沖縄-「辺野古裁判、沖縄県が敗訴」(3)

 辺野古裁判は、沖縄県が敗訴となった。
 このことを伝える。 
2016年9月17日、各紙は、この「敗訴」を、次のように社説・論説で扱った。
 その見出しは、次のようになった。


(1)琉球新報社越-辺野古訴訟県敗訴 地方分権に逆行 知事は阻止策を尽くせ
(2)沖縄タイムス社説-[辺野古訴訟 県敗訴]異常な恫喝と決めつけ
(3)北海道新聞社説-「辺野古」国勝訴 沖縄の声は変わるまい
(4)岩手日報論説-辺野古移設訴訟 国は拳を下ろさないか
(5)信濃毎日新聞社説-辺野古判決 誠実さ欠く政府の姿勢
(6)福井新聞論説-辺野古訴訟判決 もっと沖縄直視すべきだ
(7)京都新聞社説-辺野古訴訟判決  司法で決着する問題か
(8)神戸新聞社説-辺野古判決/沖縄の怒りは増すばかり
(9)山陽新聞社説-辺野古訴訟判決 対話による解決を目指せ
(10)山陰中央新聞論説-辺野古訴訟/見えない解決の道筋
(11)愛媛新聞社説-辺野古訴訟で判決 誠実な協議しか真の解決はない
(12)高知新聞社説-【辺野古訴訟】対話なしには解決しない
(13)徳島新聞社説-辺野古訴訟 国勝訴 解決への道筋が見えない
(14)佐賀新聞論説-辺野古訴訟 これで民意に沿うだろうか
(15)朝日新聞社説-辺野古判決 それでも対話しかない
(16)毎日新聞社説-辺野古で国勝訴 解決には対話しかない
(17)読売新聞社説-「辺野古」国勝訴 翁長知事の違法が認定された


 こちらが把握した17本の社説・論説のなかで、16本は「対話なしには解決しない」(高知新聞)に近い主旨の見出しとなっている。しかし、今回も、読売新聞だけが、唯一「妥当な判決だ。」、と解説した。
 ここ数年の安倍晋三政権の手法が、何故許されてきたのか。
 マスコミの責任は、非常に大きい。
 読売新聞は、このことの自覚が欠けている。


 まず最初に、沖縄県紙の二紙以外の特徴的なものを挙げてみる。
例えば、愛媛新聞の社説は、次のように指摘する。


(1)在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄に、もうこれ以上基地は要らない。そんな切実な民意を一顧だにせず、「辺野古が唯一の解決策」と一つ覚えに繰り返して問答無用で基地建設を強行しようとする国の姿勢と、それを追認するように「普天間の危険を除去するには辺野古以外にない」と指摘した司法に、強い失望と憤りを禁じ得ない。
(2)国が県を訴え、強硬な本音を隠そうともせず「攻撃」する。そんな信じられない事態が、参院選を境に露骨に進む。米軍専用施設「北部訓練場」の工事強行。沖縄振興予算を基地返還と関連付ける「リンク」論の公言と減額。そして辺野古訴訟…。
 7月の全国知事会で、翁長氏は基地問題を「わがこととして真剣に考えてほしい」と呼び掛けたが、積極的に呼応する意見表明は埼玉や滋賀など少数にとどまった。しかし、全国の地方や国民にとって、決して人ごとではない。安全保障は誰のためにあるのか。日本が初めて、自ら沖縄に恒久的基地を建設することを黙認していいのか。判決を機に、一人一人が考えねばならない。わがこととして。


 各紙の社説等の気になる箇所を拾い出す。
(北海号新聞)
(1)沖縄が戦後負ってきた重い基地負担への配慮を欠く判決だ。
(2)判決は「国防・外交は自治体の所管ではなく、不合理と認められない限り尊重すべきだ」とした。そこに、地方自治の精神を尊重する姿勢は感じられない。
(3)和解は確かに、双方の訴訟を一本化する手続きも定めていた。だが、その前提だった国地方係争処理委員会の結論は、国と県の「真摯(しんし)な協議」を求めた。それを無視して提訴した国の対応が問われないのも納得しかねる。
(岩手日報)
 泥沼の訴訟合戦に陥って、普天間が固定化されることにでもなれば元も子もない。今からでも遅くない。国は拳を下ろし、話し合い決着に人事を尽くすべきではないか。
(信濃毎日新聞)
 不誠実な姿勢こそが、問題を根深くしている。安倍政権は言葉通り、普天間問題も含め、基地負担の軽減を求める沖縄の声に正面から向き合わねばならない。
(福井新聞)
(1)基地の沖縄は米兵らによる事件や事故が絶えない。日本側から不均衡な日米地位協定の抜本改定を求める動きは全くない。民意を無視する傲慢(ごうまん)とも思える国の姿勢と合わせ、「沖縄は日米安保体制のスケープゴート」と断じる識者もいる。
(2)裁判長は訴訟と並行して進める予定の「協議」で打開策が見つかる可能性まで否定した。知事が「三権分立という意味で禍根を残す」と言い放ったのは当然だ。
(山陽新聞)
(1)司法判断は出ても、このままでは政府と沖縄県の対立は解けないばかりか、一層激化するのが目に見えている。政府は強硬姿勢を改め、対話による解決への道を探るべきであろう。
(2)残念ながら、沖縄という地方に在日米軍の負担を極端なまでに押しつけているのが日本の安全保障の姿である。地元の同意なく、埋め立て工事を強行するような事態は絶対に避けなければならない。
(山陰中央新聞)
 ただ、これまで通りの硬直的な姿勢を取っている限り溝が埋まることはない。埋め立て計画をいったん凍結するほどの柔軟さが求められているのではないだろうか。
(佐賀新聞)
 基地ゆえの犯罪をなくすために、沖縄から基地をなくしてほしい-。それが沖縄の民意だろう。今回の判決で福岡高裁は「沖縄の民意を考慮しても、承認の要件を欠く点はない」としていたが、本当だろうか。
(朝日新聞)
(1)国の主張が全面的に認められた判決だ。だからといって、政府が沖縄の不信を解く努力を怠れば、問題解決には決してつながらない。
(2)「普天間の被害を除去するには辺野古に基地を建設する以外にない」と言い切ったことに、大きな疑問を感じる。
(3)長い議論の歴史があり、国内外の専門家の間でも見解が分かれる、微妙で複雑な問題だ。だが、この訴訟で裁判所が直接話を聞いたのは翁長雄志知事ひとりだけ。それ以外の証人申請をことごとく退け、法廷を2回開いただけで打ち切った。そんな審理で、なぜここまで踏みこんだ判断ができるのか。しなければならないのか。結論の当否はともかく、裁判のあり方は議論を呼ぶだろう。
(4)政府が直視すべきは、県民の理解がなければ辺野古移設は困難だし、基地の安定的な運用は望み得ないという現実だ。県民の思いと真摯(しんし)に向き合う努力を欠いたまま、かたくなな姿勢を続けるようなら、打開の道はますます遠のく。
(毎日新聞)
(1)この先、最高裁がどういう判断をするかは見通せない。ただ、最高裁で国の勝訴が確定したとしても、知事の権限は大きく、翁長氏にはいくつかの対抗手段がある。
(2)例えば、埋め立て承認の「取り消し」ではなく、改めて承認を「撤回」する可能性が指摘されている。取り消しが、承認時の手続き上の瑕疵(かし)を理由にした処分なのに対し、撤回は承認後の状況の変化を理由にした処分だ。また、移設計画の変更が必要になった場合、国は改めて知事の承認を得る必要がある。知事が承認しなければ計画は進まなくなる。
(3)政府は沖縄と形だけの協議はしても、真剣に議論しようという態度に欠けていたのではないか。対話による解決にもっと努力すべきだ。


