「駆け付け警護」「宿営地の共同防護」の新任務を考える。(3)

 安倍晋三政権は、2016年11月15日の閣議で、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊に、安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」の新任務を付与する実施計画の変更を決定した。また、閣議に先立つ国家安全保障会議(日本版NSC)では、同じく新任務の「宿営地の共同防護」を付与する方針も確認した。
 このことについて、考える。
2016年11月16日付けの九州地区の各紙の社説または論説の見出しは次のとおりである。


(1)琉球新報社説-「駆け付け警護」付与 国のカタチ破壊する暴挙 自衛隊撤退を検討すべきだ
(2)沖縄タイムス社説-[駆け付け警護]政府は責任もてるのか
(3)南日本新聞社説- [駆け付け警護] 見切り発車の新任務付与を危惧する
(4)佐賀新聞論説-駆け付け警護 任務できる治安状況か
(5)宮崎日日新聞社説-駆け付け警護現地の状況認識甘くないか 
(6)西日本新聞社説-自衛隊新任務 原則をなし崩しにするな
(7)大分合同新聞論説-駆け付け警護任務付与 活動拡大を危惧する
(8)熊本日日新聞社説-駆け付け警護 リスクを直視しているか


 このように、今回取りあげた8社は、いずれも政府への危惧感等を明確にしている。
ここで、各紙の主張を見てみる。
Ⅰ.琉球新報の主張
(1)憲法9条が禁じる海外での武力行使につながる恐れがあり、平和国家日本の国のカタチを破壊する暴挙だ。自衛隊員が危険にさらされるのみならず人命を奪う事態もあり得る。断じて認められない。
(2)「比較的」との曖昧な言葉で、自衛隊に駆け付け警護の危険な任務を押し付けるのである。自衛隊員の命に政府として責任を持つそぶりも感じられない。自衛隊員の安全軽視を放置してはならない。
(3)安全対策も不十分だ。政府は「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合」が生じれば、国家安全保障会議(NSC)の審議後、部隊を撤収するとしている。だが、部隊が戦闘に巻き込まれた場合、NSCの判断を待つ余裕はない。これで自衛隊員の安全が確保されると考えるのは浅はかである。
 救助の要請を受け、武器を持って出動する新任務の訓練期間はわずか2カ月だった。防衛相は「十分、対応可能なレベルに達した」と強調している。だが軍事の専門家でもない防衛相の言葉を信じる国民はいまい。駆け付け警護などの訓練と実際とでは大きく異なるだろう。状況判断を誤れば、自衛隊員が命の危険にさらされることは明らかだ。
(4)憲法解釈の変更を反映させた安全保障関連法が15年9月に成立し、今年3月に施行され、自衛隊の任務が大幅に拡大された。自衛隊の本来の任務である「専守防衛」を大きく逸脱する危険な領域へと日本は入ったのである。
 安倍政権は駆け付け警護付与を突破口にして「戦争ができる国」への転換を狙っていることは間違いない。最終的には憲法9条を改正し、自衛隊が世界のどこでも武力行使を全面的に行えるようにする可能性がある。
 衆参両院で改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2を占めてもいる。憲法9条は風前のともしびである。そう言わざるを得ない状況にあることを、国民全体で強く認識する必要がある。
Ⅱ.沖縄タイムスの主張
(1)陸自は先月、「駆け付け警護」など新任務の訓練を初めて報道陣に公開した。訓練では「法的に何ができて何ができないかを体に染みこませた」という。
 憲法9条は交戦権を明確に否定している。だが、武装集団は9条を考慮して襲ってくるわけではない。憲法9条を前提にした「想定」と、南スーダンの厳しい「現実」には大きな裂け目があり、「想定」が突発的な「現実」に飲み込まれるおそれがある。
 国民的合意が得られず、理由もはっきりしないまま、隊員を危険な新任務に就かせるのには賛成できない。
(2)「比較的安定」という判断がどのような物差しに基づいているか、つまびらかでないが、実績を作りたいあまり現地情勢を甘く見積もっているところはないか。
(3)政府は、PKO参加5原則が満たされていても活動実施が困難な場合は撤収する、ことを15日の閣議で決めている。状況判断の難しさは想像するにあまりある。銃の引き金に指をかける行為は、隊員自身にとって途方もない判断になるだけでなく、国のあり方をも揺さぶる重さを秘めている。隊員はその重さに耐えられるだろうか。PKOそのものが変質しつつある現実を踏まえ、国際貢献のあり方を検討し直すべき時期にきている。
Ⅲ.南日本新聞の主張
(1)いよいよ自衛隊が未知の領域に足を踏み入れる。
 海外での武力行使を禁じた憲法9条の縛りも緩む。
(2)自衛隊はこれまで海外で一発の銃弾も撃たず、一人の戦死者も出していない。戦闘に巻き込まれる危険が増すことは避けられない。海外での武力行使を禁じた憲法9条の縛りも緩む。
(3)「積極的平和主義」を掲げる安倍晋三首相に、新任務付与の責任と覚悟はあるのだろうか。なぜ今、新任務が必要か、隊員の安全が確保できる情勢なのか。疑問や懸念を置き去りにした見切り発車の感が強い。深く危惧する。
(4)南スーダンで「紛争当事者間の停戦合意」を軸とするPKO参加5原則が満たされているかを問い直す必要もある。
(5)1992年の初めてのPKO派遣から四半世紀がたつ。国際貢献活動としての理解が定着してきたのも、平和憲法の枠内での活動に徹したためだろう。新任務を巡りPKOは大きな曲がり角に立つ。
(6)政府の判断だけで安保政策を押しつければ、民意との乖離(かいり)は広がるばかりだ。政府は10月下旬の時点で部隊を撤退させた国はないとし、自衛隊は「国際社会の平和と安定に貢献している」と強調する。だが、それも安保政策に国民の幅広い支持があっての話だ。安倍政権は肝に銘じるべきだ。
