「沖縄県米軍普天間飛行場で環境事故が発生した際、緊急を要する場合などを除き日本側に通報しないようマニュアルを取り決めていた」、とはなんなのか。

 米軍が多くの燃料漏れなどを通報しないよう指示したマニュアルの存在-「環境事故対処ハンドブック」-について、沖縄タイムスは2016年10月27日、「環境事故『日本側に通報しないように…』 米軍マニュアルに沖縄県など不快感」という記事と「[米軍の環境事故通報]『隠蔽の指示』は許せぬ」との社説を掲げた。
 このことに関して、地元宜野湾市や県の反応を次のように伝える。


(1)宜野湾市にはしばしば、普天間飛行場周辺での油漏れや異臭などの通報が市民からある。ただ「油に(米軍由来という証拠の)色でもついていない限り基地からのものと断定できない」(基地渉外課)ため、多くの場合汚染源が不明のままだった。米軍が多くの燃料漏れなどを通報しないよう指示したマニュアルの存在は「やはりそうか」(市幹部)との受け止めが多い。
(2)通報内容にも不満が強い。ことし6月の航空機燃料漏れも一報では946リットル漏出だったが、市の照会に対する回答は2週間後だった上、漏出量も6900リットル以上とまるで異なる内容になっていた。
(3)同課は「細大漏らさず環境事故を通報しろとまでは言わないが、基準は明示されるべきだ」(伊佐英人課長)との立場。近く沖縄防衛局に対し、事実関係の確認や米軍の2015年版ハンドブックの開示などを求める方針だ。
(4)一方、県幹部は「原則、米軍はささいな事故でも全て報告するべきだ」と不快感を示した。15年に日米両政府が締結した環境補足協定では、返還前の米軍施設内に立ち入る前提は「環境に影響を及ぼす事故」が発生した場合としている。幹部は、「協定も、今回のハンドブックも結局、事故の重大性は米軍の判断だ」と指摘する。
(5)現状では、基地内や周辺が汚染されていることに気付かないまま返還される恐れがあるとし、「環境補足協定は機能しないのではないか。米軍の対応はとても良き隣人とはいえない」と批判し、米側に事実関係を確認する考えを示した。


 一方、この問題についての政府の反応は、次のものでしかない。


(1)政府関係者は米軍普天間飛行場の環境事故対処ハンドブックの詳細については知らないとしつつ「幅広く情報を出してくれと米側に求めるしかない」と述べた。
(2)別の関係者は「6月に航空機燃料漏れが起きたときは、宜野湾市の担当者らが普天間飛行場に入って、事故の起きた貯油タンクなどを調査した。司令官の判断でできることは協力してもらっているはずだが」と語った。


 何と、「米軍が多くの燃料漏れなどを通報しないよう指示したマニュアル」に基づいて運用されているにもかかわらず、日本政府は、「幅広く情報を出してくれと米側に求めるしかない」という対応しか取れないのだ。
 このような日本の現状について、沖縄タイムスは次のように分析し、厳しく批判する。


Ⅰ.日本の置かれている現状

(1)米側が基地を返還する場合に、原状回復義務が免除されている。汚染されていても原状回復義務は日本政府が負う。これを許しているのが日米地位協定である。この不平等な地位協定に、さらに輪を掛けるような米軍の内部文書が明らかになった。「隠蔽(いんぺい)の指示」というほかない内容だ。
(2)米軍由来の環境問題を追及している本紙特約通信員のジョン・ミッチェル氏が情報公開請求で入手した米軍普天間飛行場の「環境事故対処ハンドブック」である。その中で米軍は「緊急でないか、政治的に注意を要する事故」は、日本側に通報しないよう命じている。「緊急でない」かどうか、それを判断するのは米軍であり、通報するかどうかも米軍の裁量次第である。
(3)「政治的に注意を要する事故」とは何なのだろうか。県民の反基地感情が高まり、政治問題に発展する事故、つまり、深刻な環境事故ということではないのか。住民の視点が欠落しているばかりか、環境事故を「なかったことにすること」を意味し、許されない。
(4)環境事故が及ぼす影響はフェンス内外を選ばない。環境事故が起これば基地周辺の住民が直接的な被害を受ける。自治体が環境事故現場へ立ち入り調査をすることができず、情報へのアクセスが制限されているのが現状だ。そんな中で都合が悪いと米軍が判断すれば通報しないのは、住民の生命や安全をないがしろにするものである。

