米軍再編-宮古市の陸上自衛隊配備計画「了解」の正式表明を考える。

 宮古市の陸上自衛隊配備計画について、下地敏彦宮古島市長は2016年6月20日、「宮古島への陸上自衛隊については了解する」、と市議会で正式に表明した。
 このことについて、琉球新報は「宮古陸自受け入れ 住民投票で民意を問え」、沖縄タイムスは「[先島の陸自計画]『配備ありき』懸念する」、とそれぞれの2016年6月21日付け社説で論評した。
 沖縄の先島(与那国島、石垣島、宮古島)への自衛隊配備について、どれだけ感心が寄せらられているだろうか。
 この計画の状況や政府の目的について、琉球新報と沖縄タイムスは次のように説明する。


「計画では地対艦ミサイルと地対空ミサイル部隊、そしてその基地を守る警備中隊、計700~800人を配備する。弾薬庫、実弾射撃場なども整備する。海洋進出を進める中国を警戒し、島嶼(とうしょ)部の防衛力を強化するというのが名目だ。具体的には、沖縄本島と宮古島の間の公海を通る中国軍艦ににらみを利かすというのが狙いであろう。」(琉球新報)


「防衛省は、宮古島の旧大福牧場地区と千代田カントリークラブ地区の2カ所に、2018年度までに警備部隊、地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊など計700~800人規模の自衛隊員を配備する計画だ。与党議員からも反対の声が上がる旧大福牧場地区への配備見直しは当然だ。もう一つの候補地である千代田カントリークラブ地区も地元の野原部落会が反対決議を全会一致で可決しており、市議会に陳情書も提出している。」(沖縄タイムス)


 この件に関して、最大の問題は、義気や住民の間での議論が十分に保障されることなく、政府の思惑が一方的に先行させられているのが実態であるということにある。
 琉球新報は、このことについて、「既成事実化を進め、住民に諦めの意識が生じたところで民意を問う。与那国島への自衛隊配備はそんな手順で進められた。防衛省にとっては強烈な成功体験であろう。その繰り返しを狙う。」、と政府・防衛省の姑息さを指摘している。
 この問題を把握するために、琉球新報及び沖縄タイムスの社説をもとに考える。
 両社の社説の要約は次のとおりである。


Ⅰ.琉球新報
(Ⅰ)主張
①「既成事実化を進め、住民に諦めの意識が生じたところで民意を問う。与那国島への自衛隊配備はそんな手順で進められた。防衛省にとっては強烈な成功体験であろう。その繰り返しを狙う。下地市長や防衛省にそんな算段があるのだとしたら容認できない。」
②「まず民意を問うべきだ。住民投票を実施して、その判断に従うべきだ。それが民主主義と自治のあるべき姿であろう。」
③「疑念を払拭できるだけの説明が尽くされたとは言えない。むしろ何一つ解消されていないとさえ言えよう。このまま配備の既成事実が進むのは許されない。やはり民意を問うべきだ。」
(2)問題点
①「防衛省はつい1週間ほど前にようやく1回目の説明会を開いただけだ。とても説明を尽くしているとは言えない。そんな段階での賛成表明は唐突だ。」
②「まして実際に配備するのは拙速過ぎる。この状態での造成着手は許されない。」
③「だが中国からすれば、公海を通るだけでミサイルの照準を定められるということになる。自国の安全を高めるため軍拡すれば、脅威に感じた相手国も同じようにし、緊張を高め合ってついには双方とも望まなかった戦争に突入してしまう。そんな『安全保障のジレンマ』を地でいく事態ではないか。」
④「そもそも敵の軍隊・基地がある所を攻撃するのは軍事の常識だ。軍が配備された島では激烈な地上戦に住民が巻き込まれる。軍隊は住民を守らない。それが沖縄戦の教訓である。」
⑤「防衛省が示した2カ所の候補地のうち、旧大福牧場周辺は飲料水の地下水源が近くにあることから、下地市長は汚染の可能性が否定できないとして反対の意思を示した。配備先が不明なままで配備自体には賛成するというのも理解し難い。」


