沖縄から-三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記第42回

沖縄の地で、体を張って新しい歴史を作ろうとしている人たちがいる。
そこには、その煌めきの記録を残そうとしているジャーナリストがいる。
だとしたら、その生きざまの瞬間を私たちは受け取る必要がある。
三上知恵の沖縄撮影日記。

 
 今回の報告は、宮古島が危機に瀕している状況と自衛隊配備に反対する宮古島のお母さんたちについて。
まずは、こんな状況についてです。


「神と、祈りと、自然と人間の調和がまだまだ息づいている最後の楽園が、今、かつて無い危機に瀕している。外国の艦隊に撃ち込むミサイルと、外国の航空機を打ち落とすミサイル、それを800人の自衛隊部隊と共にこの島に置くことが規定方針になっているのだ。日本政府は南西諸島の防衛強化を打ち出し、宮古島・石垣島周辺が『空白地帯』になっているとして攻撃力を持った陸上自衛隊を配備する。それだけではない。なにかあれば攻撃対象になり島が吹っ飛ぶ可能性もある大規模な弾薬庫が置かれる。実弾射撃訓練場も新設される。敵の上陸を想定して地下に司令部が置かれる。水陸両用車が海から陸に乗り上げる訓練をする着上陸訓練場も、貴重な自然の海岸線が残る東側の浜に作られてしまう。」


 その筋書きは次のようになります。


「敵、とは誰か。一体どこの国が日本に宣戦布告をして来る想定なのか。日本人のほとんどは『あくまで攻撃されたときに備えての防御であって、今のところ日本が戦争当事者になることは100%あり得ない』と思っているだろうし、こちらが先に撃つことなど想像もしないだろう。しかし米軍が想定しているのは、軍事力をメキメキと高めてきた中国が台湾を手中に収めようと動き出したときに、それを初期で叩き潰すこと。そのために、中国の船隊が琉球弧を通過するときに宮古・八重山から撃つというストーリーだ。
『ついに、ならずもの国家・中国が西側諸国の我々の権益を、生存を脅かし始めた。最初が肝心だ、宮古島の部隊から撃て!』とアメリカが集団的自衛権を背景に自衛隊に命じた場合に、日本政府が断れるだろうか。日本がやむなく『初期攻撃で事態を終わらせるつもり』で中国の戦艦を攻撃したら、それは中国にしてみれば日本からの宣戦布告である。彼らの反撃は正当なものとなり攻撃の対象が南西諸島だけに絞られる保証はない。
 このシナリオで行くと肝心のアメリカは無傷のまま、いつの間にか日本の国土が戦争の舞台になりかねないのだ。それもこれも、南西諸島にミサイル基地を置くことから始まる。アメリカの対中国戦略の中で、日本は兵隊と戦場、両方を提供する都合の良い存在になってしまう。」


 こんな状況の中で、てぃだぬふぁの会のお母さんたちの行動を、「お母さんたちは軍事戦略上、宮古島が背負わされる危険についてもよく知っていて危機感を持っている。しかしまだまだ自衛隊問題に関心のない島民にいきなりそんな話をしても通じない。まずは親子で遊びながら参加できるイベントで何でも話せる場所造りをして、子育てのこと、環境のこと、水や食の安全のことなどから軍事的な話まで学びあいができるようなイベントを次々に計画している。」、と報告します。
 それは、「自衛隊配備を水の危機から考える方が、宮古島民にとって身近な危機だ。」ということや「軍事的なことには疎い島民でも絶対にやめて欲しいと思っているのは、神さまの場所に手を入れることだ。」ということから、学びあいを始めるということについてです。
 また、共同代表を務める楚南有香子さん、宮古生まれの宮古育ちで。4歳の娘を持つ母親を姿を次のように描きます。


