大分合同新聞特集「沖縄の叫び 日出生台の今 米軍訓練2016」から(特集③まで)

 大分合同新聞(以下、合同とする)は、「15日から大分県の陸上自衛隊日出生台演習場で11回目となる米軍の実弾砲撃訓練が始まる。19年前、県と湯布院、玖珠、九重の地元3町(当時)は沖縄の負担軽減を目的に苦渋の選択を強いられ、訓練を受け入れた。当時の目的は果たされているのか。地元3町などが要望していた将来に向けた訓練の縮小・廃止は進んでいるのか。米軍問題に翻弄(ほんろう)される沖縄、大分の現場を取材した。」、と特集を始めた。
 まずは、沖縄の叫びを伝える。その叫びの結論を、「今止めないと」との声に込めて。


 沖縄からの叫び。

「宝の海。一度壊したら戻りません。作業をやめてください」

「オイルフェンスなどを設置するためのブロックだろう。あれを投下されたら、工事は本格化する」

「周辺には約3千人の市民が生活し、日頃からヘリコプターの騒音や廃弾処理の爆発音などに苦しんでいる。移設は基地機能の強化に他ならず、今まで以上の負担を課すというのか」

「1年8カ月、ごぼう抜きに耐えてきた。今、建設を進められたら、これからの世代に申し訳ない。何としても止めねば」

「会話が聞こえなくなることもあります。日常茶飯事なので、あまり気にしていません」と答え、こう続けた。「時折、どうしようもない不安に襲われます。わが子のいる保育園や小学校に墜落しないかと。2004年に近くの沖縄国際大学にヘリが落ちましたから」

「部品などはどこで落ちたか分からず、住宅街に落下してもおかしくない。生命への危険性や騒音被害に加え、効率的なまちづくりを進める上でも阻害要因になっている。市民生活への影響は極めて大きい」

「多くの市民は、ここから危険をなくしてほしいと思っているだけ。同じ苦しみを同じ県民に押しつけるのは心が痛い」


 だから、合同は、「『今止めないと』思い強く」、と。


 合同は、この特集で、(1)沖縄の負担軽減を目的に苦渋の選択を強いられ、訓練を受け入れた。当時の目的は果たされているのか、(2)地元3町などが要望していた将来に向けた訓練の縮小・廃止は進んでいるのか、という問いを設定した。
 この問いに答えるため前に、問題の基本を次のように指摘する。
 大分県にとって「沖縄基地問題」の原点は、「 沖縄本島中部にあるキャンプ・ハンセンは約5千ヘクタールの敷地に兵舎や訓練場を備え、4市町村にまたがる。かつて金武町と恩納村を結ぶ生活道路を封鎖し、対面の山にりゅう弾砲を放つ「県道104号越え演習」が実施されていた。米兵の沖縄少女暴行事件(1995年)をきっかけに、県道越え演習は本土5カ所に移転。陸上自衛隊日出生台演習場はその一つ。」、と。
 では、(1)沖縄の負担軽減を目的に苦渋の選択を強いられ、訓練を受け入れた。当時の目的は果たされているのか、ということはどうなったのか。
 合同は、その結果を、「ここ数年、訓練は激しくなった」、。「ここに家があるぞ。突っ込むな」、と次のように描写する。


 「確かにりゅう弾砲の地響きはなくなったが、米軍に起因するトラブルは後を絶たない」。金武町企画課の安富浩之係長は指摘する。過去10年間の統計で山火事は63件。酒に酔った米兵が地元民家に押し入ったり、タクシー運転手を殴るなど刑事事件も毎年のように起きている。
 宜野座村漢那の泉忠信さん(85)は「ここ数年、訓練は激しくなった」と感じている。2012年10月に普天間飛行場(宜野湾市)へ配備された新型輸送機MV22オスプレイが飛来するようになったためだ。
 数百メートル先にはキャンプ・ハンセンのヘリパッド(発着帯)がある。自宅の真上を低空で飛び、テーブルは揺れる。プロペラ音が聞こえると、家族は深夜でも目を覚ます。そして、孫2人の寝ている2階の部屋で照明をつける。「ここに家があるぞ。突っ込むな」との意思表示。


 結局、(1)の問いの答えとして、「『一つ訓練がなくなれば、新しい訓練がやってくる。その繰り返しだ。一体、いつまで耐えねばならないのでしょうか』。泉さんは寂しげにつぶやいた。」、という以前に増して厳しい環境に耐えなけねばならない沖縄の現実の姿を報告する。