 ここで、沖縄県紙の二紙の主張を要約する。
 私たちは、二紙の渾身の怒りと冷静な分析を噛み締める必要がある。


Ⅰ.主張
(琉球新報)
(1)辺野古新基地に反対する県民世論を踏みにじり、新基地建設で損なわれる県益を守る地方自治の知事権限を否定する判決であり、承服できない。
(2)米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る初の司法判断である。しかし国の主張をそのままなぞったような内容で、三権分立の原則を逸脱した判決と言わざるを得ない。翁長知事は上告審での反論とともに、知事権限を駆使して新基地建設への反対を貫いてもらいたい。
(3)判決は公有水面埋立法の理念に反し、海域の保全を求める国際世論にも背を向けるものと断じざるを得ない。
(4)上告審の最高裁が県益を代表する知事の主張に正当な判断を下すか、司法の責任が問われる。
(5)判決は国の主張をほぼ全面的に採用する内容だ。裁判で翁長知事は辺野古新基地により「将来にわたって米軍基地が固定化される」と指摘した。その上で「県知事としての公益性判断を尊重してほしい」と訴えたが、判決は県民の公益性よりも辺野古新基地建設による国益を優先する判断に偏った。「国と地方の関係は対等」と位置付けた1999年の地方自治法改正の流れにも逆行する判決と言わざるを得ない。
(6)上告審での訴訟継続とともに、翁長知事にはなお、「埋め立て承認撤回」や「埋め立て工事の変更申請の判断」「岩礁破砕許可の更新判断」などの法的権限が留保されている。
(7)IUCNの環境保全の勧告、米退役軍人が年次総会で辺野古新基地建設の中止を求める決議を行うなど、支援は海外にも広がっている。さらに国際世論を喚起することも今後の重要な方策だろう。
(8)翁長知事は今回の違法確認訴訟の陳述で「辺野古の問題は沖縄県だけでなく地方自治の根幹、民主主義の根幹にかかわる問題。全てが国の意思で決まるようになれば、地方自治は死に、日本の未来に禍根を残す」と訴えていた。
(沖縄タイムス)
(1)県は敗れた。県側の主張はことごとく否定された。まるで国側の主張をそっくりそのまま引き写し、県に突きつけたかのような判決だ。
(2)司法の独立がほんとうに維持されているのかという根源的な疑いさえ抱かせる判決である。とうてい承服できるものではない。
(3)和解を勧告した当の裁判所が、ここに来て「互譲の精神による解決策の合意は無理」だと見切りをつけるのだから、なにをかいわんやだ。一連の過程を振り返ると、国と司法が「あうんの呼吸」でことを進めてきたのではないか、という疑いを禁じ得ない。
(4)県は最高裁に上告する考えを明らかにしている。高裁判決を丁寧に冷静に分析し、判決の問題点を明らかにしてほしい。モンスターと対峙(たいじ)しているために自分がモンスターにならないよう、常に「まっとうさ」を堅持し、あらゆる媒体を利用して現状の理不尽さをアピールしてもらいたい。


Ⅱ.判決の問題点
(琉球新報)
(1)公有水面埋め立ての環境保全措置を極めて緩やかに判断している点だ。判決は「現在の環境技術水準に照らし不合理な点があるか」という観点で、「審査基準に適合するとした前知事の判断に不合理はない」と軽々しく片づけている。
 果たしてそうだろうか。専門家は公有水面埋立法について「環境保全が十分配慮されない事業には免許を与えてはならない」と指摘している。埋め立てを承認した前知事ですら、環境影響評価書について県内部の検討を踏まえ、「生活環境、自然環境の保全は不可能」と明言していた。
 大量の土砂投入は海域の自然を決定的に破壊する。保全不能な保全策は、保全の名に値しない。辺野古周辺海域はジュゴンやアオサンゴなど絶滅が危惧される多様な生物種が生息する。県の環境保全指針で「自然環境の厳正なる保護を図る区域」に指定され、世界自然遺産に値する海域として国際自然保護連合(IUCN)が、日本政府に対し4度にわたり環境保全を勧告している。
(2)判決は公有水面埋立法の理念に反し、海域の保全を求める国際世論にも背を向けるものと断じざるを得ない。
(沖縄タイムス)
(1)戦後70年以上も続く過重な基地負担、基地維持を優先した復帰後も変わらぬ国策、地位協定の壁に阻まれ今なお自治権が大きな制約を受けている現実-こうした点が問題の核心部分であるにもかかわらず、判決はそのことに驚くほど冷淡だ。
(2)冷淡なだけではない。自身の信条に基づいて沖縄の状況を一方的に裁断し、沖縄の民意を勝手に解釈し、一方的に評価する。県敗訴は当初から予想されてはいたが、これほどバランスを欠いた独断的な判決が出るとは驚きだ。
(3)沖縄の地理的優位性や海兵隊の一体的運用などについても、判決は、ことごとく国側の考えを採用している。判決は、普天間飛行場の被害を除去するためには辺野古に新施設を建設するしかない。辺野古の新施設建設を止めれば普天間の被害を継続するしかない-とまで言ってのける。これはもはや裁判の判決と言うよりも一方的な決めつけによる恫喝(どうかつ)というしかない。そのようなもの言いを前知事が「政治の堕落」だと批判していたことを裁判官は知っているのだろうか。
(4)これほど、得るところのない判決は、めずらしい。裁判官の知的誠実さも伝わってこない。北朝鮮の「ノドンの射程外となるのは我が国では沖縄などごく一部」だと指摘し、沖縄の地理的優位性を強調している判決文を読むと、ただただあきれるばかりである。


 この二紙を通じて、この判決の「異常さ」と司法の「劣化」が際立って見える。
 今後、最高裁は、「上告審の最高裁が県益を代表する知事の主張に正当な判断を下すか、司法の責任が問われる。」、ことを肝に命じなければならない。
 いずれにしろ、今大事なことは、愛媛新聞が指摘する次のことである。


「しかし、全国の地方や国民にとって、決して人ごとではない。安全保障は誰のためにあるのか。日本が初めて、自ら沖縄に恒久的基地を建設することを黙認していいのか。判決を機に、一人一人が考えねばならない。わがこととして。」


 以下、各紙の社説・論説の引用。(非常に、長文です)







(1)琉球新報社越-辺野古訴訟県敗訴 地方分権に逆行 知事は阻止策を尽くせ-2016年9月17日 06:01


 前知事の名護市辺野古海域の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事の処分を違法とする判決が、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)で下された。辺野古新基地に反対する県民世論を踏みにじり、新基地建設で損なわれる県益を守る地方自治の知事権限を否定する判決であり、承服できない。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る初の司法判断である。しかし国の主張をそのままなぞったような内容で、三権分立の原則を逸脱した判決と言わざるを得ない。翁長知事は上告審での反論とともに、知事権限を駆使して新基地建設への反対を貫いてもらいたい。

環境保全策を軽視

 判決には大きな疑問点が二つある。まず公有水面埋め立ての環境保全措置を極めて緩やかに判断している点だ。
 判決は「現在の環境技術水準に照らし不合理な点があるか」という観点で、「審査基準に適合するとした前知事の判断に不合理はない」と軽々しく片づけている。
 果たしてそうだろうか。専門家は公有水面埋立法について「環境保全が十分配慮されない事業には免許を与えてはならない」と指摘している。埋め立てを承認した前知事ですら、環境影響評価書について県内部の検討を踏まえ、「生活環境、自然環境の保全は不可能」と明言していた。
 大量の土砂投入は海域の自然を決定的に破壊する。保全不能な保全策は、保全の名に値しない。
 辺野古周辺海域はジュゴンやアオサンゴなど絶滅が危惧される多様な生物種が生息する。県の環境保全指針で「自然環境の厳正なる保護を図る区域」に指定され、世界自然遺産に値する海域として国際自然保護連合(IUCN)が、日本政府に対し4度にわたり環境保全を勧告している。
 判決は公有水面埋立法の理念に反し、海域の保全を求める国際世論にも背を向けるものと断じざるを得ない。
 判決はまた、「普天間飛行場の被害をなくすには同飛行場を閉鎖する必要がある」、だが「海兵隊を海外に移転することは困難とする国の判断を尊重する必要がある」「県内ほかの移転先が見当たらない以上、本件新施設を建設するしかない」という論法で辺野古新基地建設を合理的とする判断を示した。
 普天間飛行場の移設先を「沖縄の地理的優位性」を根拠に「辺野古が唯一」とする国の主張通りの判断であり、米国、米軍関係者の中にも「地理的優位性」を否定する見解があるとする翁長知事の主張は一顧だにされなかった。