Ⅳ.佐賀新聞の主張
(1)集団的自衛権を盛り込んだ安全保障関連法にもとづく初めての任務だ。ただ、南スーダンは内戦状態といわれ、武装集団への応戦が迫られる危険な事態も起こりうる。これまで他国で1発の銃弾も撃たず、犠牲者を出すことがなかった自衛隊にとって大きな転機を迎える。
(2)政府は「駆け付け警護」と「宿営地共同防衛」だけ、活動範囲は「首都とその周辺」だけとしているが、想定外の事態は常に起こりうる。PKO宿営地に逃げてきた住民を追って、武装集団が押し寄せたことも過去にあった。自衛隊が本格的な戦闘に巻き込まれる可能性は否定できないはずだ。
(3)憲法が海外での武力行使を禁じていることを考えれば、紛争国への関わり方には制約がある。まだ国民の議論は十分と言えない。政府の実績づくりのために憲法の戦争放棄の精神がなし崩しになったり、自衛隊員が危険な状況に置かれてはならない。
Ⅴ.宮崎日日新聞の主張
(1)政府は安全保障関連法に基づいて、南スーダンに派遣する国連平和維持活動(PKO)の陸上自衛隊に、武器使用の範囲を拡大した「駆け付け警護」の新任務を加えることを閣議決定した。これまで他国民に向けて1発の銃弾も撃たず、自らの犠牲者も出さなかった自衛隊の活動は大きく変質する。
(2)安保関連法は10本の法改正と1本の新法が一括審議された。PKO活動について十分な議論が尽くされたか。新任務に国民の理解と支持が得られているかは疑問だ。安倍政権が掲げる「積極的平和主義」の下に、海外での武力行使を禁じた憲法9条の制約を緩めた活動の拡大を危惧する。
(3)疑問があるのはそもそもの派遣自体の判断だ。政府見解はジュバの状況は「楽観できないが、現在は比較的落ち着いている」とした。だが7月に政府軍と反政府勢力の間で大規模戦闘が発生。反政府勢力トップは内戦を継続する考えを示している。国連はジュバの治安情勢について「不安定な状況が続いている」と報告書をまとめた。極めて流動的で不測の事態も懸念される状況と言うべきだ。
(4)稲田防衛相や首相補佐官らは短期間、現地を視察。政府見解では反政府勢力には「系統だった組織性」はなく、陸自派遣にPKO法上問題はないとした。状況認識が甘くないか。
(5)PKOは1992年の初めての派遣から四半世紀。停戦合意の維持などから住民保護へと活動実態が変わったと指摘されるPKOに、日本がどう関わっていくのか。あらためて検討すべき時だ。
Ⅵ.西日本新聞の主張
(1)国連が主体となって地域の平和を守る活動に、日本が積極的に貢献していくことは重要である。自衛隊が民間人の安全確保に協力することにも異存はない。しかし、現在の南スーダンの混乱した情勢に照らせば、今回の新任務付与は、日本が平和主義と国際貢献を両立させるために守ってきた重要な原則を、なし崩しにする恐れをはらんでいる。
(2)まずはPKO参加5原則との整合性である。南スーダンでは大統領派の政府軍と前副大統領派の反政府軍との戦闘が続いている。7月には自衛隊が活動する首都ジュバで大規模な市街戦が起きた。「紛争当事者間の停戦合意が成立」などの5原則を満たしていないとの指摘がある。そこで新任務を実施すれば、自衛隊が両派の対立に巻き込まれかねない。
(3)そもそも南スーダンに派遣されている自衛隊は施設部隊であり、主な仕事は道路建設だ。治安維持に適した部隊ではない。内戦ともいえる国で道路建設を続行し、隊員を危険にさらすことに国民の理解は得られるのか。新任務に突き進むのではなく、むしろ撤収を検討すべき情勢だ。自衛隊の派遣にこだわらず、日本が南スーダンのために何ができるか、幅広く考える時ではないか。
Ⅶ.大分合同新聞の主張
(1)1992年の初めてのPKO派遣から四半世紀。隊員が戦闘に巻き込まれるリスクは確実に高まる。これまで他国民に向けて1発の銃弾も撃たず、自らの犠牲者も出さなかった自衛隊の活動内容は大きく「変質」する。
(2)10本の法改正と1本の新法が一括審議された安保関連法でPKO活動について十分な議論が尽くされたか。新たな任務に国民の理解と支持が得られているかは疑問だ。
(3)安倍政権が掲げる「積極的平和主義」の題目の下に、海外での武力行使を禁じた憲法9条の制約を緩めた活動の拡大を危惧する。
(4)停戦合意の維持などから住民保護へと活動実態が変わったと指摘されるPKOに日本がどう関わっていくのか。あらためて検討すべきだ。
(5)実施計画の変更では「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難な場合」は部隊を撤収することも盛り込み、首相は「撤収をちゅうちょすることはない」と述べた。しかし「派遣ありき」を前提とするような姿勢で、状況を的確に判断できるのか。懸念と疑問は尽きない。
Ⅷ.熊本日日新聞の主張
(1)海外で1発の銃弾も撃ったことがなく、自らの犠牲者を出さなかった自衛隊の活動が大きく変わり、戦闘に直面するリスクが増大するのは避けられない。
(2)稲田防衛相や首相補佐官らが、短期間現地を視察。政府見解は反政府勢力に「系統だった組織性」はなく、陸自派遣にPKO法上問題はないとしたが、リスクを直視していないのではないのか。
(3)実施計画の変更では「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合」は部隊を撤収することも盛り込み、安倍晋三首相は「撤収をちゅうちょすることはない」と述べた。しかし、武器を持って出動する新任務は、これまでの自衛隊活動の中では未経験の事態への対処となる。状況判断を誤れば、大きな危険にさらされるのは間違いない。拙速に事を進めているのではないか。
(4)政府は、安保関連法で可能となった新たな国際貢献の実績作りを着実に進めたい考えとみられるが、「付与ありき」の判断なら将来に禍根を残しかねない。


