米軍工事への陸自ヘリの投入を考える。米国防総省高官の「『来年1月までに工事完了という目標を達成できるだろう。やはり安倍内閣は違う』と評価」、を許すのか。

 沖縄タイムスは2016年9月15日、平安名純代・米国特約記者の次のような記事を報告した。


(1)沖縄の米軍基地問題に関わる米国防総省高官は13日、本紙の取材に対し「陸自ヘリ投入は日本政府の判断であり、米軍や米政府側が責任を問われるべきのものではない」と前置きした上で、「来年1月までに工事完了という目標を達成できるだろう。やはり安倍内閣は違う」と評価する。
(2)国務省高官は「高江の現場で沖縄県民らが抗議している事実は承知している」としつつ、「沖縄県知事は日本政府は説明不足との批判はするが、工事そのものをやめろと言ったことはない」と指摘。「一時的な市民の反発はあるが、北部訓練場完成後の返還は沖縄にとってメリットが大きく、沖縄の内部からも期待の声が多くある」と強調。「ヘリパッド建設と(名護市辺野古の)代替施設建設計画は、若干の遅れは出るかもしれないが、おおむねタイムテーブル通りに進められていくのではないか」と楽観的な見方を示した。


 こうした日米の状況を踏まえた上で、この問題を考える。
 すでに、米軍工事への陸自ヘリ投入についての「違法」については、小口幸人弁護士の見解で、明確になっている。
 米軍工事に陸自ヘリ投入問題について、沖縄タイムス及び琉球新報は、2016年9月14日、それぞれ社説を掲載した。
 まずは、これを要約する。


Ⅰ.主張
(沖縄タイムス)
(1)高江問題は、米軍と自衛隊が一緒になって、沖縄住民に対峙(たいじ)するという、あってはならない構図を浮かび上がらせている。
(2)負担軽減の名の下に基地の機能強化が進んでいる。
(3)住民の生活道路である県道を、重機などをぶら下げた大型ヘリが横切るのも極めて危険である。
(琉球新報)
(1)陸上自衛隊の輸送ヘリが米軍北部訓練場のヘリパッド建設の機材搬入に投入された。自衛隊法の具体的な根拠を示さず、県の反対を押し切る暴挙であり、直ちに自衛隊ヘリの運用を中止すべきだ。
(2)米軍基地建設に自衛隊が直接関与する自衛隊法等の根拠は何か。防衛相、政府は明らかにする責任がある。
(3)防衛局の「環境影響評価(アセスメント)検討図書」はヘリの輸送回数を「1日5回程度」、合計「20回程度」と記するが、これを上回る輸送回数となる見通しだ。騒音被害、貴重生物への影響が懸念されるヘリパッド建設にヘリを投入し、さらに被害が拡大する。県民無視の手段を選ばぬ建設強行は容認できない。


