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山川出版が、来春から使われる高校日本史教科書(日本史B)で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述を復活させた。

 沖縄タイムスは206年12月1日、標題について、次のように報じた。


(1)来春から使われる高校日本史教科書で、山川出版が日本史Bの「詳説日本史 改訂版」で沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述を復活させたことが30日分かった。同教科書は、主に普通科高校などが使う日本史Bの中でシェア6割を占めるが、2007年度以降に供給された本からは記述がなくなり、沖縄戦体験者らが復活を求めていた。
ことし9月5日に山川出版が訂正申請し、10月3日に文部科学省が承認した。
(2)記述が復活したのは、沖縄戦に関するコラム。検定に通った段階では「(略)島民を巻き込んでの激しい地上戦となり、おびただしい数の犠牲者を出し、6月23日、組織的な戦闘は終了した」との表現で「集団自決」への言及はなかったが、変更後は「(略)島民を巻き込んでの激しい地上戦となり、『集団自決』に追い込まれた人びとも含めおびただしい数の犠牲者を出し、6月23日、組織的な戦闘は終了した」と修正された。
(3)「9・29県民大会決議を実現させる会」は同社に対し、日本軍による「集団自決」や住民虐殺について追記するようこれまで繰り返し求めており、8月にも文書を送付していた。
(4)「集団自決」を巡っては、06年度の検定で、日本軍による「強制」との記述が認められなくなった。一方、山川出版はこれに先立ち、05年度検定に申請した本から自主的に記述をなくしていた。教科書検定問題に詳しい高嶋伸欣琉球大学名誉教授は「遅きに失した感もあるが、圧倒的なシェアを持つ出版社が記述を復活した意味は大きい。沖縄の地道な活動が功を奏した」と評価した上で、「強制の主体が日本軍という点が明確でなく、さらに改善を求めていく必要がある」と指摘した。専門高校などが主に使う日本史Aでは、山川出版も「日本軍によって壕を追い出されたり、あるいは集団自決に追いこまれた住民もあった」と記述している。


 また、沖縄タイムスはこのことについて、その意義や課題を次のように解説している。


(1)山川出版が「集団自決(強制集団死)」の記述を復活させた。圧倒的なシェアを持つ教科書が沖縄戦の象徴的な出来事を扱わない、という事態が回避された意義は大きい。(2)ただ「集団自決」に追いこんだ主体が日本軍という重要な点が抜けており、歴史の本質を学ぶには不十分だ。
(3)同社が「詳説日本史」から自主的に「集団自決」の記述をなくしたのは2005年度の検定申請本から。日本軍の「強制」記述を書き換えさせた06年度検定よりも前のことであり、検定によって削除された記述の復活という運動からは外れがちだった。しかし同教科書の採択は毎年約30万人分に上る。近年では、山川出版への働き掛けが最優先との見方が強まっていた。
(4)教科書記述の復活や検定意見の撤回などを求めた2007年9月29日の県民大会以降、多くの教科書会社は「軍命」や「強制」に近い記述に戻している。「9・29県民大会決議を実現させる会」などの地道な取り組みが、教科書会社や世論を動かしてきたのは間違いない。
(5)しかし「集団自決」に追いこんだのが「だれか」を明確にする視点は、この運動の出発点だ。県民大会から来年で10年。各教科書会社には、史実を踏まえた正しい記述をする努力がさらに求められる。


 なお、沖縄タイムスは、他の教科書会社の記述内容を、「今春の検定に通った各社の『集団自決(強制集団死)』に関する記述」、としてあわせて次のように紹介している。


(1)清水書院:味方であるはずの日本軍による県民の殺害、「集団自決」の強要などの悲劇も生じた
(2)東京書籍:日本軍によって「集団自決」に追いこまれたり、スパイ容疑で虐殺された一般住民もあった
(3)実教出版:日本軍は県民を壕から追い出してアメリカ軍の攻撃にさらしたり、沖縄の言葉で話をするとスパイの容疑で殺害したりした。日本軍は手榴弾を配るなどして、800人以上の県民を「集団自決」(強制集団死)に追いこんだ
(4)第一学習:スパイ容疑や作戦の妨げになるなどの理由で、日本軍によって殺された人もいた。日本軍は住民の投降を許さず、さらに戦時体制下の日本軍による住民への教育・指導や訓練の影響などによって、「集団自決」に追いこまれた人もいた


