返還がまやかしの「負担軽減」であることは明らかだ。
(4)政府は米軍普天間飛行場の危険除去のため、人口の少ない名護市辺野古移設を進めるとする。だが、北部訓練場ではそれと逆のことをやっている。山林にあるヘリパッドを集落近くに移すことは、辺野古新基地建設の論理と矛盾する。
(5)菅氏は「ヘリパッド移設で、これからもご迷惑をお掛けする」とし、住民に負担を強いることを認めた。これが安倍政権の言う「負担軽減」である。
(沖縄タイムス)
(1)返還式を別の側面から見れば、東村高江の集落を囲むように新たに建設した6カ所の着陸帯(ヘリパッド)をフルに使って、オスプレイの本格的な訓練が始まることを意味する。面積の減少と基地の機能強化がメダルの裏表になっているのである。
(2)辺野古違法確認訴訟で県敗訴の判決を言い渡した最高裁は、普天間飛行場の代替施設の面積が縮小されることを強調しているが、面積だけで評価するのは一面的だ。北部訓練場の返還面積は確かに大きい。けれども、その半分が返還されても、米軍専用施設の面積は全国の約74%から約70%に改善されるのにとどまる。
(3)沖縄の基地負担の特徴は、世界にもほとんど例がない「複合過重負担」になっていることだ。沖縄の現実を見る場合、その視点が欠かせない。
(4)「複合過重負担」の実態はどのようなものか。基地特権を保障した地位協定が復帰の際、そのまま沖縄に適用されたことは、沖縄に過重な負担を背負わせる結果を招いた。
オスプレイが民間地の浅瀬で大破しても日本の捜査機関は捜査すら認められない。基地内に墜落すると、立入調査も思うに任せない。
(5)在沖米軍兵力の約57%、施設面積の約75%が海兵隊である。米本国の基地に比べ沖縄の海兵隊基地は極めて狭く、住民地域に隣接している。演習に伴う事故だけでなく兵員の事件も絶えない。陸上だけでなく、本島周辺の海や空も訓練空域、訓練水域に覆われている。墜落事故は海上でも起きている。米本国では軍と住民の話し合いの場が設定され、住民の要求に基づいて飛行ルートを変更したり訓練を中止することがあるが、沖縄にはそれもない。
(5)海外の米軍基地で最も資産価値の高い嘉手納基地が本島中央に位置していることも無視できない負担だ。嘉手納基地も普天間飛行場も、司法が騒音被害の違法性を認め、国に損害賠償の支払いを命じている。嘉手納基地内で19日朝、海軍のP8対潜哨戒機がけん引用の装置と接触し、機体を損傷した。「クラスA」に該当する「重大事故」と判断しているという。


 安倍晋三政権は、「沖縄が求めていることは子どもたちが健やかに育つ生活環境の保障である。」(琉球新報)、「沖縄の基地負担は単なる基地負担ではない。複合的で過重な、人権や自治にもかかわる負担なのである。」(沖縄タイムス)、ということに立ち返らなければならない。
 今必要なのは、「2016年12月22日を新たな『屈辱の日』に終わらせてはならない。真の負担軽減を勝ち取る『「出発の日』として位置付けたい。」(琉球新報)、との意志を日本のあり方として捉え直すことにある。


by asyagi-df-2014 | 2016-12-27 11:22 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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