Ⅱ.沖縄タイムス
(Ⅰ)主張
①「建設場所を特定しないままの理解に苦しむ受け入れ表明である。旧大福牧場地区の代替地も明らかでない。受け入れ表明は住民への説明責任を果たしているとはとてもいえない。」
②「地域の同意は最低限の条件だ。『配備ありき』の手法は混乱を招く。」
③「いったん不測の事態が起これば被害を受けるのは先島の住民である。宮古島も石垣島も島の将来を左右する極めて重大な陸自配備を十分な議論がないまま押し進めていいはずがない。」
(2)問題点
①「市議会後、記者会見した下地市長は『宮古島全域について配備を了解して、場所など計画が明らかになった段階で関係法令に適合しているかどうかで判断する』と説明した。認めるかどうかはホテルなど民間施設と同じとの認識も示した。」
②「下地市長の政策決定のあり方は順序があべこべである。軍事施設と民間施設が同じという認識もおかしい。」
③「防衛省が一方的に配備計画を通告するやり方にも問題がある。賛成派は『中国脅威論』を唱え、反対派は『日常生活が壊され、標的にもなり得る』と割れる。議会や住民の間で議論を尽くさなければならないのはいうまでもない。」
④「宮古島市長の受け入れや、石垣市議会への請願は、尖閣諸島を巡り中国公船が領海に入り、海軍軍艦が接続水域を航行することなどを理由に挙げている。もちろん、中国の挑発的な振る舞いは許せるものではない。だが、軍拡に軍拡で対抗しても、安全保障のジレンマに陥るだけである。」


 こうした状況下で、石垣市は異例の展開を見せる。
 沖縄タイムスによると次のようになっている。


「防衛省は石垣島でも19年度以降、陸自の警備部隊、地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊の配備を計画。500~600人規模を想定している。石垣市議会は20日の6月定例会最終本会議で賛成派が提出していた陸自配備推進の請願を賛成少数で不採択とした。一部与党が反対に回ったり、退席したりしたためで、総務財政委員会では採択していただけに異例の展開だ。反対や退席した議員の中には与党の重鎮もいる。住民の理解や議論が進んでいるとはいえず、『時期尚早』との指摘は、その通りである。」


 結局、この両社の社説が暴く物語は、つぎのようになる。


 防衛省の役人は、ほくそ笑む。
 その笑みの中には、「既成事実化を進め、住民に諦めの意識が生じたところで民意を問う。与那国島への自衛隊配備はそんな手順で進められた。防衛省にとっては強烈な成功体験であろう。その繰り返しを狙う。」、という思惑が踊る。
 その役人は、市のお偉いさんや選ばれた「住民」に、「既成事実化を進め、住民に諦めの意識が生じたところで民意を問う」、とそのシナリオを得意げに説明する。
 だから、「防衛省はつい1週間ほど前にようやく1回目の説明会を開いただけだ。とても説明を尽くしているとは言えない。そんな段階での賛成表明は唐突だ。」。といった声は、すでに笑みのうち。
 どうやら、その役人のシナリオには、「配備先が不明なままで配備自体には賛成するというのも理解し難い。」とか「地域の同意は最低限の条件だ。『配備ありき』の手法は混乱を招く。」といった声が大きな字で書かれていた。当然、その脇には、「折り込み済み」との文字がもっと多きな文字で印刷されていた。
 ただし、そのシナリオには、「『安全保障のジレンマ』にはちょっと注意をしながら、『中国脅威論』の説明で。」、とも書かれていた。もちろん、括弧で、「詳しく説明してもわからないから、冷静な情熱が伝わればいい。」、と書かれていた。