Ⅱ.問題点
(沖縄タイムス)
(1)ヘリ投入について、稲田朋美防衛相は防衛省設置法4条19号に基づくものだと説明している。4条19号は、米軍基地の取得や提供、使用条件の変更、返還に関することなど、同省の所掌事務を記しているだけである。この条文のどこをどう読めばヘリ使用が可能になるのか、自衛隊がどんな権限で工事に関わるのか。設置法を都合よく拡大解釈したとしか思えない。
(2)ヘリ使用は自衛隊法からも疑問が多い。同法第6章が規定する「自衛隊の行動」は、防衛出動、治安出動、警護出動、災害派遣などである。県内に根強い反対のある米軍施設建設に自衛隊ヘリを使うのは、県民感情を逆なでするもので、配慮を欠く強引なやり方だ。
(3)稲田氏は「沖縄の負担軽減にとって有益で返還に伴う措置」と強調する。ヘリパッドの移設工事が北部訓練場約7500ヘクタールの過半返還の条件になっているのは確かだが、高江周辺ではヘリパッド建設によって確実に負担が増す。実際、高江の集落を取り囲むように計画された6カ所のヘリパッドのうち2カ所が完成し、オスプレイの飛行訓練が始まった。騒音被害などが懸念される。
(4)防衛省が工事を急ぐのは、残りの4カ所の工事を促す米軍との約束を履行するためだ。住民の懸念には向き合わないのに、米軍の要求に応えようと必死である。
(5)米海兵隊は「戦略展望2025」の中で、北部訓練場の部分返還について「使えない土地を返す代わりに、利用可能な訓練場を新たに開発」と米側の利点を強調している。
(琉球新報)
(1)県内では2007年にも、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の事前調査に海上自衛隊の掃海母艦が派遣された。その際、政府は法的根拠を示さないまま、「国家行政組織法」に基づく「官庁間協力」の曖昧な説明で押し切った。当時、久間章生防衛相は福島瑞穂社民党党首に対し、自衛隊の協力の事例として「さっぽろ雪まつりや遺骨収集」を挙げた。雪かきや遺骨収集などの民生協力ならともかく、米軍基地建設への協力も可能とするのは、違法な拡大解釈ではないか。
(2)武力を備える実力組織の自衛隊の活動は、自衛隊法など明確な根拠法令に基づいている。国家防衛の主たる任務ほかの活動については「民生協力」など限定列挙により、厳格に規定している。
(3)07年の海自掃海母艦派遣では、辺野古海域での新基地建設に向けた環境現況調査(事前調査)に海自潜水士が投入された。今回の自衛隊ヘリの投入は07年の事前調査とは異なり、米軍基地建設に直接関与するものだ。稲田朋美防衛相は「必要最小限に限る」としているが、程度問題では済まされない。防衛相は防衛省設置法4条19号を根拠に挙げるが、同省の米軍施設の提供を定める条項であり、自衛隊動員の文言はない。


 さらに、琉球新報は2016年9月15日に、「人権団体『ヒューマンライツ・ナウ』の事務局長で弁護士の伊藤和子さんは『先住民の土地を軍隊のために利用してはいけないと、国連先住民権利宣言で定められている。権力の行使や人権侵害がこの場所で行われている』と指摘した。」、とその指摘を伝えている。
 このことについては、国連の人種差別撤廃委員会などは、2008年10月以降、日本政府に沖縄の人々を先住民族と認めるよう、複数回にわたって勧告している。これまでに国連の人種差別撤廃委員会などは、沖縄の人々を先住民族として認め、土地や天然資源に対する権利を保障するよう日本政府に法改正を求めている。
 実は、2014年8月には「沖縄の人々は先住民族」として、その権利を保護するよう勧告する「最終見解」を採択しているのである。
 現在の状況が、「国連先住民権利宣言」(2007年9月13日)の下記条文に違反していることは、明白である。


第3 条 【自己決定権】
先住民族は、自己決定の権利を有する。この権利に基づき、先住民族は、自らの政治的地位を自由に決定し、ならびにその経済的、社会的および文化的発展を自由に追求する。
第30 条 【軍事活動の禁止】
1. 関連する公共の利益によって正当化されるか、もしくは当該の先住民族による自由な合意または要請のある場合を除いて、先住民族の土地または領域で軍事活動は行われない。
2. 国家は、彼/女らの土地や領域を軍事活動で使用する前に、適切な手続き、特にその代表機関を通じて、当該民族と効果的な協議を行う。


