「組織的犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」(「テロ等組織犯罪準備罪」)という名の「共謀罪」法案の提出。

 朝日新聞は、216年8月26日に、「共謀罪要件変え新設案 『テロ等準備罪』で提案検討」、との記事。8月29日に、「『共謀罪』法案 政権の手法が問われる」、と社説を掲載した。
 今、手もとにある大分県弁護士会・日本弁護士連合会共催の「共謀罪シンポジウム」のチラシには、「共謀罪」について、次のように説明している。


共謀罪は犯罪計画に合意することを罰する罪です。
政府は必要性を訴え続ける一方で、捜査機関が好き勝手に利用したり、国民の日常生活が監視されたりする恐れがあるとの批判が根強くあります。


 この「組織的犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」(「テロ等組織犯罪準備罪」)という名の「共謀罪」法案を考える。
 朝日新聞はこの法案提出の経過を次のように伝える。


(1)安倍政権は、小泉政権が過去3回にわたって国会に提出し、廃案となった「共謀罪」について、適用の対象を絞り、構成要件を加えるなどした新たな法改正案をまとめた。2020年の東京五輪やテロ対策を前面に出す形で、罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変える。9月に召集される臨時国会での提出を検討している。
(2)共謀罪は、重大な犯罪を実際に実行に移す前に相談しただけで処罰するもので、小泉政権が03年、04年、05年の計3回、関連法案を国会に提出。捜査当局の拡大解釈で「市民団体や労働組合も処罰対象になる」といった野党や世論からの批判を浴び、いずれも廃案になった。
(3)今回は、4年後に東京五輪・パラリンピックを控える中、世界で相次ぐテロ対策の一環として位置づけた。参院選で自民党が大勝した政治状況も踏まえ、提出を検討する。
(4)今回の政府案では、組織的犯罪処罰法を改正し、「組織的犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」(テロ等組織犯罪準備罪)を新設する。
(5)今回の政府案では、組織的犯罪処罰法を改正し、「組織的犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」(テロ等組織犯罪準備罪)を新設する。


 また、過去の「共謀罪」法案との比較を次のように説明する。


(1)過去の共謀罪法案では、適用対象を単に「団体」としていたが、今回は「組織的犯罪集団」に限定。「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」と定義した。テロ組織や暴力団、人身取引組織、振り込め詐欺集団などを想定している。
(2)過去の法案では、犯罪を行うことで合意する「共謀」だけで罪に問われていた。今回は共謀という言葉を使わずに「2人以上で計画」と置き換えたうえで、計画した誰かが、「犯罪の実行のための資金または物品の取得その他の準備行為」を行うことを構成要件に加えた。武器調達のためにパンフレットを集めるなどの行為を想定している。


 今回の法案の問題点を次のように指摘している。


(1)共謀罪に対しては、一般の会社の同僚らが居酒屋で「上司を殺してやろう」と意気投合しただけで処罰されるといった批判があった。今回は犯罪の構成要件を厳しくすることで、こうした批判を避ける狙いがある。ただ、「組織的犯罪集団」や「準備行為」などの言葉は定義があいまいで、捜査当局によって解釈が拡大される可能性は残る。
(2)対象になる罪は法定刑が4年以上の懲役・禁錮の罪とし、その数は600を超えるとみられる。道路交通法や公職選挙法にも適用されることになり、対象範囲が広いことも議論を呼びそうだ。


 「『テロ等組織犯罪準備罪』の罰則は、死刑や無期、10年を超える罪に適用する場合は5年以下、4年以上10年以下の罪には2年以下の懲役・禁錮とした。」、と報じた。


 この上で、朝日新聞はその社説で、「またぞろ、というべきか。」、と批判した。
あらためて、その社説の主旨を押さえる。


(1)安倍晋三政権そのものの体質への批判


①「ついこの間おこなわれた参院選ではそのような方針はおくびにも出さず、選挙が終わるやいなや、市民の自由や権利を脅かしかねない政策を推し進める。特定秘密保護法や安全保障法の制定でもみせた、この政権のふるまいである。」
②「いや、自民党は治安・テロ対策を選挙公約に掲げたうえで多くの支持を得ている。政府はそう反論するかもしれない。しかしそこに書かれていたのは『国内の組織・法制のあり方について研究・検討を不断に進め、【世界一安全な国、日本】を実現します』という、著しく具体性を欠く一文だ。連立与党を組む公明党は、公約でこの問題にいっさい触れていない。」
③「そんな状況で本当に法案を提出するつもりなのか。内容以前に、政権の体質そのものがあらためて問われよう。」


(2)法案への批判


①「小泉内閣が提出した法案には、▽共謀罪が適用される組織の範囲があいまいで、ふつうの労働団体や市民団体、企業の活動が制約されるおそれがある▽共謀だけで罪となる行為が600以上に及び、処罰の網が広くかかりすぎる▽犯罪が行われてはじめて刑罰を科すという刑法の大原則がゆらぐ――といった批判が寄せられた。」
②「今回の案では、当時の国会審議や与野党協議の到達点を踏まえ、組織の定義などについて相応の修正がなされるようだ。だが対象罪種は前のままで、引き続き600を超すという。数を絞り込む方向で積み重ねてきた、これまでの議論はどうなったのか。この間も捜査のいきすぎや不祥事は後を絶たず、そんな当局に新たな力を付与することに疑問をもつ人は少なくない。さらなる見直しが必要だ。」
③「東京五輪をひかえ、テロ対策や国際協力の看板をかければ、多少の懸念があっても大方の理解は得られると、政権が踏んでいるのは容易に想像できる。」