以下、琉球新報及び沖縄タイムスの引用。








琉球新報社説-宮古陸自受け入れ 住民投票で民意を問え-2016年6月21日



 下地敏彦宮古島市長が市議会で「宮古島への陸上自衛隊については了解する」と述べ、同島への陸自配備賛成を正式に表明した。

 しかし、防衛省はつい1週間ほど前にようやく1回目の説明会を開いただけだ。とても説明を尽くしているとは言えない。そんな段階での賛成表明は唐突だ。
 まして実際に配備するのは拙速過ぎる。この状態での造成着手は許されない。
 既成事実化を進め、住民に諦めの意識が生じたところで民意を問う。与那国島への自衛隊配備はそんな手順で進められた。防衛省にとっては強烈な成功体験であろう。その繰り返しを狙う。下地市長や防衛省にそんな算段があるのだとしたら容認できない。
 まず民意を問うべきだ。住民投票を実施して、その判断に従うべきだ。それが民主主義と自治のあるべき姿であろう。
 計画では地対艦ミサイルと地対空ミサイル部隊、そしてその基地を守る警備中隊、計700~800人を配備する。弾薬庫、実弾射撃場なども整備する。
 海洋進出を進める中国を警戒し、島嶼(とうしょ)部の防衛力を強化するというのが名目だ。具体的には、沖縄本島と宮古島の間の公海を通る中国軍艦ににらみを利かすというのが狙いであろう。
 だが中国からすれば、公海を通るだけでミサイルの照準を定められるということになる。自国の安全を高めるため軍拡すれば、脅威に感じた相手国も同じようにし、緊張を高め合ってついには双方とも望まなかった戦争に突入してしまう。そんな「安全保障のジレンマ」を地でいく事態ではないか。
 そもそも敵の軍隊・基地がある所を攻撃するのは軍事の常識だ。軍が配備された島では激烈な地上戦に住民が巻き込まれる。軍隊は住民を守らない。それが沖縄戦の教訓である。
 防衛省が示した2カ所の候補地のうち、旧大福牧場周辺は飲料水の地下水源が近くにあることから、下地市長は汚染の可能性が否定できないとして反対の意思を示した。配備先が不明なままで配備自体には賛成するというのも理解し難い。
 こうした疑念を払拭(ふっしょく)できるだけの説明が尽くされたとは言えない。むしろ何一つ解消されていないとさえ言えよう。このまま配備の既成事実が進むのは許されない。やはり民意を問うべきだ。


沖縄タイムス社説-[先島の陸自計画]「配備ありき」懸念する-2016年6月21日


 下地敏彦宮古島市長は20日の市議会6月定例会一般質問で、同市への陸上自衛隊配備計画を「了解する」と正式に表明した。

 同時に飲料水となる地下水汚染への懸念が強まる旧大福牧場地区への配備計画は、「認めない」と言明した。防衛省に申し入れたことも明らかにした。

 建設場所を特定しないままの理解に苦しむ受け入れ表明である。旧大福牧場地区の代替地も明らかでない。受け入れ表明は住民への説明責任を果たしているとはとてもいえない。

 市議会後、記者会見した下地市長は「宮古島全域について配備を了解して、場所など計画が明らかになった段階で関係法令に適合しているかどうかで判断する」と説明した。認めるかどうかはホテルなど民間施設と同じとの認識も示した。

 下地市長の政策決定のあり方は順序があべこべである。軍事施設と民間施設が同じという認識もおかしい。

 防衛省は、宮古島の旧大福牧場地区と千代田カントリークラブ地区の2カ所に、2018年度までに警備部隊、地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊など計700~800人規模の自衛隊員を配備する計画だ。

 与党議員からも反対の声が上がる旧大福牧場地区への配備見直しは当然だ。もう一つの候補地である千代田カントリークラブ地区も地元の野原部落会が反対決議を全会一致で可決しており、市議会に陳情書も提出している。

 地域の同意は最低限の条件だ。「配備ありき」の手法は混乱を招く。
■    ■
 防衛省は石垣島でも19年度以降、陸自の警備部隊、地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊の配備を計画。500~600人規模を想定している。

 石垣市議会は20日の6月定例会最終本会議で賛成派が提出していた陸自配備推進の請願を賛成少数で不採択とした。一部与党が反対に回ったり、退席したりしたためで、総務財政委員会では採択していただけに異例の展開だ。

 反対や退席した議員の中には与党の重鎮もいる。住民の理解や議論が進んでいるとはいえず、「時期尚早」との指摘は、その通りである。

 防衛省が一方的に配備計画を通告するやり方にも問題がある。賛成派は「中国脅威論」を唱え、反対派は「日常生活が壊され、標的にもなり得る」と割れる。議会や住民の間で議論を尽くさなければならないのはいうまでもない。
■    ■
 宮古島市長の受け入れや、石垣市議会への請願は、尖閣諸島を巡り中国公船が領海に入り、海軍軍艦が接続水域を航行することなどを理由に挙げている。もちろん、中国の挑発的な振る舞いは許せるものではない。だが、軍拡に軍拡で対抗しても、安全保障のジレンマに陥るだけである。

 いったん不測の事態が起これば被害を受けるのは先島の住民である。宮古島も石垣島も島の将来を左右する極めて重大な陸自配備を十分な議論がないまま押し進めていいはずがない。


by asyagi-df-2014 | 2016-06-22 15:01 | 米軍再編 | Comments(0)

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