 また、沖縄タイムスは、新任務について次のように指摘する。


「離れた場所にいる国連や非政府組織(NGO)の職員らが武装集団や暴徒に襲われた際、武器を使って警護するのが『駆け付け警護』である。宿営地が武装集団に襲撃されたとき、他国軍とともに『宿営地の共同防衛』にあたる任務も新たに付与する予定だ。新任務は、自衛隊員が戦闘場面に直面し、『殺すリスク』と『殺されるリスク』がともに高まるという点で、派遣される隊員に大きな負担を負わせることになる。その面の論議が不十分だ。」


 特に、琉球新報の「憲法9条が禁じる海外での武力行使につながる恐れがあり、平和国家日本の国のカタチを破壊する暴挙だ。自衛隊員が危険にさらされるのみならず人命を奪う事態もあり得る。断じて認められない。」及び沖縄タイムスの「憲法9条は交戦権を明確に否定している。だが、武装集団は9条を考慮して襲ってくるわけではない。憲法9条を前提にした『想定』と、南スーダンの厳しい『現実』には大きな裂け目があり、『想定』が突発的な『現実』に飲み込まれるおそれがある。国民的合意が得られず、理由もはっきりしないまま、隊員を危険な新任務に就かせるのには賛成できない。」、との主張は特筆に値する。
 このことは、日本国憲法の改憲・改悪が、そのまま沖縄に強い影響を与えることを両社が自覚していることを示している。
 琉球新報の「狙いは9条改正だ」、との指摘はまさしくこのことからの告発なのである。


 以下、各紙の引用。








(1)琉球新報社説-「駆け付け警護」付与 国のカタチ破壊する暴挙 自衛隊撤退を検討すべきだ-2016年11月16日 06:01



 憲法9条が禁じる海外での武力行使につながる恐れがあり、平和国家日本の国のカタチを破壊する暴挙だ。自衛隊員が危険にさらされるのみならず人命を奪う事態もあり得る。断じて認められない。
 政府は南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊に対し、武器を使って国連職員らを助ける「駆け付け警護」の付与を閣議決定した。
 現地の反政府勢力のトップは「和平合意は崩壊した」と明言している。PKO参加5原則の一つ、「紛争当事者間の停戦合意」を満たしているとは到底言えない。政府は5原則に反する自衛隊の撤退こそ検討すべきだ。