 さて、小口幸人弁護士の米軍工事への陸自ヘリ投入についての法的見解を押さえる。


(1)自衛隊法という法律が、ポジティブリスト、つまり自衛隊は法律に定められていること以外、することはできないことになっている。自衛隊法第6章(76条から86条)は、タイトルが「自衛隊の行動」となっているように、自衛隊ができることを定めたポジティブリストです。しかし、自衛隊を米軍の施設工事のために出動させることができる、とは定められていません。稲田防衛大臣の命令は、法律に基づいていないことを自衛隊にさせるものであり違法です。
(2)防衛省は防衛省設置法4条19号に関して、そもそも防衛省設置法というのは、防衛省の設置、任務及び所掌事務などを定めた「組織法」と呼ばれる法律であること。
 このことから、次のことを指摘します。
 これは法解釈の大原則ですが、組織法は、個人の権利又は自由を制限する直接の根拠にはならず、個人の権利又は自由を制限するには、他に根拠法が必要だと解されています。よって、この時点でこの解釈はナンセンスです。よりにもよって防衛省設置法の中の、所掌事務、つまりお仕事リストを定めた条文を持ってくる解釈は、全く不合理です。この条文は、防衛省のお仕事の一つが、米軍基地の施設や区域の決定や返還に関することですよ、と書いてあるだけであって、その仕事の実現のために何をやってもいいという定めではありません。仮に、設置法の所掌事務に書いてあることは、その達成のために何をやってもいいと解釈するなら、恐らく日本の法律のほとんどは存在意味がなくなります。なぜなら、行政の全ては、どこかの省庁の所掌事務になっているからです。こんなとんでも解釈は許されません。
(3)自衛隊100条には、「自衛隊の訓練の目的に適合する場合」であることが条件とされています。稲田防衛大臣のコメントによると、決して訓練目的に適合するからやってみた、ということではないようです。この条文があることの反対解釈として、「自衛隊の訓練の目的に適合する場合」以外は許されないと解することができます。確かに、今回の高江への自衛隊ヘリの投入は、違法です。


 また、小口弁護士は、次のように指摘しています。


「今回CH−47が行っている行為は、沖縄防衛局が事業者であるヘリパッド移設工事の一部です。その下請けをしている、と言っても過言ではないでしょう。そして、ヘリパッド移設工事は、高江の住民の権利又は自由を十二分に制限する恐れの多い行為です。工事自体も騒音等をともなうものですし、完成することでオスプレイの飛来が増え、騒音により健康被害が生じることになります。よって、CH−47の出動も、個人の権利又は自由を制限する恐れのある行為ですので許されません。」


 このような整理をした上で、今回の米軍工事への陸自ヘリ投入については、次のように考える。


Ⅰ.法的問題がある。
2.環境問題に深刻な問題を与える。
3.地域の「自己決定権」を否定し、いたずらに「対立の構図」を持ち込む。
4.第61期国際連合総会において採択された国際連合総会決議に違反している。


 よって、日米両政府は、米軍再編に伴う、辺野古の新基地建設の断念及び高江を始めとする関連工事を直ちに中止しなければならない。


 以下、沖縄タイムス、琉球新報の引用。








(1)沖縄タイムス社説-[米軍工事に陸自ヘリ]嘆かわしい従米一辺倒-2016年9月14日 07:00


 米軍北部訓練場のヘリパッド建設に伴う資材搬入に13日、陸上自衛隊の大型輸送ヘリが投入された。

 東村高江周辺のヘリパッド建設工事をめぐって、工期の遅れを取り戻したい防衛省は9日から、民間ヘリを使って資材を搬入している。

 今回、自衛隊ヘリの使用に踏み切ったのは、民間ヘリでは運べない大型重機を運搬するためである。なりふり構わずといった対応だ。

 国際平和協力活動やゲリラ攻撃に対応する陸自の精鋭部隊「中央即応集団」のヘリが運んだのは、重機やトラックである。県道70号を横切る形で計6回運搬した。

 ヘリ投入について、稲田朋美防衛相は防衛省設置法4条19号に基づくものだと説明している。

 4条19号は、米軍基地の取得や提供、使用条件の変更、返還に関することなど、同省の所掌事務を記しているだけである。

 この条文のどこをどう読めばヘリ使用が可能になるのか、自衛隊がどんな権限で工事に関わるのか。設置法を都合よく拡大解釈したとしか思えない。

 ヘリ使用は自衛隊法からも疑問が多い。同法第6章が規定する「自衛隊の行動」は、防衛出動、治安出動、警護出動、災害派遣などである。

 県内に根強い反対のある米軍施設建設に自衛隊ヘリを使うのは、県民感情を逆なでするもので、配慮を欠く強引なやり方だ。

 住民の生活道路である県道を、重機などをぶら下げた大型ヘリが横切るのも極めて危険である。
■    ■
 稲田氏は「沖縄の負担軽減にとって有益で返還に伴う措置」と強調する。

