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日本軍「慰安婦」問題、「慰安婦問題日韓で合意。」を考える。

 慰安婦問題の日韓(2015年12月28日)の合意(以下、「合意」とする)をどのように考えれば良いのか。 
朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、読売新聞の各社の社説の見出しは、次のとおりである。
①朝日新聞社説-慰安婦問題の合意 歴史を越え日韓の前進を
②毎日新聞社説-慰安婦問題 日韓の合意を歓迎する
③東京新聞-従軍慰安婦問題で合意 「妥結」の重さを学んだ
④読売新聞-慰安婦問題合意 韓国は「不可逆的解決」を守れ
 またしても、読売新聞だけは「その主たる責任は無論、韓国側にある」といった「加害者責任を放棄した本末転倒」の論調であるのだが、他の三社は、この「合意」の積極的な受入れを結論づけている。
 例えば、朝日新聞の主張を要約すると次のようになる。


①節目の年にふさわしい歴史的な日韓関係の進展である。両政府がわだかまりを越え、負の歴史を克服するための賢明な一歩を刻んだことを歓迎したい。
②きのうあった外相会談の後、岸田外相は慰安婦問題を「軍の関与のもと多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題」と定義し、「日本政府は責任を痛感している」と明言した。
③安倍首相は日本の首相として元慰安婦に対し、「心からのおわびと反省」を表明した。
④一方、韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相も日本政府に応えた。今回の合意について、「日本政府の措置の着実な実施」という前提つきながら、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と言い切った。日本側から「韓国は約束してもゴールポストを動かす」と批判されていたことを意識したうえでの確約の表明である。
⑤両外相ともメディアを通じて両国民に固く誓ったのだ。合意をしっかり履行してほしい。
⑥韓国政府は、元慰安婦の名誉と尊厳を回復し、心の傷を癒やすための財団をつくり、そこに日本政府が約10億円を国家予算から拠出する。
⑦今回の合意は、新たな日韓関係を築くうえで貴重な土台の一つとなる。日本政府は誠実に合意を履行し、韓国政府は真剣に国内での対話を強める以外に道はない。


 そして、この上で朝日新聞は、「経済だけでなく、安全保障や紛争・災害の人道支援、環境対策など、地球規模の課題が多い時代、アジアを代表する主要国同士の日韓が手を携えて取り組むべきテーマは数知れない。両外相はきのう、ともに『日韓関係が新時代に入ることを確信している』『来年から新しい関係を切り開けることを期待する』と期待を述べた。3日後の新年からは、日韓がともに前を向いて歩む50年の始まりとしたい。」、と結論づけた。

 毎日新聞は、この「合意」の意義を、次のようにまとめた。


①韓国は「反人道的な不法行為」である慰安婦問題は請求権協定で解決されていないという立場から「法的責任」を求めてきた。道義的か法的かを、あえて明確にしないことで双方が歩み寄り、決着につながった。
②日本政府が韓国の設立する財団に10億円を拠出する点も大きい。アジア女性基金は国民からの寄付金を軸にしたため韓国側が「政府の責任をごまかそうとしている」と反発した。公的な資金を出すことは政府の責任をより明確化させることになる。
③今回の合意について「最終的で不可逆的な解決」であることを確認したことは両国の信頼構築につながる。これにより、国連など国際社会での非難合戦という不毛な争いにも終止符が打たれるはずだ。


 また、毎日新聞は日韓両国の今後の「合意」の課題として次のことを指摘している。


「韓国政府は、日本が強く問題視する在韓日本大使館前に建つ少女像の撤去にも前向きな姿勢を見せた。韓国で慰安婦問題の象徴になっているだけに簡単ではなかろう。真の和解につながる歴史的合意とするためには、まだ多くの作業が残っている。日韓両国が互いを信頼し、協力していかねばならない。
 日本は、解決策が最終的なものとなる確約を重視した。韓国政府が日本の対応をいったん評価してから、世論の反発を受けると一転して強硬姿勢に転じることを繰り返してきたという思いがあるからだ。アジア女性基金の取り組みを無視されたといういらだちもあった。 ただ、問題を蒸し返してきたのは韓国側だけではない。政府間で前向きな動きがあっても、日本の政治家やメディアが植民地支配を正当化したり、元慰安婦を中傷したりしたことが、日韓関係をより複雑化させてきたことは事実だ。」


