沖縄-「国地方係争処理委員会」の審議結果を考える。(2)

 辺野古新基地建設に関しての沖縄県と国との紛争における審査申立事件について、「国地方係争処理委員会」(以下、「係争委」とする)は、2016年6月17日に、結論を出した。
 このことについては、2016年6月18日付けの沖縄タイムス及び琉球新報の社説を紹介した。
 今回は、澤藤統一郎さん(以下、澤藤とする)のブログを基に考える。


澤藤は、「これは、国地方係争処理委員会の『味な大岡裁き』ではないか。」、と今回の審議結果を評する。
澤藤は、今回の結論を法的に説明する。


「本件指示が違法でも不当でもない場合には、その旨を通知し公表し、 本件指示が違法あるいは不当な場合は、必要な勧告をする、というのだ。違法・不当について判断しないという選択肢は、明記されていない。にもかかわらず、委員会は、敢えて「本件指示の違法・不当について判断しない」とする結論を出した。」


 このことをどのように解釈するかということだ。
まず、「係争委」委員長の次のインタビューを紹介する。


「小早川光郎委員長は、記者会見で『国地方係争処理委員会の制度は、国の関与の適否を委員が判断して当事者に伝えることで、国と地方の対立を適正に解決するという趣旨の制度だ。今回のケースでは、そうした対応をしても、決して両当事者にとってプラスになるわけではない。法律の規定に明文化されていない答えを出すときに、それしか有益な対応がありえない場合は、非常に例外的な措置だが、法解釈上はあるのだろうと考えて、きょうのような決定をした』と述べました。」


 この上で、澤藤は、このことの意味を、次のように説明する。


「本件指示が違法でも不当でもない場合には、その旨を通知し公表し、 本件指示が違法あるいは不当な場合は、必要な勧告をする、というのだ。違法・不当について判断しないという選択肢は、明記されていない。にもかかわらず、委員会は、敢えて『本件指示の違法・不当について判断しない』とする結論を出した。」


 だから、澤藤は、「係争委はなかなか味なことをした、というのが私の感想。大岡裁きの味、である。」、とする。
 澤藤は、こうも続ける。


「第三者委員会とは言いながらも、国に不利な結論は出しがたい。さりとて、法理や世論を無視することもできない。違法・不当についての判断を控えて、真摯な協議を尽くせというのは、ぎりぎり可能な良心的対応というべきではないか。これが情に適った大人の智恵としての判断なのかも知れない。」


 結局、今回の「係争委」の結論について、「係争委は、消極的に本件指示の違法性を判断しないというだけでなく、より積極的に『普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて双方が真摯に協議を尽くすべき』だとしているのだから、県の対応に理があるというべきだろう。」、と澤藤は解釈する。


 澤藤は、今後の展開について、次のように指摘する。
私たちも、この指摘をよく噛み締めて行きたい。


「協議に期限は付されていない。国と県との真摯な協議が続く限り、埋立工事の再開はできない。話し合いの落ち着きどころは、世論の動向次第だ。明日(6月19日)は、『オール沖縄会議』が主催する元米海兵隊員の女性暴行殺害事件に抗議する『県民大集会』が開催される。そして、間もなく参院選となる。その結果が、大きく協議の成りゆきに影響することになるだろう。意外に、この大岡裁きが、沖縄にとって有益にはたらくことになるのではなかろうか。」


 以下、澤藤統一郎の憲法日記の引用。







これは、国地方係争処理委員会の「味な大岡裁き」ではないか。-2016年6月18日



辺野古新基地建設に関しての沖縄県と国との紛争。3月4日における訴訟上の「(暫定)和解」に続く法的手続として注目されていた、「国地方係争処理委員会」の審査申立事件において、昨日(6月17日)予想外の結論が出た。

「アメリカ軍普天間基地の移設計画を巡って、国と地方の争いを調停する『国地方係争処理委員会』は、名護市辺野古沖の埋め立て承認の取り消しを撤回するよう、国が出した是正の指示について、違法かどうか判断しないとする結論をまとめました。」(NHK)というのだ。

