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「日本会議」を朝日新聞で考える。

 日本の右傾化の流れのなかで、「日本会議」はその中心的な役割を果たしてきた。特に、安倍晋三政権下では、主たるブレーンとしての役目はより強化されている。
朝日新聞は、「日本会議とこの国のあり方に関しての問題」をいよいよ採り上げた。まずは、「憲法編」(上・中・下)から。
 どうやら、それは、日本会議の主張は、というよりはむしろ生長の家の基本理念が、日本国憲法の理念とは相いれないものであるということについて。
 「日本会議」を朝日新聞の論調から考える。それは、次のように要約される。

(1)日本会議の組織とその実態

①日本会議は1997年、新憲法の提唱や新しい日本史教科書づくりに取り組んだ「日本を守る国民会議」(81年発足)などが統合してできた。事務局の中枢を担うのは、60年代後半に全共闘などの学生運動に対抗した椛島有三事務総長ら、当時は反共的な主張をしていた宗教団体「生長の家」の出身者だ。多数の協力団体があり、会員は約3万8千人。国旗国歌法の制定や教育基本法の改正を推進し、夫婦別姓や外国人参政権には反対してきた。
②首相、正副官房長官、閣僚、首相補佐官、衆参両院議長、自民党役員、派閥領袖(りょうしゅう)――。「部外秘」とある日本会議国会議員懇談会の名簿(昨年9月15日現在)には、政府・自民党幹部の氏名が並ぶ。首相が特別顧問を務め、当時の会員281人のうち246人を自民党が占める。衆院の6割、参院の5割が属す。
③首相とともに歩み、いま補佐官として首相を支える衛藤氏は2014年10月、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の設立総会で、90年代を振り返りつつ述べた。「安倍内閣は憲法改正の最終目標のため、みんなの力を得て成立したと言っても過言ではない」
 衛藤氏が語りかけた国民の会を主導する団体こそ、日本会議だった。
④衛藤、伊藤、日本会議事務総長の椛島有三に加え、百地、高橋の5氏。関係者の証言などによると、首相を支える5人はいずれも学生時代に生長の家で活動していた。

(2)日本会議の賛同拡大運動

①国民の会は「現在の憲法は『占領憲法』だ」として、前文に伝統文化を書き込むことや、天皇を元首と明記することなどを主張する(パンフレットから)。活動の柱が「1千万賛同者拡大運動」。見すえるのは、国会で憲法改正が発議された後の国民投票だ。
②国民の会の内部資料には「1千万人の名簿をもって、国民投票の際には、家庭訪問・電話作戦によって全国一斉に行動を開始する」とある。今月末の達成をめざす「1千万」の内訳はどうなっているのか。
 「議員21万、神社5万の確約数」「神社4万、隊友会1万の確約数」……。「部外秘」と書かれた昨年10月の「賛同者拡大事務局通信」では、複数の県の報告の中に「確約数」との記述がある。日本会議の村主真人広報部長によると、いまは確約数という用語は使っていないが、国民投票に向けて「団体や個人が名簿の提出を約束した数も含めている」という。
③日本会議は2014年から、全国の地方議会で「憲法改正の早期実現を求める意見書」の採択を推し進める。
 「33都府県議会、つまり70%の地方議会で、憲法の早期改正をという意見書が採択された。国民の間でも議論が広がりつつある」。今月、国会議員懇談会の憲法改正プロジェクトチームで、山谷えり子・前拉致問題相は採択数を国民的な議論の広がりだと紹介した。地方議会の議決を重ねることで、憲法改正の機運を高め、国会議員に対して発議を迫る――。「地方から中央へと攻め上がる手法は、1970年代の元号法制化運動で成功を収めた」と村上正邦・元自民党参院議員会長は振り返る。
④国民の会は昨年11月、47都道府県すべてに地方組織をつくり終えた。
⑤憲法改正の議論では9条や緊急事態条項が注目されがちだが、日本会議は「家族保護条項」も重視する。日本会議が2013年11月にまとめた憲法改正の「3カ年構想」。それを記した内部文書には「軍事力増強」「緊急事態条項」と並んで「家族保護条項」が挙がっている。「今の憲法は『家族』よりも『個人』のほうが重い」。百地氏が監修し、日本会議が運動への活用を勧めるブックレット「女子の集まる 憲法おしゃべりカフェ」にも、そうある。「家族の絆を取り戻す」のに、なぜ憲法改正なのか。