 この上で、毎日新聞は、「日本にとって韓国は最も重要な隣国である。外交はそもそも互いに譲り合わなければ成り立たない。今回の合意内容について、どちらが多く譲ったかの『勝ち負け論』に陥ることなく、日韓の新時代を切り開く基礎にすべきである。」、とまとめている。

 東京新聞は、この「合意」について、「日韓外相は『解決』『決着』という言葉を使ったが、一連の交渉経過を見れば、キーワードは『妥結』という表現ではないか。実は韓国語にも妥結(タギョル)という漢語があり、日韓の辞典を見ると『利害の対立する者が折れ合って、話をまとめる』という部分が共通している。両首脳は当初の主張を和らげ互いに譲歩した。国内の反対世論を説得する決断もしたということだろう。」、と新たな意味を解釈して見せた。
 その上で、「合意」の妥結を急がねばならない両政府の事情について、「元慰安婦の韓国人女性は生存者四十六人、平均年齢は九十歳近く、交渉をずっと続ける時間的余裕はなかった。また慰安婦問題で関係が冷えこんだままでは、経済、安保など協力すべき分野が進まないという不満が、双方の国内から出ていた。」、と解説する。
 また、あわせて、「日韓双方の背中を押したのは米国だった。オバマ政権は韓国に対し、歴史問題にこだわるばかりでは日米韓の共助体制が崩れていくと批判した。一方で、戦時下の女性に対する性暴力は深刻な人権侵害だとして、日本側に慰安婦問題の解決を迫った。
」、というもう一つの背景を示した。


一方、朝日新聞は、韓国側の「屈辱的」「政府に違う」との相反する内容の次の記事を掲載し、東京新聞は「火種は残っている」と表現しているが、このことを「合意」を考える上で、どのように考えていくのかが重要である。
 例えば、朝日新聞の次の記事である。


「元慰安婦の支援団体『韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会』(挺対協)は会談終了後、『屈辱的だ』と反発する声明を発表し、『慰安婦は日本政府が主導した犯罪であり、不法という点が明らかになっていない』と批判。安倍首相による直接の謝罪もなかったとして『真心がこもった謝罪と受け入れるのは難しい』とした。さらに真相究明や歴史教育などの『再発防止措置』への言及もないと指摘、韓国政府が受け入れたことは『衝撃だ』とした。
 一方、韓国のYTNテレビは『政府が年内に解決しようとしてくれたのだから、努力してくれた人たちのことを考えて、政府が決めたことに従いたい』という元慰安婦の女性のインタビューを放送した。」


 これまでも、日本軍「慰安婦」と従軍慰安婦という言葉のどちらを使用するのかで、問題の本質の捉え方は違ってくる。
 本来、この日本軍「慰安婦」問題の解決のためには、「女性国際戦犯法廷」の最終判決文の次の指摘を日本政府が行うことが必要となることは言うまでもない。


1.「慰安婦」制度の設立に責任と義務があること、この制度が国際法に違反するものであることを全面的に認めること。
2.法的責任をとり、二度と繰り返さないと保証し、完全で誠実な謝罪を行うこと。
3.ここで宣言された違反の結果として、犠牲者、サバイバーおよび回復を受ける権利がある者に対し、政府として、被害を救済し将来の再発を防ぐのに適切な金額の、損害賠償を行うこと。
4.軍性奴隷制について徹底的な調査を実施する機構を設立し、資料を公開し、歴史に残すことを可能にすること。
5.サバイバーたちと協議の上で、戦時中、過渡期、占領期および植民地時代に犯されたジェンダーに関わる犯罪の歴史的記録を作成する「真実和解委員会」の設立を検討すること。
6.記憶にとどめ、「二度と繰り返さない」と約束するために、記念館、博物館、図書館を設立することで、犠牲者とサバイバーたちを認知し、名誉を称えること。
7.あらゆるレベルでの教科書に意味のある記述を行い、また、研究者および執筆者に助成するなど、公式、非公式の教育施策を行うこと。違反行為や将来の世代を教育する努力が行われること。犯罪の原因、犯罪を無視する社会、再発を防止するための手段などを調査する努力をすること。
8.軍隊とジェンダー不平等との関係について、また、性の平等と地域のすべての人々の尊重を実現するための必要条件について、教育を支援すること。
9.帰国を望むサバイバーを帰国させること。
10.政府が所有する「慰安所」に関するあらゆる文書とその他の資料を公開すること。
11.「慰安所」の設置とそのための徴集に関与した主要な実行行為者をつきとめ、処罰すること。
12.家族や近親者から要望があれば、亡くなった犠牲者の遺骨を探して返還すること。


