沖縄-元米兵再逮捕。沖縄の怒りを考える。

 元米兵は20165年6月9日、殺人と強姦致死の両容疑で再逮捕された。
 沖縄の怒りは、一つには、5日の県議会議員選挙で示されたことになる。
 ただ、沖縄の怒りの質が、果たして共有されているのだろうか。
 あらためて、沖縄タイムスと琉球新報の2016年6月10日付けの社説で、このことを考える。
両社の社説の内容の要約は次のとおりである。


(1)怒りの事実
①既に伝わっていた部分もあるが、改めて事件の内容が分かると、女性の人権を踏みにじる、むごたらしい犯罪に、悲しみと怒りがこみ上げてくる。基地あるが故の事件・事故が繰り返されてきた沖縄においても、極めて凶悪な事件である。(沖縄タイムス)


(2)主張
①米軍基地内で日本の警察が捜査権を十分に行使できない異常事態を放置する政府の姿勢は、主権国家として許されない。日米地位協定の改定に直ちに取り組むべきだ。(琉球新報)
②米軍基地を治外法権のように規定し、米軍人・軍属の特権を認める日米地位協定が基地に絡んだ犯罪の元凶であることは誰の目にも明らかだ。しかし、今回の事件でも日本政府は日米地位協定の改定を米側に求めず、運用改善で幕引きを図ろうとしている。
 政府の対米従属姿勢はここに極まっている。新基地建設問題では「抑止力維持」を名目に辺野古移設に拘泥する一方で、県民の生命に関わる日米地位協定の欠陥には手を付けようとはしない。これでは国民の安全を守るべき責務を政府は放棄していると断じざるを得ない。
 事件に抗議して、那覇市で開かれる19日の県民大会は日米地位協定の抜本的改定を要求することになろう。主権国家を標榜(ひょうぼう)するならば、政府は県民の要求を受け止め、実行に移すべきだ。(琉球新報)
③今回の事件に対する県民の怒りは、全県的に広がっている。県議会が5月26日に抗議決議と意見書を可決したのに加え、県内41市町村の全議会が事件への抗議決議を可決する見通しとなった。議会決議は住民意思の表明である。既に決議したほとんどの議会が綱紀粛正や再発防止策の策定に加え、「日米地位協定の抜本的な見直し」を盛り込んでいる。「全基地閉鎖撤去」や「海兵隊の撤退」など、強い要求を入れた議会もある。綱紀粛正では、もはや根本的な解決にならないと受け止められている証しである。(沖縄タイムス)
④在沖米軍は5月27日、県内に住む軍人・軍属やその家族に、基地の外での飲酒を禁じ、午前0時までの帰宅を義務づけると発表した。「喪に服するため」の1カ月間の措置だとした。ところが6月4日、米軍嘉手納基地所属の米海軍2等兵曹の女が酒に酔った状態で車を運転し、国道58号を逆走して軽乗用車と衝突する事故を起こした。2人にけがを負わせた。在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官が会見で述べた「沖縄の人たちと共に喪に服し、悲しみを分かち合う」ことすら、徹底させるのは不可能なのだと露呈した。(沖縄タイムス)
⑤日本政府も、防犯パトロール隊の創設や警察官100人の増員、パトカー20台増車、防犯灯の設置などの対策をまとめた。一般的な犯罪抑止対策にはなりそうだ。だが、日米地位協定によって保護・優遇され、それが占領者意識を持つ素地となっている軍人・軍属に、実効性ある対策かどうかは疑わしい。(沖縄タイムス)
⑥翁長雄志知事は、再逮捕を受けて「繰り返される事件・事故に県民の怒りは限界を超えつつある」とするコメントを発表した。米軍人・軍属による事件の抜本的な解決を図るため、日米両政府に日米地位協定の見直し、米軍基地の整理縮小など、過重な基地負担の軽減も改めて求めた。19日には、那覇市内で大規模な県民大会も予定されている。一人でも多くの人が参加し、両政府に沖縄の意思を示すときである。(沖縄タイムス)


 沖縄の怒りの根源は、第一に、綱紀粛正ではもはや解決にならないとの判断から、議会決議に「全基地閉鎖撤去」や「海兵隊の撤退」など、強い要求を入れた議会も出てきたように、沖縄の米軍基地の根本的な解決を求めるのが、沖縄の民意となっていること、第二に、この事件そのものが、「基地あるが故の事件・事故が繰り返されてきた沖縄においても、極めて凶悪な事件である」、ことにある。
 安倍晋三政権は、「主権国家を標榜するならば、政府は県民の要求を受け止め、実行に移すべきだ。」(琉球新報)、との提起を肝に命じるべきだ。


 以下、沖縄タイムス及び琉球新報の引用。






沖縄タイムス社説-[元米兵再逮捕]沖縄の怒り もう限界だ-2016年6月10日


 うるま市の女性会社員(20)が遺体で見つかった事件で、県警特別捜査本部は9日、死体遺棄容疑で逮捕・送検していた元米海兵隊員で軍属の男(32)を、殺人と強姦(ごうかん)致死の両容疑で再逮捕した。容疑について「今は話せない」と認否を明らかにしていないという。