辺野古・大浦湾の埋立承認問題で、沖縄県と国とが鋭く対立する以前には、一般には、ほとんど知られた存在ではなかった国地方係争処理委員会(委員長・小早川光郎成蹊大学法科大学院教授、外4名)。地方自治法250条の7第1項「総務省に、国地方係争処理委員会を置く」にもとづいて設けられている。その権限は、同条2項で「委員会は、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与のうち国の行政機関が行うものに関する審査の申出につき、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。」とある。

具体的に、委員会は何をどのように処理することができるか。
法250条の13は、(自治体から国に対して、国の関与に関する審査の申出)ができるとしている。
「250条の13第1項 普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する国の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当たるものに不服があるときは、委員会に対し、当該国の関与を行つた国の行政庁を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる。」

沖縄県知事(翁長雄志)は、この規定に基づいて、国の行政庁(国土交通大臣)を相手方とする審査申し出をして受理された。3月14日のことである。

沖縄県からの「審査申出の趣旨」は、以下のとおりである。
「相手方国土交通大臣が沖縄県に対して平成28年3月16日付国水政第102号「公有水面埋立法に基づく埋立承認の取消処分の取消しについて(指示)」をもって行った地方自治法第245条の7第1項に基づく是正の指示について、相手方国土交通大臣はこれを取り消すべきである
との勧告を求める。」

経過を把握していなければ、一読しての理解は困難ではなかろうか。理解のために言葉を補えば、こんなところだろうか。

「平成28年3月16日付国水政第102号」という日付と文書のナンバリングで特定された、「国土交通大臣が沖縄県に対してした是正指示」を取り消すように、委員会から大臣に勧告してもらいたい、というのが骨格である。

その〈国から県への是正指示〉の内容とは、『公有水面埋立法に基づく(仲井眞前知事がした国への)埋立承認について、(翁長現知事がした埋立承認の)取消処分について、これを取消すようにという(国土交通大臣の県に対する)指示』である。この是正の指示について、相手方国土交通大臣はこれを取り消すべきであるという、係争委の勧告を求めている。

なお、申立年月日よりも、是正指示の日付があとになっているのは、当初は3月7日付で出された是正指示だったが、理由の付記がないと不備を指摘されて国土交通大臣が指示を出し直したからである。

この件での相手方国土交通大臣の答弁書における、申出の趣旨に対する答弁は以下のとおりとなっている。

「相手方(国土交通大臣)の審査申出人(沖縄県知事)に対する平成28年3月16日付けの是正の指示(以下「本件指示」という。)が違法でないとの判断を求める。」

本件指示をめぐって、沖縄県側は「違法な指示として、国はこれを取り消すべきである」との判断を、国側は「違法でない」との判断を、各々が求めた。そして、審理期間の90日が経過して審査を終えた。

審査の結果としての判断の示し方は、法250条の14第1項に次のように定められている。
「委員会は、自治事務に関する国の関与について前条第一項の規定による審査の申出があつた場合においては、審査を行い、相手方である国の行政庁の行つた国の関与が違法でなく、かつ、普通地方公共団体の自主性及び自立性を尊重する観点から不当でないと認めるときは、理由を付してその旨を当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び当該国の行政庁に通知するとともに、これを公表し、当該国の行政庁の行つた国の関与が違法又は普通地方公共団体の自主性及び自立性を尊重する観点から不当であると認めるときは、当該国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を当該普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない。」

つまり、本件指示が違法でも不当でもない場合には、その旨を通知し公表し、 本件指示が違法あるいは不当な場合は、必要な勧告をする、というのだ。違法・不当について判断しないという選択肢は、明記されていない。にもかかわらず、委員会は、敢えて「本件指示の違法・不当について判断しない」とする結論を出した。この点について、NHKはこう報じている。