 また、韓国挺身隊問題対策協議会(以下、挺対協とする)は、「12.28日韓外相会談」に向けて、特に、「『平和の碑』の撤去と『二度と問題を蒸し返さないという約束』の提示」について、次の論評を発表していた。


 解決の前提条件として「平和の碑」の撤去と「二度と問題を蒸し返さないという約束」を提示していることは、安倍政権が表向きには日本軍「慰安婦」問題の解決を口にしながら、実は日本軍「慰安婦」問題を解決する意思がないのだとしか解釈できない。さらにこれは、仮に日本軍「慰安婦」問題が未解決のまま残された場合に、その責任を被害者側である韓国社会に押しつけるための術策ではないかとさえ思われる。

―「平和の碑」は、1992年1月8日に始まった水曜デモが2011年12月14日に1000回を迎えた日に、20年以上も毎週水曜日にその場所で訴えてきたハルモニたちと私たちの歴史を記憶するために建てたものだ。過去の辛い歴史を記憶することを超えて、被害者と市民の1000回もの叫び、20年もの歳月あきらめずに水曜デモをおこなってきた過程を表現したものである。そして、戦争を経験していない若い世代に、生きた歴史教育の場として、人権と平和教育の教室として、被害者の人権擁護活動の象徴として積み重ねてきたその歴史を前向きに評価し、褒め称えて「平和の碑」を建てたのである。ところがこれの撤去を条件とすることは、加害者が被害者の問題解決の歴史を抹消しようとする暴力的な動きであり、新たな障害を作り出すものである。

―「二度と問題を蒸し返さないという約束」をしろという前提条件も、加害者側が出してはいけないもので、ありえないことだ。それは、日本政府の正しい責任履行によって実現されることで、韓国政府が前提条件として約束する事柄ではないからである。
3.私たちは、日本軍「慰安婦」問題解決のため、25年間、諦めずに走ってきた。その成果が国連と国際社会の決議採択、日本政府への勧告を引き出し、韓国憲法裁判所の判決を生み出したのだと思う。また、このような圧力によって、日韓政府が日本軍「慰安婦」問題を外交議題として議論するようになったのだと思っている。12月28日に予定されている日韓外相会談は、25年もの間努力してきた、このような被害者たちの活動とアジアの被害国の女性たち、そして国際社会の努力が実を結ぶような形で結果が引き出されなければならない。


 挺対協は、その論評を、「万が一にも懸念される、外交辞令でお茶を濁すような解決ではなく、被害者が心から納得できる、受け入れることのできる、速やかで正しい解決を願う」、とまとめている。


 ただ、現状の中で、今回の「合意」の重さをを考える時、東京新聞の「従軍慰安婦問題で合意『妥結』の重さ」という意味が、現在の状況の中で、この「合意」を判断する上で、重要になってくると考えざるを得ないのではないか。
 だとしたら、村野瀬玲奈の次の指摘を、「その責任を被害者側である韓国社会に押しつけるための術策ではないかとさえ思われる。」という疑念を払拭するために、「合意」の日本側の責任の取り方として、日本政府に守らせなければならない。


