大分県弁護士会のテロ等組織犯罪準備罪の新設に反対する会長声明を考える。

 大分県弁護士連合会は2016年9月7日、「テロ等組織犯罪準備罪の新設に反対する」、とする会長声明を発表した。
このことについて考える。
大分県弁護士会は、その反対の根拠を次のように挙げる。


(1)過去三度廃案となった共謀罪法案は、長期4年以上の自由刑を定める犯罪について、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われる犯罪の遂行を共謀した場合、その遂行に合意した者を処罰するというものであった。近時、この共謀罪法案に「犯罪の実行の準備行為が行われたとき」などの要件を付加したテロ等組織犯罪準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案が提出される動きがある。
 近代刑法は、行為を犯罪として処罰し、思想や内心の意思を処罰しないということを基本原則としている。しかし、このテロ等組織犯罪準備罪は、以下のとおり、かつての共謀罪法案と同じく、行為ではなく、「合意」に着目して、処罰をしようとするものであり、近代刑法の基本原則に真っ向から抵触する。
(2)テロ等組織犯罪準備罪は、合意に加えて「犯罪の実行の準備行為が行われたとき」という要件を付加することから、かつての共謀罪法案に比べて、処罰の範囲を限定するものと評価する向きもある。しかし、ここにいう準備行為とは、極めて抽象的で、広範な解釈が可能な表現であるため、なんらの危険を備えていない行為を含みうる。したがって、この要件は、処罰の範囲をなんら限定するものではない。テロ等組織犯罪準備罪は、かつての共謀罪法案と同じく、行為そのものではなく、「合意」の危険性に着目して処罰をしよ
うとするものにほかならない。


 この上で、大分県弁護士会の考え方を次のようにまとめる。


(1)テロ等組織犯罪準備罪は、近代刑法の基本原則に反して、個人の思想や内心の意思を脅かすものであって、許される内容ではない。
(2)テロ等組織犯罪準備罪が新設されれば、捜査機関は、テロ等組織犯罪準備罪の捜査のため、個人の「合意」を捜査対象とすることが可能になる。テロ等組織犯罪準備罪が処罰の対象とする「合意」が個人の内心に強くかかわりをもつ以上、捜査機関による捜査は、個人の会話、電話、メール等の日常的なやりとりにまで広く及び、常に国民が捜査機関の監視の目にさらされることになりかねない。
 このような捜査機関の監視の目は、自由な内心の活動に源泉をもつあらゆる表現活動を萎縮させる。テロ等組織犯罪準備罪が新設されれば、国民の内心の自由はもちろん、表現、集会、結社の自由等の憲法上の基本的人権を侵害するおそれがある。ひいては、自由な表現活動を前提とする民主主義をも揺るがしかねない。
(3)わが国では、さまざまな犯罪に対して比較的法定刑の幅が広く規定されているため、長期4年以上の自由刑を定める犯罪は、600を超える。したがって、テロ等組織犯罪準備罪が新設されれば、600を超える犯罪が一挙に新設されることとなり、国民の内心の自由その他の基本的人権への影響は極めて広範なものとなる。
(4)政府は、テロ等組織犯罪準備罪の新設について、「国連越境組織犯罪防止条約」(以下「条約」という。)を批准するために必要であると説明している。
 しかし、わが国では重大な犯罪について、陰謀罪が8、共謀罪が15、予備罪が40、及び準備罪が9、既に存在しており、かつ、判例上、一定の要件のもとに、共謀者を共謀共同正犯として処罰することが可能である。その上、わが国では銃砲刀剣類所持等取締法により、組織的な犯罪集団による犯罪行為は、未遂以前に取り締まることが可能である。したがって、条約を批准するための条件は、わが国では既に達せられているのであって、新たにテロ等組織犯罪準備罪を設ける必要はない。


 大分県弁護士会は、テロ等組織犯罪準備罪の新設について反対の姿勢を次のように明確にする。


(1)テロ等組織犯罪準備罪を新設することは、近代刑法の基本原則に抵触し、基本的人権を侵害し民主主義を揺るがすおそれがある。
(2)テロ等組織犯罪準備罪の新設が、条約批准に不可欠なものでもない。