 しかし、沖縄の現実は、これだけでは留まらない。日本本土からの誤解、いやむしろ理不尽な無理解という圧力である。
 このことについて、合同は、こうした意見を紹介する。
 

「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市・辺野古移設をめぐり、対立を深める国と沖縄県。埋め立て承認に関連して互いに提訴する事態に発展し、その様子は連日、報じられている。沖縄県の担当部署には全国から励ましの声も寄せられるが、非難めいた意見も相次ぐ。「沖縄から米軍がいなくなる。日本を中国に取られていいのか」「沖縄は基地経済に依存しているでしょう」


 こうした理不尽な圧力については、次のように、明快に沖縄からの反論を載せる。


①沖縄県によると、県内の米軍専用施設は32カ所、約2万3千ヘクタール。沖縄本島面積の18・4%に相当する。普天間飛行場は約480ヘクタール。施設全体の2%にすぎない。県辺野古新基地建設問題対策課の新垣耕主幹は「単に危険な飛行場を返還してもらい、機能は沖縄に残さないでと訴えているだけです」。
②沖縄経済についても「誤解されている」と指摘する。県民総所得に占める軍用地料や基地内雇用など「基地収入」は返還当時(1972年)の15・5%から、2012年には5・4%へ低下した。国からの財政移転(国庫支出金+地方交付税)は県民1人当たり51万8千円と全国6位(13年度決算ベース。岩手、宮城、福島各県を除く)。県企画調整課の兼次聡子主査は「過度に大きな支援は受けていません」と強調した。
③中国の軍拡や北朝鮮の核開発など、日本の安全保障環境は大きく変化している。政府は「米軍の沖縄駐留は抑止力維持に必要」と主張し、世論調査でも日米同盟を支持する声は多い。一方で、沖縄県には在日米軍施設の74%が集中している過酷な現実がある。県基地対策課の久貝仁副参事は「沖縄は先の大戦で唯一の地上戦があった地。平和への思いは強く、歴史にも目を向けてほしい」と願う。
④「負担のたらい回しはやめましょう」と呼び掛けるのは沖縄国際大学非常勤講師の屋良朝博さん(53)。1月30日に玖珠町で開催された日米地位協定の見直しなどを求めた集会に参加した。「安全保障をどう考えるかは大切。日米関係をどのように保つかといった小さな世界観でなく、日本がアジア太平洋地域で果たす役割は何かと議論し、米軍基地の整理、縮小を目指してほしい」


 合同は、(1)の問いのまとめを、「誤った認識も交錯している沖縄県の基地問題。私たちは南からの悲痛なメッセージを受け止めることができているのだろうか。」、とくくる。


 以下、大分合同新聞の引用。








分合同新聞-今止めなければ 沖縄の叫び 日出生台の今 米軍訓練2016-2016年2月9日


 「宝の海。一度壊したら戻りません。作業をやめてください」。太平洋側に面した沖縄本島中部の辺野古・大浦湾。サンゴ礁に加えウミガメやジュゴンなど希少生物が生息する海域は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として、埋め立てに向けたボーリング調査などが進められていた。反対派市民らは漁船3隻とカヌー10艇などを繰り出し、拡声器で作業の中止を訴えていた。
 計画地周辺を囲む浮具を挟み、沖縄防衛局の旗を掲げた警備会社や海上保安庁のボート約20隻が抗議船と向き合っていた。「法令違反です。速やかに退去してください」と連呼し、緊張感が張り詰める。その奥には、大きなコンクリートブロックを積んだクレーン付きの作業船を確認できた。
 「オイルフェンスなどを設置するためのブロックだろう。あれを投下されたら、工事は本格化する」。市民グループ「ヘリ基地反対協議会」の事務局次長、仲本興真さん(67)=名護市=は表情を曇らせた。
 名護市によると、飛行場の代替施設は米軍のキャンプ・シュワブと一体化する形で計画が進められている。160ヘクタールを埋め立て、計205ヘクタールを確保し、1200メートルの滑走路2本をV字状に整備する。
 「周辺には約3千人の市民が生活し、日頃からヘリコプターの騒音や廃弾処理の爆発音などに苦しんでいる。移設は基地機能の強化に他ならず、今まで以上の負担を課すというのか」。基地対策を担当する市企画部の仲宗根勤参事は語気を強めた。
 キャンプ・シュワブのゲート前では約50人が座り込み、抗議の声を上げていた。後方には工事用車両の侵入を阻むため、ブロックを1メートル以上積み上げていた。その後ろには警備会社の社員が並び、物々しい雰囲気。周囲には警察官らが反対派の動向に目を光らせていた。
 座り込み参加者の話では連日、午前6時半から午後4時ごろまで続け、作業車が近づくと機動隊員に強制排除されるという。「1年8カ月、ごぼう抜きに耐えてきた。今、建設を進められたら、これからの世代に申し訳ない。何としても止めねば」。リーダーの山城博治沖縄平和運動センター議長(63)は唇をかんだ。