県益より国益優先

 判決は国の主張をほぼ全面的に採用する内容だ。裁判で翁長知事は辺野古新基地により「将来にわたって米軍基地が固定化される」と指摘した。その上で「県知事としての公益性判断を尊重してほしい」と訴えたが、判決は県民の公益性よりも辺野古新基地建設による国益を優先する判断に偏った。
 「国と地方の関係は対等」と位置付けた1999年の地方自治法改正の流れにも逆行する判決と言わざるを得ない。
 上告審での訴訟継続とともに、翁長知事にはなお、「埋め立て承認撤回」や「埋め立て工事の変更申請の判断」「岩礁破砕許可の更新判断」などの法的権限が留保されている。
 IUCNの環境保全の勧告、米退役軍人が年次総会で辺野古新基地建設の中止を求める決議を行うなど、支援は海外にも広がっている。さらに国際世論を喚起することも今後の重要な方策だろう。
 翁長知事は今回の違法確認訴訟の陳述で「辺野古の問題は沖縄県だけでなく地方自治の根幹、民主主義の根幹にかかわる問題。全てが国の意思で決まるようになれば、地方自治は死に、日本の未来に禍根を残す」と訴えていた。
 上告審の最高裁が県益を代表する知事の主張に正当な判断を下すか、司法の責任が問われる。


(2)沖縄タイムス社説-[辺野古訴訟 県敗訴]異常な恫喝と決めつけ-2016年9月17日 07:00


 県は敗れた。県側の主張はことごとく否定された。まるで国側の主張をそっくりそのまま引き写し、県に突きつけたかのような判決だ。

 戦後70年以上も続く過重な基地負担、基地維持を優先した復帰後も変わらぬ国策、地位協定の壁に阻まれ今なお自治権が大きな制約を受けている現実-こうした点が問題の核心部分であるにもかかわらず、判決はそのことに驚くほど冷淡だ。

 冷淡なだけではない。自身の信条に基づいて沖縄の状況を一方的に裁断し、沖縄の民意を勝手に解釈し、一方的に評価する。県敗訴は当初から予想されてはいたが、これほどバランスを欠いた独断的な判決が出るとは驚きだ。

 司法の独立がほんとうに維持されているのかという根源的な疑いさえ抱かせる判決である。とうてい承服できるものではない。
■    ■
 名護市辺野古の新基地建設を巡り、国が翁長雄志知事を訴えた「不作為の違法確認訴訟」の判決が16日、福岡高裁那覇支部で言い渡された。

 多見谷寿郎裁判長は、前知事が行った埋め立て承認に裁量権の逸脱・乱用による違法性はなく、翁長知事の承認取り消しは違法との判断を示した。

 公有水面埋立法に基づく県知事の埋め立て承認は「法定受託事務」と位置づけられている。判決は、法定受託事務に関する国の是正指示がなされた場合、「地方公共団体はそれに従う法的義務を負い」「それをしない不作為は違法となる」と指摘。埋め立て承認取り消し処分の取り消しを求める石井啓一国土交通相の是正の指示に知事が従わないのは違法、だと断じている。

 代執行訴訟で国と県の和解を勧告したのは多見谷裁判長である。政府は和解に応じた。だが、それは協議を重視したからではなく、高裁から国敗訴の可能性を指摘されたからである。安倍晋三首相がオバマ米大統領に「急がば回れ」と語ったのは、こうした背景があるからだ。

 3月4日に和解が成立すると、土、日を挟んで7日、直ちに翁長知事に対し、是正の指示を行った。政府自ら信頼関係を壊してしまったのだ。

 県は是正指示を不服として国地方係争処理委員会(第三者機関)に審査を申し出た。係争委は適否の判断をせず、「真摯(しんし)に協議することが最善の道」だと異例の結論をまとめた。ところが、判決は、国に話し合いを促すのではなく、早期の司法決着をめざす国の主張を全面的に取り入れたのである。
■    ■
 和解を勧告した当の裁判所が、ここに来て「互譲の精神による解決策の合意は無理」だと見切りをつけるのだから、なにをかいわんやだ。

 一連の過程を振り返ると、国と司法が「あうんの呼吸」でことを進めてきたのではないか、という疑いを禁じ得ない。

 沖縄の地理的優位性や海兵隊の一体的運用などについても、判決は、ことごとく国側の考えを採用している。

 判決は、普天間飛行場の被害を除去するためには辺野古に新施設を建設するしかない。辺野古の新施設建設を止めれば普天間の被害を継続するしかない-とまで言ってのける。

 これはもはや裁判の判決と言うよりも一方的な決めつけによる恫喝(どうかつ)というしかない。そのようなもの言いを前知事が「政治の堕落」だと批判していたことを裁判官は知っているのだろうか。
■    ■
 これほど、得るところのない判決は、めずらしい。裁判官の知的誠実さも伝わってこない。

 北朝鮮の「ノドンの射程外となるのは我が国では沖縄などごく一部」だと指摘し、沖縄の地理的優位性を強調している判決文を読むと、ただただあきれるばかりである。

 県は最高裁に上告する考えを明らかにしている。高裁判決を丁寧に冷静に分析し、判決の問題点を明らかにしてほしい。

 モンスターと対峙(たいじ)しているために自分がモンスターにならないよう、常に「まっとうさ」を堅持し、あらゆる媒体を利用して現状の理不尽さをアピールしてもらいたい。


(3)北海道新聞社説-「辺野古」国勝訴 沖縄の声は変わるまい-09/17 08:55


 沖縄が戦後負ってきた重い基地負担への配慮を欠く判決だ。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る訴訟で福岡高裁那覇支部はきのう、埋め立て承認を取り消した翁長雄志(おながたけし)知事の対応を違法とする国側勝訴の判決を言い渡した。

 知事は上告する方針を示した。知事は「確定判決には従う」としているものの、他のあらゆる手段を尽くして辺野古移設を阻止する姿勢は揺らいでいない。

 政府は勝訴が確定すれば埋め立て工事を再開するとみられるが、それでは混迷は深まるばかりだ。判決を盾に強硬姿勢を取っても問題の解決に資することはない。県と誠実に協議するべきだ。

 判決は「普天間の危険を除去するには辺野古以外にない」と断定、国の主張を全面的に認めた。

 知事は「沖縄県民の気持ちを踏みにじる、あまりにも国に偏った判断だ」と批判し、「(裁判所が)政府の追認機関であることが明らかになり、大変失望している」と強い不満を表明した。

 当然ではないか。そもそも国と県が3月に受け入れた同じ福岡高裁那覇支部の和解勧告には、国と地方を「対等・協力の関係」とした1999年の地方自治法改正に触れた上で、こう書いてある。