①日本側で出版されている大日本帝国軍従軍慰安婦制度を史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から扱っている歴史修正出版物について、「それらは日本政府の立場とは相いれず、日本政府はそれらの出版物を史実として認めない」と公式に表明すること。
②日本の政治家、政府高官、政府関係者から、大日本帝国軍従軍慰安婦制度について、史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から蒸し返す発言が出たら、「それは日本政府の立場とは相いれない」と首相自らコメントし、そのような発言をした者の政府内での職を解くこと。


 今回の「合意」を、やはり、「日本にとって韓国は最も重要な隣国である。日韓の新時代を切り開く基礎」と考えたい。


 以下、各新聞社の社説及び「村野瀬玲奈の秘書課広報室」ブログの引用。







①朝日新聞社説-慰安婦問題の合意 歴史を越え日韓の前進を-2015年12月29日

 戦後70年であり、日本と韓国が国交正常化してから半世紀。そんな1年の終わりに、両政府は最大の懸案だった慰安婦問題で合意に達した。

 節目の年にふさわしい歴史的な日韓関係の進展である。両政府がわだかまりを越え、負の歴史を克服するための賢明な一歩を刻んだことを歓迎したい。

 きのうあった外相会談の後、岸田外相は慰安婦問題を「軍の関与のもと多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題」と定義し、「日本政府は責任を痛感している」と明言した。

 50年前の請求権協定で「法的には解決済み」とする日本政府はこれまで、国家責任を連想させる言葉遣いに消極的だった。今回はその原則を維持しつつ、率直な表現に踏み込んだ。

 安倍首相は日本の首相として元慰安婦に対し、「心からのおわびと反省」を表明した。

 かつて慰安婦問題をめぐる「河野談話」の見直しに言及したこともある安倍首相だが、岸田外相を通じてとはいえ、談話の核心部分を韓国で表明したことには大きな意味がある。
 ■日本政府の責任明言
 一方、韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相も日本政府に応えた。

 今回の合意について、「日本政府の措置の着実な実施」という前提つきながら、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と言い切った。

 日本側から「韓国は約束してもゴールポストを動かす」と批判されていたことを意識したうえでの確約の表明である。

 両外相ともメディアを通じて両国民に固く誓ったのだ。合意をしっかり履行してほしい。

 韓国政府は、元慰安婦の名誉と尊厳を回復し、心の傷を癒やすための財団をつくり、そこに日本政府が約10億円を国家予算から拠出する。

 日本は90年代、国民の募金からなる「償い金」と、政府の資金による医療・福祉支援事業に首相の「おわびの手紙」を添えた「アジア女性基金」事業を始めた。東南アジアなどで成果を生んだが、韓国では反対の声が強まり、頓挫してしまった。

 韓国側で基金の意義が理解されなかった要因は、さまざまあった。日本政府が必ずしも積極的な姿勢で事業に臨まなかったことや、「償い金」に民間募金をあてたことなどで、韓国側は責任回避だとして反発した。

 両政府とともに、元慰安婦たちの支援者ら市民団体、メディアも含めて、当時の教訓を考えたい。

 新たに設けられる財団の運営のあり方については今後、詰められる。何より優先すべきは、存命者が50人を切ってしまった元慰安婦たちのそれぞれの気持ちをくむことだろう。

 韓国の支援団体は合意について「被害者や国民を裏切る外交的談合」と非難している。日本側からもナショナリズムにかられた不満の声がでかねない。

 だが今回の合意は、新たな日韓関係を築くうえで貴重な土台の一つとなる。日本政府は誠実に合意を履行し、韓国政府は真剣に国内での対話を強める以外に道はない。
 ■互恵の関係強化を
 50年前の12月18日。

 日韓はソウルで基本条約と四つの協定の批准文書を交換し、新たな第一歩を踏み出した。

 請求権のほか、漁業、文化財・文化協力、在日韓国人の法的地位の4協定はこれまで、その時々の実情に合わせて何らかの形で改良が加えられてきた。

 現在の日韓関係の原点ともいえる「65年体制」の枠組みを、時代に応じて考えていくことは、いまを含む各世代の両国民が担う責務である。

 この半世紀で日韓関係は大きく飛躍した。韓国の1人あたりの国民所得は、当時の100ドル余りが今や3万ドルの目前。そこには日本の経済協力金が役立った。そして日本も、急成長する韓国から莫大(ばくだい)な利益を得た。

