沖縄県民は幾度、おぞましい事件に直面しなければならないのか。答えは決まっているではないか。沖縄を軍事植民地として扱い続ける日米両政府の姿勢が間違いなのである。

 元米兵、沖縄の元米兵、米軍属、沖縄の米軍属、元海兵隊員逮捕、と呼び名が違う人の逮捕について、次のように2016年5月21日の社説・論説で扱っている。
 

(1)朝日新聞社説-元米兵逮捕 基地を減らすしかない
(2)読売新聞社説-沖縄米軍属逮捕 再発防止へ厳正対応が必要だ
(3)毎日新聞社説-沖縄米軍属逮捕 県民の怒りに向き合え
(4)東京新聞社説-元海兵隊員逮捕 沖縄を安心安全の島に
(5)北海道新聞社説-沖縄の悲劇再び 基地の集中こそ元凶だ
(6)デーリー東北時報-沖縄の米軍属逮捕 基地の縮小、移設進めよ
(7)茨城新聞論説-沖縄の米軍5月21日属逮捕 基地縮小を本気で進めよ
(8)信濃毎日新聞社説-元米兵逮捕 沖縄の怒り受け止めよ
(9)新潟日報社説-米軍属逮捕 繰り返される沖縄の悲劇
(10)福井新聞論説-沖縄の米軍属逮捕 基地ある限り事件起きる
(11)京都新聞社説- 沖縄米軍属逮捕  もう悲劇を繰り返すな
(12)神戸新聞社説-米軍属逮捕/過大な基地負担が背景に
(13)山陰中央新報論説-沖縄の米軍属逮捕/日米で再発防止に取り組め
(14)愛媛新聞社説-沖縄の米軍属逮捕 基地負担の軽減は待ったなしだ
(15)高知新聞社説-【米軍属の逮捕】沖縄の悲劇防ぐ具体策を
(16)宮崎日日新聞社説-沖縄の元米兵逮捕
(17)佐賀新聞論説-沖縄女性殺害 日米地位協定の見直しを
(18)南日本新聞社説-[沖縄米軍属逮捕] 基地あるゆえの悲劇だ

(19)琉球新報社説-「殺害」示唆 植民地扱いは限界だ 許されない問題の矮小化
(20)沖縄タイムス社説-[女性遺棄事件]声上げ立ち上がる時だ


 この見出しを見た時、「基地あるゆえの悲劇だ」とか「再発防止へ厳正対応」という表現の新聞社、「基地の縮小」や「基地を減らす」と主張するところ、様々である。
 ただ、こうした言葉は、果たしてどこまで問題を視ることができているのだろうか。
 もしかして、すでに事実は先を行っているのではなかろうか。悲劇の先行ということで。
 「非常に強い憤りを覚える。今後、徹底的な再発防止などを米側に求めたい」、と20日になって初めて答えた安倍首相と、どこが違っていたのか。
 その分岐点は、「翁長雄志知事が『基地があるがゆえに事件が起きてしまった』と述べたのは当然だ。」(宮崎日日新聞)、との立場をとることができるか、また、「事件のたびに日米政府は遺憾の意を示すが、現実には再発防止になっていない。沖縄の人々が求めるのは、米軍基地の廃止である。それがすぐにかなわないなら米軍に特権を与え、県民を憲法のらち外に置く日米地位協定を対等なものに改めることである。(中絡)広島の思いだけでなく、沖縄の思いを毅然(きぜん)として伝えることも、政府の責務である。」(東京新聞)、との考え方を確立できているかの違いである。
 「沖縄県の翁長雄志知事は『基地があるがゆえの事件が起きてしまった』と述べた。今回の犯行は男の勤務時間外であり、日米地位協定上の問題は生じていない。事件を普天間飛行場の辺野古移設と絡めて政治利用してはなるまい。」、とする読売新聞は、改めて新聞の使命ということを再確認する必要があるのではないか。


 やはり、ここでは、琉球新報と沖縄タイムスの社説を取りあげる。
(琉球新報の訴え。)
①「えたいの知れない重苦しい塊が胸の中に居座り続けている。なぜ繰り返し繰り返し、沖縄は悲しみを強いられるのか。この悔しさはまさしく、持って行き場がない。」
②「もう限界だ。今のままの沖縄であってはならない。」
③「女性と容疑者に接点は見当たらない。事件当日の日没は午後7時で、女性は8時ごろウオーキングに出た。大通りがいつものコースだった。日暮れから1時間たつかたたずに、商業施設に程近い通
りを歩くだけで、見も知らぬ男に突然襲われ、最後は殺されたのだ。」
④「しかも相手はかつて海兵隊員として専門の戦闘訓練、時には人を殺す訓練をも受けたはずである。なすすべがなかったに違いない。沖縄はまさに現在進行形で「戦場」だと言える。」
⑤「沖縄に米軍基地がなければ女性が命を落とさずに済んだのは間違いない。在日米軍専用基地が所在するのは14都道県で、残りの33府県に専用基地は存在しない。だからこれらの県では米軍人・軍属による凶悪事件は例年、ほぼゼロが並ぶはずである。他方、統計を取ればこの種の事件の半数は沖縄1県に集中するはずだ。これが差別でなくて何なのか。
 沖縄は辛苦を十分に味わわされた。戦後70年を経てもう、残り33府県並みになりたいというのが、そんなに高望みであろうか。」
⑥「政府は火消しに躍起とされる。沖縄は単なる『火』の扱いだ。このまま米軍基地を押し付けておくために当面、県民の反発をかわそうというだけなのだろう。沖縄の人も国民だと思うのなら、本来、その意を体して沖縄から基地をなくすよう交渉するのが筋ではないか。」
⑦「だが辺野古新基地建設を強行しようという政府の方針には何の変化もないという。この国の政府は明らかに沖縄の側でなく、何か別の側に立っている。
 19日に記者団から問い掛けられても無言だった安倍晋三首相は、20日になって『非常に強い憤りを覚える。今後、徹底的な再発防止などを米側に求めたい』と述べた。」
⑧「その安倍首相に問い掛けたい。これでも辺野古新基地の建設を強行するのですか。」
⑨「綱紀粛正で済むなら事件は起きていない。地元の意に反し、他国の兵士と基地を1県に集中させ、それを今後も続けようとする姿勢が問われているのである。」
⑩「問題のすり替え、矮小(わいしょう)化は米側にも見られる。ケネディ米大使は『深い悲しみを表明する』と述べたが、謝罪はなかった。ドーラン在日米軍司令官も『痛ましく、大変寂しく思う』と述べたにすぎない。70年以上も沖縄を『占領』し、事実上の軍事植民地とした自国の責任はどこかに消えている。」
⑪「ドーラン氏はまた、容疑者が『現役の米軍人ではない』『国防総省の所属ではない』『米軍に雇用された人物ではない』と強調した。だが軍人か軍属か、どちらであるかが問題の本質ではない。軍属ならば米軍の責任はないかのような言説は無責任極まる。」


(沖縄タイムス)
①「もうガマンができない」 うるま市の女性会社員(20)が遺体で見つかった事件から一夜明けた20日、県内では政党や市民団体の抗議が相次ぎ、怒りや悔しさが渦巻いた。
②「これまでに何度、『また』という言葉を繰り返してきただろうか。県議会による米軍基地がらみの抗議決議は復帰後206件。凶悪犯の検挙件数は574件。いくら再発防止を求めても、米軍の対策は長く続かず、基地あるが故に、悲劇が繰り返される。
 日米両政府の責任は免れない。
③「20日、県庁で記者会見した16の女性団体の代表は、時に声を詰まらせながら、口々に無念の思いを語った。
 『被害者がもしかしたら私だったかもしれない、家族だったかもしれない、大切な人だったり友人だったかもしれない』『基地がなかったら、こういうことは起こっていなかったんじゃないか』-涙ながらにそう語ったのは、女性と同世代の玉城愛さん(名桜大4年)。」
④「日米両政府の『迅速な対応』がどこか芝居じみて見えるのは、『最悪のタイミング』という言葉に象徴されるように、サミット開催やオバマ米大統領の広島訪問、県議選や参院選への影響を気にするだけで、沖縄の人々に寄り添う姿勢が感じられないからだ。」
⑤「基地維持と基地の円滑な運用が優先され、のど元過ぎれば熱さ忘れるのたとえ通り、またかまたか、と事件が繰り返されるからだ。」
⑥「沖縄の戦後史は米軍関係者の事件事故の繰り返しの歴史である。事態の沈静化を図るという従来の流儀はもはや通用しない。」
⑦「オバマ大統領はサミットの合間に日米首脳会談に臨み、27日には、原爆を投下した国の大統領として初めて、被爆地広島を訪ねる。
 その機会に沖縄まで足を伸ばし、沖縄の歴史と現状に触れてほしい。新しいアプローチがなければ基地問題は解決しない。そのことを肌で感じてほしいのである。」


