沖縄から-三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記第39回

沖縄の地で、体を張って新しい歴史を作ろうとしている人たちがいる。
そこには、その煌めきの記録を残そうとしているジャーナリストがいる。
だとしたら、その生きざまの瞬間を私たちは受け取る必要がある。
三上知恵の沖縄撮影日記。

 
 今回の報告は、「沖縄の1月は寒い。太陽が出ない。雨が降ると風が強くなり、体感温度はとても低くなる。どこか常夏の島に行きたいとさえ思う。風と雨の中で辺野古阻止行動の現場は体力も気力も限界を迎えている。」、と始まる。
 まずは、宜野湾市の市長選挙と辺野古の闘いについて、次のように伝える。


 「普天間基地を抱える宜野湾市の市長選挙が真っ只中である。現職の佐喜真市長は、選挙戦の中では「普天間閉鎖」としか言わないが、それは辺野古への移設を容認した上の主張であることは誰でも知っている。だからこそ対抗馬の新人、志村氏がそれに打ち勝たなければ、オール沖縄で辺野古に反対しているという構図が崩れたと、政府は鬼の首を取ったように強行に辺野古の埋め立てに入るだろう。初日から自民党の大物政治家が投入され、またも小さな島の市長選とは不釣り合いな現政権の意地をかけた選挙になった。
 誰が市長になるかで翁長知事を支える体制を沖縄が維持できるかどうかを試す。前回も書いたが、これは何重にもおかしい。こんないびつな選挙を何度沖縄県民は超えなければならないのか、宜野湾市民がかわいそうだし、悔しい。それでも、辺野古の基地建設を止める最後の分水嶺になるという覚悟の上で、現場からも毎日選挙応援に人を送り込んでいる。早朝辺野古でダンプを止めてその足で宜野湾に向かう人も多い。」


 その闘いについて、「かといって、選挙が迫っても辺野古のゲートに押し寄せる資材も機動隊も一向に減らない。選挙戦に影響するからと少し手が緩むかと期待したが、逆にこれまでの遅れを取り戻すかのように、年が明けて投入される物量が増えた。早朝1回で終わっていた資材の搬入が2回、3回と午後まで続くようになり、現場の疲労は激しい。」、と。
しかし、「木曜行動」が新しく始まったと、報告する。


 今回、三上さんは、訴えます。


 「みなさんには見えるだろうか。私たちは今、日本の民主主義と平和を守る最前線にいる。私たちが止めているのは、政府の一つの公共工事ではない。迷惑施設を嫌がっているだけでもない。憲法も民主主義も地方自治もないがしろにしながら暴走する安倍政権が私たち日本国民をどんな暗黒の世界に引き込もうとしているのか、それが他府県の人たちよりも明確に見えているから踏ん張っているのだ。
 優しい沖縄県民は決してこんな言い方はしないが、私はあえて言おう。今日は言わせてもらう。毎日ケータイでゲームをして、テレビでは芸能人が遊んでいる番組しか見ない、投票にも行かず、国策で誰かの人権を著しく奪い、苦しめている現状を見ようともしないで、加害者になっている意識を持つこともない民度の低い国民を含めて、この国に生きる人が権力に怯え、武器に怯え、貧困に怯え、他国民と自国民の命を守れないと絶望する運命に向かっている現状をこの沖縄で止めているのだ。

 安保法制に反対して国会まで行ったものの、法案が成立し無力感に襲われたままの人もいるだろう。原発事故の被害から救済されず、政治活動どころではない被災者もまだたくさんいるだろう。身近なパワハラ、マタハラに接してもどう動いていいか解らずに悶々としている人も、格差社会、弱者切り捨て社会に切り込むよりも、勝ち組に滑り込む手段を必死に探るほうが利口だと決めた人もいるかも知れない。今は動けない人は大勢いるだろう。沖縄にも、まだ立ち上がっていない人はもちろんたくさんいる。でもその人たちも含め、やがては一緒に政治の暴走と闘ってくれるだろうという希望を胸に、辺野古に来る人たちはみなさんの分まで引き受けて闘っているのだ。
 オール沖縄が潰されるということは、日本の国の中で国民主権を取り戻す最後の砦が潰されるということだとまだ気付いていない人たちのためにも、まだ引き返せる砦を包囲できる自分たちが闘うしかないと解っているから、全国から派遣されてくる機動隊に向き合って一歩も退かない。地域エゴやイデオロギーの問題だとすり替えて鼻で笑おうとしている勇気のないあなたの人権もかけて、市民の力、国民の力をこれ以上削がれないために、立ち続けている。」


 ついに、三上さんは、このように報告します。


 三上さんがこんな泣き言を言ったら終わりだよ。と言われるのが解っているから現場では言わない。でも、私のような悲観的なへなちょこがいるから、彼らの凄さが伝えられるんだとも思う。そうやって自分の存在意義を自分で肯定しながら、現場に通うしかない。そんな弱虫の私がいま、力のない言葉で表現するとしたらこんなもんだ。


