労働問題-原告が逆転敗訴。東京高裁は、「定年後に賃金が引き下げられることは社会的に受け入れられており、一定の合理性がある」と判断。

 朝日新聞は2016年11月3日、標題について次のように報じた。


(1)定年後に再雇用されたトラック運転手の男性3人が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法だとして、定年前と同じ賃金を支払うよう勤務先の運送会社「長沢運輸」(横浜市)に求めた訴訟の控訴審判決が2日、東京高裁であった。杉原則彦裁判長は、「定年後に賃金が引き下げられることは社会的に受け入れられており、一定の合理性がある」と判断。運転手側の訴えを認めた一審・東京地裁判決を取り消し、請求を棄却した。
(2)今年5月の一審判決は、「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法20条に反する」として、定年前の賃金規定を適用して差額分を払うよう会社に命じた。しかし高裁判決は、再雇用者の賃金減額について「社会的にも容認されている」と指摘。60歳以上の高齢者の雇用確保が企業に義務づけられている中で、同社が賃金節約などのために、定年後の労働者と賃金を減額して契約を結んだことは、「不合理とは言えない」と理解を示した。また、同社が再雇用の労働者に「調整給」を支払うなど正社員との賃金差を縮める努力をしたことや、退職金を支払っていること、同社の運輸業の収支が赤字になったとみられることなども考慮。原告の賃金が定年前と比べて約20~24%下がったことは、同規模の企業が減額した割合の平均と比べても低いことから、「定年前後の契約内容の違いは不合理とは言えず、労働契約法に違反しない」と結論づけた。
(3)判決を受け、原告代理人の宮里邦雄弁護士は「納得しがたく、速やかに上告の手続きをする」と述べた。長沢運輸は「会社の主張が正当に認められたものと理解しています」とコメントした。


 朝日新聞は、続けて、一審と二審の判断の違いや「同一労働同一賃金」の課題について、次のように伝えた。


(1)労働契約法20条は、正社員と有期雇用の待遇格差が不合理かどうかを判断する際、①仕事の内容や責任②配置などの変更の範囲③その他の事情、の三つの要素を考慮するとしている。
(2)一審判決は、再雇用で働く人と正社員とで①②が同じだとして、格差は不合理とした。一方、高裁は①②が同じだと認めながら逆の結論を導いた。
(3)高裁判決について、水町勇一郎・東大教授(労働法)は「『その他の事情』を重視しているのが一審との大きな違い。『その他の事情』として、再雇用での賃金減額が一般的だという事実を重視し、格差を認めている点に問題がある」と指摘する。
(4)「同一労働同一賃金」の実現を掲げる政府は、正社員と非正社員の待遇差はどんな場合に合理的で、どんな場合に不合理かを示すガイドラインをつくる予定だ。基本給、諸手当、ボーナス、退職金などについて個別に判断する方向になっているが、高裁判決はそうした判断方法をとらなかった。原告代理人の宮里邦雄弁護士は「『同一労働同一賃金』の議論がすっ飛んでいる。社会的にも妥当でない判決だ」と批判する。
(5)政府はガイドライン策定後に法改正を検討する方針。高裁判決は、同一労働同一賃金の実現にはガイドラインの策定だけでは不十分で、法改正が必要だと示したともいえる。


※一、二審の判断
《東京地裁判決》:定年の前と後で業務内容は変わっていない。会社側には賃下げをする「特段の事情」がなく、労働契約法違反にあたる
《東京高裁判決》:定年前と業務内容などは変わらないが、定年後の再雇用で賃下げをすることは社会的に容認されており、同法違反とは言えない


 東京地裁判決は、一種の驚きと働く側の反省を伴う判決であった。しかし、高裁は、いつもの日本の現状に戻ってしまった。


 以下、朝日新聞の引用。








朝日新聞-定年後再雇用、賃下げは「適法」 原告が逆転敗訴-2016年11月3日01時50分


 定年後に再雇用されたトラック運転手の男性3人が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法だとして、定年前と同じ賃金を支払うよう勤務先の運送会社「長沢運輸」(横浜市)に求めた訴訟の控訴審判決が2日、東京高裁であった。杉原則彦裁判長は、「定年後に賃金が引き下げられることは社会的に受け入れられており、一定の合理性がある」と判断。運転手側の訴えを認めた一審・東京地裁判決を取り消し、請求を棄却した。

 今年5月の一審判決は、「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法20条に反する」として、定年前の賃金規定を適用して差額分を払うよう会社に命じた。

 しかし高裁判決は、再雇用者の賃金減額について「社会的にも容認されている」と指摘。60歳以上の高齢者の雇用確保が企業に義務づけられている中で、同社が賃金節約などのために、定年後の労働者と賃金を減額して契約を結んだことは、「不合理とは言えない」と理解を示した。

 また、同社が再雇用の労働者に「調整給」を支払うなど正社員との賃金差を縮める努力をしたことや、退職金を支払っていること、同社の運輸業の収支が赤字になったとみられることなども考慮。原告の賃金が定年前と比べて約20~24%下がったことは、同規模の企業が減額した割合の平均と比べても低いことから、「定年前後の契約内容の違いは不合理とは言えず、労働契約法に違反しない」と結論づけた。

 判決を受け、原告代理人の宮里邦雄弁護士は「納得しがたく、速やかに上告の手続きをする」と述べた。長沢運輸は「会社の主張が正当に認められたものと理解しています」とコメントした。(塩入彩)
■「同一労働同一賃金」課題示す
 労働契約法20条は、正社員と有期雇用の待遇格差が不合理かどうかを判断する際、①仕事の内容や責任②配置などの変更の範囲③その他の事情、の三つの要素を考慮するとしている。

 一審判決は、再雇用で働く人と正社員とで①②が同じだとして、格差は不合理とした。一方、高裁は①②が同じだと認めながら逆の結論を導いた。高裁判決について、水町勇一郎・東大教授(労働法)は「『その他の事情』を重視しているのが一審との大きな違い。『その他の事情』として、再雇用での賃金減額が一般的だという事実を重視し、格差を認めている点に問題がある」と指摘する。

 「同一労働同一賃金」の実現を掲げる政府は、正社員と非正社員の待遇差はどんな場合に合理的で、どんな場合に不合理かを示すガイドラインをつくる予定だ。基本給、諸手当、ボーナス、退職金などについて個別に判断する方向になっているが、高裁判決はそうした判断方法をとらなかった。原告代理人の宮里邦雄弁護士は「『同一労働同一賃金』の議論がすっ飛んでいる。社会的にも妥当でない判決だ」と批判する。

 政府はガイドライン策定後に法改正を検討する方針。高裁判決は、同一労働同一賃金の実現にはガイドラインの策定だけでは不十分で、法改正が必要だと示したともいえる。(編集委員・沢路毅彦)
■一、二審の判断
《東京地裁判決》 定年の前と後で業務内容は変わっていない。会社側には賃下げをする「特段の事情」がなく、労働契約法違反にあたる

《東京高裁判決》 定年前と業務内容などは変わらないが、定年後の再雇用で賃下げをすることは社会的に容認されており、同法違反とは言えない


by asyagi-df-2014 | 2016-11-05 13:29 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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