 「本来あるべき姿としては、沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべきである」

 沖縄に寄り添い、辺野古に代わる選択肢に全力を挙げて知恵を絞れとも読める。それがなぜ、国の言い分だけに軍配を上げたのか。

 判決は「国防・外交は自治体の所管ではなく、不合理と認められない限り尊重すべきだ」とした。そこに、地方自治の精神を尊重する姿勢は感じられない。

 菅義偉官房長官は判決を受け「訴訟と同時に話し合いも並行して進める和解の趣旨に沿って誠実に対応していく」と述べた。

 和解は確かに、双方の訴訟を一本化する手続きも定めていた。

 だが、その前提だった国地方係争処理委員会の結論は、国と県の「真摯(しんし)な協議」を求めた。それを無視して提訴した国の対応が問われないのも納得しかねる。

 司法判断は本来尊重されるべきだが、国の政策にお墨付きを与えるだけの判決に従えと言われても沖縄の怒りは増幅するだけだ。

 年度内にも出される見通しの最高裁判決には、沖縄の基地問題の歴史と背景、国の安全保障と地方自治のあり方について深い考察を加えることを望みたい。


(4)岩手日報論説-辺野古移設訴訟 国は拳を下ろさないか-2016年9月17日



 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場移設計画をめぐり、国が県を訴えた訴訟で国が勝ったのは、県側にとって決して想定外とは言えまい。

 県側は名護市辺野古移設阻止に向け、既に続く最高裁で敗訴が確定した場合を想定。行使できる新たな知事権限の洗い出しに努めている。一連の裁判の流れに、県側に厳しい判断の兆しを見て取ったからに違いない。

 仲井真弘多前知事が行った辺野古沿岸部の埋め立て承認を、翁長雄志知事が取り消した処分に対し、国は撤回するよう是正指示。翁長氏は従わず、訴訟はこの対応を違法として7月に提訴された。

 福岡高裁那覇支部は、第1回口頭弁論の8月5日に判決までの日程を決定。県が求めた8人の証人は却下され、弁論2回で結審した。

 その過程では、裁判長が繰り返し「県は判決に従うか」と確認するなど、県側が「訴訟指揮が国寄り」と不満を漏らす要素はあった。

 今回の裁判は、国が地方自治体を相手に初めて起こす不作為の違法確認訴訟だ。安全保障政策に絡む問題だけに特殊な事案ととらえがちだが、国策と民意が対立する事態はどこでも起こり得る。

 先の参院選を経て、沖縄は衆院4小選挙区と参院沖縄選挙区の6議席を、辺野古移設に反対する「オール沖縄」系が独占。沖縄県民の総意が明白に示される中で行われた裁判は、国と地方の関係を問い直す上で重い意味を持つ。

 判決が双方の主張に十分に耳を傾け、審理を尽くした結果か、市民目線で厳しく評価する必要があるだろう。

 翁長氏が埋め立て承認を取り消したのは昨年10月。国と県は三つの訴訟で争う事態となったが、今年3月に高裁支部の和解勧告を受け入れ、いったんは全て取り下げた。

 しかし国は話し合いをはしょって翁長氏に承認取り消しの撤回を指示。県は国地方係争処理委員会に審査を申し出た。係争委は双方に真摯(しんし)な協議を求めたが、参院選を経て国は提訴に踏み切った。

 3月の和解は、裁判になった場合は判決に従う-との異例の内容を含む。とはいえ最高裁判決で、仮に県側敗訴が確定すれば翁長氏は取り消し撤回を迫られるが、県側は他の知事権限行使に効力は及ばないとの解釈に立つ。

 国は今後、現場で工法などに変更があれば県に届け出る義務もある。その度に訴訟になって「国が勝ち続ける保証はない」とは、高裁が和解勧告を示した際の見解だ。

 泥沼の訴訟合戦に陥って、普天間が固定化されることにでもなれば元も子もない。今からでも遅くない。国は拳を下ろし、話し合い決着に人事を尽くすべきではないか。


(5)信濃毎日新聞社説-辺野古判決 誠実さ欠く政府の姿勢-2016年9月17日


 政府は司法判断をてこに、米軍普天間飛行場の辺野古移設を加速させるのではないか。懸念が募る。

 福岡高裁那覇支部が辺野古埋め立て承認を取り消した沖縄県の翁長雄志知事の対応は違法とした国の主張を認め、県側敗訴の判決を出した。

 辺野古での新基地建設を巡る初めての司法判断である。翁長氏は上告する方針を表明。法廷闘争は最高裁に舞台を移す。

 安倍晋三政権は沖縄県民に寄り添うと言いながら、「辺野古移設が唯一の解決策」との姿勢を崩さない。沖縄から見れば二枚舌を使っていると映るだろう。

 不誠実な姿勢こそが、問題を根深くしている。安倍政権は言葉通り、普天間問題も含め、基地負担の軽減を求める沖縄の声に正面から向き合わねばならない。

 訴訟で国側は市街地にある普天間の危険性を除くため、移設は必要と強調。取り消し処分によって「日米間で築いた信頼関係が崩れ、外交、防衛上の著しい不利益が生じる」と主張した。

 県側は辺野古移設は基地負担の固定化になると訴えた。「埋め立てを承認した前知事の判断は自然環境への悪影響を十分検証していない」とも反論している。

 判決は普天間の危険性や国際情勢などに言及した上で、「県外移転はできない」とする国の判断は尊重するべきだとした。

 なぜ、このような展開になったのか。辺野古移設を巡っては訴訟合戦に発展していた。3月に双方がいったん訴訟を取り下げ、訴訟を一本化し、解決に向けて協議することなどで和解している。

 総務省の第三者機関である国地方係争処理委員会も、真摯(しんし)な協議をして納得できる結果を導く努力をすることを求めた。

 しかし、腰を落ち着けた協議は実現しなかった。逆に和解条項を都合よく解釈し、政府は一方的に今回の訴訟を起こしている。沖縄との話し合いを軽んじ、移設工事の再開を急ぐ意図があることがはっきり見えた。

 今回の裁判は、地方自治のあり方を問うものでもあった。1999年成立の地方分権一括法で国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に転換。なのに、現行の移設計画は地元の理解を得ないまま進められている。

 翁長氏は一連の訴訟で、憲法が定める地方自治の精神に反していることを訴えてきた。沖縄だけの問題ではないのだ。そんな問題意識を持って、今後の展開を注視する必要がある。


(6)福井新聞論説-辺野古訴訟判決 もっと沖縄直視すべきだ-2016年9月17日


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設問題で、前知事が埋め立てを承認したことに対し、承認を取り消した翁長雄志(おながたけし)知事の処分は違法かどうか。国が訴えた処分の違法性を巡る不作為の違法確認訴訟で、福岡高裁那覇支部は「普天間の危険を除去するには辺野古以外にない」として、国側全面勝訴の判決を言い渡した。

 国と県による泥沼の争いは訴訟合戦になっている。いわば国家権力と地方自治の在り方を巡る問題だが、司法判断が示されたのは初めてである。「埋め立て承認時の環境保全の審査も十分」として、知事の対応を「違法」と判断した。

 知事は上告する方針を表明。早ければ年度内にも最高裁で決着する見通しだ。

 「辺野古移設が唯一の解決策」との立場を堅持する政府に対し、県側は「沖縄への基地負担の固定化を招く」と主張。県外移設を公約に掲げる知事は、判決が確定しても「あらゆる方策で移設を阻止する」としており、別の対抗手段を講じ徹底抗戦の構えだ。

 その背景にあるのは先の大戦末期、沖縄が日米決戦による惨劇の場となり、その後も米軍が「占領」し続ける不条理である。国内の在日米軍専用施設全体の約74%が集中する。県民にとって「世界一危険」とされる普天間飛行場の早期返還も、辺野古移設反対も当然の論理なのであろう。