許せぬ隊員の安全軽視

 政府は南スーダンの首都ジュバの治安情勢について「比較的落ち着いている」と判断している。
 この判断は稲田朋美防衛相がたった7時間、柴山昌彦首相補佐官がわずか1日の現地視察で下したものだ。実情とは大きく懸け離れている。
 「比較的」との曖昧な言葉で、自衛隊に駆け付け警護の危険な任務を押し付けるのである。自衛隊員の命に政府として責任を持つそぶりも感じられない。自衛隊員の安全軽視を放置してはならない。
 南スーダンでは政府軍が最大民族ディンカ、反政府勢力が有力民族ヌエルをそれぞれ中心とした内戦が2013年12月から続いている。これまでに数万人が死亡したとされ、国連によると、約260万人が家を追われた。今年7月にもジュバで大規模な戦闘があり、270人以上が死亡している。
 これが「比較的安定している」と言える状況だろうか。新任務を付与するために、5原則を満たしていると強引に結論付け、治安情勢が「比較的落ち着いている」と強弁しているとしか思えない。
 安全対策も不十分だ。政府は「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合」が生じれば、国家安全保障会議(NSC)の審議後、部隊を撤収するとしている。
 だが、部隊が戦闘に巻き込まれた場合、NSCの判断を待つ余裕はない。これで自衛隊員の安全が確保されると考えるのは浅はかである。
 救助の要請を受け、武器を持って出動する新任務の訓練期間はわずか2カ月だった。防衛相は「十分、対応可能なレベルに達した」と強調している。だが軍事の専門家でもない防衛相の言葉を信じる国民はいまい。
 駆け付け警護などの訓練と実際とでは大きく異なるだろう。状況判断を誤れば、自衛隊員が命の危険にさらされることは明らかだ。

狙いは9条改正だ

 安倍政権は歴代内閣が守ってきた憲法規範を次々とほごにするなど、憲法を巡る状況はわずか2年余りで大きく変わった。
 2014年4月に日本の平和主義の象徴とも言える武器輸出三原則を廃止し、国際紛争を助長する恐れのある防衛装備移転三原則を閣議決定した。
 14年7月には従来の憲法解釈を変更し、自国が攻撃を受けていなくても他国への攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使を容認することも閣議決定した。
 憲法解釈の変更を反映させた安全保障関連法が15年9月に成立し、今年3月に施行され、自衛隊の任務が大幅に拡大された。自衛隊の本来の任務である「専守防衛」を大きく逸脱する危険な領域へと日本は入ったのである。
 安倍政権は駆け付け警護付与を突破口にして「戦争ができる国」への転換を狙っていることは間違いない。最終的には憲法9条を改正し、自衛隊が世界のどこでも武力行使を全面的に行えるようにする可能性がある。
 衆参両院で改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2を占めてもいる。憲法9条は風前のともしびである。そう言わざるを得ない状況にあることを、国民全体で強く認識する必要がある。


(2)沖縄タイムス社説-[駆け付け警護]政府は責任もてるのか-2016年11月16日



 政府は15日の閣議で、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊に、「駆け付け警護」の任務を付与することを決めた。昨年9月に成立した安全保障関連法で定められた新たな任務である。

 集団的自衛権の行使を認め、海外での自衛隊活動を大幅に拡大した同法は、いよいよ本格運用の段階に移る。

 離れた場所にいる国連や非政府組織(NGO)の職員らが武装集団や暴徒に襲われた際、武器を使って警護するのが「駆け付け警護」である。

 宿営地が武装集団に襲撃されたとき、他国軍とともに「宿営地の共同防衛」にあたる任務も新たに付与する予定だ。

 新任務は、自衛隊員が戦闘場面に直面し、「殺すリスク」と「殺されるリスク」がともに高まるという点で、派遣される隊員に大きな負担を負わせることになる。その面の論議が不十分だ。

 陸自は先月、「駆け付け警護」など新任務の訓練を初めて報道陣に公開した。訓練では「法的に何ができて何ができないかを体に染みこませた」という。

 憲法9条は交戦権を明確に否定している。だが、武装集団は9条を考慮して襲ってくるわけではない。憲法9条を前提にした「想定」と、南スーダンの厳しい「現実」には大きな裂け目があり、「想定」が突発的な「現実」に飲み込まれるおそれがある。

 国民的合意が得られず、理由もはっきりしないまま、隊員を危険な新任務に就かせるのには賛成できない。
■    ■
 南スーダンは2011年7月、スーダン共和国の南部10州が住民投票を経て分離独立し、国連加盟が認められた。 だが、13年12月に大統領派と副大統領派による大規模な戦闘が発生、首都ジュバやその周辺の治安状態は今も不安定な状況が続いている。

 政府は駆け付け警護の実施を自衛隊宿営地のあるジュバとその周辺に限定するが、そのジュバでも7月、政府軍と反政府勢力との間で大規模な戦闘が発生し、270人以上が死亡。国連も8月12日から10月25日までの情勢をまとめた報告書で状況が依然、不安定であることを認めた。

 15日の参院特別委員会で安倍晋三首相は「ジュバは楽観できないが、現在は比較的落ち着いている」との現状認識を明らかにした。

 「比較的安定」という判断がどのような物差しに基づいているか、つまびらかでないが、実績を作りたいあまり現地情勢を甘く見積もっているところはないか。
■    ■
 政府は、PKO参加5原則が満たされていても活動実施が困難な場合は撤収する、ことを15日の閣議で決めている。状況判断の難しさは想像するにあまりある。

