沖縄県議会は臨時会を開き、抗議決議と意見書を与党などの賛成多数で可決。

 沖縄県議会は、米軍北部訓練場へのヘリパッド建設に反対する市民に向かって大阪府警機動隊員が「土人」「シナ人」などと暴言を吐いたことに対し、2016年10月28日、臨時会を開き、抗議決議と意見書を与党などの賛成多数で可決した。
 沖縄県議会は、この決議で、次のようにこの事件の問題点を明確にした、


 「土人」という言葉は、「未開・非文明」といった意味の侮蔑的な差別用語であり、「シナ」とは戦前の中国に対する侵略に結びついて使われてきた蔑称である。この発言は、沖縄県民の誇りと尊厳を踏みにじり、県民の心に癒やしがたい深い傷を与えた。沖縄戦では本土防衛の捨て石にされ、戦後27年間は本土から切り離され米軍占領下に置かれ、そして今なお全国の米軍占用施設面積の約74%が集中しているもとで沖縄県民は基地あるがゆえの事件事故に苦しめられ続けて来た。
 今回の発言は、沖縄県民の苦難の歴史を否定し、平和な沖縄を願って歩んできた県民の思いを一瞬のうちに打ち砕いたものと言わざるを得ない。


 この上で、次のように指摘し、決議を結んでいる。


 今回の発言は、沖縄県民の苦難の歴史を否定し、平和な沖縄を願って歩んできた県民の思いを一瞬のうちに打ち砕いたものと言わざるを得ない。
 法を守り、市民および県民の人権を守る先頭に立つべき警察官である機動隊員による抗議参加者に対する一連の発言に対し、県内外から多数の非難が出ており、不信感が広がっている事実を警察関係者は真摯(しんし)に受け止めるべきである。
 よって、本県議会は、市民および県民の生命および尊厳を守る立場から、沖縄に派遣されている機動隊員らによる沖縄県民に対する侮辱発言に厳重に抗議するとともに、このようなことが繰り返されないよう強く要請する。


 また、沖縄タイムス及び琉球新報は2016年10月29日に、沖縄タイムスは「【「土人」発言で抗議決議】喧嘩両成敗ではすまぬ」と、琉球新報は「土人発言抗議決議 沖縄差別の政策やめよ 国民と県民の分断強める」、と主張した。
 ここで、両紙の主張を要約する。