 朝日新聞は、この法案に対して、「もちろんテロの抑止は社会の願いだ。だからこそ権力をもつ側はよくよく自制し、人権の擁護と治安というふたつの要請の均衡に意を砕かねばならない。」、とその批判を結ぶ。


 残念ながら、「東京五輪をひかえ、テロ対策や国際協力の看板をかければ、多少の懸念があっても大方の理解は得られると、政権が踏んでいるのは容易に想像できる。」、との指摘は、安倍晋三政権のやり口から、容易に理解できる。
 この後に何が用意されているのかも。


 以下、朝日新聞の引用。








朝日新聞社説-「共謀罪」法案 政権の手法が問われる-2016年8月29日


 またぞろ、というべきか。

 安倍内閣が、人々の強い反対でこれまでに3度廃案になった「共謀罪」法案を、「テロ等組織犯罪準備罪」法案に仕立てなおして、国会に提出することを検討しているという。

 ついこの間おこなわれた参院選ではそのような方針はおくびにも出さず、選挙が終わるやいなや、市民の自由や権利を脅かしかねない政策を推し進める。特定秘密保護法や安全保障法の制定でもみせた、この政権のふるまいである。

 いや、自民党は治安・テロ対策を選挙公約に掲げたうえで多くの支持を得ている。政府はそう反論するかもしれない。

 しかしそこに書かれていたのは「国内の組織・法制のあり方について研究・検討を不断に進め、『世界一安全な国、日本』を実現します」という、著しく具体性を欠く一文だ。連立与党を組む公明党は、公約でこの問題にいっさい触れていない。

 そんな状況で本当に法案を提出するつもりなのか。内容以前に、政権の体質そのものがあらためて問われよう。

 実際に行動に移さなくても、何人かで犯罪をおこす合意をするだけで処罰する。それが共謀罪だ。マフィアなどの国際犯罪組織を取り締まる条約を結ぶために、日本にも創設することがかねて議論されてきた。

 しかし小泉内閣が提出した法案には、▽共謀罪が適用される組織の範囲があいまいで、ふつうの労働団体や市民団体、企業の活動が制約されるおそれがある▽共謀だけで罪となる行為が600以上に及び、処罰の網が広くかかりすぎる▽犯罪が行われてはじめて刑罰を科すという刑法の大原則がゆらぐ――といった批判が寄せられた。

 今回の案では、当時の国会審議や与野党協議の到達点を踏まえ、組織の定義などについて相応の修正がなされるようだ。

 だが対象罪種は前のままで、引き続き600を超すという。数を絞り込む方向で積み重ねてきた、これまでの議論はどうなったのか。この間も捜査のいきすぎや不祥事は後を絶たず、そんな当局に新たな力を付与することに疑問をもつ人は少なくない。さらなる見直しが必要だ。

 東京五輪をひかえ、テロ対策や国際協力の看板をかければ、多少の懸念があっても大方の理解は得られると、政権が踏んでいるのは容易に想像できる。

 もちろんテロの抑止は社会の願いだ。だからこそ権力をもつ側はよくよく自制し、人権の擁護と治安というふたつの要請の均衡に意を砕かねばならない。



朝日新聞-共謀罪、要件変え新設案 「テロ等準備罪」で提案検討-2016年8月26日05時00分


 安倍政権は、小泉政権が過去3回にわたって国会に提出し、廃案となった「共謀罪」について、適用の対象を絞り、構成要件を加えるなどした新たな法改正案をまとめた。2020年の東京五輪やテロ対策を前面に出す形で、罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変える。9月に召集される臨時国会での提出を検討している。

 共謀罪は、重大な犯罪を実際に実行に移す前に相談しただけで処罰するもので、小泉政権が03年、04年、05年の計3回、関連法案を国会に提出。捜査当局の拡大解釈で「市民団体や労働組合も処罰対象になる」といった野党や世論からの批判を浴び、いずれも廃案になった。

 今回は、4年後に東京五輪・パラリンピックを控える中、世界で相次ぐテロ対策の一環として位置づけた。参院選で自民党が大勝した政治状況も踏まえ、提出を検討する。

 今回の政府案では、組織的犯罪処罰法を改正し、「組織的犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」(テロ等組織犯罪準備罪)を新設する。

 過去の共謀罪法案では、適用対象を単に「団体」としていたが、今回は「組織的犯罪集団」に限定。「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」と定義した。テロ組織や暴力団、人身取引組織、振り込め詐欺集団などを想定している。

 過去の法案では、犯罪を行うことで合意する「共謀」だけで罪に問われていた。今回は共謀という言葉を使わずに「2人以上で計画」と置き換えたうえで、計画した誰かが、「犯罪の実行のための資金または物品の取得その他の準備行為」を行うことを構成要件に加えた。武器調達のためにパンフレットを集めるなどの行為を想定している。

 共謀罪に対しては、一般の会社の同僚らが居酒屋で「上司を殺してやろう」と意気投合しただけで処罰されるといった批判があった。今回は犯罪の構成要件を厳しくすることで、こうした批判を避ける狙いがある。ただ、「組織的犯罪集団」や「準備行為」などの言葉は定義があいまいで、捜査当局によって解釈が拡大される可能性は残る。

 また、対象になる罪は法定刑が4年以上の懲役・禁錮の罪とし、その数は600を超えるとみられる。道路交通法や公職選挙法にも適用されることになり、対象範囲が広いことも議論を呼びそうだ。

 「テロ等組織犯罪準備罪」の罰則は、死刑や無期、10年を超える罪に適用する場合は5年以下、4年以上10年以下の罪には2年以下の懲役・禁錮とした。(久木良太)


by asyagi-df-2014 | 2016-08-30 05:40 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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