アイヌ民族の遺骨が、85年ぶりに返還される。

 標題について、北海道新聞は2016年3月30日の社説で、次のように押さえた。

(1)経過
①北大が日高管内浦河町のアイヌ民族の墓から遺骨を研究目的で持ち去ったとして、アイヌ民族の5人が返還などを求めていた訴訟で、和解が成立した。
②生活最小単位であるコタン(集落)を継承するため、原告側が設立した「コタンの会」が返還を受け、墓地に再埋葬し管理を担う。
③身元不明の遺骨もあり、それも含めて返還に道筋がついたことは評価したい。
④紋別市や十勝管内浦幌町で掘り出された遺骨についても訴訟が進行中で、原告側は同様の枠組みで和解を目指すという。
⑤ただ、北大をはじめ全国12大学には現在、1600体を超える民族の遺骨が保管され、その多くが身元不明とされている。
⑥和解で大きかったのは「コタンの会」が受け皿となったことだ。
⑦北大は、原告の親族と確認できた1体と身元不明の11体を近々、同会に引き渡す。身元特定が可能な4体は1年間情報公開し、それが過ぎても子孫などが名乗り出なければ、同会に託す。


(2)主張
①各大学は今後、訴訟がなくとも、関係者の希望がある限り意を尽くして返還の道を探るべきだ。
②問題は、和解に「(遺骨の返還後に)第三者と紛争が生じた場合は『コタンの会』が解決し、北大に一切迷惑をかけない」との条項が盛りこまれたことだ。再埋葬後の事後処理を、受け入れ先の責任に帰すことには疑問が残る。
③遺骨返還では今後、今回の「コタンの会」のような受け皿づくりも重要になってくるだろう。北大は、遺骨がかつてあった地域と協議し、元の埋葬地に戻す努力をもっと重ねてほしい。
④大学に保管されているアイヌ民族の遺骨は、身元を特定できた場合は遺族に返すが、大半は胆振管内白老町にできる「民族共生の象徴となる空間」(象徴空間)の慰霊施設に集約される見通しだ。しかし、遺骨は本来あった埋葬地に戻すのが筋だ。当面、施設に集約するにしても、あくまで遺族や地域への返還を基本とするべきである。
⑤遺骨が保管されている12大学のうち、北大以外では保管状況がほとんど公表されていない現実にも目を向けなければならない。
⑥今回の和解を契機に、他大学も遺骨の保管状況についての調査と公表に力を入れる必要がある。
⑦元の場所に返還できる遺骨を少しでも増やすため、政府にも支援を求めたい。


 この問題を考える上で、『週刊金曜日1082号」の平田剛士さんの「アイヌ遺骨85年ぶりに変換」の記事における次の指摘を、私たちはきちっと捉え直す必要がある。


「大学や日本政府はこれまで一度も被害者に謝罪すらしていない。それを和人社会も見過ごしてきた。
 原告支援を続ける植木哲也・苫小牧駒澤大学教授(哲学、科学技術社会論)は『こんな事件がなぜ起きたのか、私たちはまず事実を知らなければ』と話す。『新の和解』はきっとその先にしかない。」


 以下、北海道新聞の引用。







北海道新聞社説-アイヌ民族遺骨 元の場所に戻す努力を-2016年3月30日


 北大が日高管内浦河町のアイヌ民族の墓から遺骨を研究目的で持ち去ったとして、アイヌ民族の5人が返還などを求めていた訴訟で、和解が成立した。

 生活最小単位であるコタン(集落)を継承するため、原告側が設立した「コタンの会」が返還を受け、墓地に再埋葬し管理を担う。

 身元不明の遺骨もあり、それも含めて返還に道筋がついたことは評価したい。

 紋別市や十勝管内浦幌町で掘り出された遺骨についても訴訟が進行中で、原告側は同様の枠組みで和解を目指すという。

 ただ、北大をはじめ全国12大学には現在、1600体を超える民族の遺骨が保管され、その多くが身元不明とされている。

 各大学は今後、訴訟がなくとも、関係者の希望がある限り意を尽くして返還の道を探るべきだ。

 和解で大きかったのは「コタンの会」が受け皿となったことだ。

 北大は、原告の親族と確認できた1体と身元不明の11体を近々、同会に引き渡す。身元特定が可能な4体は1年間情報公開し、それが過ぎても子孫などが名乗り出なければ、同会に託す。

 問題は、和解に「(遺骨の返還後に)第三者と紛争が生じた場合は『コタンの会』が解決し、北大に一切迷惑をかけない」との条項が盛りこまれたことだ。

 再埋葬後の事後処理を、受け入れ先の責任に帰すことには疑問が残る。

 遺骨返還では今後、今回の「コタンの会」のような受け皿づくりも重要になってくるだろう。

 北大は、遺骨がかつてあった地域と協議し、元の埋葬地に戻す努力をもっと重ねてほしい。

 大学に保管されているアイヌ民族の遺骨は、身元を特定できた場合は遺族に返すが、大半は胆振管内白老町にできる「民族共生の象徴となる空間」(象徴空間)の慰霊施設に集約される見通しだ。

 しかし、遺骨は本来あった埋葬地に戻すのが筋だ。

 当面、施設に集約するにしても、あくまで遺族や地域への返還を基本とするべきである。

 遺骨が保管されている12大学のうち、北大以外では保管状況がほとんど公表されていない現実にも目を向けなければならない。

 今回の和解を契機に、他大学も遺骨の保管状況についての調査と公表に力を入れる必要がある。

 元の場所に返還できる遺骨を少しでも増やすため、政府にも支援を求めたい。


by asyagi-df-2014 | 2016-04-07 06:31 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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