 15日から大分県の陸上自衛隊日出生台演習場で11回目となる米軍の実弾砲撃訓練が始まる。19年前、県と湯布院、玖珠、九重の地元3町(当時)は沖縄の負担軽減を目的に苦渋の選択を強いられ、訓練を受け入れた。当時の目的は果たされているのか。地元3町などが要望していた将来に向けた訓練の縮小・廃止は進んでいるのか。米軍問題に翻弄(ほんろう)される沖縄、大分の現場を取材した。


大分合同新聞-危険なくしたいだけ 沖縄の叫び 日出生台の今 米軍訓練2016① -2016年2月9日


 1月28日正午前。4日前にみぞれを初観測した沖縄本島も、この日は最高気温が20度を超えた。汗ばむ陽気に窓を開けて乗用車を運転中、プロペラ音が突然聞こえてきた。地面から突き上げる震動音。正面を見上げると、大きな機体が住宅街のすぐ上を横切った。操縦席の窓が分かる大きさ。米軍の新型輸送機MV22オスプレイだ。
 沖縄県宜野湾市。「世界一危険な基地」とされる米軍普天間飛行場は、まちのど真ん中に居座る。市民約9万6千人は市全体の約25%を占める広大な飛行場の周囲で暮らす。キャンプ瑞慶覧もあり、基地面積を除いた人口密度は1平方キロ当たり7254人(2014年12月)。東京都や大阪府を上回る。
 飛行場に隣接する公園で4歳の長女を遊ばせていた会社員女性(38)は「会話が聞こえなくなることもあります。日常茶飯事なので、あまり気にしていません」と答え、こう続けた。「時折、どうしようもない不安に襲われます。わが子のいる保育園や小学校に墜落しないかと。2004年に近くの沖縄国際大学にヘリが落ちましたから」
 市によると、飛行場にはオスプレイの他、攻撃ヘリなど48機が常駐。装備品や部品の落下、強行着陸による炎上など飛行場所属機による国内外での事故は1972年以降、100件以上も確認されている。年平均で2・4回の頻度だ。県外の基地から空中給油機などが飛来することも多い。
 市基地渉外課の真境名由誠(まじきなゆうせい)係長は「部品などはどこで落ちたか分からず、住宅街に落下してもおかしくない。生命への危険性や騒音被害に加え、効率的なまちづくりを進める上でも阻害要因になっている。市民生活への影響は極めて大きい」と強調した。
 みぞれを観測した日、宜野湾市では政府、与党の全面支援を受けた現職と翁長雄志沖縄県知事らが支えた新人による激しい市長選があった。現職圧勝の直後、政府は防衛省組織令の改正を閣議決定し、飛行場の辺野古(名護市)移設に向けて動きを加速させた。
 「政府は勘違いしないでほしい」。飛行場北側に住む野嵩(のだけ)1区自治会長の新城嘉隆さん(48)は指摘した。「多くの市民は、ここから危険をなくしてほしいと思っているだけ。同じ苦しみを同じ県民に押しつけるのは心が痛い」
 辺野古移設「賛成34%」「反対57%」。宜野湾市長選当日に、地元紙の沖縄タイムス社などが実施した出口調査の結果は、新城さんの思いを裏付けていた。
「今止めないと」思い強く