 私たちは、琉球新報と沖縄タイムスのこの言葉を、肝に命じたい。


「確かに、容疑者は海兵隊をやめ、今は嘉手納基地で働く軍属だ。だからこそ辺野古新基地をやめれば済む問題でもない。
 日ごろ戦闘の訓練を受けている他国の軍隊がこれほど大量かつ長期に、小さな島に駐留し続けることが問題の淵源(えんげん)だ。沖縄を軍事植民地として扱い続ける日米両政府の姿勢が間違いなのである。ここで現状を抜本的に変えなければ、われわれは同輩を、子や孫を、次の世代を守れない。」(琉球新報)


「政府によって『命の重さの平等』が保障されないとすれば、私たちは、私たち自身の命と暮らし、人権、地方自治と民主主義を守るため、立ち上がるしかない。
 名護市辺野古の新基地建設に反対するだけでなく、基地撤去を含めた新たな取り組みに全県規模で踏み出すときがきた、ことを痛感する。」(沖縄タイムス)


 以下、各新聞の社説等、の引用。(長文です)






(1)朝日新聞社説-元米兵逮捕 基地を減らすしかない-2016年5月21日


 沖縄県民は幾度、おぞましい事件に直面しなければならないのか。

 うるま市の女性(20)が遺体で見つかり、米国籍で元米兵の男(32)が死体遺棄容疑で県警に逮捕された。男は女性殺害をほのめかしているという。

 元米兵は米軍嘉手納基地で働く軍属である。現役の兵士ではないが、米軍基地が存在しなければ起きなかった事件だと言わざるを得ない。

 太平洋戦争末期に米軍が沖縄に上陸して以降、米軍統治下の27年間も、72年の日本復帰後も、沖縄では米軍人・軍属による事件が繰り返されてきた。

 県警によると、復帰から昨年までの在沖米軍人・軍属とその家族らによる殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪事件は574件にのぼる。

 事件のたびに県は綱紀粛正や再発防止、教育の徹底を米軍に申し入れてきた。だが、いっこうに事件はなくならない。

 全国の米軍専用施設の75%近くが集中する沖縄で、米軍関係者による相次ぐ事件は深刻な基地被害であり、人権問題にほかならない。これ以上、悲惨な事件を繰り返してはならない。そのためには、沖縄の基地の整理・縮小を急ぐしかない。

 95年に起きた米海兵隊員らによる少女暴行事件を受けて、全県で基地への怒りが大きなうねりとなった。その翌年、日米両政府は米軍普天間飛行場の返還で合意したはずだった。

 だが20年たっても返還は実現せず、日本政府は名護市辺野古沿岸に移設する県内たらい回しの方針を変えようとしない。

 日本の安全に米軍による抑止力は必要だ。だがそのために、平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされていいはずがない。

 たび重なる米軍関係者による事件は、そうした問いを日本国民全体に、そして日米両政府に突きつけている。

 日本政府が米政府に再発防止を強く求めているのは当然だ。来週、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のために来日するオバマ大統領にも、安倍首相から厳しく申し入れてほしい。

 だがそれを、一連の外交行事が終わるまでの一時しのぎに終わらせてはならない。

 長く県民が求めてきた辺野古移設の見直しや、在日米軍にさまざまな特権を与えている日米地位協定の改定も、放置されてきたに等しい。

 地元の理解のない安全保障は成り立たない。こうした県民の不信と不安を日本全体の問題として受け止め、幅広く、粘り強く米側に伝え、改善の努力を始めなければならない。


(2)読売新聞社説-沖縄米軍属逮捕 再発防止へ厳正対応が必要だ-2016年05月21日


 残虐で、許し難い犯行である。在日米軍には、実効性ある再発防止策の徹底を求めたい。

 沖縄県うるま市の20歳の女性が4月下旬から行方不明になっていた事件で、沖縄県警が米軍属の32歳の男を逮捕した。恩納村の雑木林に女性の遺体を遺棄した容疑だ。

 男は容疑を認め、女性の首を絞め、刺したとの趣旨の供述もしているという。男は元海兵隊員で、今は米軍嘉手納基地でインターネット関連の業務に就いている。

 県警は、犯行に至る経緯や動機など、事件の全容解明に向けて捜査に全力を挙げてもらいたい。

 安倍首相が「非常に強い憤りを覚える。今後、徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」と語ったのは当然である。

 今回の事件で看過できないのは27日のオバマ米大統領の広島訪問に対する影響だ。日米同盟を新たな段階へ導く歴史的な訪問に、深刻な影を落としかねない。

 男の逮捕当日、岸田外相はケネディ駐日米大使に対し、「卑劣で残忍な凶悪事件で、極めて遺憾だ」と申し入れた。中谷防衛相もドーラン在日米軍司令官に抗議した。矢継ぎ早の対応は、日本政府の強い危機感の表れだろう。

 ケネディ氏は、「沖縄県警や日本政府に全面的に協力する」と岸田氏に約束した。米側も、オバマ氏の来日をより意義深いものにするとの問題意識を共有し、真剣に対応していると言える。

 沖縄では、米軍関係者による凶悪犯罪が繰り返されてきた。

 2012年10月に海軍の兵士2人が集団強姦ごうかん致傷容疑で逮捕され、その後、実刑判決を受けた。今年3月にも、海軍兵1人が準強姦容疑で逮捕されている。

 不祥事の度に、米軍は再発防止を約束した。12年の強姦事件後には、日本に滞在する全軍人に夜間外出禁止令を発し、軍人・軍属への再教育も表明した。

 それでも事件が続くのは、過去の対策が不十分だったからだ。米軍の教育が有効に機能したのか、本格的に検証する必要がある。それを踏まえ、効果的な綱紀粛正策を実施しなければならない。

 沖縄県の翁長雄志知事は「基地があるがゆえの事件が起きてしまった」と述べた。今回の犯行は男の勤務時間外であり、日米地位協定上の問題は生じていない。事件を普天間飛行場の辺野古移設と絡めて政治利用してはなるまい。

 日米両政府は、米軍基地の整理縮小など、沖縄の負担軽減策を着実に実行していくべきだ。


(3)毎日新聞社説-沖縄米軍属逮捕 県民の怒りに向き合え-2016年5月21日


 なぜ沖縄で米軍絡みの凶悪な犯罪が繰り返されるのか。米軍属の男が女性会社員の遺体を遺棄した事件に、沖縄の人は怒りを募らせている。


 被害者の20歳の女性は結婚を前提にした交際相手がいたという。将来ある若者に対する卑劣な行為だ。逮捕された男は女性の殺害もほのめかしているという。

 日本政府は米政府に強く抗議し、綱紀粛正を求めた。安倍晋三首相も「非常に強い憤りを覚える」と語った。まずは事件の全容を把握し、動機や背景を解明する必要がある。

 沖縄の面積は、全国のわずか0・6%だ。そこに在日米軍専用施設の74%が集中する。沖縄県の面積に占める割合は10%。沖縄米軍基地の整理・縮小計画を決定した20年前に比べても減少率は1ポイントに届かない。

 1995年の米兵3人による沖縄少女暴行事件は、反基地運動に火を付け、日米同盟を揺るがした。だが、再発防止や綱紀粛正を唱えるものの、凶悪事件はなくならず、昨年も沖縄では3件の強盗事件が起きた。

 過重な米軍基地負担と、後を絶たない米軍関係者の犯罪は、沖縄の人たちに重くのしかかり、不公平感をかきたてさせずにはおかない。

 日本政府は、沖縄の不安や怒りがいかに深いかを米国に訴えるべきだ。そのうえで、安倍政権は沖縄の基地負担軽減に一層、取り組む必要がある。

 政府や自民党は、6月の沖縄県議選や今夏の参院選を前に米軍普天間飛行場移設問題への影響を懸念している。だが、基地問題という本質に向き合わなければ沖縄の怒りが収まることはない。