 以下、朝日新聞の引用。








朝日新聞-(日本会議研究)憲法編:上 改憲へ、安倍政権と蜜月-2016年3月23日05時00分

 13日、東京・高輪のホテル。安倍晋三首相は自民党大会の後、参院選の立候補予定者への公認証交付を終えると、同じホテル内の宴会場に姿をみせた。

 新憲法制定を掲げる「日本会議」の地方議員連盟の総会だ。約160人が集った非公開の会合に、首相は15分とどまった。複数の出席者によると、あいさつで憲法改正への決意と国民投票に向けた世論喚起の重要性を強調し、「憲法改正は党是だ」と語った。
 ■会合、異例の配慮
 3月に入り、首相は憲法改正に積極的な国会答弁を繰り返していた。ところが党大会の20分のあいさつでは一言も触れず、「参院選前に拳を振りあげる必要はない」(自民党参院幹部)とする党内や公明党を意識したものと映った。

 その数時間後、一運動団体の非公開の会合で首相がみせた異例の配慮。日本会議によると、第2次安倍政権の発足後、首相が日本会議の公式行事に出席するのは初めてだった。

 首相、正副官房長官、閣僚、首相補佐官、衆参両院議長、自民党役員、派閥領袖(りょうしゅう)――。「部外秘」とある日本会議国会議員懇談会の名簿(昨年9月15日現在)には、政府・自民党幹部の氏名が並ぶ。首相が特別顧問を務め、当時の会員281人のうち246人を自民党が占める。衆院の6割、参院の5割が属す。

 これまでも島村宜伸氏、麻生太郎氏と自民党の大物議員が会長を務めたが、いまほど日本会議が政権中枢と接近し、注目された時代はなかった。「彼らは高揚感の中にある」と同党の閣僚経験者はいう。

 政権との蜜月を背景に、日本会議の田久保忠衛会長は昨年11月の講演で「我々が安倍さんについて行くのではなく、先兵になったらどうか。明治維新も下級武士がやった」と述べ、憲法改正の牽引(けんいん)役を務める自負を示した。今年2月、憲法改正を訴える集会では、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が「こんな憲法、破り捨てようではありませんか!」と呼びかけた。

 日本会議は1997年、新憲法の提唱や新しい日本史教科書づくりに取り組んだ「日本を守る国民会議」(81年発足)などが統合してできた。事務局の中枢を担うのは、60年代後半に全共闘などの学生運動に対抗した椛島有三事務総長ら、当時は反共的な主張をしていた宗教団体「生長の家」の出身者だ。多数の協力団体があり、会員は約3万8千人。国旗国歌法の制定や教育基本法の改正を推進し、夫婦別姓や外国人参政権には反対してきた。
 ■首相支える存在
 一方の首相は93年に自民党初の下野を体験した。河野洋平総裁のもと、結党以来の党是である「自主憲法制定」の見直しが検討されると、学生時代に生長の家で活動していた衛藤晟一衆院議員(当時)らと反対。96年、衛藤氏らとの共著で「心を込めた保守による『革命』を提唱したい」と書いた。97年にすべての中学歴史教科書に「慰安婦」に関する記述が載ることになると、故・中川昭一氏、衛藤氏と「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を立ちあげた。

 首相とともに歩み、いま補佐官として首相を支える衛藤氏は2014年10月、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の設立総会で、90年代を振り返りつつ述べた。「安倍内閣は憲法改正の最終目標のため、みんなの力を得て成立したと言っても過言ではない」