 「崖っぷちです。沖縄が潰されたあとに何が待っているか考えて、動いてください」

 安っぽい。やはり、映像を撮って伝える方が私には向いているのかも知れない。


 以下、三上智恵の沖縄(辺野古・高江)撮影日記第39回の引用。







第39回最後の砦を守る人々~辺野古「木曜行動」開始~-2016年1月20日


 沖縄の1月は寒い。太陽が出ない。雨が降ると風が強くなり、体感温度はとても低くなる。どこか常夏の島に行きたいとさえ思う。風と雨の中で辺野古阻止行動の現場は体力も気力も限界を迎えている。

 普天間基地を抱える宜野湾市の市長選挙が真っ只中である。現職の佐喜真市長は、選挙戦の中では「普天間閉鎖」としか言わないが、それは辺野古への移設を容認した上の主張であることは誰でも知っている。だからこそ対抗馬の新人、志村氏がそれに打ち勝たなければ、オール沖縄で辺野古に反対しているという構図が崩れたと、政府は鬼の首を取ったように強行に辺野古の埋め立てに入るだろう。初日から自民党の大物政治家が投入され、またも小さな島の市長選とは不釣り合いな現政権の意地をかけた選挙になった。
 誰が市長になるかで翁長知事を支える体制を沖縄が維持できるかどうかを試す。前回も書いたが、これは何重にもおかしい。こんないびつな選挙を何度沖縄県民は超えなければならないのか、宜野湾市民がかわいそうだし、悔しい。それでも、辺野古の基地建設を止める最後の分水嶺になるという覚悟の上で、現場からも毎日選挙応援に人を送り込んでいる。早朝辺野古でダンプを止めてその足で宜野湾に向かう人も多い。

 かといって、選挙が迫っても辺野古のゲートに押し寄せる資材も機動隊も一向に減らない。選挙戦に影響するからと少し手が緩むかと期待したが、逆にこれまでの遅れを取り戻すかのように、年が明けて投入される物量が増えた。早朝1回で終わっていた資材の搬入が2回、3回と午後まで続くようになり、現場の疲労は激しい。

 毎週水曜日は「水曜行動」といって県内市町村や県議会から議員たちが座り込む日になっている。この数カ月、水曜日は人数が早朝から300人を超えているので機動隊も手を出さない。その結果、毎週水曜日はほぼ作業が行われない日になっている。現状は週に一回は阻止できているわけだから、特別行動の日を週に二日、三日と増やして止めていけば工事は難しくなる。ヒロジさんの提案で今週からは「木曜行動」と銘打って島ぐるみのバスを調整し、毎週木曜日にも早朝から人数を揃えることにした。

 アメリカ軍基地の朝は早い。阻止行動など無くても暗いうちから軍用車両は演習に向かい、基地従業員は出勤する。基地を止めたい人たちも本島の各地から5時台に続々と集まってくる。
 悪性リンパ腫末期から壮絶な闘病生活を経て闘争現場に戻ったヒロジさんは、何度も激しく資材搬入を強行されてしまった先週の木曜日午後、テントで倒れた。冷たい風と雨が続く中で風邪をこじらせたといってしばらく休んだが、自分で提案した木曜行動が功を奏するかどうか、いても立っても居られなかったのだろう。この日はいつにもまして朝から鬼気迫る気迫で現場に立っていた。

 まだ真っ暗の中、6時過ぎに人数を数えると320人。水曜行動も上回る数だ。上々だ。この人数を相手に警視庁の機動隊をけしかければ大混乱になる。完全に阻止した昨日に続いて、きょうも手出しはできまい。我々の勝ちだ。そうヒロジさんは言いたかった。毎朝、闇の中で座り始める文子おばあも、きょうは止めるよ、と笑顔を見せていた。が、続々とやってくる警察車両の列。ヒロジさんは「大衝突になるぞ。本気なのか?」と警察幹部に何度も掛け合った。しかし上層部の決断は「きょうは引くな」だったようだ。

 冬の沖縄の灰色の空の下で毎日何が行われているか、今回の動画も13分と長いが、とくと見て欲しい。地元のニュースでも「昨日は370人集まり、高齢女性一人が救急車で搬送」「男性一人の拘留が続いている」という情報が出るかでないかであるが、1997年から身体を張って止めてきた基地建設の現場で毎日何が起きているのか、交通費を払ってこられないならせめて、13分見て欲しいのだ。

 みなさんには見えるだろうか。私たちは今、日本の民主主義と平和を守る最前線にいる。私たちが止めているのは、政府の一つの公共工事ではない。迷惑施設を嫌がっているだけでもない。憲法も民主主義も地方自治もないがしろにしながら暴走する安倍政権が私たち日本国民をどんな暗黒の世界に引き込もうとしているのか、それが他府県の人たちよりも明確に見えているから踏ん張っているのだ。
 優しい沖縄県民は決してこんな言い方はしないが、私はあえて言おう。今日は言わせてもらう。毎日ケータイでゲームをして、テレビでは芸能人が遊んでいる番組しか見ない、投票にも行かず、国策で誰かの人権を著しく奪い、苦しめている現状を見ようともしないで、加害者になっている意識を持つこともない民度の低い国民を含めて、この国に生きる人が権力に怯え、武器に怯え、貧困に怯え、他国民と自国民の命を守れないと絶望する運命に向かっている現状をこの沖縄で止めているのだ。