 綱紀粛正も効果がないままでは、反基地感情は増幅するばかりだ。沖縄県民や議会は、再発防止の仕組み作りや、米軍人・軍属らの事件・事故の扱いを定めた日米地位協定の改定を求めている。

 今回は公務外の犯罪で日本側が逮捕しており、地位協定の制約に伴う支障は出ていない。しかし、米軍が拘束していた場合でも要請できる起訴前の身柄引き渡しには、強制力はなく、米側が拒否した例もある。

 こうした裁判権の改定は抑止効果があるとして労働組合や弁護士団体が求めてきた経緯がある。犯罪抑止の観点から議論を促したい。

 来週の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、日米首脳会談も予定されている。基地の整理・縮小や犯罪の防止など米軍基地問題で真剣な意見交換をする好機だ。

 2000年の九州・沖縄サミットの際、クリントン米大統領は「よき隣人としての責任を果たす」と約束した。残念ながら、そのことばはいま、空虚に響く。


(4)東京新聞社説-元海兵隊員逮捕 沖縄を安心安全の島に-2016年56月31日

 米軍基地があるために犯罪が繰り返される。沖縄県で女性が行方不明になっていた事件で、元米兵が死体遺棄容疑で逮捕された。県民を守るために、日本政府は米国との交渉に全力を尽くすべきだ。

 「またか!」と県民には痛恨の極みだろう。四月から行方不明になっていたうるま市の会社員女性(20)の遺体が恩納村の山林で発見された。沖縄県警は米軍嘉手納基地で働く元海兵隊員のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)を逮捕。「女性を捨てた」と容疑を認め、殺害をほのめかす供述をしているという。

 被害者の女性はシンザト容疑者と面識がない。犯罪に巻き込まれたのは、普段の暮らしのすぐ隣に基地があったがためである。

 在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄は「基地の中に沖縄がある」と例えられる。米軍関係者による犯罪は、第二次大戦末期の沖縄戦当時から繰り返されてきた。

 全国の警察が二〇〇六年から十年間に摘発した殺人や強盗などの凶悪犯は六十二件九十一人。沖縄では毎年のように発生している。

 事件のたびに日米政府は遺憾の意を示すが、現実には再発防止になっていない。沖縄の人々が求めるのは、米軍基地の廃止である。それがすぐにかなわないなら米軍に特権を与え、県民を憲法のらち外に置く日米地位協定を対等なものに改めることである。

 シンザト容疑者は、今は軍人ではないが、日米地位協定で定められる「軍属」に当たる。今回は「公務外」であるため、日本の刑事手続きに従って罪が問われることになるが、米兵、米軍属による犯罪がやまない背景には、改善運用はされるものの、不平等を解消する抜本的見直しがされてこなかった協定があることは論をまたない。

 辺野古新基地に反対する沖縄県民の声を直接伝えようと、翁長雄志知事が訪米している最中に急展開した事件である。無残な犯行で若い命が奪われたことに、沖縄の怒りはまた燃え上がる。大規模な基地反対運動のきっかけとなった、一九九五年の少女暴行事件を思い起こさせる。

 事件が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う、名護市辺野古の新基地建設に影響を与えるのは必至だ。来日するオバマ米大統領は沖縄の米軍基地がいかに理不尽な形で置かれているのか、県民の痛みの声を正面から受け止めてほしい。広島の思いだけでなく、沖縄の思いを毅然(きぜん)として伝えることも、政府の責務である。


(5)北海道新聞社説-沖縄の悲劇再び 基地の集中こそ元凶だ-2016年5月21日


 沖縄に米軍基地が集中する現実が、またも悲劇をもたらした。

 沖縄県うるま市の女性会社員(20)が行方不明となった事件で、県警は死体遺棄の疑いで、元米海兵隊員で基地内で働く米国人の男(32)を容疑者として逮捕した。

 岸田文雄外相はケネディ駐日米大使を呼び、「遺憾だ」として抗議した。大使は「心からの悲しみ」を表明したという。

 詳細は捜査中だが、沖縄ではこれまでも米軍基地の存在に起因する事件が繰り返されてきた。

 翁長雄志(おながたけし)知事が「この怒りは持って行き場がない。痛恨の極みだ」と憤りを示したのも当然だ。

 普天間飛行場の辺野古移設をめぐる国と県との対立も続いている。今回の事件を受けて、緊張がさらに高まる可能性もある。

 政府内からは来月の沖縄県議選や夏の参院選への影響を懸念する声も聞かれる。だが求められているのは目先の選挙対策ではなく、基地の集中という元凶の解消だ。

 来週開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて、安倍晋三首相とオバマ米大統領との会談も予定される。両首脳は事態の打開に踏み出してほしい。

 容疑者は現役米兵ではないが、米軍に雇用された「軍属」だ。日米地位協定で米兵に準ずる扱いが規定される。事件は公務外で起き日本側が身柄を拘束している。

 基地と県民生活が隣り合わせの現状がなければ、事件は起きていないだろう。基地ゆえの悲劇だ。

 大規模な基地反対運動につながった1995年の少女暴行事件をはじめとして、沖縄では米兵が関わる事件が後を絶たない。

 今年3月にも準強姦(ごうかん)容疑で米兵が逮捕されたばかりだ。

 米政府はそのたびに再発防止を口にしてきた。日本政府も「強い憤り」を表明してきたが、言葉だけに終わってはいないか。

 米軍はまず、米兵に限らず軍属も含めた管理の徹底と綱紀粛正を図るべきだ。日米両政府は、日米地位協定を含めて、あらゆる対策を検討しなければならない。

 だが米軍専用施設の7割以上が沖縄に集中する現状が続く限り、問題の根絶は望めないだろう。

 安倍首相は日米首脳会談で今回の事件も取り上げるという。

 沖縄では事件を受け、米軍への抗議行動が既に起きている。首相は沖縄の心に寄り添い、実効性のある対策を求めるべきだ。

 オバマ氏には、被害者と県民への謝罪とともに、基地集中の解消につながる判断を期待したい。


(6)デーリー東北時報-沖縄の米軍属逮捕 基地の縮小、移設進めよ-2016年5月21日


 沖縄でまた、在日米軍関係者による痛ましい事件が起きてしまった。失踪した沖縄県うるま市の20歳の女性会社員が遺体で発見され、米軍軍属で元海兵隊員の男(32)が死体遺棄容疑で沖縄県警に逮捕された。男は女性の殺害をほのめかす供述をしているという。詳しい経緯や犯行の動機など、県警には全容を解明してほしい。

 悲惨な事件に、沖縄県民の怒りは募り、米軍への抗議の声が上がっている。米国から帰国したばかりの翁長雄志知事も「基地があるから事件が繰り返される」と語った。

 今回の事件は、沖縄県と政府が対立する普天間飛行場の辺野古移設問題への影響も考えられ、オバマ米大統領の広島訪問にも影を落としかねない。

 在日米軍施設の多くが集中する沖縄では、米軍関係者による事件、事故が後を絶たず、安倍晋三首相ら政府関係者は「再発防止」に努めると強調している。

そのためにも、政府が先頭に立って、基地の縮小、県外移設を進めるとともに、不平等な日米地位協定の改定など対等な関係を築くことが不可欠だ。

 被害者の女性は4月から行方不明になり、県警の捜査で、軍属として米軍基地に勤務している容疑者が浮かんだ。

 容疑者は事情聴取に「動かなくなった女性を雑木林に遺棄した」と認めて逮捕された。女性の「首を絞めた」との供述もしているとされる。

 沖縄県内では、大問題になった1995年の少女暴行事件の後も、米兵らによる殺人、強盗、強姦(ごうかん)など凶悪事件がほぼ毎年起きている。

 本土復帰後も、沖縄には米軍専用施設・区域の7割以上が集中している。こうした異常な配置が深刻な状況につながっているともいえよう。普天間問題に限らず、日本政府は米軍基地の整理や縮小などを米側に強く働き掛ける必要がある。

 一方、日米地位協定は米兵らが「公務中」に事件や事故を起こした場合には、米側に第1次裁判権があるとし、原則的に日本側は起訴できない。

 「公務外」でも容疑者が基地内にいると、起訴前には日本側に身柄が引き渡されないことがあった。このため凶悪事件では、起訴前でも日本側に身柄を引き渡すなど、運用が見直されてきた。

