国鉄闘争の涯に、今知ること。

 JR北海道は、抜本的な鉄道事業見直しの対象として、「JR単独では維持が困難な路線」について、10路線13区間となることを表明していた。
 JR北海道は2016年11月18日、鉄道事業の抜本的な見直しを正式に表明した。
 北海道新聞は同日、このことについて、「鉄路が『頼れる足』ではなくなる恐れ」、と次のように報じた。


(1)これまで国鉄時代からの不採算路線の廃止や人員削減など効率化を進めてきたが、基金運用益の減少や地方路線の低迷が響き、本業で大なたを振るわざるを得なくなった。来春に発足30年の節目を迎えるが、道内では鉄路が「頼れる足」ではなくなる恐れもある。
(2)JR北海道は1987年4月、国鉄分割・民営化に伴い、3千キロを超える路線を継承して誕生した。88年3月に青函トンネルを通る海峡線(87・8キロ)の開通はあったが、国鉄時代に廃止が決まっていた天北線(南稚内―音威子府間、148・9キロ)などの長大路線や産炭地の路線を次々に廃線。95年に深川―名寄間の深名線(121・8キロ)を廃止し、現在は発足時に比べ、19%少ない2568・7キロで営業している。
(3)路線は減ったが、人口が集まる札幌圏での近距離利用の増加などから、2015年度の旅客輸送人員は発足時より4割多い約1億3400万人となるなど、むしろ増えているのが実態だ。ただ、鉄道運輸収入は96年度の800億円をピークに減少傾向にあり、昨年度は約685億円と発足時より1割多い程度でしかない。87年ごろに約170キロだった道内高速道路網が今は6・5倍に延び、航空路線の拡充も重なって、柱となる中長距離輸送で苦戦を強いられているからだ。
(4)こうした本業の不振を補うために、JRはJRタワーを核とした商業施設をはじめ、スーパーやホテルなど多角化を図ってきた。鉄道以外の「非鉄道事業」が全売上高に占める割合は6割と、先月に株式上場したJR九州と同水準に達する。ただ、11年の石勝線の特急脱線炎上事故を皮切りに、トラブルが相次ぎ、それまで怠ってきた安全投資に資金を重点配分せざるを得なくなった。老朽化した橋やトンネルの修繕費もかさみ、17年3月期のJR単独の経常赤字は過去最悪の235億円まで膨らむ見通しだ。赤字補填(ほてん)のため積まれた6822億円の経営安定基金も超低金利の影響で、運用益が当初想定の45%に当たる226億円(16年度見込み)まで減っている。



 また、このことに対する各首長の声を北海道新聞は次のように伝えた。



(1)辻直孝北見市長はJRの発表内容について「地域にとっても北海道全体にとっても大きな問題。とうてい容認できるものではない」
(2)辻直孝北見市長はJRの発表内容について「地域にとっても北海道全体にとっても大きな問題。とうてい容認できるものではない」
(3)美幌町の土谷耕治町長は、鉄道設備を自治体に所有してもらう「上下分離方式」が提案されることを懸念。「石北線は路線が長いが、沿線自治体の数は少ない。個別自治体が負担するとなれば相当な額になるのは間違いない。町の財政事情を考えればとても応じられない」と、同方式導入には明確に反対する考えだ。
(4)大空町の山下英二町長は「JRによる路線維持を町の基本的な考えとして協議する」と述べ、あくまで鉄路の維持が前提との考えを強調。遠軽町の佐々木修一町長も「JRの考えを詳しく聞いた上で、沿線自治体や道と協議していきたい」
(5)小清水町の林直樹町長は「非常に難しい問題だ」と一言。上下分離方式について「果たして負担に耐えられる金額におさまるのか。町として公共交通は何としてでも維持しなければならず、(負担が大きいからと)なくなってもいいです、とも言うこともできない。どうすればいいのか」と困惑。清里町の櫛引政明町長も「地域をポンと見捨てるようなことはしないでほしい。今の形で維持してもらいたい」
(6)JR石北線と釧網線の両方を抱える網走市の水谷洋一市長は、維持困難路線が道内の複数に及んでいることを踏まえ、「北海道全体の交通体系のあり方の検討が必要で、鉄路維持を前提に道が論点整理を行い、政策横断的な対応を図るべきだと考える」と道の関与を求めた。櫛引政明・清里町長も「沿線自治体だけで済む話ではなくなっている。国鉄の分割民営化に関わってきた経緯から、国も全く知らんぷりというわけにはいかないはず」と、道や国を含めた協議の必要性を訴えた。