「委員会はこの申し出について協議した結果、『国と沖縄県との間で共通の基盤づくりが不十分な状態のもと、委員会として国の是正指示が違法かどうか判断することは、国と地方とのあるべき関係からみて望ましくない』などとして、違法かどうか判断しないとする結論をまとめました。
 そのうえで委員会として『国と沖縄県は、普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力をすることが問題の解決に向けて最善の道だという見解に達した』としています。
 小早川光郎委員長は、記者会見で『国地方係争処理委員会の制度は、国の関与の適否を委員が判断して当事者に伝えることで、国と地方の対立を適正に解決するという趣旨の制度だ。今回のケースでは、そうした対応をしても、決して両当事者にとってプラスになるわけではない。法律の規定に明文化されていない答えを出すときに、それしか有益な対応がありえない場合は、非常に例外的な措置だが、法解釈上はあるのだろうと考えて、きょうのような決定をした』と述べました。」

この結論を受けての国側の対応は、居丈高だ。
「中谷防衛大臣は、防衛省で記者団に対し『国による是正の指示が違法だとは認めなかったので、是正の指示は有効だ。仮に沖縄県が結論に不服があれば、和解条項に基づき、1週間以内に是正の指示の取り消し訴訟を提起することになると承知している』と述べました。そのうえで、中谷大臣は『日米同盟の抑止力維持と普天間飛行場の危険性の除去を考えれば、名護市辺野古への移設が唯一の解決策だ。国と沖縄県は和解条項に従って協議を行うことになるので、常に誠意を持って、政府の取り組みについてご理解いただけるよう努力していく』と述べました。」(NHK)

国側は、「本件指示が違法でないとの判断を求め」たにも拘わらずそのような判断は得られなかったのだ。「違法だという県側の主張は認められなかった」のだから、「県側で、取り消し訴訟を提起すべきだ」というのは、一般論としては間違いでないとしても、この局面では苦しい言い分。飽くまで一方的な主張に過ぎない。

注目されていた沖縄県側の対応は、本日(18日)次のように報じられている。
「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設問題で、翁長雄志知事は18日、国の第三者機関『国地方係争処理委員会』が17日に示した審査結果を不服とせず、提訴しない考えを示した。翁長知事は『委員会の判断を尊重し、問題解決に向けた実質的な協議をすることを期待する』と会見で述べた。」(朝日)

係争委は、消極的に本件指示の違法性を判断しないというだけでなく、より積極的に「普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて双方が真摯に協議を尽くすべき」だとしているのだから、県の対応に理があるというべきだろう。

なお、本日の赤旗に次の報道がある。
「決定文では、今回の法的争いの本質が辺野古新基地建設という「施策の是非」をめぐる両者の対立に端を発したものであり、『議論を深める共通の基盤づくりが不十分な状態のまま、一連の手続きが行われてきたことが、紛争の本質的な要因だ』と指摘。現在の状態を『国と地方のあるべき関係から乖離している』と断じ、『このままであれば、紛争は今後も継続する可能性が高い』と警告しました。」

係争委はなかなか味なことをした、というのが私の感想。大岡裁きの味、である。第三者委員会とは言いながらも、国に不利な結論は出しがたい。さりとて、法理や世論を無視することもできない。違法・不当についての判断を控えて、真摯な協議を尽くせというのは、ぎりぎり可能な良心的対応というべきではないか。これが情に適った大人の智恵としての判断なのかも知れない。

協議に期限は付されていない。国と県との真摯な協議が続く限り、埋立工事の再開はできない。話し合いの落ち着きどころは、世論の動向次第だ。明日(6月19日)は、「オール沖縄会議」が主催する元米海兵隊員の女性暴行殺害事件に抗議する「県民大集会」が開催される。そして、間もなく参院選となる。その結果が、大きく協議の成りゆきに影響することになるだろう。意外に、この大岡裁きが、沖縄にとって有益にはたらくことになるのではなかろうか。
(2016年6月18日)


by asyagi-df-2014 | 2016-06-26 06:04 | 沖縄から | Comments(0)

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