 しかし米側から引き渡しを拒否されるケースもあり、沖縄国際大学の米軍ヘリ墜落事故では県警は現場検証を拒否された。

 沖縄は戦時中も戦後も過剰な負担を強いられてきた。これを解消するのは政府の責任だ。

(7)茨城新聞論説-沖縄の米軍5月21日属逮捕 基地縮小を本気で進めよ-2016年5月21日

沖縄でまたしても米軍絡みの許し難い、痛ましい事件が起きた。4月末から行方不明になっていた20歳の女性が遺体で見つかり、沖縄県警は元米海兵隊員で空軍基地に勤務する米軍属の男を死体遺棄の疑いで逮捕した。

沖縄県の翁長雄志知事は「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」と指摘する。在日米軍専用施設の約74%が集中する沖縄県では米軍関係者による凶悪事件が後を絶たない。日米同盟は日本の安全保障政策の基本ではあるが、事件は同盟の基礎となる信頼関係を損なうものだ。安倍晋三首相は「徹底的な再発防止など厳正な対応を求めたい」と述べたが、これまでも再発防止を申し入れながら、事件は繰り返し起きている。抜本的な対策には、沖縄の米軍基地の縮小を本気で進めるしかない。

オバマ米大統領が26日からの主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のため来日し、日米首脳会談が行われる。安倍首相は大統領に厳しく申し入れるとともに、日米両政府が米軍基地の縮小に向けて固い決意で取り組むよう協議すべきだ。

こうした事件のたびに思い出さざるを得ないのが、女子小学生が米兵に暴行された1995年の事件だ。沖縄では反基地の怒りが噴き出し、日米両政府による96年の普天間飛行場(宜野湾市)の返還合意につながった。だが普天間飛行場は20年たっても返還されず、名護市辺野古で新たな移設基地の建設工事が進められている。今回、菅義偉官房長官は「沖縄の負担軽減に全力で取り組んでいく」と述べたが、軽減は進んでいない。

その一方で事件は無くならない。沖縄県によると米兵による殺人、強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は95年以降も毎年数件発生、今年3月にも女性観光客が那覇市内で暴行される事件が起きている。沖縄県警の調べによると、亡くなった女性は同居男性に「ウオーキングしてくる」と連絡した後、行方不明になった。逮捕された米国人の32歳の男は遺体を遺棄した容疑を認め、殺害に関与した供述をしているという。女性との接点はなく、見知らぬ女性を襲った可能性がある。

日米安全保障条約に基づく地位協定は、在日米軍人や軍に直接雇用されている民間人の「軍属」が事件を起こした場合の対応で米側に特権を認めている。男は米空軍嘉手納基地(嘉手納町など)内で働く軍属だが、米側は捜査に全面的に協力するとしている。

しかし沖縄県民の怒りは収まらないだろう。政府は沖縄関係閣僚会議を開き、米軍の綱紀粛正などを求めることを確認。19日夜に岸田文雄外相がケネディ駐日米大使を、中谷元・防衛相がドーラン在日米軍司令官を呼んで抗議した。当然である。

政府内にはオバマ大統領の被爆地・広島訪問への影響を懸念する声もあるようだ。だが今回の事件で毅然(きぜん)とした対応を示さなければ、沖縄の反基地運動の対象は普天間飛行場にとどまらず米軍基地全体へ広がるだろう。

普天間飛行場の移設問題にも影響しよう。移設を巡る政府と沖縄県の訴訟は和解が成立、工事を中断し、打開策が話し合われている。しかしまずは今回の事件への対処を政府と沖縄県で協議すべきだ。米国との交渉は政府の責任だ。基地を縮小し、負担軽減を進める政府の本気度が問われる。


(8)信濃毎日新聞社説-元米兵逮捕 沖縄の怒り受け止めよ-2016年5月21日

 「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」。翁長雄志知事の言葉は、多くの沖縄県民の思いを代弁するものだろう。

 うるま市の20歳の女性の遺体が見つかり、元米海兵隊員で軍属の男が逮捕された。政府は沖縄の怒りをしっかり受け止めなくてはならない。基地縮小を含め、再発防止の抜本策を米側と話し合うべきだ。

 4月下旬、交際中で同居する男性にスマートフォンで「ウオーキングしてくる」とメッセージを送信したまま、行方不明になっていた。供述に基づき、雑木林で遺体が発見された。むごく、痛ましい結果である。

 男が逮捕された日の夜、岸田文雄外相はケネディ駐日米大使を外務省に呼び、「極めて遺憾だ。強く抗議する」と伝えた。中谷元・防衛相も在日米軍司令官を防衛省に呼んでいる。

 安倍晋三首相は、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて行う日米首脳会談で事件を取り上げ、厳正な対応をオバマ大統領に求める意向を固めた。米側に捜査への協力や再発防止を求めるのは当然である。

 沖縄では米軍関係者による凶悪犯罪が繰り返されてきた。1995年に米兵3人が女子小学生を連れ去り暴行した事件では、かつてなく反基地感情が高まった。それ以降もほぼ毎年起きている。

 ことし3月には那覇市のビジネスホテルで女性観光客が海軍1等水兵の部屋に連れ込まれ、暴行される事件があった。それから1カ月余りでの凶行である。米軍が綱紀粛正、再発防止を約束しても県民は信用できないだろう。

 「基地がある限り、事件が繰り返される」との声が出るのは当然だ。小さな島に在日米軍専用施設の約74%が集中する状態は改めていかなければならない。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、政府と県の対立が続いている。

 菅義偉官房長官は「沖縄の気持ちに寄り添いながら、できることは全てやるという方針の下に負担軽減に全力で取り組む」と述べている。寄り添うというなら、辺野古を「唯一の解決策」と押し付けるのではなく、県民が広く納得できる方法を探る必要がある。

 米国務省の報道官は、逮捕後の記者会見で「移設を推進する立場は変わらない」と言明した。強行すれば、反基地感情がさらに高まるのは必至だ。日本政府には、県外移設や無条件の返還について米側と協議するよう求める。


(9)新潟日報社説-米軍属逮捕 繰り返される沖縄の悲劇-2016年5月21日


 沖縄県で、また米軍関係者による凶悪な犯罪が起きた。

 うるま市の会社員、島袋里奈さん(20)が遺体で見つかった事件で、米軍属の男が死体遺棄容疑で県警に逮捕されたのだ。

 米空軍嘉手納基地で働く元海兵隊員、シンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)は「首を絞め、刃物で刺した」と殺害をほのめかす供述をしているという。