 以下、沖縄タイムスの引用。








(1)沖縄タイムス-教科書に沖縄戦「集団自決」 10年ぶり復活 日本史最大手の山川出版-2016年12月1日 07:49


 来春から使われる高校日本史教科書で、山川出版が日本史Bの「詳説日本史 改訂版」で沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述を復活させたことが30日分かった。同教科書は、主に普通科高校などが使う日本史Bの中でシェア6割を占めるが、2007年度以降に供給された本からは記述がなくなり、沖縄戦体験者らが復活を求めていた。

 ことし9月5日に山川出版が訂正申請し、10月3日に文部科学省が承認した。

 記述が復活したのは、沖縄戦に関するコラム。検定に通った段階では「(略)島民を巻き込んでの激しい地上戦となり、おびただしい数の犠牲者を出し、6月23日、組織的な戦闘は終了した」との表現で「集団自決」への言及はなかったが、変更後は「(略)島民を巻き込んでの激しい地上戦となり、『集団自決』に追い込まれた人びとも含めおびただしい数の犠牲者を出し、6月23日、組織的な戦闘は終了した」と修正された。

 「9・29県民大会決議を実現させる会」は同社に対し、日本軍による「集団自決」や住民虐殺について追記するようこれまで繰り返し求めており、8月にも文書を送付していた。

 「集団自決」を巡っては、06年度の検定で、日本軍による「強制」との記述が認められなくなった。一方、山川出版はこれに先立ち、05年度検定に申請した本から自主的に記述をなくしていた。

 教科書検定問題に詳しい高嶋伸欣琉球大学名誉教授は「遅きに失した感もあるが、圧倒的なシェアを持つ出版社が記述を復活した意味は大きい。沖縄の地道な活動が功を奏した」と評価した上で、「強制の主体が日本軍という点が明確でなく、さらに改善を求めていく必要がある」と指摘した。

 専門高校などが主に使う日本史Aでは、山川出版も「日本軍によって壕を追い出されたり、あるいは集団自決に追いこまれた住民もあった」と記述している。


(2)沖縄タイムス-【解説】「軍命」なき記述、不十分 教科書に「集団自決」復活-2016年12月1日 08:41


 山川出版が「集団自決(強制集団死)」の記述を復活させた。圧倒的なシェアを持つ教科書が沖縄戦の象徴的な出来事を扱わない、という事態が回避された意義は大きい。ただ「集団自決」に追いこんだ主体が日本軍という重要な点が抜けており、歴史の本質を学ぶには不十分だ。

 同社が「詳説日本史」から自主的に「集団自決」の記述をなくしたのは2005年度の検定申請本から。日本軍の「強制」記述を書き換えさせた06年度検定よりも前のことであり、検定によって削除された記述の復活という運動からは外れがちだった。しかし同教科書の採択は毎年約30万人分に上る。近年では、山川出版への働き掛けが最優先との見方が強まっていた。

 教科書記述の復活や検定意見の撤回などを求めた2007年9月29日の県民大会以降、多くの教科書会社は「軍命」や「強制」に近い記述に戻している。

 「9・29県民大会決議を実現させる会」などの地道な取り組みが、教科書会社や世論を動かしてきたのは間違いない。

 しかし「集団自決」に追いこんだのが「だれか」を明確にする視点は、この運動の出発点だ。県民大会から来年で10年。各教科書会社には、史実を踏まえた正しい記述をする努力がさらに求められる。(社会部・鈴木実)

<今春の検定に通った各社の「集団自決(強制集団死)」に関する記述>
■清水書院
味方であるはずの日本軍による県民の殺害、「集団自決」の強要などの悲劇も生じた
■東京書籍
日本軍によって「集団自決」に追いこまれたり、スパイ容疑で虐殺された一般住民もあった
■実教出版
日本軍は県民を壕から追い出してアメリカ軍の攻撃にさらしたり、沖縄の言葉で話をするとスパイの容疑で殺害したりした。日本軍は手榴弾を配るなどして、800人以上の県民を「集団自決」(強制集団死)に追いこんだ
■第一学習
スパイ容疑や作戦の妨げになるなどの理由で、日本軍によって殺された人もいた。日本軍は住民の投降を許さず、さらに戦時体制下の日本軍による住民への教育・指導や訓練の影響などによって、「集団自決」に追いこまれた人もいた

 ※上記は日本史Aの記述。今春の検定では日本史Aが主で、日本史Bは山川出版以外なかった。


by asyagi-df-2014 | 2016-12-05 08:51 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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