本からのもの-沖縄・高江 いま、何が起きているのか

著書名;「週刊金曜日 9/30 1106号」-このでたらめさ、まるで無法地帯 緊急特集沖縄・高江
著作者:野中大樹・福元大輔・渡辺豪・黒島美奈子
出版社;週刊金曜日



 週刊金曜日は、「1106」号で、「このでたらめさ、まるで無法地帯」、と緊急特集沖縄・高江を組んだ。
この緊急特集を読む。
例えば、高江について、黒島美奈子は、このように描写する。


 こんもりと濃い緑は、上空から見ると上質の絨毯のようだ。常緑樹が枝を張り、その下に亜熱帯性の植物が幾重にも層をなす。沖縄本島北部に広がるその森は「やんばるの森」と呼ばれる。71年前、辛くも沖縄戦の戦禍を逃れ、今や日本随一の多様な生態系を有する。その一部は9月15日、33番目の国立公園に指定され、さらに今後同地域と奄美諸島を含む一帯の世界自然遺産登録を目指す。
 それが今、「高江問題」と言われ、数百人の機動隊と建設に反対する住民らの衝突が報じられる現場だ。米軍北部練習場の面積の約4割分を返還することを条件に、日本政府はこの森に、新に六つのヘリパッド建設を進めている。


 この「高江問題」について、野中大樹・福元大輔・渡辺豪・黒島美奈子の各記事で考える。


(1)野中大樹-「住民と暮らしの間で”国境”に遮られたふたつの沖縄」


 野中大樹〈週刊金曜日編集部〉は、まず、「住民の暮らしの間で”国境”に遮られたふたつの沖縄」、と高江が置かれている状況を紹介する。


 参院選直後から、沖縄県東高江の米軍ヘリパッド建設工事が、反対する市民を力で排除して強行されている。沖縄の負担軽減を名目とした日米合意に基づくが、辺野古新基地建設とともにさらなる痛みを強いるものだ。しかし地元首長がヘリパッド建設を容認していることもあり焦点になりにくい。政府はそこにつけこみ違法行為を繰り返している。


 そして、「まるで戦争状態」の現在の高江の様子を、「まるで戦争状態に入った二つの国の国境線のようだ。」、と伝える。


 7月10日の参議員選挙では名護市辺野古の新基地建設にも高江ヘリパッド建設に沖縄にも反対する伊波洋一氏が当選したが、国はその数時間後、高江の建設工事を強行しはじめた。抗議する市民も方々から集結する。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で状況を知り県外から来る人もしくなくない。市民らは抗議の拠点を数日のうちに構築。森の中に、ブルーシート製のテント村が忽然と現れた。その奥には、米軍の訓練場に通じる道がある。しかし金網が張られ、網の向こうには3人の警備員が仁王立ち。まるで戦争状態に入った二つの国の国境線のようだ。


 続いて野中は、「国の焦りと強行策」と、高江の今の報告を続ける。


 高江では、すでに完成したN-4地区のヘリパッド〈二つ〉以外に、3か所で建設工事が進んでいる。N-1地区〈二つ〉、H地区、G地区の3か所、計四つで、いずれもオスプレイパッドだ。米海兵隊は、海からゴムボートで海岸線に上陸し、森林へと攻め込み、森の中のヘリパッドからオスプレイで脱出-という複合訓練を計画している。訓練実施にはヘリパッド完成が不可欠だ。
 9月26日の安倍晋三首相による所信表明演説では高江の米軍基地返還を「本土復帰後、最大の返還」と強調した。しかし、内実は攻撃能力を高める訓練を可能たらしめるものであり、米海兵隊の資料においても、返還されるのは、「北部訓練場の使い道のない土地」(unusable Nortyern Training Area)とされている(「2025戦略展望」)。
 オスプレイを作戦に組み込んだ訓練がすでに日常化しているのだ。完成したN-4地区の
パッドから約400メートルの位置で生活している安次嶺雪音さんは話す。
 「この6月からの訓練はひどいものでした。以前は1回の訓練時間を短く、1日~2日で終わることが多かったのですが、6月以降は日中もちろん夜は11時頃まで、それも毎晩です。1回の訓練時間も長くて、子どもは夜目を覚まして眠れなくなります。すると朝も起きられない。私がイライラすると、そのイライラは子どもに伝わるんですね・・・もうここでは生活できないと、子どもが夏休みに入る前に国頭村に非難しました」
 安次嶺さんは東村に何度も訓練を控えるよう沖縄防衛局(嘉手納長)に伝えてほしいと訴えてきた。7月に国が故事を強行してきたのは、まさに安次嶺さんが
要請していた最中だ。
 「余計にショッックでした。村民の暮らしなど、どうでもいいということなんでしょう」 国はなりふりかまわぬ態度で作業を強行する。9月13日には重機の運搬に陸自ヘリ(CH-47)が使われた。24日、稲田朋美防衛省と県庁で会談した翁長雄志知事は、「抗議活動のために工事が進まず、自衛隊ヘリを使わざるをえなかった」と説明する防衛完了に対し、「それが上から目線なんだ」「沖縄の長い歴史を踏まえないといけない」と主張した(『沖縄タイムス』9月25日付)
 上から目線であるだけではない。警察によるテント撤去、道路の検問封鎖、先の陸自ヘリの使用など、法的根拠すら曖昧な行為に及んでいる。9月23日にはダンプ11台が3往復して砂利を運んだ。過去最多だ。9月中旬以降、市民が集会する中をダンプが突っ切たり、作業の遅れを鳥戻そうと国も必死だ。