 銃の引き金に指をかける行為は、隊員自身にとって途方もない判断になるだけでなく、国のあり方をも揺さぶる重さを秘めている。隊員はその重さに耐えられるだろうか。

 PKOそのものが変質しつつある現実を踏まえ、国際貢献のあり方を検討し直すべき時期にきている。


(3)南日本新聞社説- [駆け付け警護] 見切り発車の新任務付与を危惧する-2016年11月16日


 いよいよ自衛隊が未知の領域に足を踏み入れる。

 政府はきのうの閣議で、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊に、安全保障関連法に基づく新任務「駆け付け警護」を付与することを決めた。

 同じく新任務である他国軍との「宿営地の共同防衛」についても、近く付与すると稲田朋美防衛相が表明した。

 自衛隊の海外任務を拡大させた安保関連法の本格運用だ。武器使用基準が緩和され、任務遂行のための警告射撃が可能になった。

 自衛隊はこれまで海外で一発の銃弾も撃たず、一人の戦死者も出していない。戦闘に巻き込まれる危険が増すことは避けられない。

 海外での武力行使を禁じた憲法9条の縛りも緩む。

 派遣先の南スーダンは、2013年末から続く内戦により治安情勢は流動的だ。

 「積極的平和主義」を掲げる安倍晋三首相に、新任務付与の責任と覚悟はあるのだろうか。

 なぜ今、新任務が必要か、隊員の安全が確保できる情勢なのか。疑問や懸念を置き去りにした見切り発車の感が強い。深く危惧する。
■「危険隠し」の訓練
 駆け付け警護は、武装集団に襲われた国連や非政府組織(NGO)の関係者らを、武器を持って助けに行く重い任務である。

 付与されるのは、今月下旬に出発する第9師団第5普通科連隊(青森市)を主力とする約350人の部隊だ。9月から実動訓練を積んできた。

 もともと道路整備などに当たる施設部隊が中心だ。南スーダンで緊急事態が起きた場合、国連の歩兵部隊などがまず対応するとされる。このため陸自が出動する場面は少ないとの見方もある。

 だが、油断はできない。どこまで武器を使うか即断を迫られる厳しい局面も想定される。

 政府は「危険な任務」とのイメージを拭おうと躍起だ。

 10月下旬に公開された訓練では防護盾を手に隊員が並び、拡声器で群衆を追い払う手順などを示した。

 緊迫度が低かったのは、官邸の意向で武器使用の場面を伏せたためだ。あまりにも露骨な現場介入である。これでは世論操作ではないか。

 安倍政権は自衛隊の負うリスクから国民の目をそらさず、丁寧に説明すべきだ。

 そもそも南スーダンは部隊を派遣できる状況なのか。首都ジュバでは、7月に270人以上が死亡する大規模戦闘が発生した。国外に逃れた反政府勢力のトップは首都攻撃も辞さない姿勢という。

 国連は政治的対立が民族紛争に変質し、ジェノサイド(民族大虐殺)に発展する恐れを警戒する。

 政府が新任務の範囲とするのは、自衛隊の宿営地がある「ジュバとその周辺」だ。

 現地視察した稲田氏は「比較的安定している」とアピールするが、滞在7時間の強行軍で何が分かるのか。「派遣ありき」の姿勢なら問題だ。

 現地の治安情勢は国連が指摘するように、首都の別を問わず混沌(こんとん)としているとみるべきである。

 南スーダンで「紛争当事者間の停戦合意」を軸とするPKO参加5原則が満たされているかを問い直す必要もある。

 陸自PKO部隊の第1陣は当時の民主党政権によって、南スーダンが独立した翌12年に派遣された。当時は武力紛争はなく、停戦合意も前提とされなかった。

 その後、情勢は大きく変わったのに、政府は5原則が維持されているとの立場を崩していない。

 反政府勢力を紛争の一方の当事者と認めておらず、「戦闘行為と評価しうるものではない。武力紛争の発生とは考えていない」と主張している。

 政府の見解は現実離れしていると言わざるを得ない。部隊撤収も視野に入れた情勢の見極めが重要になってくる。
■国民理解深まらず
 1992年の初めてのPKO派遣から四半世紀がたつ。国際貢献活動としての理解が定着してきたのも、平和憲法の枠内での活動に徹したためだろう。