Ⅱ.隠蔽の事実

(1)ミッチェル氏は「隠蔽の指示」を裏付けるような海兵隊の内部文書も入手している。普天間飛行場では2005年から16年の間に少なくとも156件の流出事故が発生しているが、日本側に通報されたのはわずか4件にすぎない。通報された環境事故も問題をはらむ。事故を矮(わい)小(しょう)化して伝えているからである。
(2)普天間飛行場で今年6月15日午後、航空機用燃料タンクから最大で約6908リットルが漏れ出したとの通報があった。米軍は「即座に」対処したと説明したが、事故が完全に収束したのは翌日で、その後、3028リットルの汚染水とドラム缶(208リットル)11本分の汚染土を廃棄していた。
(3)「情報隠し」は普天間に限ったことなのだろうか。そうではあるまい。嘉手納基地でも10~14年に流出事故が206件発生したが、通報は23件にすぎないことをミッチェル氏が突き止めているからだ。


 沖縄タイムスは、社説で、次のように指摘する。


(1)政府は「隠蔽の指示」の事実関係を米軍にただし、環境事故の大小にかかわらず日本側に通報する体制を構築すべきだ。基地の汚染履歴も開示させなければならない。
(2)ドイツは緊急時に通告なしで立ち入り調査ができる。ドイツのように国内法を適用させるにはやはり、米軍に排他的管理権などを与えている地位協定の改定が必要だ。
(3)15年に日米両政府が締結した環境補足協定では、立ち入り調査の申請には「米側からの通報」が前提だ。その通報がない中で、どう調査できるというのか。環境補足協定の欠陥が露呈している。


 この問題の底部に横たわるものは。「自治体が環境事故現場へ立ち入り調査をすることができず、情報へのアクセスが制限されているのが現状だ。そんな中で都合が悪いと米軍が判断すれば通報しないのは、住民の生命や安全をないがしろにするものである。」、という厳然たる事実だ。
 また、「国境なき記者団」の指摘の意味を明確に認識させる。


 以下、沖縄タイムスの引用。








(1)沖縄タイムス-環境事故「日本側に通報しないように…」 米軍マニュアルに沖縄県など不快感-2016年10月27日 14:00


 沖縄県米軍普天間飛行場で環境事故が発生した際、緊急を要する場合などを除き日本側に通報しないようマニュアルを取り決めていた問題で、地元宜野湾市や県からは、基準の明示や事故情報の全開示を求める声が上がった。

 宜野湾市にはしばしば、普天間飛行場周辺での油漏れや異臭などの通報が市民からある。ただ「油に(米軍由来という証拠の)色でもついていない限り基地からのものと断定できない」(基地渉外課)ため、多くの場合汚染源が不明のままだった。米軍が多くの燃料漏れなどを通報しないよう指示したマニュアルの存在は「やはりそうか」(市幹部)との受け止めが多い。

 通報内容にも不満が強い。ことし6月の航空機燃料漏れも一報では946リットル漏出だったが、市の照会に対する回答は2週間後だった上、漏出量も6900リットル以上とまるで異なる内容になっていた。

 同課は「細大漏らさず環境事故を通報しろとまでは言わないが、基準は明示されるべきだ」(伊佐英人課長)との立場。近く沖縄防衛局に対し、事実関係の確認や米軍の2015年版ハンドブックの開示などを求める方針だ。

 一方、県幹部は「原則、米軍はささいな事故でも全て報告するべきだ」と不快感を示した。

 15年に日米両政府が締結した環境補足協定では、返還前の米軍施設内に立ち入る前提は「環境に影響を及ぼす事故」が発生した場合としている。幹部は、「協定も、今回のハンドブックも結局、事故の重大性は米軍の判断だ」と指摘する。