(1)法務省人権擁護局が中心になって、インターネットを悪用した人権侵害や街頭でのヘイトスピーチ(憎悪表現)をなくすキャンペーンに取り組んでいるその足元で、人権擁護の番人であるべき警察官が、公務中に、「土人」「シナ人」という差別用語を使って、市民をののしった。それがことの本質だ。弁解の余地はない。決して喧嘩両成敗(せいばい)で処理できるような軽いものではない。問われているのは人権感覚であり、足元における人権教育である。〈沖縄タイムス〉
(2)この一件は憲法違反、警察法違反の疑いがある。憲法は集会・結社・表現の自由を保障し、差別を禁じている。立憲主義の立場に立って大臣や国会議員、公務員などに対し、憲法を尊重し擁護する義務を課している。警察法第2条2項はこの法律の中でもとりわけ重要だ。「その責務の遂行に当たっては、不偏不党かつ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用(らんよう)することがあってはならない」〈沖縄タイムス〉
(3)辺野古問題で県と政府が対立する構図が続いており、ネット上では「沖縄ヘイト」とも言うべき露骨な沖縄たたきや事実に基づかないデマ情報が飛び交っている。街頭でのヘイトスピーチやネット上の罵詈(ばり)雑言に接した機動隊員が、知らず知らずのうちに影響を受け、そのような考えを内面化しているとすれば、日本の人権擁護の取り組みは極めて危うい。政府が話し合いに応じ、県との妥協点を真剣に模索しない限り、沖縄の状況は良くならない。それを放棄し、話し合いにも応じず、工事だけを強行すれば、市民の反対が強まり、沖縄ヘイトも過熱するだろう。政府が沖縄ヘイトを助長することになるのだ。〈沖縄タイムス〉
(4)県議会の会派が分断され、決議が全会一致とならなかったことを政府は内心、喜んでいることだろう。しかしそれは大きな間違いだ。今回の差別発言問題は県議会、県民の間だけでなく、国民と県民にも大きな分断と亀裂を生じさせたからだ。〈琉球新報〉
(5)機動隊員の「土人」発言に県民は激怒した。だが「シナ人」発言に戸惑った県民も多かったのではないか。20代の機動隊員が、死語に近い「土人・シナ人」の言葉を発したことも不思議だった。ネット上で国策の基地建設に反対する県民が「土人・シナ人」呼ばわりされ、県民を異端視し偏見を助長する言説が流布されていることが背景にある。
 政府の沖縄への基地集中政策と、これに抗(あらが)う県民の対立が県民に対する偏見を助長し、若い世代の差別感を再生産しているのだ。公人たる松井一郎大阪府知事の機動隊員を擁護する発言が、さらに差別と偏見の再生産を強めた。〈琉球新報〉
(6)基地建設を巡る政府と沖縄の対立だけでなく、「日本」対「沖縄」の対立構図が深まりつつあることを危惧する。日本復帰前の米軍占領から復帰後の日本政府に引き続く沖縄統治政策は、県民を分断する歴史でもあった。日本復帰運動に対しては「イモはだし論」で反対する主張があった。復帰後も基地問題を中心に保革対立の政治は続いた。
 県民世論が反対する辺野古新基地建設を巡り政府と県が対立を深める中で、政府の「基地と振興のリンク」が公然化した。沖縄担当相の「選挙と振興のリンク」など、沖縄に対する「アメとムチ」の政策が、県民分断の背景にある。
 政治学の用語に「分断統治政策」がある。「支配される側を分断し、統治者への反発を抑える」統治法で、植民地政策の常套(じょうとう)手法だ。沖縄の歴史は日米両政府による分断統治の歴史と言っていい。〈琉球新報〉
(7)辺野古新基地もヘリパッドも米軍基地建設なのに、そこに米軍の姿は見えない。「沖縄の負担軽減」を名目に、日本政府が経費を負担し、建設を進めているからだ。米軍は背後に隠れ、政府と県民の対立、現場での機動隊と県民の対立が激化しているのである。〈琉球新報〉
(8)ヘリパッド建設では米軍北部訓練場内の抗議行動で反対運動のリーダーが逮捕された。本来、平和的で非暴力の基地反対運動が、言論の訴えが顧みられない状況下で市民を物理的行動に駆り立てているのである。現場の対立は先鋭化し、臨界点を迎えつつある。
 差別発言を契機に、「自治権確立」、さらに「琉球独立」の声すら高まりつつあるように思われる。独立論の高まりは「日本」対「沖縄」の対立をさらに深めることになるだろう。日米両政府は沖縄への差別政策をやめるべきだ。沖縄に基地を集中する「構造的差別」が続く限り、県民の分断、「日本」対「沖縄」の亀裂は埋まらない。〈琉球新報〉


 以下、沖縄タイムス及び琉球新報、沖縄県議会抗議決議の引用。







(1)沖縄タイムス社説-[「土人」発言で抗議決議]喧嘩両成敗ではすまぬ-2016年10月29日 09:00


 米軍北部訓練場へのヘリパッド建設に反対する市民に向かって大阪府警機動隊員が「土人」「シナ人」などと暴言を吐いたことに対し、県議会は28日、臨時会を開き、抗議決議と意見書を与党などの賛成多数で可決した。

 野党の自民党はこの抗議決議と意見書に反対し、独自の意見書案を提出した。

 否決された自民案も機動隊員の発言が「不穏当」「不適切」だったことは認めているものの、警察官に対する反対派の発言を列記し、「警察官の人格、尊厳を傷つける発言は問題とせず、警察官の発言のみを取り上げることは、あまりに一方的」だと指摘している。