 政府が意図するテロ等組織犯罪準備罪を新設について、このように、反対の視点が明確にされた。
きちっと反対の立場を明確にし、運動に活かして行かなけれなならない。


 以下、大分県弁護士連合会の会長声明の引用。








テロ等組織犯罪準備罪の新設に反対する会長声明




 当会は、テロ等組織犯罪準備罪の新設に反対する。
 過去三度廃案となった共謀罪法案は、長期4年以上の自由刑を定める犯罪について、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われる犯罪の遂行を共謀した場合、その遂行に合意した者を処罰するというものであった。
 近時、この共謀罪法案に「犯罪の実行の準備行為が行われたとき」などの要件を付加したテロ等組織犯罪準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案が提出される動きがある。
 近代刑法は、行為を犯罪として処罰し、思想や内心の意思を処罰しないということを基本原則としている。しかし、このテロ等組織犯罪準備罪は、以下のとおり、かつての共謀罪法案と同じく、行為ではなく、「合意」に着目して、処罰をしようとするものであり、近代刑法の基本原則に真っ向から抵触する。
 この点、テロ等組織犯罪準備罪は、合意に加えて「犯罪の実行の準備行為が行われたとき」という要件を付加することから、かつての共謀罪法案に比べて、処罰の範囲を限定するものと評価する向きもある。しかし、ここにいう準備行為とは、極めて抽象的で、広範な解釈が可能な表現であるため、なんらの危険を備えていない行為を含みうる。したがって、この要件は、処罰の範囲をなんら限定するものではない。テロ等組織犯罪準備罪は、かつての共謀罪法案と同じく、行為そのものではなく、「合意」の危険性に着目して処罰をしようとするものにほかならない。
 以上により、テロ等組織犯罪準備罪は、近代刑法の基本原則に反して、個人の思想や内心の意思を脅かすものであって、許される内容ではない。
 そして、テロ等組織犯罪準備罪が新設されれば、捜査機関は、テロ等組織犯罪準備罪の捜査のため、個人の「合意」を捜査対象とすることが可能になる。テロ等組織犯罪準備罪が処罰の対象とする「合意」が個人の内心に強くかかわりをもつ以上、捜査機関による捜査は、個人の会話、電話、メール等の日常的なやりとりにまで広く及び、常に国民が捜査機関の監視の目にさらされることになりかねない。
 このような捜査機関の監視の目は、自由な内心の活動に源泉をもつあらゆる表現活動を萎縮させる。テロ等組織犯罪準備罪が新設されれば、国民の内心の自由はもちろん、表現、集会、結社の自由等の憲法上の基本的人権を侵害するおそれがある。ひいては、自由な表現活動を前提とする民主主義をも揺るがしかねない。
 わが国では、さまざまな犯罪に対して比較的法定刑の幅が広く規定されているため、長期4年以上の自由刑を定める犯罪は、600を超える。したがって、テロ等組織犯罪準備罪が新設されれば、600を超える犯罪が一挙に新設されることとなり、国民の内心の自由その他の基本的人権への影響は極めて広範なものとなる。
 政府は、テロ等組織犯罪準備罪の新設について、「国連越境組織犯罪防止条約」(以下「条約」という。)を批准するために必要であると説明している。
 しかし、わが国では重大な犯罪について、陰謀罪が8、共謀罪が15、予備罪が40、及び準備罪が9、既に存在しており、かつ、判例上、一定の要件のもとに、共謀者を共謀共同正犯として処罰することが可能である。その上、わが国では銃砲刀剣類所持等取締法により、組織的な犯罪集団による犯罪行為は、未遂以前に取り締まることが可能である。したがって、条約を批准するための条件は、わが国では既に達せられているのであって、新たにテロ等組織犯罪準備罪を設ける必要はない。
 以上のとおり、テロ等組織犯罪準備罪を新設することは、近代刑法の基本原則に抵触し、基本的人権を侵害し民主主義を揺るがすおそれがある上、条約批准に不可欠なものでもない。
 よって、当会は、テロ等組織犯罪準備罪の新設に反対であることを表明する。

2016年(平成28年)9月7日
                          大分県弁護士会
                              会長 須賀 陽二


by asyagi-df-2014 | 2016-09-19 07:14 | 共謀罪 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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