 被害者は地元ショッピングセンターで働き、結婚を前提に交際相手と幸せに暮らしていた。

 ところが4月28日に行方不明となり、県警が捜査していた。容疑者の供述に基づき、白骨遺体が恩納村の雑木林で発見された。

 20歳の若さで暴力的に人生を断たれるとは、何とむごいことか。家族や周囲の人々の悲しみは、想像に余りある。

 米軍関係者による日本国内での凶悪犯罪は後を絶たない。

 殺人や強盗などの凶悪犯で、全国の警察が摘発した米兵、軍属らは、2015年までの10年間で62件91人に上った。

 在日米軍の専用施設・区域の約7割が集中する沖縄では、ほぼ毎年発生している。

 1995年の米兵による女子小学生暴行事件では、沖縄で「県民総決起大会」が開かれた。

 県民の激しい抗議は翌年、日米政府が米軍普天間飛行場の返還に合意する原動力となった。

 「基地の島」で、同じような悲劇を繰り返させてはならない。日米両政府は、実効性のある再発防止策に真剣に取り組むべきだ。

 犯罪の温床になっていると指摘されるのが、米側に大きな特権がある日米地位協定だ。

 在日米軍の軍人や軍属が事件、事故を起こしても、「公務中」と判断されれば、原則として米側に第1次裁判権がある。

 「公務外」なら、その権利は日本側が持つ。だが容疑者が基地内に逃げ込めば、起訴までの間、日本側に身柄は渡されない。

 95年の事件でも、先に米側が容疑者の身柄を拘束し、地位協定を盾に引き渡しを拒否した。

 猛反発を受け、運用が改善された。殺人など凶悪犯罪に限り米側の同意があれば、起訴前でも身柄が引き渡されるようになった。

 米軍関係者の凶悪犯罪を抑止するには、協定を抜本的に改定する必要があるのではないか。

 政府は毅然(きぜん)とした態度で米側と交渉すべきだ。

 今回の事件で、沖縄に反基地のうねりが高まるのは間違いない。

 普天間飛行場の辺野古移設問題や、27日に予定される米オバマ大統領の広島訪問への影響は避けられまい。

 沖縄では6月に県議選を控え、夏には参院選がある。

 基地集中への不満が強まり、辺野古移設に対する反発が大きくなれば、選挙結果にも影響しよう。

 安倍政権は、米大統領訪問を参院選への弾みにするシナリオを描いていた。日米の歴史的な和解と同盟関係を演出するものだ。

 だがまずは、足元の苦しみを直視すべきではないのか。国民の安全を守るのが政府の仕事だ。


(10)福井新聞論説-沖縄の米軍属逮捕 基地ある限り事件起きる-2016年5月21日


 沖縄でまたも米軍絡みの許しがたい事件が起きた。行方不明だった20歳の女性が遺体で見つかった。沖縄県警は元米海兵隊員で嘉手納基地で働く軍属の男を死体遺棄の疑いで逮捕した。在日米軍専用施設の約74%が集中する沖縄の悲しい現実である。政府が強調する「基地負担の軽減」は、完全撤去へ向かわなければ、こうした凶悪事件が繰り返されるだろう。

 米国から帰国したばかりの翁長雄志(おながたけし)知事は「沖縄の米軍基地がいかに理不尽な形で置かれているかと話してきた。その矢先に、基地があるがゆえの事件が起きてしまった」と絶句、「痛恨の極み」と憤った。

 安倍晋三首相は「非常に強い憤りを覚える。徹底的な再発防止など厳正な対応を求めたい」とし、菅義偉官房長官も「言語道断。二度と起こらないよう、あらゆる機会を通じて米側に対応を求め続けたい」と強調した。言葉の調子は強いが、政府は「二度と起こらないよう」と何度繰り返してきただろうか。

 沖縄に厳然として治外法権が存在する限り、再発防止は当てにならない。日米同盟の強化は日本の安全保障政策の基本だが、県民の安全は過去も、現在も保障されてはいない。

 1995年、米兵による女子小学生暴行事件が発生した。反基地の怒りは翌年の日米両政府による普天間飛行場の返還合意につながった。だが、その飛行場は20年たっても返還されず、名護市辺野古で新基地建設工事が進められている。

 国土の0・6%の土地に米軍専用施設の約74%が集中するというが、割合は14年の73・8%から、今年1月現在では74・46%に増えているという。基地負担軽減に実効性がない。

 72年の沖縄返還からこれまで、米軍関係者による犯罪検挙数は6千件近い。米兵の殺人、強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は95年以降も毎年数件発生。3月にも女性観光客が那覇市内で暴行される事件が起きている。

 県警の調べによると、亡くなった女性は「ウオーキングしてくる」と出た後、行方不明になった。逮捕された軍属の男は「首を絞め、刃物で刺した」と供述している。全く面識もなかったとすれば、県民は安心して外も歩けない。

 日米安保条約に基づく地位協定は、米兵・米軍属が事件を起こした場合、米側に特権を認めている。今回米側は捜査に全面的に協力するとしているが、この「特権」こそ、いまだ戦後を引きずる「沖縄の痛み」そのものである。

 オバマ米大統領が26日からの主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のため来日する。安倍首相が日米首脳会談で厳しく申し入れ、オバマ氏も「遺憾の意」を表明するだけでは、何ら現状は変わらない。治外法権を改め、基地縮小・撤退への道筋を付けることでしか県民は納得しないだろう。


(11)京都新聞社説- 沖縄米軍属逮捕  もう悲劇を繰り返すな-2016年5月21日


 在日米軍専用施設の約74%が集中する沖縄でまた、女性が被害に遭い、米軍関係者が逮捕される事件が起きた。
 沖縄県うるま市の女性会社員(20)が遺体で見つかり、死体遺棄容疑で県警に逮捕された米軍属の男(32)は殺害をほのめかす供述をしているという。米軍関係者が関わったとみられる凶悪事件が繰り返されたことを、日本政府は重く受け止めなければならない。
 翁長雄志知事は「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」と強調した。県民から激しい怒りの声が上がるのも当然だ。
 1995年の米兵による少女暴行事件では、県民の怒りが大きなうねりとなった。「県民総決起大会」に約8万5千人(主催者発表)が集まって抗議の声を上げ、翌年の日米による米軍普天間飛行場の返還合意につながった。
 しかし、米軍関係者による犯罪は後を絶たない。
 警察庁によると、殺人や強盗などの凶悪犯で全国の警察が摘発した米兵、軍属らは昨年までの10年間で62件91人に上った。沖縄県では少女暴行事件が起きた95年以降、2013年を除いて毎年1~7件発生している。今年3月にも、那覇市で女性観光客が海軍1等水兵に暴行された。
 在日米軍の軍人や軍属が事件、事故を起こした場合、日米地位協定で米側に大きな特権がある。「公務中」と判断されれば、原則として米側に第1次裁判権があり、日本の検察は起訴できない。「公務外」なら日本側に第1次裁判権があるが、容疑者が基地に逃げ込むなどすれば起訴されるまで日本側に身柄は引き渡されない。
 過去の事件を通じて協定は見直されてきたが、米兵による事件に関する抜本改正は見送られた。協定による特権が、犯罪が絶えない要因となってはいないか。
 事件が起きるたびに、米側に綱紀粛正を求めるだけでは不十分だ。日本政府は地位協定の改定や米軍基地の県外移設を含めた根本的な対策を検討する必要がある。
 今回の事件を受け、普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐる県と政府の対立が激しくなる可能性がある。6月の県議選や夏の参院選で米軍基地問題が焦点となるのは間違いない。
 今月下旬には主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)やオバマ米大統領の広島訪問がある。安倍晋三首相はオバマ氏に厳正な対処を求め、具体的な再発防止策を日米で早急に協議すべきだ。


(12)神戸新聞社説-米軍属逮捕/過大な基地負担が背景に-2016年5月21日


沖縄県うるま市の女性会社員が遺体で見つかった事件で、元米海兵隊員で軍属の男が死体遺棄容疑で逮捕された。沖縄県警の調べに殺害をほのめかす供述をしている。

 容疑が事実なら、許すことのできない卑劣な犯罪だ。命を奪われた女性の恐怖や家族の悲しみ、憤りは察するに余りある。

 米軍関係者による痛ましい事件が繰り返されたことに県民も衝撃を受けている。容疑者は米空軍嘉手納基地に勤めており、米軍は捜査に全面協力すべきである。

 安倍晋三首相は「徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」と述べた。綱紀粛正を強く求めねばならない。来日するオバマ米大統領にも沖縄の基地問題の現状をきちんと伝えることが重要だ。

 国土の0・6%の沖縄に在日米軍専用施設・区域の74%が集中する。そうした異常な状況の下で、1972年の本土復帰後も米軍関係者による犯罪が続発してきた。

 2014年末までの犯罪摘発件数は約6千件に上り、殺人や性的暴行などの凶悪事件が約1割を占める。被害届が出されない例も含めれば実数はもっと多いだろう。

 海兵隊員らによる少女暴行事件で県民の怒りが爆発したのは1995年のことだ。それを機に日米政府は普天間飛行場の返還で合意した。

 だがその後も事件は続いている。今年3月には那覇市のホテルで海軍兵士が女性観光客を自室に連れ込んで暴行し、逮捕された。その都度米軍は夜間外出禁止などを実施するが、効果はほとんど見られない。

 背景には、米軍関係者に有利な日米地位協定の問題があるとされる。公務中の事件、事故は米側の裁判権が優先され、公務外でも基地に逃げ込めば警察は逮捕できない。

 今回のような凶悪事件の場合は米側が身柄を引き渡すなど運用の改善で対応しているが、米側の「好意的考慮」にとどまる。日本側の捜査や訴追に支障のないよう協定改正を迫るのが政府の責務ではないか。

 県民は米軍機の事故などの危険にも直面しており、我慢の限界だろう。過大な基地負担の軽減を急がねばならないが、地元が反対する普天間飛行場の辺野古移設にこだわっていては進展は望めない。政府は米軍基地の移転、縮小について米側と幅広く協議する必要がある。