 基地の沖縄は米兵らによる事件や事故が絶えない。日本側から不均衡な日米地位協定の抜本改定を求める動きは全くない。民意を無視する傲慢(ごうまん)とも思える国の姿勢と合わせ、「沖縄は日米安保体制のスケープゴート」と断じる識者もいる。

 知事は意見陳述の際「すべてが国の意向で決められるようになれば地方自治は死ぬ」と訴えた。対する政府主張は辺野古埋め立ての必要性を強調した上で「(取消処分により)1996年の普天間返還合意以来、日米間で築いた信頼関係が崩れ外交、防衛上の不利益が生じる」というものだ。

 県民目線に立てば、日米同盟は沖縄を「踏み台」にして成り立ち、日本の「捨て石」ということになる。

 多見谷寿郎裁判長は、米海兵隊の運用面や世界情勢から「県外移転はできない」とする国の判断は尊重すべきとした。外交や防衛は基本的に国の所管事項と明示したが、あまりにも県民実態や感情を理解しない国追従の判断ではないか。裁判長は訴訟と並行して進める予定の「協議」で打開策が見つかる可能性まで否定した。知事が「三権分立という意味で禍根を残す」と言い放ったのは当然だ。

 2000年4月施行の地方分権一括法による地方自治法改正で、国と自治体は「上下・主従関係」から「対等・協力関係」になったはずだ。協調の精神で問題解決に向けて努力するなら、埋め立てをいったん凍結し、普天間の運用を見直すべきだ。海外分散を加速させる手だてもある。返還合意から20年。本当に在沖海兵隊は「抑止力」なのか。冷静に見つめ直す時だ。


(7)京都新聞社説-辺野古訴訟判決  司法で決着する問題か-2016年9月17日


 国の強硬な姿勢がさらに強まらないか、大いに危惧する。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐる裁判の判決で、福岡高裁那覇支部は、翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消し、国の是正指示に従わないのは違法とした。
 国の勝訴だが、県は最高裁に上告する方針を表明した。対立は深まるばかりだ。
 6月に国地方紛争処理委員会が両者に示した見解を思い出してほしい。「普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯(しんし)に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力をすることが、問題解決に向けての最善の道である」
 困難であっても、あらためて協議を粘り強く重ねてもらいたい。安倍政権は近ごろ力で押し通す姿勢が目立つ。改めるべきだ。
 裁判では、国権と地方自治の関係が問われたと言える。国が普天間返還合意の日米の信頼関係を崩さないために埋め立ては必要としたのに対し、県は自然環境や県民生活を守るために埋め立て承認を取り消すのは、知事に認められた権限とした。
 判決は、普天間の危険を除去するには埋め立てしかなく、埋め立てに伴う不利益や民意を考慮しても承認は間違っていないとして、国の主張をそのまま認めた。
 ただ、裁判は7月の提訴から2カ月、2回の弁論で結審した。県が要望した8人の証人は却下された。国と県が対立する辺野古移設問題で初めての司法判断だが、審理が尽くされたのか疑問が残る。
 国は司法のお墨付きを得たら、移設を加速させるだろうが、そもそも裁判で決着をつける問題ではあるまい。
 法廷で問われた翁長知事は「確定判決に従う」と述べたが、徹底抗戦の構えは変えていない。選挙で示された民意を背景に「あらゆる方策」を検討しているという。
 安倍政権は県北部の米軍訓練場ヘリコプター離着陸帯の建設工事を強行、さらに沖縄県振興予算を辺野古移設に結びつけ露骨に揺さぶりをかけている。
 沖縄以外では関心が高まらないことが、安倍政権を強気にさせているのかもしれない。
 翁長知事は意見陳述で、国の主張は地方自治をないがしろにしており、「沖縄県だけにとどまらない問題」と訴えた。日米安保を享受しながら、沖縄に基地を押しつけている現状に目を向けなければならない。


(8)神戸新聞社説-辺野古判決/沖縄の怒りは増すばかり-2016年9月17日


 米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設問題で初めての司法判断が示された。

 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した処分を撤回しないのは違法だとして国が知事を訴えた訴訟で、福岡高裁那覇支部は知事の対応を「違法」とする判決を言い渡した。

 さらに「普天間の危険除去には辺野古しかない」として、「自然環境に悪影響を与え、沖縄の基地負担の固定化につながる」との沖縄側の主張を真っ向から否定した。

 国の言い分を全面的に認めた判決である。だが、「辺野古ノー」と示してきた沖縄県民の意思は固く、反発は強まるばかりだ。

 翁長知事は「県民の気持ちを踏みにじる、あまりに国に偏った判断だ」として最高裁に上告する方針を表明した。その場合、来年春にも判決が言い渡される。政府も県も「司法判断には従う」と明言している。しかし、最高裁で問題が決着するとは考えにくい状況だ。

 翁長知事は「あらゆる手段で辺野古移設を阻止する」と語る。こうした知事の姿勢を沖縄の民意が強く後押ししている。

 埋め立て着工後も、工法や設計の変更には知事の許可が必要となる。岩礁破砕やサンゴの移植などもそうだ。そうした手続きの一つ一つで沖縄県側の抵抗が予想される。すでに県側は敗訴確定をにらみ、新たな対抗策の検討を進めている。

 政府が対話よりも争う姿勢で臨む限り、対立が続くに違いない。沖縄の民意は繰り返し示されてきた。夏の参院選では現職閣僚が落選し、選挙区選出の自民党国会議員が1人もいない。司法判断を理由に埋め立てに突き進むのでは、問題の解決は遠い。結局、最高裁の判決にかかわらず、政府は辺野古への移設計画を見直し、沖縄県と対話を進めるしかないのではないか。

 参院選後、政府の沖縄への強硬な姿勢が目立つ。来年度予算の概算要求では、官房長官が基地問題と沖縄振興の予算額を絡める「リンク論」を容認した。1972年の本土復帰後、沖縄の自立に向けられた振興策の精神を否定するもので、筋違いというしかない。

 今回の判決で政府の高圧的な姿勢が強まれば、ますます県民の反発を招くだけである。


(9)山陽新聞社説-辺野古訴訟判決 対話による解決を目指せ-2016年9月17日



 司法判断は出ても、このままでは政府と沖縄県の対立は解けないばかりか、一層激化するのが目に見えている。政府は強硬姿勢を改め、対話による解決への道を探るべきであろう。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先となる名護市辺野古沿岸部の埋め立てをめぐり、埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事が、撤回を求める政府の是正指示に従わないのは違法だとした訴訟で、福岡高裁那覇支部は16日、国の主張を認め、県側敗訴の判決を言い渡した。

 判決は「普天間の危険を除去するには辺野古以外にない」とまで言い切り、県側に極めて厳しい判断を示した。

 今回の訴訟は移設をめぐる代執行訴訟が今年3月に和解後、国が提訴したものだ。その際の和解条項で国も県も「確定判決には従う」としている。県は最高裁に上告する方針で、早ければ年度内にも判決は確定しそうだ。

 だが沖縄県側は今後も徹底抗戦の構えを崩していない。今回の訴訟はあくまで埋め立て承認取り消し処分の扱いについてと解釈しており、移設阻止に向け他の知事権限を駆使する意向だという。埋め立て区域内から外へのサンゴの移植を不許可にすることなどを検討しているとされる。

 翁長知事は判決に対し「地方自治制度を軽視し、沖縄県民の気持ちを踏みにじる、国に偏った判断だ」と失望をあらわにした。米軍基地に対して強まる県民の反発の声を考えれば、当然の思いだろう。

 そもそも、3月の和解後の政府の動きこそ、沖縄県への誠実さを欠いていよう。

 和解条項は「判決確定まで円満解決に向けて協議する」ことを促した。ところが政府は「辺野古移設が唯一の解決策」との考えを繰り返すばかりで、形式的な再協議しかせず、是正指示や再提訴を推し進めた。