 衛藤氏が語りかけた国民の会を主導する団体こそ、日本会議だった。
    ◇
 安倍政権の足元で、政権と響きあうように運動を展開する日本会議。その実像を追う。憲法編は全3回。


朝日新聞-(日本会議研究)憲法編:中 国民投票へ、賛同拡大運動-2016年3月24日05時00分

 初詣客でにぎわう年始、東京都杉並区の大宮八幡宮の境内。日本会議が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のポスターが貼られ、「賛同署名」の用紙が置かれていた。

 東京都神社庁は憲法改正の推進宣言をホームページに掲げる。神社本庁の田中恒清総長は日本会議の副会長で、国民の会の代表発起人の一人でもある。
 ■「1千万人」名簿
 国民の会は「現在の憲法は『占領憲法』だ」として、前文に伝統文化を書き込むことや、天皇を元首と明記することなどを主張する(パンフレットから)。活動の柱が「1千万賛同者拡大運動」。見すえるのは、国会で憲法改正が発議された後の国民投票だ。

 投票数を6千万と設定。1千万人に2人ずつ声かけをしてもらうことで、過半数をうかがうが、日本会議幹部は「組織力がなければ、憲法改正に反対する『九条の会』などの運動に対抗できない」と話す。

 国民の会の内部資料には「1千万人の名簿をもって、国民投票の際には、家庭訪問・電話作戦によって全国一斉に行動を開始する」とある。今月末の達成をめざす「1千万」の内訳はどうなっているのか。

 「議員21万、神社5万の確約数」「神社4万、隊友会1万の確約数」……。「部外秘」と書かれた昨年10月の「賛同者拡大事務局通信」では、複数の県の報告の中に「確約数」との記述がある。日本会議の村主真人広報部長によると、いまは確約数という用語は使っていないが、国民投票に向けて「団体や個人が名簿の提出を約束した数も含めている」という。

 集計の仕方は様々だ。日本会議国会議員懇談会の幹部の秘書は確約数について「協力団体が機関決定した数も合算している」と説明。東日本の「県民の会」の幹部は「会員の地方議員は、1人数百として自動的にカウントしている」。また、別の日本会議関係者は「氏名の重複は精査していない」とする。

 わかりやすい言葉で浸透を図ろうと、憲法改正集会では著名人も講師を務める。元力士の舞の海秀平氏は昨年10月の講演で「日本人力士は相手も真っ向勝負でくると信じてぶつかるから負ける。『諸国民の公正と信義に信頼して』という憲法前文と同じことが相撲界でも起きている」と訴えた。今年2月からは作家の百田尚樹氏が総指揮を執った「憲法改正ドキュメンタリー」も上映する。
 ■議会では意見書
 これらと並行して、日本会議は2014年から、全国の地方議会で「憲法改正の早期実現を求める意見書」の採択を推し進める。

 「33都府県議会、つまり70%の地方議会で、憲法の早期改正をという意見書が採択された。国民の間でも議論が広がりつつある」。今月、国会議員懇談会の憲法改正プロジェクトチームで、山谷えり子・前拉致問題相は採択数を国民的な議論の広がりだと紹介した。

 地方議会の議決を重ねることで、憲法改正の機運を高め、国会議員に対して発議を迫る――。「地方から中央へと攻め上がる手法は、1970年代の元号法制化運動で成功を収めた」と村上正邦・元自民党参院議員会長は振り返る。

 戦後、憲法の施行で旧皇室典範が廃止され、元号の法的根拠が失われた。これを取り戻そうと、村上氏らは各地に組織をつくり、地方議会決議運動で79年の元号法成立につなげた。村上氏は日本会議の結成に大きく関わった人物で、「生長の家政治連合」の出身だ。