(13)山陰中央新報論説-沖縄の米軍属逮捕/日米で再発防止に取り組め-2016年5月21日


 沖縄でまたしても米軍絡みの許し難い、痛ましい事件が起きた。4月末から行方不明になっていた20歳の女性が遺体で見つかり、沖縄県警は元米海兵隊員で空軍基地に勤務する米軍属の男を死体遺棄の疑いで逮捕した。

 安倍晋三首相は「徹底的な再発防止など、厳正な対応を求めたい」と述べたが、これまでも再発防止を申し入れながら、事件は繰り返し起きている。

 オバマ米大統領が26日からの主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のため来日し、日米首脳会談が行われる。安倍首相はこの機会に、大統領に厳しく申し入れるとともに、日米両政府が再発防止に向けて、固い決意で取り組むよう協議すべきだ。

 在日米軍専用施設の約74%が集中する沖縄県では米軍関係者による凶悪事件が後を絶たない。日米同盟は日本の安全保障政策の基本ではあるが、事件は同盟の基礎となる信頼関係を損なうものだ。

 沖縄県の翁(お)長(なが)雄(たけ)志(し)知事は「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」と指摘する。こうした事件のたびに思い出さざるを得ないのが、女子小学生が米兵に暴行された1995年の事件だ。沖縄では反基地の怒りが噴き出し、日米両政府による96年の普天間飛行場(宜野湾市)の返還合意につながった。

 だが普天間飛行場は20年たっても返還されず、名護市辺野古で新たな移設基地の建設工事が進められている。今回、菅義偉官房長官は「沖縄の負担軽減に全力で取り組んでいく」と述べたが、軽減は進んでいないのではないか。

 その一方で事件は無くならない。沖縄県によると米兵による殺人、強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は95年以降も毎年数件発生、今年3月にも女性観光客が那覇市内で暴行される事件が起きている。

 沖縄県警の調べによると、亡くなった女性は同居男性に「ウオーキングしてくる」と連絡した後、行方不明になった。逮捕された米国人の32歳の男は遺体を遺棄した容疑を認め、殺害に関与した供述をしているという。女性との接点はなく、見知らぬ女性を襲った可能性がある。

 日米安全保障条約に基づく地位協定は、在日米軍人や軍に直接雇用されている民間人の「軍属」が事件を起こした場合の対応で米側に特権を認めている。男は米空軍嘉手納基地(嘉手納町など)内で働く軍属だが、米側は捜査に全面的に協力するとしている。

 政府は沖縄関係閣僚会議を開き、米軍の綱紀粛正などを求めることを確認。19日夜に岸田文雄外相がケネディ駐日米大使を、中谷元・防衛相がドーラン在日米軍司令官を呼んで抗議した。

 政府内にはオバマ大統領の被爆地・広島訪問への影響を懸念する声もあるようだ。だが今回の事件で毅然(きぜん)とした対応を示さなければ、沖縄の反基地運動の対象は普天間飛行場にとどまらず米軍基地全体へ広がるだろう。

 普天間飛行場の移設問題にも影響しよう。移設を巡る政府と沖縄県の訴訟は和解が成立、工事を中断し、打開策が話し合われている。しかしまずは今回の事件への対処を政府と沖縄県で協議すべきだ。米国との交渉は政府の責任だ。基地負担軽減を進める政府の本気度が問われる。


(14)愛媛新聞社説-沖縄の米軍属逮捕 基地負担の軽減は待ったなしだ- 2016年05月21日


 米軍関係者による凶行が、またも繰り返された。沖縄県うるま市の女性会社員が先月から行方不明になっていた事件で、元海兵隊員の軍属の男が死体遺棄容疑で逮捕された。殺害をほのめかす供述もしているという。
 沖縄の人々の怒り、悲しみ、不安に寄り添わねばなるまい。安倍晋三首相は、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて開く日米首脳会談で、オバマ大統領に厳正対応を求める意向だ。抜本対策は待ったなし。再発防止や綱紀粛正の要請にとどまらず、日米地位協定の改定や基地縮小など、沖縄の負担軽減に踏み込んでもらいたい。
 在日米軍人・軍属の法的地位を定めた地位協定は、「米側を守る内容」との批判がかねて根強い。日本側の捜査を阻む壁にもなっている。公務中と判断されれば第1次裁判権は原則として米側にあり、公務外でも先に米側が被疑者を拘束すれば、日本側が起訴するまで身柄を引き渡す義務がないためだ。
 1995年の少女暴行事件を契機に、殺人や強姦(ごうかん)といった凶悪犯罪に限り起訴前の引き渡しを認めるなど運用改善が図られたものの、協定自体はほぼ手つかず。いまだに米側の優越的地位は歴然と言わざるを得ない。
 今回は軍属の身柄がすでに日本側にあり、米側も全面協力を表明している。だからといって協定を維持する根拠にはならない。事件が起きるたび、米軍は夜間外出禁止令を出すなど対策を講じてきたが、実効性を欠くのは明らかだ。優越的地位が、軍人・軍属の犯罪が絶えない要因だとの専門家らの指摘を、重く受け止める必要がある。
 沖縄県内での米軍関係者による殺人や強盗などの凶悪犯罪は77年の69件がピークだった。95年以降も、2013年を除いて毎年1~7件発生している。減ったからといって、安心できるわけではもちろんない。
 今年3月には、那覇市内で米兵による女性暴行事件があったばかり。再発防止に向け日本政府や米軍、沖縄県が先月中旬に会合を開いた直後、今回の事件が起きた。安慶田光男副知事が「これまで通りの綱紀粛正では同じことの繰り返し」と断じたのは当然。小手先の対策でお茶を濁すことは許されないと、日米両政府は肝に銘じてほしい。
 在日米軍専用施設の約74%が集中する沖縄。県民の願いは基地負担の真の軽減にある。少女暴行事件の際は8万5千人(主催者発表)規模の総決起大会が開かれ、普天間飛行場(宜野湾市)の返還合意につながった。安倍政権は負担軽減を強調しながら、名護市辺野古への移設に固執する。県内移設では軽減にはならない。普天間と辺野古を切り離すよう改めて求める。
 軍属逮捕を受け、政権や関係省庁からは普天間問題やオバマ氏の広島訪問、参院選などへの悪影響を懸念する声が漏れ聞こえる。向き合う相手を間違ってはならない。今こそ、沖縄の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。


(15)高知新聞社説-【米軍属の逮捕】沖縄の悲劇防ぐ具体策を-2016年5月21日


 在日米軍専用施設の約74%が集中する「基地の島」で、また悲劇が起こった。
 沖縄県うるま市の女性会社員が行方不明だった事件で、米空軍の嘉手納基地内で働く米国人の軍属が死体遺棄容疑で逮捕された。殺害をほのめかす供述もしており、殺人容疑も視野に捜査が続いている。
 3月には、米兵による女性観光客暴行事件があったばかりだ。沖縄で繰り返される米軍関係者の重大犯罪は、過度な米軍基地の集中と無縁であるはずがない。
 政府には沖縄県民の生命と財産を守る責任がある。米側に再発防止を求めるだけでなく、当事者としての具体策が問われている。
 被害者は4月末、ウオーキング中に消息を絶った。日常のなかでなぜ突如、命を奪われなければならなかったのか。犯人の罪はいうまでもないが、事件が相次ぐ環境を見過ごすわけにはいかない。
 沖縄県によると2011年現在、沖縄県内には約2万6千人の軍人、約2千人の軍属がいる。
 米軍関係者による刑法犯は減少傾向にあるとはいえ、県民の反基地感情が高まるきっかけとなった1995年の少女暴行事件以降も、凶悪事件は度々発生している。酒気帯び運転を含めた交通事故が頻発する実態もある。
 米軍基地が集中するがゆえに、沖縄県民の日常の危険性が増している状況は否めまい。そして重大な事件が起こるたび、米軍は綱紀粛正をうたうものの、その効果が一時的にすぎないことは数々の事件で明らかといえる。
 軍属の逮捕を受け、政府はケネディ駐日米大使に捜査への協力や綱紀粛正、実効的な再発防止策の策定を要請した。抗議は当然としても、この内容ではいずれ悲劇が繰り返されるのではないかという不安を禁じ得ない。
 政府内では、普天間飛行場の辺野古移設計画への影響を懸念する声があるようだ。
 だが、沖縄の移設反対の世論は明確であり、相次ぐ事件や事故も根拠の一つとして指摘され続けてきた。その危険性があらためて顕在化しているのだから、反基地の声が高まるのも自然な流れだろう。
 辺野古移設を巡る訴訟の和解後も、政府は沖縄県との協議会で、移設が「唯一の解決策」と繰り返し、主張は平行線をたどっている。
 しかし、移設では県民が不安を覚えざるを得ない状況は変わらない。政府は不安の原因を直視し、根本的に負担を軽減できるよう、米国内を含めた「県外移設」などを真剣に検討すべきではないか。
 日米地位協定の問題もある。今回の事件は「公務外」の犯罪で日本側が逮捕できたが、「公務中」なら真相究明がさらに困難になった可能性がある。
 米軍関係者による犯罪への抑止力を高める意味でも、根本的な改定を米側に働き掛ける必要がある。