 6月には是正指示を不服として県が審査を申し出た総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」も、指示の有効性についての判断を示さず、「真摯(しんし)に協議し、納得できる結果を導く努力をすべきだ」との見解を示している。

 2014年の知事選や衆院選小選挙区、今夏の参院選では辺野古移設反対派が勝利した。本来なら和解を機に、時間をかけて沖縄の声に耳を傾けるべきだったのに、そうしなかった。政府が早期の工事再開を狙い、司法決着を急いだのは明らかだ。

 翁長県政となって、安倍政権は県の譲歩を引き出すために圧力路線に傾きつつある。17年度の概算要求は沖縄振興費が前年度より減額された。予算面での締め付けと見られても仕方あるまい。

 残念ながら、沖縄という地方に在日米軍の負担を極端なまでに押しつけているのが日本の安全保障の姿である。地元の同意なく、埋め立て工事を強行するような事態は絶対に避けなければならない。


(10)山陰中央新聞論説-辺野古訴訟/見えない解決の道筋-2016年9月17日



 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の返還を巡り国と沖縄県が争った訴訟で初の司法判断が下された。

 福岡高裁那覇支部は普天間の被害を除去するには移設先の名護市辺野古沖の埋め立てを行うしかないと認定。翁長雄志県知事が埋め立て承認の取り消し処分を撤回しないのは違法だとする国勝訴の判決を言い渡した。

 県は上告の方針だが、最高裁の判断が示された後も、県の対応によっては法廷闘争が繰り返される可能性は残る。普天間の危険性を取り除くため日米両国が返還で合意して20年。解決の道筋は一向に見えてこない。国と県による誠意ある協議にしか事態打開の策を見いだせない状況だ。

 翁長知事は「確定判決に従う」と述べており、最高裁で同様の結果が出れば、取り消し処分を撤回せざるを得ないが、同時に移設工事を阻止するためにあらゆる権限を行使する構えも見せている。

 その場合、工事を巡る知事の処分それぞれについて、国は今回と類似した訴訟を提起して翁長氏と対決せざるを得ない。

 判決を出した多見谷寿郎裁判長が先立つ訴訟の和解勧告で指摘した通り「延々と法廷闘争が続く」ことになる。双方が法的な正当性を訴えるのだろうが、国民にとっては不毛な対立だ。

 高裁判決は外交や防衛を巡って、自治体は地域の利益にかかわる範囲については判断できるが、基本的には国の所管事項であると明示した。

 翁長氏は2014年の知事選で、「辺野古移設反対」を公約に当選した経緯がある。翁長氏のこれまでの行動はすべてこの公約の延長上にあるが、抜本的な打開に向けた方策を見いだせていない。

 翁長氏に対して「辺野古が唯一の解決策」と迫る国側も、従来の態度を変える根拠を見いだせず、歩み寄りは困難な状況といえる。外交や防衛は国の所管事項だが、首長もまた住民の生命を守る責任を負っている立場であり、首長の判断に一定の理解が示せないか。

 一方で、翁長氏は国との協議に前向きな姿勢を示しており、稲田朋美防衛相も判決後、協議を継続する考えを述べた。

 ただ、これまで通りの硬直的な姿勢を取っている限り溝が埋まることはない。埋め立て計画をいったん凍結するほどの柔軟さが求められているのではないだろうか。

 米軍基地建設のため海を埋め立てるという行為は、沖縄以外ではありえないのではないかという疑問を沖縄ではよく聞く。憲法95条は、一つの自治体だけに適用される特別法は住民投票で賛成されない限り制定を許されないと規定している。差別かどうかは置くとしても、一部の憲法学者の中には、辺野古移設関連の事項は95条の対象になりうるという見解がある。

 国はことあるごとに、辺野古への移設が進まなければ普天間の危険性が固定化すると訴える。国が早急な危険除去を追求するのであれば、埋め立てとは切り離した形で、飛行場の運用見直しを米軍に求め続けるという選択肢があるのではないか。

 安倍晋三首相が一度は口にした「普天間の5年以内の運用停止」に真剣に取り組むべきだ。


(11)愛媛新聞社説-辺野古訴訟で判決 誠実な協議しか真の解決はない-2016年09月17日


 知事の対応は「違法」―。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る訴訟で、福岡高裁那覇支部は昨日、前知事による辺野古の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事の処分を違法と判断。県側敗訴の判決を言い渡した。
 在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄に、もうこれ以上基地は要らない。そんな切実な民意を一顧だにせず、「辺野古が唯一の解決策」と一つ覚えに繰り返して問答無用で基地建設を強行しようとする国の姿勢と、それを追認するように「普天間の危険を除去するには辺野古以外にない」と指摘した司法に、強い失望と憤りを禁じ得ない。
 審理自体、弁論2回のスピード結審。「全てが国の意向で決められるようになれば、地方自治は死ぬ」「県民の民意を無視し、過重な基地負担を固定化し続けようとしている」との翁長氏の訴え(第1回口頭弁論)に耳を貸す気配はなかった。
 判決では双方の隔たりは埋まらず、県が上告して司法決着の場は最高裁に移されよう。だがその間も、国は沖縄に多大な犠牲を強いてきた歴史を理解し、誠実に話し合いを重ねなければどこまでいっても平行線。真の解決には決して至らないことを肝に銘じねばなるまい。
 翁長氏が埋め立て承認を取り消したのは、昨年10月。国と県の泥沼の訴訟合戦の末、今年3月に移設工事を中断した上で協議を進める条件で、和解が成立した。国地方係争処理委員会も「真摯(しんし)な協議」を促したが、話し合いは実質ゼロ。国は7月、参院選が終わるや再提訴した。沖縄側は引き続き徹底抗戦の構えで、結局は振り出しに戻っただけというほかはない。
 まずは国が、頑迷な姿勢を改め、普天間と辺野古を切り離して打開策を考えるべきだ。返還の合意から20年放置されてきた「普天間の危険除去」は喫緊の課題だが、「県内から県内」では沖縄の負担軽減には全くならない。撤去や縮小、県外・国外移設など、あらゆる可能性を探るそぶりさえ見せず、自国民たる沖縄県民の意思と人権を無視して抑え込む。そんな暴挙は、およそ政治や民主主義、地方分権の名には値しない。
 国が県を訴え、強硬な本音を隠そうともせず「攻撃」する。そんな信じられない事態が、参院選を境に露骨に進む。米軍専用施設「北部訓練場」の工事強行。沖縄振興予算を基地返還と関連付ける「リンク」論の公言と減額。そして辺野古訴訟…。
 7月の全国知事会で、翁長氏は基地問題を「わがこととして真剣に考えてほしい」と呼び掛けたが、積極的に呼応する意見表明は埼玉や滋賀など少数にとどまった。しかし、全国の地方や国民にとって、決して人ごとではない。安全保障は誰のためにあるのか。日本が初めて、自ら沖縄に恒久的基地を建設することを黙認していいのか。判決を機に、一人一人が考えねばならない。わがこととして。