 国民の会は昨年11月、47都道府県すべてに地方組織をつくり終えた。


朝日新聞-(日本会議研究)憲法編:下 家族尊重、条文明記を主張-2016年3月25日05時00分

 親が子を虐待したり、子が親を殺してしまうといった痛ましい事件も後を絶たない。原因は様々だが、憲法に問題はないか――。

 ナレーションに続き、百地章・日本大学教授が「いまこそ憲法に家族の保護を明記し、家族の強い絆を取り戻す必要がある」と訴える。直後、百地氏が「3世代7人の大家族」と紹介した「サザエさん」一家の銅像の映像に切り替わる。

 「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が上映する「憲法改正ドキュメンタリー」の一コマだ。
 ■論文で24条批判
 憲法改正の議論では9条や緊急事態条項が注目されがちだが、日本会議は「家族保護条項」も重視する。

 日本会議が2013年11月にまとめた憲法改正の「3カ年構想」。それを記した内部文書には「軍事力増強」「緊急事態条項」と並んで「家族保護条項」が挙がっている。

 「今の憲法は『家族』よりも『個人』のほうが重い」。百地氏が監修し、日本会議が運動への活用を勧めるブックレット「女子の集まる 憲法おしゃべりカフェ」にも、そうある。「家族の絆を取り戻す」のに、なぜ憲法改正なのか。

 日本会議政策委員の伊藤哲夫氏が代表の「日本政策研究センター」。機関誌での提言をまとめた書籍の中に「今、なぜ家族尊重条項が必要なのか」(12年6月号)と題した論文がある。

 同年4月の自民党憲法改正草案は、両性の合意のみで結婚できるとする現行の24条を変更。さらに「家族は、互いに助け合わなければならない」などとする条項を追加した。

 論文は草案を評価し「戦後の日本社会には24条などに依拠して、極端な個人主義・男女平等イデオロギーが浸透した」と強調。「24条に盛られた『家族解体』の毒が猛威をふるっている現在、家族尊重条項の新設は、時代の要請といえるのではないか」と指摘した。

 一方、安倍晋三首相は野党時代の10年に出版された、日本会議役員も務める高橋史朗氏の対談集で「子育ての社会化は、『個人の家族からの解放』というイデオロギーを背景とした考え方」とし、「ポル・ポトが実行し、非常にすさんだ社会が生まれました」と批判した。

 日本政策研究センターの主張は、首相の考え方と重なりあう。代表の伊藤氏と首相をつないだ存在が、衛藤晟一首相補佐官だ。
 ■首相のブレーン
 衛藤氏の議員会館の部屋には首相の父・晋太郎氏の写真が飾られている。1986年の衆院選で落選した衛藤氏は晋太郎氏らに支えられ、90年に初当選を果たす。関係者によると、翌年晋太郎氏が死去すると、衛藤氏は「自分の持っている全てを晋三氏に伝え、首相にする」と誓ったという。

 その衛藤氏が60年代、冷戦下で反共的な主張をしていた頃の宗教団体「生長の家」でともに活動したのが伊藤氏だった。「衛藤が政治家になってからは、伊藤が政策的な支柱となった。伊藤の政策が、衛藤を介して首相に伝わるのは必然だった」(衛藤氏周辺)。日本会議政策委員の伊藤氏は、いまでは首相のブレーンとして知られる。

 衛藤、伊藤、日本会議事務総長の椛島有三に加え、百地、高橋の5氏。関係者の証言などによると、首相を支える5人はいずれも学生時代に生長の家で活動していた。

 《諸悪は悉(ことごと)く、占領憲法の各条項が、日本国家を(略)愛国心の剿滅(そうめつ)と、家庭破壊と、性頽廃(たいはい)とにより、やがては自滅の道をたどらざるを得ないように意図して起草されたるその目的の漸進的病毒の進行というほかはない》。生長の家創始者の谷口雅春氏は72年の著書「諸悪の因 現憲法」に記している。


by asyagi-df-2014 | 2016-03-29 06:15 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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