 北海道新聞は、「北海道の鉄道網 もはやJRに任せられぬ」、との社説で今回のことを批判した。
 その主張は次のものである。



(1)北海道の公共交通機関としての役割を果たすことができない―。そう吐露したと受け止められても、仕方がなかろう。
(2)今後、線路や駅舎など鉄道施設を自治体が所有する上下分離方式を軸に地元協議に入るという。自治体の財政事情は厳しい。議論が平行線をたどれば、鉄路半減が現実味を帯びる。もはや、JRだけに解決策を求めても事態の打開は難しい。JRの経営努力が不可欠なのは当然だが、鉄道の維持を北海道の地域政策としてとらえるべきだ。そのためにも、国や道には主体的な関与を求めたい。
(3)鉄道事業の赤字を穴埋めするはずの経営安定基金も、金利低下で運用益が大きく目減りしている。経営が厳しいのは分かる。だからといって、今日の状況につながった問題からも目をそらすわけにはいかない。JRがこれまで十分な安全投資を行ってこなかったことである。2011年に石勝線で起きた特急脱線炎上事故は記憶に新しい。貨物列車の脱線、レールの検査データ改ざんなど不祥事も続いた。これも、利用を低迷させた要因だろう。公共交通機関としての当然の対応を怠り、つけを道民に回すやり方は理解を得られるのか。きのうの記者会見で島田修社長は「民間企業の事業として担えるレベルを超えている。地域の人と相談させてほしい」と今後の交渉に期待を込めた。だが、路線維持に自治体の協力を求める以上、JR自身が資産売却など身を削る努力が必要だ。
(4)こうした状況を打開するには、まちづくりの視点で鉄道をとらえ直すしかない。
 鉄路は生活を支えるばかりでなく、貨物輸送、観光客を呼び寄せる重要な道具である。しかも駅の多くは、商店街の核にもなっている。こうした価値を再認識し、支援策を検討する必要がある。中心的な役割を担うべきは全道を見渡す立場にある道だ。まず、道内の交通体系の全体像の中で鉄道のあるべき姿を描き出す。その上で、住民の不安を解消するような具体策を考えるべきだ。
(5)国の責任も重い。87年の国鉄分割民営化時から、北海道で1社が単独で営むことに無理があるとの指摘はあったからだ。石井啓一国土交通相は記者会見で、これから始まる協議に国も参加するとの姿勢を明らかにした。ならば、道路に偏っている現在の交通政策を、鉄路を含めた枠組みに練り直すべきではないか。国費投入の検討も急務だ。




 この北海道新聞の記事に、思いは複雑になる。
 旭川や音威子府、稚内等の国鉄闘争闘争団を訪れたことが蘇る。
 北海道新聞は「北海道の鉄道網 もはやJRに任せられぬ」と書いたが、実は、「この国にもはや国民を任せられぬ」、という気持ちだ。しかし、その国に対応を求めざるを得ないのも事実だ。
 だとしたら、確かに、きちっとした未来構想が必要である。


 以下、北海道新聞の引用。







(1)北海道新聞-膨らむ赤字 縮む鉄路 JR維持困難路線発表 安全対策 収益を圧迫-2016年11月19日


 経営難にあえぐJR北海道が18日、鉄道事業の抜本的な見直しを正式に表明した。これまで国鉄時代からの不採算路線の廃止や人員削減など効率化を進めてきたが、基金運用益の減少や地方路線の低迷が響き、本業で大なたを振るわざるを得なくなった。来春に発足30年の節目を迎えるが、道内では鉄路が「頼れる足」ではなくなる恐れもある。

 JR北海道は1987年4月、国鉄分割・民営化に伴い、3千キロを超える路線を継承して誕生した。88年3月に青函トンネルを通る海峡線(87・8キロ)の開通はあったが、国鉄時代に廃止が決まっていた天北線(南稚内―音威子府間、148・9キロ)などの長大路線や産炭地の路線を次々に廃線。95年に深川―名寄間の深名線(121・8キロ)を廃止し、現在は発足時に比べ、19%少ない2568・7キロで営業している。

 路線は減ったが、人口が集まる札幌圏での近距離利用の増加などから、2015年度の旅客輸送人員は発足時より4割多い約1億3400万人となるなど、むしろ増えているのが実態だ。ただ、鉄道運輸収入は96年度の800億円をピークに減少傾向にあり、昨年度は約685億円と発足時より1割多い程度でしかない。87年ごろに約170キロだった道内高速道路網が今は6・5倍に延び、航空路線の拡充も重なって、柱となる中長距離輸送で苦戦を強いられているからだ。

 こうした本業の不振を補うために、JRはJRタワーを核とした商業施設をはじめ、スーパーやホテルなど多角化を図ってきた。鉄道以外の「非鉄道事業」が全売上高に占める割合は6割と、先月に株式上場したJR九州と同水準に達する。