 売り言葉に買い言葉のようなものなのだから一方だけを批判するのはおかしい-と言いたいのだろうが、今回のケースは私人と私人、集団対集団の喧嘩(けんか)騒ぎではない。

 1人の機動隊員は「どこつかんどんじゃ、ぼけ。土人が」と発言した。もう1人の隊員は「黙れ、こら、シナ人」などと語った。

 法務省人権擁護局が中心になって、インターネットを悪用した人権侵害や街頭でのヘイトスピーチ(憎悪表現)をなくすキャンペーンに取り組んでいるその足元で、人権擁護の番人であるべき警察官が、公務中に、「土人」「シナ人」という差別用語を使って、市民をののしった。

 それがことの本質だ。弁解の余地はない。決して喧嘩両成敗(せいばい)で処理できるような軽いものではない。問われているのは人権感覚であり、足元における人権教育である。
■    ■
 大阪府警が20代の2人の隊員を急きょ、大阪に戻し、「警察の信用を失墜させた」との理由で戒告の懲戒処分にしたのは、暴言を深刻に受け止めたからである。

 この一件は憲法違反、警察法違反の疑いがある。

 憲法は集会・結社・表現の自由を保障し、差別を禁じている。立憲主義の立場に立って大臣や国会議員、公務員などに対し、憲法を尊重し擁護する義務を課している。警察法第2条2項はこの法律の中でもとりわけ重要だ。

 「その責務の遂行に当たっては、不偏不党かつ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用(らんよう)することがあってはならない」

 辺野古問題で県と政府が対立する構図が続いており、ネット上では「沖縄ヘイト」とも言うべき露骨な沖縄たたきや事実に基づかないデマ情報が飛び交っている。

■    ■
 街頭でのヘイトスピーチやネット上の罵詈(ばり)雑言に接した機動隊員が、知らず知らずのうちに影響を受け、そのような考えを内面化しているとすれば、日本の人権擁護の取り組みは極めて危うい。

 政府が話し合いに応じ、県との妥協点を真剣に模索しない限り、沖縄の状況は良くならない。

 それを放棄し、話し合いにも応じず、工事だけを強行すれば、市民の反対が強まり、沖縄ヘイトも過熱するだろう。政府が沖縄ヘイトを助長することになるのだ。


(2)琉球新報社説-<社説>土人発言抗議決議 沖縄差別の政策やめよ 国民と県民の分断強める-2016年10月29日 06:01



 県議会はヘリパッド建設現場での機動隊員による「土人」「シナ人」発言について「県民の誇りと尊厳を踏みにじる」とする抗議決議、意見書を可決した。政府、警察は重く受け止めるべきだ。

 ただ決議の文言調整で当初の「機動隊撤収」は削除され「警備体制の改善を求める」との訴えにとどまった。自民会派は「市民側にも暴言があった」との意見書案で対抗し、与党・中立会派の決議案を賛成多数で可決した。
 県議会の抗議を全会一致で示せなかったのは残念だ。県民が共有する怒りと抗議が分断され、国民世論への訴えが弱まった形だ。

偏見を再生産

 県議会の会派が分断され、決議が全会一致とならなかったことを政府は内心、喜んでいることだろう。しかしそれは大きな間違いだ。今回の差別発言問題は県議会、県民の間だけでなく、国民と県民にも大きな分断と亀裂を生じさせたからだ。
 機動隊員の「土人」発言に県民は激怒した。だが「シナ人」発言に戸惑った県民も多かったのではないか。20代の機動隊員が、死語に近い「土人・シナ人」の言葉を発したことも不思議だった。
 ネット上で国策の基地建設に反対する県民が「土人・シナ人」呼ばわりされ、県民を異端視し偏見を助長する言説が流布されていることが背景にある。
 政府の沖縄への基地集中政策と、これに抗(あらが)う県民の対立が県民に対する偏見を助長し、若い世代の差別感を再生産しているのだ。
 公人たる松井一郎大阪府知事の機動隊員を擁護する発言が、さらに差別と偏見の再生産を強めた。
 基地建設を巡る政府と沖縄の対立だけでなく、「日本」対「沖縄」の対立構図が深まりつつあることを危惧する。
 日本復帰前の米軍占領から復帰後の日本政府に引き続く沖縄統治政策は、県民を分断する歴史でもあった。日本復帰運動に対しては「イモはだし論」で反対する主張があった。復帰後も基地問題を中心に保革対立の政治は続いた。
 県民世論が反対する辺野古新基地建設を巡り政府と県が対立を深める中で、政府の「基地と振興のリンク」が公然化した。沖縄担当相の「選挙と振興のリンク」など、沖縄に対する「アメとムチ」の政策が、県民分断の背景にある。
 政治学の用語に「分断統治政策」がある。「支配される側を分断し、統治者への反発を抑える」統治法で、植民地政策の常套(じょうとう)手法だ。沖縄の歴史は日米両政府による分断統治の歴史と言っていい。