(12)高知新聞社説-【辺野古訴訟】対話なしには解決しない-2016年9月17日


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る国と県の再訴訟で、福岡高裁那覇支部が沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長知事が撤回しないのは違法だとする判決を言い渡した。
 米海兵隊の運用面や世界情勢などから「県外移転はできない」とする国の主張も支持した。市街地にある普天間飛行場の危険を除去するためには「辺野古以外にない」と結論付けており、国の全面勝訴ともいえる判断だ。
 普天間問題での司法判断は初めてとなる。県側は上告する方針だが、双方は今春の和解で再び訴訟になった場合は確定判決に従うことで合意している。普天間問題は今後、重大な局面を迎えることになる。
 双方は昨年、翁長知事が前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消したことを受け、互いを提訴する事態になった。
 和解では、双方が提訴を取り下げた後、国が埋め立て承認取り消しの是正を県に指示。県側は第三者機関の「国地方係争処理委員会」に審査を申し出て、主張が認められなければ提訴する想定だった。
 ところが、係争委は6月、判断を示さず双方の話し合いを促した。県は協議を望んでいたが、国は早々に福岡高裁那覇支部に提訴した。
 県側は訴訟で、国の辺野古移設の根拠は乏しく、沖縄の基地負担の固定化につながると主張した。埋め立ては自然環境に悪影響を与え、前知事の判断は合理性を欠くと反論したが、受け入れられなかった。
 判決自体は重く受け止めざるを得ない。上告されれば、最高裁判決も年度内にも出る見通しだ。
 しかし、今回の訴訟の流れには違和感を覚える。
 1カ月余りで判決が出るスピード審理となった。県側は9人の証人尋問を申請したが、翁長知事しか認められなかった。確定判決に従う前提からすれば拙速感は拭えない。
 政府は県側と対話を重ねるより、司法で早期決着を図りたいとの姿勢がありありだ。普天間の返還時期を「2022年度またはその後」とした2013年の日米合意を意識しているとみられる。
 県民の多くは政府の地元無視の姿勢に強く反発している。こうした状況で問題は前進するのだろうか。
 県側は最終的に敗訴しても、工事の進捗(しんちょく)に応じて今後も知事権限を行使するカードがある。泥沼の闘争が続く恐れがある。
 沖縄の米軍基地を巡っては1995年、当時の大田知事が基地の強制使用に必要な署名を拒否して国が提訴し、県側が敗訴する出来事もあった。国と地方が法廷闘争を繰り返す異常な事態である。強引な決着は日米関係や安全保障に寄与するとも思えない。
 対話なしには解決しない。今春の和解では、双方は判決確定まで「円満解決に向けた協議」を行うことになっている。政府は誠意を持って臨むべきだ。


(13)徳島新聞社説-辺野古訴訟 国勝訴 解決への道筋が見えない-2016年9月17日


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題を巡る国と沖縄県の対立に、初めて司法の判断が示された。

 福岡高裁那覇支部は、辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事が、撤回を求める政府の是正指示に従わないのは違法だとする国の主張を認め、県側敗訴の判決を言い渡した。

 翁長氏には打撃で、国には移設推進の追い風になろう。ただ、双方の対立は根深く、判決が問題解決のステップになるかは疑問である。

 訴訟で国は、普天間飛行場の危険を除くために、辺野古の埋め立て事業は必要性が極めて高く、前知事の承認は妥当だったと主張した。取り消し処分により「1996年の返還合意以来、日米間で積み上げてきた努力が無に帰し、外交、防衛上の著しい不利益が生じる」とも強調した。

 一方、県側は「埋め立てを承認した前知事の判断は、自然環境への悪影響を十分検証していない」とし、「政府は県民の民意を無視し、過重な基地負担を固定化し続けようとしている」と主張。取り消し処分は翁長氏の裁量の範囲内だと反論した。

 判決では「前知事の埋め立て承認に裁量権の逸脱はなかった」として、翁長氏の取り消しを違法と判断した。「普天間飛行場の被害を除去するには、埋め立てを行うしかなく、県全体としては基地負担が軽減される」と指摘した。

 県は上告し、本年度内にも最高裁の判決が出る。

 気掛かりなのは、確定判決後も、国と県の対立が解消する見通しが立たないことだ。

 国は「辺野古移設が唯一の解決策」との立場を堅持し、翁長氏は「あらゆる方策で移設を阻止する」と言う。

 国は県と3月に和解し、関連工事を中断した。改めて翁長氏に是正を指示したが、応じなかったため、国が再提訴した。

 和解条項には「判決に従い、互いに協力して誠実に対応する」との定めがある。

 問題は、国と県の和解条項を巡る認識のずれだ。国は最高裁で勝訴が確定すれば工事を再開する方針で、和解条項を盾に翁長氏に協力を迫る。

 これに対し、県側は、条項は「全ての知事権限を縛るものではない」との見解だ。翁長氏は、敗訴の場合に備えて工事の設計変更を認めないことに加え、新たな知事権限を洗い出している。

 国も国で、菅義偉官房長官は移設問題と沖縄振興策を関連付ける「リンク」論で、県をけん制した。2017年度の概算要求では、沖縄振興費を16年度より140億円少ない3210億円とした。

 国と県が、持てる権限を駆使して、あくまで主張を通そうとするのなら、何のための和解だったか分からない。第二幕、第三幕と、泥沼の対立劇の幕が開く恐れさえある。

 話し合い解決の道筋が見えない以上、最高裁の判決に注目しなければならない。


(14)佐賀新聞論説-辺野古訴訟 これで民意に沿うだろうか-2016年09月17日


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡る訴訟で、初めての司法判断が示された。埋め立て承認を取り消した沖縄県の翁長雄志知事の対応を「違法」と認めて撤回するよう促した。

 判決で福岡高裁那覇支部は、仲井真弘多(ひろかず)前知事の承認手続きに問題はない上、普天間基地の辺野古移転は「埋め立てにより、県全体では負担が軽減される」として、民意に沿うと評価した。

 基地の県外移設を求める沖縄と、辺野古移設を唯一の解決策とする国の主張は、これまでも真っ向からぶつかってきた。三つの訴訟が乱立する泥沼を見かねて福岡高裁が和解を促し、今年3月には、話し合いによる解決で双方がいったんは歩み寄ったはずだった。

 ところが、国は和解直後に翁長知事を訴え、事態は再び法廷闘争へと逆戻りしてしまった。

 この間、沖縄の民意ははっきりと示されてきた。先の参院選では、辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力の候補者が現職の沖縄担当相を破り、非改選の1議席を合わせた2議席と、衆院小選挙区の4議席すべてをオール沖縄が独占する形になった。

 日本にある米軍基地の74%が沖縄に集中し、米軍関係者による凶悪犯罪が後を絶たない。元海兵隊員による女性暴行殺害事件が起き、6月の県民大会には6万5千人(主催者発表)が参加して「これは米軍基地あるがゆえの事件であり、断じて許されるものではない」と決議した。

 基地ゆえの犯罪をなくすために、沖縄から基地をなくしてほしい-。それが沖縄の民意だろう。今回の判決で福岡高裁は「沖縄の民意を考慮しても、承認の要件を欠く点はない」としていたが、本当だろうか。

 今回の訴訟では、国と地方の在り方も考えさせられた。

 民意を代表する知事が国から訴えられ、しかも辺野古移転が遅れれば地域振興予算を減らすとまで圧力を受ける-。そうした強硬な国の姿勢には、地方自治を尊重しようという意思はなかった。

 国と地方の関係は、地方分権改革を経て、対等へと生まれ変わったはずではなかったか。翁長知事は「すべてが国の意向で決められれば、地方自治は死ぬ」と主張していたが、まったく同感だ。

 一方で、国が主張するように日米同盟は日本の安全保障の要であり、その重要性は増すばかりである。海洋進出を目指す中国の台頭や、核実験と弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の脅威など、さらに緊迫しているのは間違いない。

 だが、日米もまた、対等なパートナーのはずだ。腫れ物に触るように「対米追従」に終始するのではなく、沖縄の民意を踏まえて、辺野古移転に代わる策を米側と協議すべきではないか。

 米軍関係者による犯罪が一向になくならない背景として、米軍関係者を優遇する「日米地位協定」の問題が指摘されているが、女性暴行殺害事件が起きても、日本政府は運用の改善にとどめ、米側に改定を求めさえしなかった。

 東アジア情勢をにらんで抑止力を維持しつつ、沖縄の負担も軽減していく。国防か、民意かの二者択一ではなく、双方が成り立つ新たな道を探るべきではないか。(古賀史生)