 安保法制に反対して国会まで行ったものの、法案が成立し無力感に襲われたままの人もいるだろう。原発事故の被害から救済されず、政治活動どころではない被災者もまだたくさんいるだろう。身近なパワハラ、マタハラに接してもどう動いていいか解らずに悶々としている人も、格差社会、弱者切り捨て社会に切り込むよりも、勝ち組に滑り込む手段を必死に探るほうが利口だと決めた人もいるかも知れない。今は動けない人は大勢いるだろう。沖縄にも、まだ立ち上がっていない人はもちろんたくさんいる。でもその人たちも含め、やがては一緒に政治の暴走と闘ってくれるだろうという希望を胸に、辺野古に来る人たちはみなさんの分まで引き受けて闘っているのだ。
 オール沖縄が潰されるということは、日本の国の中で国民主権を取り戻す最後の砦が潰されるということだとまだ気付いていない人たちのためにも、まだ引き返せる砦を包囲できる自分たちが闘うしかないと解っているから、全国から派遣されてくる機動隊に向き合って一歩も退かない。地域エゴやイデオロギーの問題だとすり替えて鼻で笑おうとしている勇気のないあなたの人権もかけて、市民の力、国民の力をこれ以上削がれないために、立ち続けている。

 「敢然と座り込めば、工事は止められる! 機動隊も手出しはできない! そういう闘いを構築し、全国に発信したいと思います。そのことによってさらに多くの人たちが奮い立ってこのゲート前に結集してくれることでありましょう!」ヒロジさんは朝一番でそう檄を飛ばした。

 この社会はおかしい、と思っている全国の仲間が奮い立って、沖縄に力を貸し、歪んだ政治をただすために共に歩んでくれる日は近い。今日は300人でも、来月は500人、1000人になるだろう。そうすれば政府は暴走できないのだ。この言葉をヒロジさんから何年聞かされてきただろうか。高江でも、普天間でも、辺野古でも、ずっと聞いてきた。毎回、よし、そうだ! と希望を再燃させて苛酷な運命にも向き合おうと思いなおす。でも、最近ヒロジさんの言葉の中に「全国の人に届けたい」「全国の仲間が奮い立って」「全国民が許すわけがない」というフレーズが増えた。頼もしい言葉とは裏腹に事態が逼迫しているのだと私は胸がキリキリする。

 恩着せがましいことも悲観的なことも言わない尊敬する沖縄のリーダーたち。私にたくさんの勇気と希望と闘う楽しさと、過去と未来を繋げて地球を考える宇宙観を教えてくれたこの島の人たち。わたしは、あなたたちを心の底から尊敬します。共にありたいし、そうしようともがいている自分の人生を上等だと思っています。でも、やっぱりへなちょこだから怖いです。弱音も、恩着せがましいことも言いたい自分がいます。

 この選挙が終わったら、埋め立ててしまうでしょう?
 全国の人は、本当に大挙して来てくれるの?
 20年やった。いつまで頑張れば終わるの?
 土砂が投下される日々が始まっても、諦めないで通えるかな?

 三上さんがこんな泣き言を言ったら終わりだよ。と言われるのが解っているから現場では言わない。でも、私のような悲観的なへなちょこがいるから、彼らの凄さが伝えられるんだとも思う。そうやって自分の存在意義を自分で肯定しながら、現場に通うしかない。そんな弱虫の私がいま、力のない言葉で表現するとしたらこんなもんだ。

 「崖っぷちです。沖縄が潰されたあとに何が待っているか考えて、動いてください」

 安っぽい。やはり、映像を撮って伝える方が私には向いているのかも知れない。


三上智恵(みかみ・ちえ): ジャーナリスト、映画監督/東京生まれ。大学卒業後の1987年、毎日放送にアナウンサーとして入社。95年、琉球朝日放送(QAB)の開局と共に沖縄に移り住む。夕方のローカルワイドニュース「ステーションQ」のメインキャスターを務めながら、「海にすわる〜沖縄・辺野古 反基地600日の闘い」「1945〜島は戦場だった オキナワ365日」「英霊か犬死か〜沖縄から問う靖国裁判」など多数の番組を制作。2010年には、女性放送者懇談会 放送ウーマン賞を受賞。初監督映画『標的の村~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』は、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、キネマ旬報文化映画部門1位、山形国際ドキュメンタリー映画祭監督協会賞・市民賞ダブル受賞など17の賞を獲得。現在も全国での自主上映会が続く。15年には辺野古新基地建設に反対する人々の闘いを追った映画『戦場ぬ止み』を公開。ジャーナリスト、映画監督として活動するほか、沖縄国際大学で非常勤講師として沖縄民俗学を講じる。『戦場ぬ止み 辺野古・高江からの祈り』(大月書店)を上梓。


by asyagi-df-2014 | 2016-01-24 05:47 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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