(16)宮崎日日新聞社説-沖縄の元米兵逮捕-2016年5月21日


◆防止には基地縮小しかない◆

 怒り、悔しさが込み上げてくる。またもや沖縄の女性が犠牲になった。本人や家族の無念はいかばかりか。沖縄の人々の憤りや悲しみはいかばかりか。

 沖縄県うるま市の会社員女性(20)の行方不明事件で、元海兵隊員で空軍基地で働く米軍属の男(32)が死体遺棄容疑で逮捕された。安倍晋三首相は「徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」と述べたが、米軍絡みの事件は繰り返されている。「再発防止策」の徹底などで済む話ではない。抜本的な対策には沖縄の米軍基地の縮小を本気で進めるしかない。

住民は常に身の危険

 1995年、女子小学生が米兵に暴行された事件を忘れることはできない。沖縄では反基地の怒りが噴き出し、「県民総決起大会」に約8万5千人(主催者発表)が集まり抗議の声を上げた。

 それ以降も米兵が絡む事件や事故は絶えず、そのたびに米軍は夜間外出を禁止するなど綱紀粛正を図ってきた。

 しかし事件はなくならない。沖縄県によると米兵による殺人、強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は95年以降も毎年数件発生。今年3月にも女性観光客が那覇市内で暴行される事件が起きている。

 翁長雄志知事が「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」と述べたのは当然だ。

 在日米軍の専用施設・区域の約74%が集中する沖縄。「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代共同代表は「沖縄の人々が日常を過ごしているところに、暴力が起き続ける」と語ったが、この指摘は重い。沖縄の人々にこのような思いを背負わせたままでいいのか。いいはずがない。

 「同じ女性として怖いし悔しい」「あらためて、何をされるか分からないとの思いを強くした」。同県内の女性たちの声だ。

 政府は常に身の危険を感じなければならない住民の恐怖心を、しっかりくみ取るべきだ。

拡大する抗議の動き

 抗議行動は同県内、さらに東京にも広がっている。

 95年の「総決起大会」に象徴される抗議行動は、日米両政府による96年の普天間飛行場(宜野湾市)の返還合意につながった。

 だが同飛行場は返還されず、名護市辺野古で新たな移設基地の建設工事が進められている。今回、菅義偉官房長官は「沖縄の負担軽減に全力で取り組んでいく」と述べたが、軽減は進んでいない。

 オバマ米大統領が26日から主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のため来日し、日米首脳会談が行われる。日米両政府は事件について話し合い、米軍基地の縮小、県民の負担軽減に向け固い決意で取り組むよう協議すべきだ。

 日米同盟は日本の安全保障政策の基本となっているが、事件は同盟の基礎となる信頼関係を損なうものだ。信頼関係の持てない同盟関係はあり得ず、日本は毅然(きぜん)とした態度を示さなければならない。


(17)佐賀新聞論説-沖縄女性殺害 日米地位協定の見直しを-2016年05月21日


 希望に満ちていたはずの未来を奪われ、どれほど無念だっただろうか。20歳の女性会社員が沖縄で殺害された事件で、米軍属の米国人の男が逮捕された。

 米軍関係者による犯罪がまた起きた。1972年に沖縄が本土復帰して以来、米軍関係者による犯罪の検挙数は約6千件に及ぶ。それも、殺人や強姦(ごうかん)など凶悪な犯罪が後を絶たない。1995年の米兵3人による少女暴行事件をはじめ、殺人や強姦が相次ぎ、今年3月にも、海軍の水兵が女性観光客を自室に連れ込んで暴行する事件が起きたばかりだ。

 容疑者逮捕を受けて、岸田文雄外相はケネディ駐日米大使に抗議した。これまでも事件が起きるたび、米軍は謝罪し、再発防止を約束してきてはいた。

 だが、一向に改善される気配はない。なぜ、こうも繰り返されるのか。

 戦後の米統治下で整備された沖縄の米軍基地は、本土復帰後も整理や縮小が進んでいない。国土面積のわずか0・6%の沖縄県に在日米軍専用施設の約74%が集中している。

 翁長雄志知事が「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」と憤りをあらわにしたが、基地撤廃を求める声が一層強まるのは当然だろう。

 日米の間には「日米地位協定」が横たわる。この協定では、米側が身柄の引き渡しに応じないケースを認めており、米軍による事件・事故について米側が報告する義務さえない。

 例えば、95年の少女暴行事件でも、米兵3人の身柄引き渡しに米軍は応じなかった。沖縄県民の強い反発を受けて、米軍が「好意的配慮を払う」と運用の一部を見直したが、果たしてこれで十分だろうか。

 今回の事件では、容疑者が公務中ではなかったため、日本の法律で裁かれることになる。今回に限って言えば、地位協定が直接、壁になったわけではない。

 だが、これほど米軍関係者が犯罪を安易に引き起こす根底には、ある種の“特権”意識があるのではないか。「基地に逃げ込めば何とかなる」などという考えを生み出す土壌に、現行の地位協定がつながってはいないだろうか。

 これまでも沖縄は地位協定の根本的な見直しを求めてきた。翁長知事は「日本政府が、当事者として対応できないことは県民がよく知っている」と述べたが、それでは困る。

 安倍晋三首相には、ぜひとも指導力を発揮してもらいたい。これまでのように米軍が再発防止を約束するだけではまったく足りない。実効性のある対策を引き出す必要がある。ここは地位協定の見直しにまで踏み込むべきだ。

 来週にはオバマ大統領が来日する。被爆地・広島の訪問も予定されており、日米の両国関係にとって大きな節目だ。日米同盟の重みを再確認するとともに、安倍首相とオバマ大統領には対等なパートナーとして率直に語り合ってもらいたい。基地問題に目を背けてはならない。

 沖縄の事件で狙われるのはいつも、女性ばかりだ。基地があるゆえに暴力にさらされ、命まで奪われる。こんな理不尽は、許されない。もう終わりにしてほしい。(古賀史生)


(18)南日本新聞社説-[沖縄米軍属逮捕] 基地あるゆえの悲劇だ-2016年5月21日


 基地があるゆえの悲劇はいつまで続くのか。強い憤りを覚える。

 沖縄県うるま市の20歳の女性が遺体で見つかった事件で、元海兵隊員で軍属の男が死体遺棄容疑で沖縄県警に逮捕された。女性は4月末から行方不明になっていた。

 男は女性の殺害をほのめかす供述もしており、沖縄県警は殺人容疑でも調べる方針だ。事件解明へ徹底した捜査を求めたい。

 国土の0.6%しかない面積に在日米軍の専用施設・区域の約74%が集中する沖縄県では、軍人や軍属など米軍関係者による凶悪犯罪が後を絶たない。

 県民や議会は、そのたびに日米両政府に再発防止策を強く求めてきたものの、有効な手立ては講じられていないのが実情である。今度こそ、日米両政府は実効性のある対策を打ち出すべきだ。

 沖縄県基地対策課によると、1972年の本土復帰以降、米軍関係者がかかわった犯罪の検挙件数は2015年末までに5896件に上る。うち殺人などの凶悪事件は574件を占める。

 95年に起きた米兵による少女暴行事件は、反基地の大きなうねりとなり、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の返還合意につながった。