 ヘリパッドの移設工事が北部訓練場約7500ヘクタールの過半返還の条件になっているのは確かだが、高江周辺ではヘリパッド建設によって確実に負担が増す。 

 実際、高江の集落を取り囲むように計画された6カ所のヘリパッドのうち2カ所が完成し、オスプレイの飛行訓練が始まった。騒音被害などが懸念される。

 防衛省が工事を急ぐのは、残りの4カ所の工事を促す米軍との約束を履行するためだ。住民の懸念には向き合わないのに、米軍の要求に応えようと必死である。

 高江問題は、米軍と自衛隊が一緒になって、沖縄住民に対峙(たいじ)するという、あってはならない構図を浮かび上がらせている。
■    ■
 ヘリパッド建設は、参院選が終わるやいなや、選挙結果を顧みず再開された。

 司法手続きをへないで市民のテントを撤去したり、周辺道路で検問を実施したり、力ずくの警備も目立つ。

 全国から約500人の機動隊を動員した上、民間ヘリを使い、ついには自衛隊ヘリまで投入。

 米海兵隊は「戦略展望2025」の中で、北部訓練場の部分返還について「使えない土地を返す代わりに、利用可能な訓練場を新たに開発」と米側の利点を強調している。

 負担軽減の名の下に基地の機能強化が進んでいる。


(2)琉球新報社説-<社説>自衛隊ヘリ投入 法的根拠が曖昧な暴挙だ-2016年9月14日 06:02


 陸上自衛隊の輸送ヘリが米軍北部訓練場のヘリパッド建設の機材搬入に投入された。自衛隊法の具体的な根拠を示さず、県の反対を押し切る暴挙であり、直ちに自衛隊ヘリの運用を中止すべきだ。


 翁長雄志知事は民間ヘリが用いられた時点で、「事前に十分な説明もなく一方的に工事を進める政府の姿勢は到底容認できない」と強い抗議を表明していた。
 県は自衛隊ヘリの投入を沖縄防衛局に問い合わせていたが、実施時期や法的根拠についての説明もないまま自衛隊ヘリ投入を強行したのである。
 県内では2007年にも、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の事前調査に海上自衛隊の掃海母艦が派遣された。その際、政府は法的根拠を示さないまま、「国家行政組織法」に基づく「官庁間協力」の曖昧な説明で押し切った。
 当時、久間章生防衛相は福島瑞穂社民党党首に対し、自衛隊の協力の事例として「さっぽろ雪まつりや遺骨収集」を挙げた。
 雪かきや遺骨収集などの民生協力ならともかく、米軍基地建設への協力も可能とするのは、違法な拡大解釈ではないか。
 武力を備える実力組織の自衛隊の活動は、自衛隊法など明確な根拠法令に基づいている。国家防衛の主たる任務ほかの活動については「民生協力」など限定列挙により、厳格に規定している。
 07年の海自掃海母艦派遣では、辺野古海域での新基地建設に向けた環境現況調査(事前調査)に海自潜水士が投入された。
 今回の自衛隊ヘリの投入は07年の事前調査とは異なり、米軍基地建設に直接関与するものだ。稲田朋美防衛相は「必要最小限に限る」としているが、程度問題では済まされない。防衛相は防衛省設置法4条19号を根拠に挙げるが、同省の米軍施設の提供を定める条項であり、自衛隊動員の文言はない。
 米軍基地建設に自衛隊が直接関与する自衛隊法等の根拠は何か。防衛相、政府は明らかにする責任がある。
 防衛局の「環境影響評価(アセスメント)検討図書」はヘリの輸送回数を「1日5回程度」、合計「20回程度」と記するが、これを上回る輸送回数となる見通しだ。
 騒音被害、貴重生物への影響が懸念されるヘリパッド建設にヘリを投入し、さらに被害が拡大する。県民無視の手段を選ばぬ建設強行は容認できない。


by asyagi-df-2014 | 2016-09-18 05:51 | 沖縄から | Comments(0)

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