 新任務を巡りPKOは大きな曲がり角に立つ。

 安保関連法は、改正PKO協力法を含む10本の法改正と1本の新法が一括審議され、論議は尽くされなかった。

 憲法学者らが「違憲」と指摘した法自体の疑義も積み残され、国民の理解が深まっているとは言い難い。

 今回の任務が、自衛隊が海外で武器を使い、国民がそれに慣らされるようなことにつながってはならない。厳しく監視したい。

 共同通信社による先月末の全国電話世論調査によると、駆け付け警護の付与に「反対」が57.4%、「賛成」は30.6%だった。

 政府の判断だけで安保政策を押しつければ、民意との乖離(かいり)は広がるばかりだ。

 政府は10月下旬の時点で部隊を撤退させた国はないとし、自衛隊は「国際社会の平和と安定に貢献している」と強調する。

 だが、それも安保政策に国民の幅広い支持があっての話だ。安倍政権は肝に銘じるべきだ。


(4)佐賀新聞論説-駆け付け警護 任務できる治安状況か-2016年11月16日


 政府はアフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊に「駆け付け警護」と「宿営地の共同防衛」の新任務を与える。集団的自衛権を盛り込んだ安全保障関連法にもとづく初めての任務だ。ただ、南スーダンは内戦状態といわれ、武装集団への応戦が迫られる危険な事態も起こりうる。これまで他国で1発の銃弾も撃たず、犠牲者を出すことがなかった自衛隊にとって大きな転機を迎える。

 日本は1992年にPKO協力法が成立して以来、カンボジアやゴラン高原、東ティモールなどに自衛隊を派遣している。拳銃は自衛手段のため所持するが、任務の中心は道路や橋などのインフラ整備、救援物資輸送など紛争国の復興支援で、他国の部隊が担う治安活動とは一線を画してきた。

 それが来月始まる新任務で、国連職員やNGO(非政府組織)などの民間人が襲撃された場合、現場に駆け付けて救助できるようになった。威嚇や警告目的の射撃が認められ、身の危険が生じたときには正当防衛や緊急避難を理由に襲撃者を撃つこともできる。

 また、武装集団がPKO宿営地を攻撃した場合は他国の部隊とともに行動できる。安倍政権は積極的平和主義を掲げるだけに、政府や与党関係者は「自衛隊は特別扱いを受けてきたが、ようやく国際標準に近い形となる」と意義を強調する。

 とはいえ、最初の現場が南スーダンというのはどうだろうか。同国は2011年にスーダンから分離独立する形で建国したが、異なる二つの民族が大統領派と前副大統領派に分かれ、内紛を繰り返している。

 今年7月にはPKOの宿営地もある首都ジュバで両派が衝突し、300人近くの死者を出した。兵士による住民への略奪行為も起きている。周辺国や米国は国連に武力介入部隊の投入を要請しており、もはや、どの国が見ても、日本のPKO参加条件である「紛争当事者の停戦合意」が保たれているとは言えないだろう。

 それでも、日本政府は7月の武力衝突を「発砲事案」という。自衛隊の活動継続のための矮小(わいしょう)化にしか聞こえない。安倍首相は「安全で有意義な活動が難しければ、部隊の撤収を躊躇(ちゅうちょ)することはない」と国会答弁しているが、「派遣ありき」の前のめりの姿勢で、冷静に判断できるのだろうか。

 PKOは紛争国の安定化に欠かせないが、活動内容は変質した。きっかけは100万人規模の犠牲者を出したルワンダの虐殺を国連が防げなかったことだ。今は住民保護や人道主義の見地から武力行使をいとわないという。

 政府は「駆け付け警護」と「宿営地共同防衛」だけ、活動範囲は「首都とその周辺」だけとしているが、想定外の事態は常に起こりうる。PKO宿営地に逃げてきた住民を追って、武装集団が押し寄せたことも過去にあった。自衛隊が本格的な戦闘に巻き込まれる可能性は否定できないはずだ。

 憲法が海外での武力行使を禁じていることを考えれば、紛争国への関わり方には制約がある。まだ国民の議論は十分と言えない。政府の実績づくりのために憲法の戦争放棄の精神がなし崩しになったり、自衛隊員が危険な状況に置かれてはならない。(日高勉)


(5)宮崎日日新聞社説-駆け付け警護現地の状況認識甘くないか -2016年11月16日


◆現地の状況認識甘くないか◆

 政府は安全保障関連法に基づいて、南スーダンに派遣する国連平和維持活動(PKO)の陸上自衛隊に、武器使用の範囲を拡大した「駆け付け警護」の新任務を加えることを閣議決定した。これまで他国民に向けて1発の銃弾も撃たず、自らの犠牲者も出さなかった自衛隊の活動は大きく変質する。

 安保関連法は10本の法改正と1本の新法が一括審議された。PKO活動について十分な議論が尽くされたか。新任務に国民の理解と支持が得られているかは疑問だ。

 安倍政権が掲げる「積極的平和主義」の下に、海外での武力行使を禁じた憲法9条の制約を緩めた活動の拡大を危惧する。

共同防衛も新任務に

 駆け付け警護は、武装集団に襲われている国連や非政府組織(NGO)の職員がいる場所まで向かい、武器を使用して助ける任務。

 安保関連法に盛り込まれたPKO協力法の改正で、正当防衛と緊急避難に限られていた武器使用の範囲を拡大して、任務遂行のための警告射撃を可能とし、新たな任務として明記された。