 あわせて、野中は、「抗議活動の持続の難しさ」と高江の闘いを伝える。 


 一方で抗議活動に対する高江地区住民の反発もある。抗議する市民の車が道を塞ぎ畑に通えないという農業者、道路が封鎖されて通勤の時刻に遅れたという勤め人などからは煩雑に苦情が寄せられている。
 県の姿勢も煮え切らない。翁長知事は機動隊の強行姿勢に遺憾の意を述べているものの、ヘリパッド建設そのものに異を唱えていない。翁長知事を誕生させた「オール沖縄」は辺野古新基地建設反対では成立したが、高江では成立しにくい現実がある。高江の抗議活動をウオッチしている捜査関係者は「翁長知事は辺野古にしか反対できない。高江の抗議活動は必ずしも地元住民の理解が得られていない。抗議活動は孤立化する可能性もある」と語る。
 抗議を続けることには苦難がついてまわるのだ。高江住民の中には、抗議活動から一歩身を引きながらも、オスプレイノの訓練が日常化すればそれこそ日常生活への支障が大きいと、心の内では理解している人も多い。
 国は期限までの完成に向けて血眼だ。重要な局面にさしかかっている。
 


(2)福元大輔-「日本マネーで建設される最新鋭ヘリパッド」


 福元大輔は、「日本マネーで建設される最新鋭ヘリパッド」の記事で、高江の工事が、「負担軽減」どころか基地機能の強化であることについて、解き明かす。


 日本最大の面積を誇る米海兵隊の「北部訓練場」7543ヘクタールのうち、半分以上の3987ヘクタールの返還は、1996年12月の日米特別行動委員会(SACO)最終報告に盛り込まれた。返還部分の7ヶ所のヘリパッドを、日本政府の責任で残余部分に移設することが条件だった。訓練場内には、すでに22ヶ所のヘリパッドがある。7ヶ所が返還されても15ヶ所が残る。何故移設が必要なのか。
 ヘリパッドには、それぞれ特徴がある。そこでの訓練を米軍は「制限値着陸」よ呼ぶ。戦場や災害地への物資、人員の輸送を担う航空部隊のために、地形や風、形状など制限、
制約がある中での訓練を目的にしている。当然、新たなヘリパッドには、他とは違う役割、
機能が求められる。沖縄防衛局が実施した環境影響評価に殉ずる「自主アセス」では、新たなヘリパッドは、上陸訓練と連動する形で使用する狙いが明記されている。
 艦船から海に投下したゴムボートなどで歩兵部隊が上陸し、空からヘリコプターでの支援や逃げ遅れた兵士の救出作戦を展開する訓練に利用するとみられる。さらに、海兵隊の新型輸送機「MVオスプレイ」の高音排気熱に耐えうる構造になっている。つまり、「沖縄の負担軽減」を理由に、米軍はちゃっかり、日本政府の予算で時代に合った新施設を手に入れようとしている。そうなれば、土地は返還されても、使い勝手がよくなった沖縄の基地の重要性は増し、海兵隊の駐留が続くことになる。騒音被害や事件・事故の危険性も
除去されないというのが沖縄側の見方だ。
 高江の問題は全国的に注目されていないが、普天間飛行場の名護市辺野古移設と同じ、SACOの合意事項だ。95年の米兵による痛ましい事件をきっかけに、「沖縄の負担軽減」を目指し、日米両政府が協議した結果、逆に沖縄の基地機能が強化されるのではないか、という懸念や怒りが高まる。


(3)渡辺豪-「国の勝訴ありき」で進んだ「辺野古違法確認訴訟」


 渡辺豪は、この間の、沖縄と国の関係を、いや、国の沖縄への「構造的沖縄差別」をあらためて示すことになった「辺野古違法確認訴訟」について、このように記す。
まず、裁判結果について。


 「裁判所は政府の追認機関であることが明らかになった」
 翁長知事の言葉には、司法があからさまに政権側に立ち、「政治に口をはさんだ」ことへの驚きと不信、憤りがにじんでいる。
成蹊大学法科大学院の武田真一郎教授〈行政法〉も同じ認識だ。
 「本土を含めた国民全体で真剣に取り組めば代替案はあり得るのだから、そのような政治的課題について裁判所が断定する権限はない。本判決は司法権逸脱判決と指摘されるが、その通りだ。」


 渡辺は、この判決について、「今回の判決は政治判断を伴う国の基地政策を無批判かつ一方的に肯定し、『事実』として論旨に盛り込むことを厭わなかった、という点で極めて異例だ。」、と批判する。
 また、渡辺は、高裁判決に至る一連の流れについて、次のように指摘する。