 特別捜査本部によると、男は、路上を歩いていた女性に背後から近づき、暴行を目的に、棒で頭を殴り、草地に連れ込んだ上、刃物で刺すなどして殺害した疑いがある。

 既に伝わっていた部分もあるが、改めて事件の内容が分かると、女性の人権を踏みにじる、むごたらしい犯罪に、悲しみと怒りがこみ上げてくる。

 基地あるが故の事件・事故が繰り返されてきた沖縄においても、極めて凶悪な事件である。

 今回の事件に対する県民の怒りは、全県的に広がっている。

 県議会が5月26日に抗議決議と意見書を可決したのに加え、県内41市町村の全議会が事件への抗議決議を可決する見通しとなった。

 議会決議は住民意思の表明である。既に決議したほとんどの議会が綱紀粛正や再発防止策の策定に加え、「日米地位協定の抜本的な見直し」を盛り込んでいる。「全基地閉鎖撤去」や「海兵隊の撤退」など、強い要求を入れた議会もある。

 綱紀粛正では、もはや根本的な解決にならないと受け止められている証しである。
■    ■
 在沖米軍は5月27日、県内に住む軍人・軍属やその家族に、基地の外での飲酒を禁じ、午前0時までの帰宅を義務づけると発表した。「喪に服するため」の1カ月間の措置だとした。

 ところが6月4日、米軍嘉手納基地所属の米海軍2等兵曹の女が酒に酔った状態で車を運転し、国道58号を逆走して軽乗用車と衝突する事故を起こした。2人にけがを負わせた。

 在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官が会見で述べた「沖縄の人たちと共に喪に服し、悲しみを分かち合う」ことすら、徹底させるのは不可能なのだと露呈した。
 日本政府も、防犯パトロール隊の創設や警察官100人の増員、パトカー20台増車、防犯灯の設置などの対策をまとめた。一般的な犯罪抑止対策にはなりそうだ。だが、日米地位協定によって保護・優遇され、それが占領者意識を持つ素地となっている軍人・軍属に、実効性ある対策かどうかは疑わしい。
■    ■
 翁長雄志知事は、再逮捕を受けて「繰り返される事件・事故に県民の怒りは限界を超えつつある」とするコメントを発表した。

 米軍人・軍属による事件の抜本的な解決を図るため、日米両政府に日米地位協定の見直し、米軍基地の整理縮小など、過重な基地負担の軽減も改めて求めた。

 19日には、那覇市内で大規模な県民大会も予定されている。一人でも多くの人が参加し、両政府に沖縄の意思を示すときである。


琉球新報社説-米軍属再逮捕 基地内の捜査権を認めよ-2016年6月10日


 米軍基地内で日本の警察が捜査権を十分に行使できない異常事態を放置する政府の姿勢は、主権国家として許されない。日米地位協定の改定に直ちに取り組むべきだ。

 米軍属女性遺棄事件で、県警は死体遺棄容疑で逮捕していた元米海兵隊員で軍属の男を、殺人と強姦(ごうかん)致死の容疑で再逮捕した。
 20歳の女性が命を奪われた事件は新たな段階を迎えた。ここに至るまで、県警の捜査は常に日米地位協定の壁が障害になってきたことを見落としてはならない。
 県警が容疑者を逮捕したため、取り調べや身柄引き渡しなど、日米地位協定上の支障はなかったように見える。しかし、実態は違う。容疑者は米軍基地内で証拠隠滅を図った可能性があるにもかかわらず、基地内では直ちに捜査権を行使することができないのだ。
 県警は「遺体をスーツケースに入れて運んだ」という容疑者の供述に基づき、うるま市内の最終処分場で数点のスーツケースを押収した。この処分場は米軍基地の廃棄物を処理している。容疑者はキャンプ・ハンセン内でスーツケースを投棄した可能性がある。
 捜査の過程で県警が基地内での容疑者の足取りを把握しているならば、基地内の捜査は不可欠だ。
 ところが、日米地位協定は基地内での米国の排他的管理権を認めている。米側の同意がない限り、日本の警察は立ち入りできない。2008年12月の金武町伊芸区被弾事件では県警の立ち入り調査の実現に1年近くもかかった。
 米軍基地を治外法権のように規定し、米軍人・軍属の特権を認める日米地位協定が基地に絡んだ犯罪の元凶であることは誰の目にも明らかだ。しかし、今回の事件でも日本政府は日米地位協定の改定を米側に求めず、運用改善で幕引きを図ろうとしている。
 政府の対米従属姿勢はここに極まっている。新基地建設問題では「抑止力維持」を名目に辺野古移設に拘泥する一方で、県民の生命に関わる日米地位協定の欠陥には手を付けようとはしない。これでは国民の安全を守るべき責務を政府は放棄していると断じざるを得ない。
 事件に抗議して、那覇市で開かれる19日の県民大会は日米地位協定の抜本的改定を要求することになろう。主権国家を標榜(ひょうぼう)するならば、政府は県民の要求を受け止め、実行に移すべきだ。


by asyagi-df-2014 | 2016-06-12 05:45 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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