 しかし、普天間飛行場は20年たっても返還に至っていない。政府は、沖縄県民の反対が強い名護市辺野古への移設工事の方針を変えないままだ。

 事件が、普天間飛行場の移設計画や、オバマ米大統領の広島訪問に影響を及ぼす可能性もある。

 オバマ氏の広島訪問で安倍政権は、日米の歴史的和解と強固な同盟関係を演出し、参院選の弾みとする考えだ。しかし、シナリオ通りにはいくまい。安倍晋三首相はオバマ氏に強く抗議し、基地の整理縮小に向けた協議につなげるべきである。

 沖縄県民には再発防止を求めても、米軍基地がある限り事件は繰り返されるとの思いは強い。日米両政府は基地問題に本気で取り組まなければならない。

 沖縄県民の怒りを増幅させている要因には、在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定もある。

 少女暴行事件当時、地位協定を盾に米兵の起訴前の身柄引き渡しを拒否し、反発が広がったのは多くの人の記憶に残る。

 日米両政府は凶悪事件に限り、米側が起訴前の身柄引き渡しに「好意的考慮を払う」という形で運用改善を図ってきた。だが、抜本改正は見送られたままだ。今回は身柄が日本側にあるが、協定の改定を求める議論も再燃しよう。

 日本政府には毅然(きぜん)とした対応が求められる。


(19)琉球新報社説-「殺害」示唆 植民地扱いは限界だ 許されない問題の矮小化-2016年5月21日


 えたいの知れない重苦しい塊が胸の中に居座り続けている。なぜ繰り返し繰り返し、沖縄は悲しみを強いられるのか。この悔しさはまさしく、持って行き場がない。

 行方不明だった会社員女性(20)が遺体となり見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された元米海兵隊員で軍属のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者が「首を絞め、刃物で刺した」と供述した。事実なら、事故などでなく意図的に殺害したことになる。
 しかも遺体は雑木林に放置された。被害者の恐怖と無念はいかばかりか。想像すると胸が張り裂けそうになる。もう限界だ。今のままの沖縄であってはならない。

 現在進行形の「戦場」

 女性と容疑者に接点は見当たらない。事件当日の日没は午後7時で、女性は8時ごろウオーキングに出た。大通りがいつものコースだった。日暮れから1時間たつかたたずに、商業施設に程近い通りを歩くだけで、見も知らぬ男に突然襲われ、最後は殺されたのだ。しかも相手はかつて海兵隊員として専門の戦闘訓練、時には人を殺す訓練をも受けたはずである。なすすべがなかったに違いない。沖縄はまさに現在進行形で「戦場」だと言える。
 沖縄に米軍基地がなければ女性が命を落とさずに済んだのは間違いない。在日米軍専用基地が所在するのは14都道県で、残りの33府県に専用基地は存在しない。だからこれらの県では米軍人・軍属による凶悪事件は例年、ほぼゼロが並ぶはずである。他方、統計を取ればこの種の事件の半数は沖縄1県に集中するはずだ。これが差別でなくて何なのか。
 沖縄は辛苦を十分に味わわされた。戦後70年を経てもう、残り33府県並みになりたいというのが、そんなに高望みであろうか。
 政府は火消しに躍起とされる。沖縄は単なる「火」の扱いだ。このまま米軍基地を押し付けておくために当面、県民の反発をかわそうというだけなのだろう。沖縄の人も国民だと思うのなら、本来、その意を体して沖縄から基地をなくすよう交渉するのが筋ではないか。
 だが辺野古新基地建設を強行しようという政府の方針には何の変化もないという。この国の政府は明らかに沖縄の側でなく、何か別の側に立っている。
 19日に記者団から問い掛けられても無言だった安倍晋三首相は、20日になって「非常に強い憤りを覚える。今後、徹底的な再発防止などを米側に求めたい」と述べた。その安倍首相に問い掛けたい。これでも辺野古新基地の建設を強行するのですか。

 責任はどこへ

 綱紀粛正で済むなら事件は起きていない。地元の意に反し、他国の兵士と基地を1県に集中させ、それを今後も続けようとする姿勢が問われているのである。
 問題のすり替え、矮小(わいしょう)化は米側にも見られる。ケネディ米大使は「深い悲しみを表明する」と述べたが、謝罪はなかった。ドーラン在日米軍司令官も「痛ましく、大変寂しく思う」と述べたにすぎない。70年以上も沖縄を「占領」し、事実上の軍事植民地とした自国の責任はどこかに消えている。
 ドーラン氏はまた、容疑者が「現役の米軍人ではない」「国防総省の所属ではない」「米軍に雇用された人物ではない」と強調した。だが軍人か軍属か、どちらであるかが問題の本質ではない。軍属ならば米軍の責任はないかのような言説は無責任極まる。
 確かに、容疑者は海兵隊をやめ、今は嘉手納基地で働く軍属だ。だからこそ辺野古新基地をやめれば済む問題でもない。
 日ごろ戦闘の訓練を受けている他国の軍隊がこれほど大量かつ長期に、小さな島に駐留し続けることが問題の淵源(えんげん)だ。沖縄を軍事植民地として扱い続ける日米両政府の姿勢が間違いなのである。ここで現状を抜本的に変えなければ、われわれは同輩を、子や孫を、次の世代を守れない。


(20)沖縄タイムス社説-[女性遺棄事件]声上げ立ち上がる時だ-2016年5月21日


 「もうガマンができない」 うるま市の女性会社員(20)が遺体で見つかった事件から一夜明けた20日、県内では政党や市民団体の抗議が相次ぎ、怒りや悔しさが渦巻いた。

 これまでに何度、「また」という言葉を繰り返してきただろうか。県議会による米軍基地がらみの抗議決議は復帰後206件。凶悪犯の検挙件数は574件。いくら再発防止を求めても、米軍の対策は長く続かず、基地あるが故に、悲劇が繰り返される。

 日米両政府の責任は免れない。

 20日、県庁で記者会見した16の女性団体の代表は、時に声を詰まらせながら、口々に無念の思いを語った。

 「被害者がもしかしたら私だったかもしれない、家族だったかもしれない、大切な人だったり友人だったかもしれない」「基地がなかったら、こういうことは起こっていなかったんじゃないか」-涙ながらにそう語ったのは、女性と同世代の玉城愛さん(名桜大4年)。
 死体遺棄容疑で逮捕された元米海兵隊員で軍属の男性が勤務する嘉手納基地のゲート前では、市民らが「全基地撤去」のプラカードを掲げて事件発生に激しく抗議した。

 政府によって「命の重さの平等」が保障されないとすれば、私たちは、私たち自身の命と暮らし、人権、地方自治と民主主義を守るため、立ち上がるしかない。

 名護市辺野古の新基地建設に反対するだけでなく、基地撤去を含めた新たな取り組みに全県規模で踏み出すときがきた、ことを痛感する。
■    ■
 日米両政府の「迅速な対応」がどこか芝居じみて見えるのは、「最悪のタイミング」という言葉に象徴されるように、サミット開催やオバマ米大統領の広島訪問、県議選や参院選への影響を気にするだけで、沖縄の人々に寄り添う姿勢が感じられないからだ。

 基地維持と基地の円滑な運用が優先され、のど元過ぎれば熱さ忘れるのたとえ通り、またかまたか、と事件が繰り返されるからだ。

 沖縄の戦後史は米軍関係者の事件事故の繰り返しの歴史である。事態の沈静化を図るという従来の流儀はもはや通用しない。

 オバマ大統領はサミットの合間に日米首脳会談に臨み、27日には、原爆を投下した国の大統領として初めて、被爆地広島を訪ねる。

 その機会に沖縄まで足を伸ばし、沖縄の歴史と現状に触れてほしい。新しいアプローチがなければ基地問題は解決しない。そのことを肌で感じてほしいのである。
■    ■
 県庁OBの天願盛夫さんは退職後、独力で「沖縄占領米軍犯罪事件帳」を執筆し、出版した。講和前補償問題に関する資料を整理・編集したもので、強姦事件、射殺事件、強姦殺害事件などの凶悪事件や軍用機墜落事故などが列記されている。あまりの数の多さに息が詰まるほどである。

 なぜ今もなお、米軍関係者の事件事故が絶えないのか。根本的な問題は「小さなかごに、あまりにも多くの卵を詰めすぎる」ことだ。この事実から目を背けてはならない。


by asyagi-df-2014 | 2016-05-22 06:03 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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