 ただ、11年の石勝線の特急脱線炎上事故を皮切りに、トラブルが相次ぎ、それまで怠ってきた安全投資に資金を重点配分せざるを得なくなった。老朽化した橋やトンネルの修繕費もかさみ、17年3月期のJR単独の経常赤字は過去最悪の235億円まで膨らむ見通しだ。赤字補填(ほてん)のため積まれた6822億円の経営安定基金も超低金利の影響で、運用益が当初想定の45%に当たる226億円(16年度見込み)まで減っている。



(2)北海道新聞-JR、単独維持困難な線区発表 オホーツク管内沿線首長 「費用負担応じられない」 タマネギ列車影響も-2016年11月19日


 JR北海道が18日、石北線と釧網線を含む13区間を「単独では維持困難な線区」だと正式発表したことを受け、管内の沿線首長からは「とても応じられない」などと費用負担に対する反発や「公共交通の方針を示すべきだ」と国や道の関与を求める声が上がった。JRは今後、協議会を設け、路線のあり方について話し合いたい意向だが、議論の行方は不透明だ。

 オホーツク圏活性化期成会の会長でもある辻直孝北見市長はJRの発表内容について「地域にとっても北海道全体にとっても大きな問題。とうてい容認できるものではない」と強調。石北線の存廃は、生産量日本一のタマネギを運ぶ貨物列車の運行にも関わるため「今後は農業や運輸関係者と話し合うこともあり得る」と述べ、関係団体や経済界とも連携していく考えを示唆した。

 美幌町の土谷耕治町長は、鉄道設備を自治体に所有してもらう「上下分離方式」が提案されることを懸念。「石北線は路線が長いが、沿線自治体の数は少ない。個別自治体が負担するとなれば相当な額になるのは間違いない。町の財政事情を考えればとても応じられない」と、同方式導入には明確に反対する考えだ。

 大空町の山下英二町長は「JRによる路線維持を町の基本的な考えとして協議する」と述べ、あくまで鉄路の維持が前提との考えを強調。遠軽町の佐々木修一町長も「JRの考えを詳しく聞いた上で、沿線自治体や道と協議していきたい」と述べた。

 釧網線沿線の首長にも戸惑いが広がった。小清水町の林直樹町長は「非常に難しい問題だ」と一言。上下分離方式について「果たして負担に耐えられる金額におさまるのか。町として公共交通は何としてでも維持しなければならず、(負担が大きいからと)なくなってもいいです、とも言うこともできない。どうすればいいのか」と困惑。清里町の櫛引政明町長も「地域をポンと見捨てるようなことはしないでほしい。今の形で維持してもらいたい」と話した。

 一方で、道や国が主導権を発揮すべきだとする声も相次いだ。JR石北線と釧網線の両方を抱える網走市の水谷洋一市長は、維持困難路線が道内の複数に及んでいることを踏まえ、「北海道全体の交通体系のあり方の検討が必要で、鉄路維持を前提に道が論点整理を行い、政策横断的な対応を図るべきだと考える」と道の関与を求めた。

 櫛引政明・清里町長も「沿線自治体だけで済む話ではなくなっている。国鉄の分割民営化に関わってきた経緯から、国も全く知らんぷりというわけにはいかないはず」と、道や国を含めた協議の必要性を訴えた。

 斜里町は「町長が不在のためコメントできない」とした。
■妙案なく協議難航必至 JR、期成会 意向かみ合わず
 JR北海道が発表した「単独では維持が困難な路線」に石北線と釧網線が含まれ、管内でも同社が今後、沿線自治体と協議開始へ動きだす。管内18市町村でつくるオホーツク圏活性化期成会は、鉄道事業見直しに対し、道主導で全道的に対応することが必要と強調。一方JR側は、路線維持へ個別の沿線自治体に実効性ある具体策を求めている。互いの意向はかみ合っておらず、協議難航は必至だ。

 「JRと自治体というよりは、道が公共交通のあり方を示してほしい」。期成会会長を務める北見市の辻直孝市長は18日の発表を受けて、そう強調した。発表された維持困難路線は、道内鉄路の約半分に及ぶ。

 期成会はこれまでも、8月に道に行った要望活動で「道内交通網での鉄道の位置付けの明確化」を訴えるなど、JRの鉄道事業見直しに道の関与を求めてきた。道はワーキングチームを設置するなど一定の動きはあるものの、期待に比べて「動きが鈍い」(管内自治体幹部)との声も。管内は妙案が見つからないまま、JR側の発表を迎えた。

 一方、JR側は発表で、石北線と釧網線を「安全な鉄道サービスを持続的に維持するための費用を確保できない線区」と明記。その上で、路線維持への選択肢として、利用の少ない駅廃止や列車見直しによる経費節減、運賃値上げなど、主に利便性が後退する内容を求めている。