 武田教授は、高裁判決に至る一連の流れをこう批判する。
 「当初の国の代執行と執行停止は、あまりに非常識だから取り下げさせたが、是正の指示をすれば国の主張を認めるという筋書きが和解勧告の段階でできていたのでしょう。そうでなければ、これだけ重大な問題がわずか2回の弁論で結審きるはずがない」
 多見谷裁判長は、沖縄県側が答弁書を提示する前に国側の訴状だけで「争点メモ」を作成していた。審理が始まると、県側が申請した8人の承認申請をすべて却下した。県の主張を入り口で切り捨てた結果、提訴から2カ月足らずの「スピード判決」となった。
 異様だったのが、口頭弁論での翁長知事への本人尋問だ。
「判決確定後はただちに従い、誠実に対応するか」(国側代理人)
 「県が負けて最高裁で確定したら取り消し処分を取り消すか」(多見谷裁判長)
 県敗訴を前提に国側代理人とともに知事に詰め寄る裁判長の態様は、司法の公正中立を疑わせるものだったが、実は同じ言葉が政府からも審理前に発せられている。
 菅義偉官房長官は、県を相手取って違法確認訴訟を起こすと表明した7月21日の会見でこう述べた。「確定判決には従うことを〈翁長〉知事に確認した」。
 三者の言葉の重なりは、一蓮托生ぶりを白日にさらすものだ。


 渡辺は、この判決の評価を、沖縄タイムスの社説を引用して、「高裁判決の翌日、『沖縄タイムス』は社説でこう指摘した。『一連の過程を振り返ると、国と司法が【あうんの呼吸】でことを進めてきたのではないか、という疑いを禁じ得ない」、とまとめた。
 結局、渡辺は、この問題についての「真の解決」を、次のように提示する。


 日本政府は、沖縄の海兵隊部隊を日本本土に移転することで反米軍基地運動が広がることを警戒し、圧倒的多数の本土の人々は自分の住む地域に米軍基地が来ることを忌み嫌っている。その意味で、本土の人と日本政府は、「共犯」の関係にある。沖縄県民の大半はこうした本土側の「差別とエゴ」も敏感に察知している。
 翁長知事は判決後の会見で「長い長い闘いになろうかと思う」と辺野古移設阻止を表明した。
 翁長知事個人を「敵」とみなし、「国の権威」で押さえつければ「解決できる」と、現政権が本気で考えているのであれば、「木を見て森を見ない」のと同じだ。知事を背後で支える沖縄世論に目を向け、多くの県民の理解を得るため政治的な知恵と努力を尽くす。真の解決はその先にしか見えてこない。


(4)黒島美奈子-他の場所に移すだけ「基地負担軽減」の嘘


 黒島美奈子は、安倍晋三政権の進めるヘリパッド着陸帯の建設の意味を、次のように指摘する。


 高江区の強い反対にもかかわらず、ヘリパッドは、すでに二つ完成し昨年運用開始した。以来、区ではかってない騒音と低周波が住民を苦しめている。そしてやんばるの森は、またも切り裂かれた。
 「高江問題」の経緯は、日米政府がアピールする沖縄の基地負担軽減策の実態を端的に示す。つまり基地負担軽減とは、老朽化した米軍基地〈施設〉の代わりに、沖縄の土地や海に新しい基地を建設し、住民に新たな被害と負担を負わせることにほかならない。


 黒島 美奈子は、基地問題の元凶を鋭く言い当てる。
 「負担軽減は嘘なのだ」、と。


 SACOでは、①普天間飛行場②安波訓練場③ギンバル訓練場④楚辺通信所⑤読谷補助飛行場⑥キャンプ桑江の一部⑦瀬名波通信所⑧那覇港湾-の返還なども合意したが、すべて沖縄県内のほかの地への移設が条件だ、高江をはじめ辺野古や浦添への軍港移設、伊江島補助飛行場問題など今沖縄が抱える基地問題の元凶が、ここにある。
 「負担軽減」は嘘なのだ。


 この国の首相が「本土復帰後、最大の返還」と言ってしまう実態。
 しかし、一方では、この返還の実態とは、「北部訓練場の使い道のない土地」(unusable Nortyern Training Area)とされている(「2025戦略展望」)の返還でしかない、ということを沖縄県民の多くがすでに認識してしまっている。
それは、もちろん、「米軍はちゃっかり、日本政府の予算で時代に合った新施設を手に入れようとしている。そうなれば、土地は返還されても、使い勝手がよくなった沖縄の基地の重要性は増し、海兵隊の駐留が続くことになる。騒音被害や事件・事故の危険性も除去されない」、ということをである。
 結局、「負担軽減は嘘なのだ」。
「辺野古違法確認訴訟」における今回の司法権逸脱判決も、こうした路線の中で行われたものであることに、沖縄県民は、当然、気づいている。


by asyagi-df-2014 | 2016-10-03 05:50 | 本等からのもの | Comments(0)

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