見えぬ米軍の姿

 辺野古新基地もヘリパッドも米軍基地建設なのに、そこに米軍の姿は見えない。「沖縄の負担軽減」を名目に、日本政府が経費を負担し、建設を進めているからだ。
 米軍は背後に隠れ、政府と県民の対立、現場での機動隊と県民の対立が激化しているのである。
 2004年の辺野古沖調査で、大型台船の前に反対運動の市民が飛び込み台船を止めた。命を賭しても工事を止めるという悲壮な決意をうかがわせた。金武町伊芸区の米軍都市型戦闘訓練施設の建設反対運動では、基地内で実力阻止すべきだとの声を聞いた。 
 ヘリパッド建設では米軍北部訓練場内の抗議行動で反対運動のリーダーが逮捕された。本来、平和的で非暴力の基地反対運動が、言論の訴えが顧みられない状況下で市民を物理的行動に駆り立てているのである。現場の対立は先鋭化し、臨界点を迎えつつある。
 差別発言を契機に、「自治権確立」、さらに「琉球独立」の声すら高まりつつあるように思われる。独立論の高まりは「日本」対「沖縄」の対立をさらに深めることになるだろう。
 日米両政府は沖縄への差別政策をやめるべきだ。沖縄に基地を集中する「構造的差別」が続く限り、県民の分断、「日本」対「沖縄」の亀裂は埋まらない。


(3)沖縄タイムス-県外機動隊による沖縄県民侮辱発言に関する抗議決議・意見書【全文】-2016年10月29日 08:41


 県外機動隊による沖縄県民侮辱発言に関する抗議決議・意見書



 東村高江では、県外から派遣された500人余の機動隊員による警備のもと、米軍のヘリパッド建設が進められている。

 去る10月18日、高江周辺の米軍北部訓練場のヘリパッド建設現場において、県外から派遣された機動隊員が市民に対し「土人が」と発言し、さらに、別の隊員が「黙れ、こら、シナ人」と発言していたことが発覚し、県民に大きな衝撃を与えた。

 沖縄県警は19日、発言を事実と認め「差別用語としてとられかねない不適切な言葉だ」との見解を示し謝罪している。

 「土人」という言葉は、「未開・非文明」といった意味の侮蔑的な差別用語であり、「シナ」とは戦前の中国に対する侵略に結びついて使われてきた蔑称である。この発言は、沖縄県民の誇りと尊厳を踏みにじり、県民の心に癒やしがたい深い傷を与えた。沖縄戦では本土防衛の捨て石にされ、戦後27年間は本土から切り離され米軍占領下に置かれ、そして今なお全国の米軍占用施設面積の約74%が集中しているもとで沖縄県民は基地あるがゆえの事件事故に苦しめられ続けて来た。

 今回の発言は、沖縄県民の苦難の歴史を否定し、平和な沖縄を願って歩んできた県民の思いを一瞬のうちに打ち砕いたものと言わざるを得ない。

 法を守り、市民および県民の人権を守る先頭に立つべき警察官である機動隊員による抗議参加者に対する一連の発言に対し、県内外から多数の非難が出ており、不信感が広がっている事実を警察関係者は真摯(しんし)に受け止めるべきである。

 よって、本県議会は、市民および県民の生命および尊厳を守る立場から、沖縄に派遣されている機動隊員らによる沖縄県民に対する侮辱発言に厳重に抗議するとともに、このようなことが繰り返されないよう強く要請する。

                  2016年10月28日
                            沖縄県議会


by asyagi-df-2014 | 2016-11-03 08:57 | 沖縄から | Comments(0)

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