「インタビューに対して自衛隊配備計画は必ず止められると言った。間もなく用地取得の国の予算が下りて、ゴルフ場と牧場の地主がハンコを押してしまえば事態は大きく動く。一度基地を引受けてしまえば、動画でも紹介した野原(のばる)の通信施設のように当初の計画にはなかった規模の新しい異様な器機をニョキニョキと次々に建てられても、もう手も足も出ない。しかし反対の機運はまだまだ盛り上がっておらず、用地取得を辞めさせる妙案もない。
 それでも楚南さんはひるまない。戦火を逃げ惑った先祖から受け継いだDNAで絶対に止めるという。石垣や与那国とも連帯して止めていく、という彼女の目に宿る信念の光は、翁長知事やヒロジさんの眼光に通じるものがある。これ以上、日米両政府にとって都合の良い島に、島民の生活よりも軍事利用優先の島になるのを座視しているわけにはいかない。そう思って立ち上がったママさんたち、そしてその背景には上の世代で平和を求めて闘って来た宮古女性がたくさんいる。彼女たちの姿は、福島で頑張っている女性立ちとも呼応して、日本中に勇気をくれる存在になっていくと思う。」


 最後に、三上さんは、次のように呼びかけます。


 先祖と島の未来を背負った闘いは辺野古だけではなく宮古島、石垣島で本格化していく。止めたいのは、日本の運命をも左右する、戦争の引き金になる自衛隊の配置だ。
 私は三つ目の映画を作ってその現状を全国に伝えていく決意をした。前回のドキュメンタリー映画「戦場ぬ止み」同様に、資金はみなさんからのカンパが頼りの自転車操業になる。でも辺野古・宮古・石垣の闘いは日本の平和を守る最前線の闘いであるから、このマガジン9のサイトに日々の取材・撮影の途中経過を報告させて頂きながら制作を続けていきます。みなさん、どうかご支援のほど宜しくお願い致します。


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『戦場ぬ止み』のその後――沖縄の基地問題を伝え続ける三上智恵監督が、年内の公開を目標に新作製作取り組んでいます。製作費確保のため、皆様のお力を貸してください。

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 以下、三上智恵の沖縄(辺野古・高江)撮影日記第42回の引用。







第42回戦争の島にはさせない~自衛隊配備に反対する宮古島のお母さんたち~


 陣痛が始まってからわずか四時間で生まれたという。さすがに三人目ともなると落ち着いたものだ。待望の女の子を出産したのは、宮古島在住の石嶺香織さん。「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」の共同代表として、幼い子と大きなお腹を抱えながらも去年から宮古島への自衛隊配備に反対の声を上げてきた頑張り屋のお母さんだ。早速、メンバーのママさんたちは病院に駆けつけた。
 小さくてピンク色の足。差しだした指を掴んでくるちっちゃい手。この命を守らなくては。この島を軍事拠点として、領土としてしか見ない権力者の魔の手から宮古島を救うのは私たちしかいない。新しい命を前に、彼女たちは決意を新たにしていた。

 「胎盤は冷凍してあるよ」
 ちょっとギョッとする話だが、実は宮古では当たり前。宮古島には古い民俗・風習が豊富に残っている。かつては日本の農村でも胎盤を「活ける」といって裏庭とか玄関周りとか、身近な場所に埋める習慣があったが、今はほとんどが病院出産になったため回収業者が胎盤を持っていってしまう。コラーゲンや薬の原料になるので喜んで持っていくという。でも宮古島では今でも胎盤をちゃんと持ち帰って家の周囲のしかるべき場所に「活ける」。胎盤はあの世とこの世を繫ぐ大切な船であり、次の子宝を運んできてくれる存在として丁重に扱うのだ。宮古島独特の笑い話の中でも「家に帰って冷凍庫を見たら姉ちゃんの胎盤が入ってた」というのは定番だが、今回、本当に冷凍庫にあるのを確認して嬉しくなった。まだまだ原始的な風土が壊されていない。宮古島恐るべし、だ。

 そんな神と、祈りと、自然と人間の調和がまだまだ息づいている最後の楽園が、今、かつて無い危機に瀕している。外国の艦隊に撃ち込むミサイルと、外国の航空機を打ち落とすミサイル、それを800人の自衛隊部隊と共にこの島に置くことが規定方針になっているのだ。日本政府は南西諸島の防衛強化を打ち出し、宮古島・石垣島周辺が「空白地帯」になっているとして攻撃力を持った陸上自衛隊を配備する。それだけではない。なにかあれば攻撃対象になり島が吹っ飛ぶ可能性もある大規模な弾薬庫が置かれる。実弾射撃訓練場も新設される。敵の上陸を想定して地下に司令部が置かれる。水陸両用車が海から陸に乗り上げる訓練をする着上陸訓練場も、貴重な自然の海岸線が残る東側の浜に作られてしまう。