大分合同新聞-我慢いつまで… 沖縄の叫び 日出生台の今 米軍訓練2016②-2016年2月10日

 
 「あそこです。分かるでしょう」。沖縄県金武(きん)町議の仲間昌信さん(68)はキャンプ・ハンセン内西側にある屋嘉岳(やかだけ)を指した。一帯の斜面は木々の深緑が失われ、山肌が露出した部分も見える。昨年12月18日に山火事が起きた現場だ。米軍の小火器訓練が原因らしい。
 午後1時20分ごろに発生した火事は夜になっても燃え続けた。民家から1キロほど。町の消防車は基地内に入れず引き返した。消火に当たっていた米軍ヘリ1機は、日没とともに断念。夜は監視するだけ。「夜間訓練はするのに、どうして消火活動はしないのか。あの日は恐ろしくて眠れなかった」。仲間さんは憤る。鎮火したのは翌日の正午前。24ヘクタールが焼失した。
 沖縄本島中部にあるキャンプ・ハンセンは約5千ヘクタールの敷地に兵舎や訓練場を備え、4市町村にまたがる。かつて金武町と恩納村を結ぶ生活道路を封鎖し、対面の山にりゅう弾砲を放つ「県道104号越え演習」が実施されていた。米兵の沖縄少女暴行事件(1995年)をきっかけに、県道越え演習は本土5カ所に移転。陸上自衛隊日出生台演習場はその一つ。大分県にとって「沖縄基地問題」の原点でもある。
 「確かにりゅう弾砲の地響きはなくなったが、米軍に起因するトラブルは後を絶たない」。金武町企画課の安富浩之係長は指摘する。過去10年間の統計で山火事は63件。酒に酔った米兵が地元民家に押し入ったり、タクシー運転手を殴るなど刑事事件も毎年のように起きている。
 宜野座村漢那の泉忠信さん(85)は「ここ数年、訓練は激しくなった」と感じている。2012年10月に普天間飛行場(宜野湾市)へ配備された新型輸送機MV22オスプレイが飛来するようになったためだ。
 数百メートル先にはキャンプ・ハンセンのヘリパッド(発着帯)がある。自宅の真上を低空で飛び、テーブルは揺れる。プロペラ音が聞こえると、家族は深夜でも目を覚ます。そして、孫2人の寝ている2階の部屋で照明をつける。「ここに家があるぞ。突っ込むな」との意思表示。
 「一つ訓練がなくなれば、新しい訓練がやってくる。その繰り返しだ。一体、いつまで耐えねばならないのでしょうか」。泉さんは寂しげにつぶやいた。


大分合同新聞-誤った認識交錯 沖縄の叫び 日出生台の今 米軍訓練2016③-2016年2月11日


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市・辺野古移設をめぐり、対立を深める国と沖縄県。埋め立て承認に関連して互いに提訴する事態に発展し、その様子は連日、報じられている。沖縄県の担当部署には全国から励ましの声も寄せられるが、非難めいた意見も相次ぐ。「沖縄から米軍がいなくなる。日本を中国に取られていいのか」「沖縄は基地経済に依存しているでしょう」
 沖縄県によると、県内の米軍専用施設は32カ所、約2万3千ヘクタール。沖縄本島面積の18・4%に相当する。普天間飛行場は約480ヘクタール。施設全体の2%にすぎない。県辺野古新基地建設問題対策課の新垣耕主幹は「単に危険な飛行場を返還してもらい、機能は沖縄に残さないでと訴えているだけです」。
 沖縄経済についても「誤解されている」と指摘する。県民総所得に占める軍用地料や基地内雇用など「基地収入」は返還当時(1972年)の15・5%から、2012年には5・4%へ低下した。国からの財政移転(国庫支出金+地方交付税)は県民1人当たり51万8千円と全国6位(13年度決算ベース。岩手、宮城、福島各県を除く)。県企画調整課の兼次聡子主査は「過度に大きな支援は受けていません」と強調した。
 中国の軍拡や北朝鮮の核開発など、日本の安全保障環境は大きく変化している。政府は「米軍の沖縄駐留は抑止力維持に必要」と主張し、世論調査でも日米同盟を支持する声は多い。一方で、沖縄県には在日米軍施設の74%が集中している過酷な現実がある。県基地対策課の久貝仁副参事は「沖縄は先の大戦で唯一の地上戦があった地。平和への思いは強く、歴史にも目を向けてほしい」と願う。
 「負担のたらい回しはやめましょう」と呼び掛けるのは沖縄国際大学非常勤講師の屋良朝博さん(53)。1月30日に玖珠町で開催された日米地位協定の見直しなどを求めた集会に参加した。「安全保障をどう考えるかは大切。日米関係をどのように保つかといった小さな世界観でなく、日本がアジア太平洋地域で果たす役割は何かと議論し、米軍基地の整理、縮小を目指してほしい」
 誤った認識も交錯している沖縄県の基地問題。私たちは南からの悲痛なメッセージを受け止めることができているのだろうか。


by asyagi-df-2014 | 2016-02-14 05:57 | 米軍再編 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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