 政府は閣議で南スーダンPKOの実施計画の変更を決定。稲田朋美防衛相は併せて、PKOの宿営地で他国軍と共に武装集団の襲撃に対処する「共同防衛」の新任務も近く付与すると表明した。

 政府は新任務に関する文書を発表。駆け付け警護は陸自部隊が活動している「首都ジュバとその周辺地域」に限定。派遣部隊は道路整備などに当たる施設部隊であるため、他国軍人の警護は「想定されない」と見解を示した。

 しかし疑問があるのはそもそもの派遣自体の判断だ。政府見解はジュバの状況は「楽観できないが、現在は比較的落ち着いている」とした。だが7月に政府軍と反政府勢力の間で大規模戦闘が発生。反政府勢力トップは内戦を継続する考えを示している。国連はジュバの治安情勢について「不安定な状況が続いている」と報告書をまとめた。極めて流動的で不測の事態も懸念される状況と言うべきだ。

変化するPKO活動

 稲田防衛相や首相補佐官らは短期間、現地を視察。政府見解では反政府勢力には「系統だった組織性」はなく、陸自派遣にPKO法上問題はないとした。状況認識が甘くないか。

 安倍晋三首相は参院委員会で「危険の伴う活動だが、自衛隊にしかできない責務をしっかり果たすことができる」と強調した。

 実施計画の変更では「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難な場合」は部隊を撤収することも盛り込んだ。だが「派遣ありき」を前提とするような姿勢で、状況を的確に判断できるのか。懸念と疑問は尽きない。

 PKOは1992年の初めての派遣から四半世紀。停戦合意の維持などから住民保護へと活動実態が変わったと指摘されるPKOに、日本がどう関わっていくのか。あらためて検討すべき時だ。


(6)西日本新聞社説-自衛隊新任務 原則をなし崩しにするな-2016年11月16日

 事実上の内戦状態ともいわれる外国で、自衛隊が新たな任務を始める。日本の平和主義と自衛隊員の安全は守られるのか。

 政府は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊に対し、安全保障関連法に基づく新任務「駆け付け警護」を付与することを閣議決定した。

 駆け付け警護とは、PKOに派遣された自衛隊が、離れた場所にいる国連や非政府組織の関係者らが武装組織などに襲われた場合、武器を持って助けに行く任務だ。

 国連が主体となって地域の平和を守る活動に、日本が積極的に貢献していくことは重要である。自衛隊が民間人の安全確保に協力することにも異存はない。

 しかし、現在の南スーダンの混乱した情勢に照らせば、今回の新任務付与は、日本が平和主義と国際貢献を両立させるために守ってきた重要な原則を、なし崩しにする恐れをはらんでいる。

 まずはPKO参加5原則との整合性である。南スーダンでは大統領派の政府軍と前副大統領派の反政府軍との戦闘が続いている。7月には自衛隊が活動する首都ジュバで大規模な市街戦が起きた。

 「紛争当事者間の停戦合意が成立」などの5原則を満たしていないとの指摘がある。そこで新任務を実施すれば、自衛隊が両派の対立に巻き込まれかねない。

 また南スーダンでは、政府軍の兵士が国連組織や民間人の襲撃に関与したと報告されている。もし自衛隊が駆け付け警護をして政府軍と戦闘状態に入れば、憲法が禁じる「海外での武力行使」に該当する可能性もある。

 そもそも南スーダンに派遣されている自衛隊は施設部隊であり、主な仕事は道路建設だ。治安維持に適した部隊ではない。内戦ともいえる国で道路建設を続行し、隊員を危険にさらすことに国民の理解は得られるのか。