 敵、とは誰か。一体どこの国が日本に宣戦布告をして来る想定なのか。日本人のほとんどは「あくまで攻撃されたときに備えての防御であって、今のところ日本が戦争当事者になることは100%あり得ない」と思っているだろうし、こちらが先に撃つことなど想像もしないだろう。しかし米軍が想定しているのは、軍事力をメキメキと高めてきた中国が台湾を手中に収めようと動き出したときに、それを初期で叩き潰すこと。そのために、中国の船隊が琉球弧を通過するときに宮古・八重山から撃つというストーリーだ。
 「ついに、ならずもの国家・中国が西側諸国の我々の権益を、生存を脅かし始めた。最初が肝心だ、宮古島の部隊から撃て!」とアメリカが集団的自衛権を背景に自衛隊に命じた場合に、日本政府が断れるだろうか。日本がやむなく「初期攻撃で事態を終わらせるつもり」で中国の戦艦を攻撃したら、それは中国にしてみれば日本からの宣戦布告である。彼らの反撃は正当なものとなり攻撃の対象が南西諸島だけに絞られる保証はない。
 このシナリオで行くと肝心のアメリカは無傷のまま、いつの間にか日本の国土が戦争の舞台になりかねないのだ。それもこれも、南西諸島にミサイル基地を置くことから始まる。アメリカの対中国戦略の中で、日本は兵隊と戦場、両方を提供する都合の良い存在になってしまう。

 てぃだぬふぁの会のお母さんたちは軍事戦略上、宮古島が背負わされる危険についてもよく知っていて危機感を持っている。しかしまだまだ自衛隊問題に関心のない島民にいきなりそんな話をしても通じない。まずは親子で遊びながら参加できるイベントで何でも話せる場所造りをして、子育てのこと、環境のこと、水や食の安全のことなどから軍事的な話まで学びあいができるようなイベントを次々に計画している。

 特に水に関して宮古島は特殊な事情がある。すべてを地下ダムに頼っているのだ。大きな山もないから川もあまりないこの島では、石灰岩の地層にため込んだ水だけが頼り。つまり隆起珊瑚礁でできている島の地下に一つの大きな水瓶があるようなもので、そこから離島にまで供給しているのだ。限られた量しか保持できないのに基地で大量の水を消費して足りなくなったり、また有害物質が垂れ流されて地下水が汚染されたら、宮古群島は丸ごと生き残れない。しかし自衛隊の予定地はまさに水源の真上に位置している。軍の機密上、基地の中野出入りは制限される中で、島民にとっての不安は計り知れない。

 宮古島では島建ての神話や神歌には必ず湧き水の話が盛り込まれる。あっちの「カー(井戸・湧き水)」は塩味で、こっちの「カー」は濁っている。でもこの「カー」なら水は甘い。ここに村をつくるとしよう。そんな風に語られている。水は人間集団の生活の基盤である。だからこそ、水が涸れることなく供給される井戸に、人々は神を感じた。水を汚し、水の神を軽んじるものにはバチが当たる。この信仰は深く宮古島の人々の中に浸透している。以前も宮古島の水源地に掛かる場所に計画されたゴルフ場を、島民が団結して断念させたことがある。自衛隊配備を水の危機から考える方が、宮古島民にとって身近な危機だ。