 現状では、基地内や周辺が汚染されていることに気付かないまま返還される恐れがあるとし、「環境補足協定は機能しないのではないか。米軍の対応はとても良き隣人とはいえない」と批判し、米側に事実関係を確認する考えを示した。
■政府関係者「情報出してくれと言うしか…」
 政府関係者は米軍普天間飛行場の環境事故対処ハンドブックの詳細については知らないとしつつ「幅広く情報を出してくれと米側に求めるしかない」と述べた。

 別の関係者は「6月に航空機燃料漏れが起きたときは、宜野湾市の担当者らが普天間飛行場に入って、事故の起きた貯油タンクなどを調査した。司令官の判断でできることは協力してもらっているはずだが」と語った。


(2)沖縄タイムス社説-[米軍の環境事故通報]「隠蔽の指示」は許せぬ-2016年10月27日 07:54


 米側が基地を返還する場合に、原状回復義務が免除されている。汚染されていても原状回復義務は日本政府が負う。これを許しているのが日米地位協定である。

 この不平等な地位協定に、さらに輪を掛けるような米軍の内部文書が明らかになった。「隠蔽(いんぺい)の指示」というほかない内容だ。

 米軍由来の環境問題を追及している本紙特約通信員のジョン・ミッチェル氏が情報公開請求で入手した米軍普天間飛行場の「環境事故対処ハンドブック」である。

 その中で米軍は「緊急でないか、政治的に注意を要する事故」は、日本側に通報しないよう命じている。

 「緊急でない」かどうか、それを判断するのは米軍であり、通報するかどうかも米軍の裁量次第である。

 「政治的に注意を要する事故」とは何なのだろうか。県民の反基地感情が高まり、政治問題に発展する事故、つまり、深刻な環境事故ということではないのか。

 住民の視点が欠落しているばかりか、環境事故を「なかったことにすること」を意味し、許されない。

 環境事故が及ぼす影響はフェンス内外を選ばない。環境事故が起これば基地周辺の住民が直接的な被害を受ける。

 自治体が環境事故現場へ立ち入り調査をすることができず、情報へのアクセスが制限されているのが現状だ。

 そんな中で都合が悪いと米軍が判断すれば通報しないのは、住民の生命や安全をないがしろにするものである。
■    ■
 ミッチェル氏は「隠蔽の指示」を裏付けるような海兵隊の内部文書も入手している。普天間飛行場では2005年から16年の間に少なくとも156件の流出事故が発生しているが、日本側に通報されたのはわずか4件にすぎない。

 通報された環境事故も問題をはらむ。事故を矮(わい)小(しょう)化して伝えているからである。

 普天間飛行場で今年6月15日午後、航空機用燃料タンクから最大で約6908リットルが漏れ出したとの通報があった。

 米軍は「即座に」対処したと説明したが、事故が完全に収束したのは翌日で、その後、3028リットルの汚染水とドラム缶(208リットル)11本分の汚染土を廃棄していた。

 「情報隠し」は普天間に限ったことなのだろうか。そうではあるまい。嘉手納基地でも10~14年に流出事故が206件発生したが、通報は23件にすぎないことをミッチェル氏が突き止めているからだ。
■    ■
 政府は「隠蔽の指示」の事実関係を米軍にただし、環境事故の大小にかかわらず日本側に通報する体制を構築すべきだ。基地の汚染履歴も開示させなければならない。

 ドイツは緊急時に通告なしで立ち入り調査ができる。ドイツのように国内法を適用させるにはやはり、米軍に排他的管理権などを与えている地位協定の改定が必要だ。

 15年に日米両政府が締結した環境補足協定では、立ち入り調査の申請には「米側からの通報」が前提だ。その通報がない中で、どう調査できるというのか。環境補足協定の欠陥が露呈している。


by asyagi-df-2014 | 2016-10-29 08:06 | 沖縄から | Comments(0)

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