(15)朝日新聞社説-辺野古判決 それでも対話しかない-2016年9月17日


 国の主張が全面的に認められた判決だ。だからといって、政府が沖縄の不信を解く努力を怠れば、問題解決には決してつながらない。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、国と県が争った裁判で、福岡高裁那覇支部は国側勝訴の判決を言い渡した。

 「普天間の被害を除去するには辺野古に基地を建設する以外にない」と言い切ったことに、大きな疑問を感じる。

 長い議論の歴史があり、国内外の専門家の間でも見解が分かれる、微妙で複雑な問題だ。だが、この訴訟で裁判所が直接話を聞いたのは翁長雄志知事ひとりだけ。それ以外の証人申請をことごとく退け、法廷を2回開いただけで打ち切った。

 そんな審理で、なぜここまで踏みこんだ判断ができるのか。しなければならないのか。結論の当否はともかく、裁判のあり方は議論を呼ぶだろう。

 国と県はこの春以降、話しあいの期間をもった。だが実質的な中身に入らないまま、参院選が終わるやいなや、国はこの裁判を起こした。

 判決は「互譲の精神」の大切さを説き、「国と県は本来、対等・協力の関係」と指摘しながらも、結果として国の強硬姿勢を支持したことになる。

 辺野古移設にNOという沖縄の民意は、たび重なる選挙結果で示されている。

 翁長知事は判決後の会見で、最高裁の確定判決が出れば従う姿勢を明確にする一方、「私自身は辺野古新基地を絶対に造らせないという思いをもってこれからも頑張りたい」と語った。

 国が埋め立て計画の変更申請を出した際など、様々な知事権限を使って抵抗する考えだ。

 一日も早く普天間の危険をなくしたい。その願いは政府も県も同じはずだ。対立ではなく、対話のなかで合意点を見いだす努力を重ねることこそ、問題解決の近道である。

 だが参院選後、政府による沖縄への一連の強腰の姿勢に、県民の不信は募っている。

 大量の機動隊員に守らせて東村高江の米軍ヘリパッド移設工事に着手し、工事車両を運ぶため自衛隊ヘリを投入した。来年度予算案の概算要求では、菅官房長官らが基地問題と沖縄振興のリンク論を持ち出した。

 政府が直視すべきは、県民の理解がなければ辺野古移設は困難だし、基地の安定的な運用は望み得ないという現実だ。

 県民の思いと真摯(しんし)に向き合う努力を欠いたまま、かたくなな姿勢を続けるようなら、打開の道はますます遠のく。


(16)毎日新聞社説-辺野古で国勝訴 解決には対話しかない-2016年9月17日 


 沖縄県・米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐる国と県の対立は、最終的に裁判で決着させるのは難しく、話し合いで解決するしかない。

 翁長雄志(おながたけし)知事が辺野古の埋め立て承認を取り消した処分を撤回しないのは違法だとして、国が知事を訴えた違法確認訴訟で、福岡高裁那覇支部は、国の主張を全面的に認める判決を言い渡した。

 判決は「普天間の被害を除去するには辺野古以外にない」と断定した。「県外移設はできない」という国の判断について「戦後70年の経過や現在の世界、地域情勢から合理性があり尊重すべきだ」とした。

 沖縄県は上告する方針だ。翁長氏は判決について「地方自治制度を軽視し、県民の気持ちを踏みにじる、あまりにも国に偏った判断」と批判し、あらゆる手段を使って辺野古移設を阻止する考えを示した。

 この先、最高裁がどういう判断をするかは見通せない。ただ、最高裁で国の勝訴が確定したとしても、知事の権限は大きく、翁長氏にはいくつかの対抗手段がある。

 例えば、埋め立て承認の「取り消し」ではなく、改めて承認を「撤回」する可能性が指摘されている。

 取り消しが、承認時の手続き上の瑕疵(かし)を理由にした処分なのに対し、撤回は承認後の状況の変化を理由にした処分だ。

 また、移設計画の変更が必要になった場合、国は改めて知事の承認を得る必要がある。知事が承認しなければ計画は進まなくなる。

 福岡高裁那覇支部の多見谷寿郎裁判長は、以前の国と県との代執行訴訟でも裁判長を務めた。その時の和解勧告は、国が勝っても「延々と法廷闘争が続く可能性がある」として、国と県が話し合って最善の解決策を見いだすのが本来あるべき姿だと指摘していた。

 今回の判決文でも、国と県の対立について「互譲の精神により解決策を合意することが対等・協力の関係という地方自治法の精神から望ましい」としている。そのうえで「その糸口すら見いだせない」と話し合い解決の可能性に否定的な見方を示し、判決を出したのだと説明した。

 自民党の二階俊博幹事長は先日、翁長氏と会談した際、戦後日本の安全保障を支えた沖縄の歴史に触れたという。翁長氏は「そういう言葉から始まることが首相官邸ではなかった。大きな壁をつくりながら話をするのか、耳を傾けて話をするのか全然違う」と、沖縄に冷淡な官邸の姿勢を批判した。

 政府は沖縄と形だけの協議はしても、真剣に議論しようという態度に欠けていたのではないか。対話による解決にもっと努力すべきだ。


(17)読売新聞社説-「辺野古」国勝訴 翁長知事の違法が認定された-2016年09月17日


 米軍普天間飛行場の移設問題の経緯や在日米軍駐留の重要性などを踏まえた、妥当な判決だ。

 普天間飛行場の辺野古移設を巡り、福岡高裁那覇支部は、沖縄県の翁長雄志知事が移設先の埋め立て承認の取り消し処分を撤回しないのは「違法」と認定した。

 判決は、辺野古移設について、普天間飛行場の騒音被害や危険性を除去する観点から、「必要性が極めて高い」と指摘した。

 さらに、環境悪化などの不利益や、基地の縮小を求める沖縄の民意を考慮しても、仲井真弘多前知事の埋め立て承認の取り消しは許されない、と判断した。政府の主張を全面的に認めたものだ。

 司法が移設の必要性や公共性を認め、後押しした意義は大きい。翁長氏は、判決内容を重く受け止めなければならない。

 今年3月の政府と県の和解は、総務省の第三者機関の判断を踏まえて県が提訴する、と定めた。だが、県が見送ったため、政府が7月に提訴した。判決は、県の提訴見送りにも疑問を呈した。

 評価できるのは、翁長氏支持派による在沖縄海兵隊の撤退要求を判決が明確に否定したことだ。

 判決は、海兵隊について「沖縄から移設されれば、機動力・即応力が失われる」と指摘した。沖縄県外への移転が困難とする政府の判断は「現在の世界、地域情勢から合理性がある」とした。

 辺野古移設は、普天間飛行場の移設が難航する中、日米両政府と地元関係者がぎりぎりの折衝を重ねた末、「唯一の解決策」として決定したものだ。こうした経緯に判決は理解を示したと言える。

 判決は、外交・国防は自治体が「本来所管する事項ではない」と指摘した。自治体が「国全体の安全という面から判断する権限、組織体制、立場を有しない」ことを理由に挙げている。

 1999年制定の地方分権一括法で、政府と自治体は「対等」と位置づけられたが、外交・国防は政府の専管事項であることを改めて明確にしたのは適切である。

 翁長氏は、判決について「沖縄県民の気持ちを踏みにじる、あまりにも国に偏った判断だ」と語った。近く上告するという。最高裁にも現実的な判断を求めたい。

 懸念されるのは、翁長氏が、仮に敗訴が確定しても、移設阻止の動きを続けると公言していることだ。和解では、「判決確定後は、趣旨に沿って互いに協力して誠実に対応する」ことで合意した。翁長氏は合意を尊重すべきだ。


by asyagi-df-2014 | 2016-09-20 05:59 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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