 もうひとつ、軍事的なことには疎い島民でも絶対にやめて欲しいと思っているのは、神さまの場所に手を入れることだ。御嶽(ウタキ)という沖縄独特の聖地は各集落に複数あるが、今回の自衛隊予定地の中にもいくつも含まれてしまう。逆に言えば島中に点在する聖地を除けて基地を造るのは不可能だ。防衛局は早々にこれに配慮して「基地取得用地内でもウタキは保全します」とうたっている。しかし、最も近い集落に当たる福山の自治会長さんは山と御嶽の関係をこう話した。
 「御嶽だけ囲って、保全しました、どうぞ拝んで下さいと言ってもね、大切なのは山だから。オイオキ御嶽は嶺の中腹にあったのを拝みやすいように手前に拝所を作ったもの。拝所だけ残しても山を訓練場に取られてしまったら大変なことになる」予定地海側の広瀬御嶽(ビッシウタキ)は航海安全の神さまを祀る御嶽で、宮古各地から信仰を集めている有名な聖地だ。そこが基地になって入れなくなると知ったら、海を隔てた大神島のおばあたちでさえ「何もわからん人のやることは怖い」と顔を曇らせていた。
 島を守り、子孫の繁栄のために常に神さまと繋がって神人(カミンチュ)の役割を果たしてきた女性たちがダメだということは、ここではまずうまくいかないだろう。今回の動画に出てくる立派なガジュマルの木が中心にある御嶽も、メンバーは誰一人行ったこともなかったのに撮影中吸い寄せられるように辿り着いてしまった。ピンフという御嶽の神さまが、ママたちのグループにもっと頑張ってくれと激励したくて呼び寄せたのかも知れない。

 共同代表を務める楚南有香子さんは、宮古生まれの宮古育ち。4歳の娘を持つ母親だが、インタビューに対して自衛隊配備計画は必ず止められると言った。間もなく用地取得の国の予算が下りて、ゴルフ場と牧場の地主がハンコを押してしまえば事態は大きく動く。一度基地を引受けてしまえば、動画でも紹介した野原(のばる)の通信施設のように当初の計画にはなかった規模の新しい異様な器機をニョキニョキと次々に建てられても、もう手も足も出ない。しかし反対の機運はまだまだ盛り上がっておらず、用地取得を辞めさせる妙案もない。
 それでも楚南さんはひるまない。戦火を逃げ惑った先祖から受け継いだDNAで絶対に止めるという。石垣や与那国とも連帯して止めていく、という彼女の目に宿る信念の光は、翁長知事やヒロジさんの眼光に通じるものがある。これ以上、日米両政府にとって都合の良い島に、島民の生活よりも軍事利用優先の島になるのを座視しているわけにはいかない。そう思って立ち上がったママさんたち、そしてその背景には上の世代で平和を求めて闘って来た宮古女性がたくさんいる。彼女たちの姿は、福島で頑張っている女性立ちとも呼応して、日本中に勇気をくれる存在になっていくと思う。

 先祖と島の未来を背負った闘いは辺野古だけではなく宮古島、石垣島で本格化していく。止めたいのは、日本の運命をも左右する、戦争の引き金になる自衛隊の配置だ。
 私は三つ目の映画を作ってその現状を全国に伝えていく決意をした。前回のドキュメンタリー映画「戦場ぬ止み」同様に、資金はみなさんからのカンパが頼りの自転車操業になる。でも辺野古・宮古・石垣の闘いは日本の平和を守る最前線の闘いであるから、このマガジン9のサイトに日々の取材・撮影の途中経過を報告させて頂きながら制作を続けていきます。みなさん、どうかご支援のほど宜しくお願い致します。



三上智恵(みかみ・ちえ): ジャーナリスト、映画監督/東京生まれ。大学卒業後の1987年、毎日放送にアナウンサーとして入社。95年、琉球朝日放送(QAB)の開局と共に沖縄に移り住む。夕方のローカルワイドニュース「ステーションQ」のメインキャスターを務めながら、「海にすわる〜沖縄・辺野古 反基地600日の闘い」「1945〜島は戦場だった オキナワ365日」「英霊か犬死か〜沖縄から問う靖国裁判」など多数の番組を制作。2010年には、女性放送者懇談会 放送ウーマン賞を受賞。初監督映画『標的の村~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』は、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、キネマ旬報文化映画部門1位、山形国際ドキュメンタリー映画祭監督協会賞・市民賞ダブル受賞など17の賞を獲得。現在も全国での自主上映会が続く。15年には辺野古新基地建設に反対する人々の闘いを追った映画『戦場ぬ止み』を公開。ジャーナリスト、映画監督として活動するほか、沖縄国際大学で非常勤講師として沖縄民俗学を講じる。『戦場ぬ止み 辺野古・高江からの祈り』(大月書店)を上梓。


by asyagi-df-2014 | 2016-02-28 16:02 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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