 鉄道設備を自治体が所有しJRは運行のみを行う「上下分離方式」も選択肢に盛り込み、自治体側に費用負担も含め具体的な対策を求める内容だが、「自治体に負担を求めること自体がおかしい」(土谷耕治・美幌町長)との声もあり、議論の行方は難航が予想される。



(3)北海道新聞社説-北海道の鉄道網 もはやJRに任せられぬ-2016年11月19日


 北海道の公共交通機関としての役割を果たすことができない―。そう吐露したと受け止められても、仕方がなかろう。

 JR北海道はきのう、JR単独での維持が困難な路線を発表した。バス転換を提案する3区間を含め10路線13区間の計1237キロ。道内鉄道網の半分に及ぶ。

 今後、線路や駅舎など鉄道施設を自治体が所有する上下分離方式を軸に地元協議に入るという。

 自治体の財政事情は厳しい。議論が平行線をたどれば、鉄路半減が現実味を帯びる。

 もはや、JRだけに解決策を求めても事態の打開は難しい。

 JRの経営努力が不可欠なのは当然だが、鉄道の維持を北海道の地域政策としてとらえるべきだ。

 そのためにも、国や道には主体的な関与を求めたい。

■道東北に広がる空白

 左の地図を見てほしい。JRが単独で維持できるとする路線だ。道東北に白い部分が目立つ。

 JRの具体的な計画はこうだ。

 単独維持困難路線のうち、札沼線北海道医療大学―新十津川間、根室線富良野―新得間、留萌線深川―留萌間はバス転換する。

 いずれも1キロ当たりの1日平均輸送人員を示す輸送密度が200人未満である。

 宗谷線名寄―稚内間、石北線新旭川―網走間など輸送密度2千人未満の区間については自治体と協議し、経費削減や利用促進で収支改善を図った上で、上下分離方式を模索する。

 北海道新幹線の札幌延伸時は並行在来線の函館線函館―小樽間も経営分離される。

 鉄路を維持するという部分のうち宗谷線旭川―名寄間、根室線帯広―釧路間は、第三セクターの北海道高速鉄道開発がすでに線路などを保有して

 しかし、これではもう鉄道網とは呼べまい。おり、当面は存続の方向となる。


 過疎化が進む北海道で鉄道経営の難しさがあるのは確かだ。高速道路などが整備され、マイカーや都市間バスの利用も増えている。

 鉄道事業の赤字を穴埋めするはずの経営安定基金も、金利低下で運用益が大きく目減りしている。経営が厳しいのは分かる。

 だからといって、今日の状況につながった問題からも目をそらすわけにはいかない。JRがこれまで十分な安全投資を行ってこなかったことである。

 2011年に石勝線で起きた特急脱線炎上事故は記憶に新しい。貨物列車の脱線、レールの検査データ改ざんなど不祥事も続いた。

 これも、利用を低迷させた要因だろう。公共交通機関としての当然の対応を怠り、つけを道民に回すやり方は理解を得られるのか。

 きのうの記者会見で島田修社長は「民間企業の事業として担えるレベルを超えている。地域の人と相談させてほしい」と今後の交渉に期待を込めた。

 だが、路線維持に自治体の協力を求める以上、JR自身が資産売却など身を削る努力が必要だ。

■国、道も積極関与を

 過疎化が廃線をもたらすのか、廃線になると過疎化が進むのか―。議論は分かれるが、廃線で地方の衰退が加速するのは確かだ。

 例えば、1989年に名寄線が廃止された紋別市だ。89年に約3万人いた人口は現在2万3千人まで落ち込んでいる。

 漁業の衰退なども背景にあるとはいえ、廃線がまちづくりに影響を与えたのは間違いない。

 こうした状況を打開するには、まちづくりの視点で鉄道をとらえ直すしかない。

 鉄路は生活を支えるばかりでなく、貨物輸送、観光客を呼び寄せる重要な道具である。しかも駅の多くは、商店街の核にもなっている。こうした価値を再認識し、支援策を検討する必要がある。

 中心的な役割を担うべきは全道を見渡す立場にある道だ。まず、道内の交通体系の全体像の中で鉄道のあるべき姿を描き出す。その上で、住民の不安を解消するような具体策を考えるべきだ。

 国の責任も重い。87年の国鉄分割民営化時から、北海道で1社が単独で営むことに無理があるとの指摘はあったからだ。

 石井啓一国土交通相は記者会見で、これから始まる協議に国も参加するとの姿勢を明らかにした。

 ならば、道路に偏っている現在の交通政策を、鉄路を含めた枠組みに練り直すべきではないか。国費投入の検討も急務だ。


by asyagi-df-2014 | 2016-11-25 05:27 | 書くことから-労働 | Comments(0)

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