 新任務に突き進むのではなく、むしろ撤収を検討すべき情勢だ。自衛隊の派遣にこだわらず、日本が南スーダンのために何ができるか、幅広く考える時ではないか。


(7)大分合同新聞論説-駆け付け警護任務付与 活動拡大を危惧する-2016年11月16日


 自衛隊の海外での活動は、より危険な任務に従事する新たな段階に入った。
 政府は昨年成立した安全保障関連法に基づいて、アフリカ・南スーダンに派遣する国連平和維持活動(PKO)の陸上自衛隊に武器の使用基準を緩和した「駆け付け警護」の新たな任務を加えることを閣議決定した。
 1992年の初めてのPKO派遣から四半世紀。隊員が戦闘に巻き込まれるリスクは確実に高まる。これまで他国民に向けて1発の銃弾も撃たず、自らの犠牲者も出さなかった自衛隊の活動内容は大きく「変質」する。
 10本の法改正と1本の新法が一括審議された安保関連法でPKO活動について十分な議論が尽くされたか。新たな任務に国民の理解と支持が得られているかは疑問だ。
 安倍政権が掲げる「積極的平和主義」の題目の下に、海外での武力行使を禁じた憲法9条の制約を緩めた活動の拡大を危惧する。停戦合意の維持などから住民保護へと活動実態が変わったと指摘されるPKOに日本がどう関わっていくのか。あらためて検討すべきだ。
 駆け付け警護は、武装集団に襲われている国連や非政府組織(NGO)の職員がいる場所まで向かい、武器を使用して助ける任務だ。安保関連法に盛り込まれたPKO協力法の改正で、正当防衛と緊急避難に限られていた武器使用基準を緩和し、任務遂行のための警告射撃を可能とし、新たな任務として明記された。
 政府は閣議で南スーダンPKOの実施計画の変更を決定。稲田朋美防衛相は併せて、PKOの宿営地で他国軍と共に武装集団の襲撃に対処する「共同防衛」の新任務も近く付与すると表明した。
 政府は新任務に関する「基本的な考え方」とする文書も発表。駆け付け警護の実施は陸自部隊が活動している「首都ジュバとその周辺地域」に限定。派遣部隊は道路整備などに当たる施設部隊であるため、他国軍人の警護は「想定されない」との見解を示した。
 しかし疑問があるのはそもそもの派遣自体の判断だ。政府見解はジュバの状況は「楽観できないが、現在は比較的落ち着いている」とした。だが南スーダンでは7月に政府軍と反政府勢力の間で大規模な戦闘が発生。反政府勢力のトップは内戦を継続する考えを示している。国連はジュバの治安情勢について「不安定な状況が続いている」との報告書をまとめた。
 11月下旬に出発する第9師団第5普通科連隊(青森市)を主力とする11次隊は、9月から実動訓練を実施。安倍晋三首相は参院委員会で「危険の伴う活動だが、自衛隊にしかできない責務をしっかり果たすことができる」と強調した。
 実施計画の変更では「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難な場合」は部隊を撤収することも盛り込み、首相は「撤収をちゅうちょすることはない」と述べた。しかし「派遣ありき」を前提とするような姿勢で、状況を的確に判断できるのか。懸念と疑問は尽きない。
2016年11月16日


(8)熊本日日新聞社説-駆け付け警護 リスクを直視しているか-2016年11月16日



 1992年の初の国連平和維持活動(PKO)派遣から四半世紀。安全保障関連法により武器使用の範囲が拡大され、自衛隊の海外任務は新たな段階に入った。

 政府は15日の閣議で、南スーダンでのPKOに派遣する陸上自衛隊に対し、安保関連法に基づく新たな任務「駆け付け警護」を付与することを決定した。3月の安保関連法施行後、可能となった新任務の付与は初めてだ。

 海外で1発の銃弾も撃ったことがなく、自らの犠牲者を出さなかった自衛隊の活動が大きく変わり、戦闘に直面するリスクが増大するのは避けられない。

 政府は閣議で南スーダンPKOの実施計画の変更を決定。稲田朋美防衛相は併せて、他国軍と宿営地で武装集団の襲撃に対処する「宿営地の共同防衛」の新任務も近く付与すると表明した。

 駆け付け警護は、武装集団に襲われた国連職員らを隊員が武器を使い救出する行為。救援要請を受けて出動する。安保関連法成立前は、憲法9条が禁じる海外での武力行使につながる恐れがあるとして認めていなかった。

 隊員自身の急迫不正の事態などに限定していた武器使用の基準が安保関連法で緩和され、任務遂行のための警告射撃が可能になった。だが武装集団がいる現場で銃声を響かせれば、隊員に攻撃してくる恐れもある。やむを得ず、正当防衛で相手に危害を与える射撃に移行することも考えられる。

 政府は新任務に関する「基本的な考え方」とする文書も発表。実施地域は自衛隊の宿営地がある首都ジュバとその周辺に限定しているが、そもそもの派遣自体の判断に疑問が残る。

 ジュバの治安情勢について政府は「比較的落ち着いている」と判断している。しかし、南スーダンでは7月、政府軍と反政府勢力の間で戦闘が発生し、270人以上が死亡した。

 これまで首都から遠い北部が主戦場だったが、首都の攻防が焦点となる局面を迎える恐れもあるなど、現地情勢は見極めにくいのが実情だ。

 稲田防衛相や首相補佐官らが、短期間現地を視察。政府見解は反政府勢力に「系統だった組織性」はなく、陸自派遣にPKO法上問題はないとしたが、リスクを直視していないのではないのか。

 実施計画の変更では「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合」は部隊を撤収することも盛り込み、安倍晋三首相は「撤収をちゅうちょすることはない」と述べた。

 しかし、武器を持って出動する新任務は、これまでの自衛隊活動の中では未経験の事態への対処となる。状況判断を誤れば、大きな危険にさらされるのは間違いない。拙速に事を進めているのではないか。

 政府は、安保関連法で可能となった新たな国際貢献の実績作りを着実に進めたい考えとみられるが、「付与ありき」の判断なら将来に禍根を残しかねない。


by asyagi-df-2014 | 2016-11-21 14:40 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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