 ともに協力し合い、利益を広げる互恵の関係がこの半世紀の歩みだったし、これからもあるべき隣国関係の姿である。

 日韓の国交正常化を強く後押しした米国は、今回の和解にも大きく関与した。この2年半、日韓両国はワシントンを主舞台として、激しい「告げ口」外交を展開してきた。

 その結果、傷つき、疲れ果てた日韓が悟ったのは「不毛な争いは何も生み出さない」というあたり前のことであり、対話という原点に戻ることだった。
 ■安保など課題山積
 経済だけでなく、安全保障や紛争・災害の人道支援、環境対策など、地球規模の課題が多い時代、アジアを代表する主要国同士の日韓が手を携えて取り組むべきテーマは数知れない。

 両外相はきのう、ともに「日韓関係が新時代に入ることを確信している」「来年から新しい関係を切り開けることを期待する」と期待を述べた。

 3日後の新年からは、日韓がともに前を向いて歩む50年の始まりとしたい。


②毎日新聞社説-慰安婦問題 日韓の合意を歓迎する-2015年12月29日 


 日本と韓国が慰安婦問題を最終決着させることで合意した。四半世紀にわたって両国間に突き刺さってきたとげだ。戦後70年、日韓国交正常化50年という節目の年に合意できたことを歓迎したい。

 岸田文雄外相と韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相が合意し、共同で記者発表した。日本が村山富市内閣時代に設立したアジア女性基金は韓国に受け入れられなかった。それを考えると、両国が知恵を出しあって合意に至ったことは画期的なことである。

 日本側は外相会談で慰安婦問題に関して「責任を痛感する」と表明した。日本はこれまで、1965年の日韓請求権協定で法的には解決済みだとして「道義的な責任」という表現にとどめてきた。

こじれた四半世紀

 一方で韓国は「反人道的な不法行為」である慰安婦問題は請求権協定で解決されていないという立場から「法的責任」を求めてきた。

 道義的か法的かを、あえて明確にしないことで双方が歩み寄り、決着につながった。

 日本政府が韓国の設立する財団に10億円を拠出する点も大きい。アジア女性基金は国民からの寄付金を軸にしたため韓国側が「政府の責任をごまかそうとしている」と反発した。公的な資金を出すことは政府の責任をより明確化させることになる。

 今回の合意について「最終的で不可逆的な解決」であることを確認したことは両国の信頼構築につながる。これにより、国連など国際社会での非難合戦という不毛な争いにも終止符が打たれるはずだ。

 慰安所が生まれ、定着したのは日中戦争の時期だ。兵士による強姦(ごうかん)事件の多発に頭を痛めた軍が業者に開設させた。軍は細かい規則を作って管理する一方、避妊具を支給したり、移動に便宜を図ったりしていた。

 貧困のために慰安婦とならざるを得なかった女性も多かったと言われる。93年の河野談話が指摘したように「意思に反して集められた事例が数多く」あったことは否定しがたい。慰安婦制度が女性の尊厳を踏みにじるものであることは明白だ。

 慰安婦問題が注目されたのは91年に初めて実名で証言する韓国人女性が現れてからだ。87年の民主化を機に日本の植民地支配の歴史を問い直そうとする機運が高まったことが背景にあった。経済や文化など多方面の交流が活発化する一方で、歴史認識を巡る摩擦は深まっていった。

 こうした流れを受けて、日本では村山談話やアジア女性基金によって和解を探ろうという動きが出た。

 しかし、安倍晋三首相はかつて河野談話見直しを公言していた。第1次政権だった2007年には、首相に近い政治家らが米紙に慰安婦問題に関する反論広告を出して米政界の反発を買い、日本を批判する米下院決議につながった。

 韓国側では、慰安婦問題での政府の不作為を「違憲」とした憲法裁判所の11年の決定が転機となった。時の李明博(イミョンバク)政権は慰安婦問題を対日外交の前面に出すようになった。13年に就任した朴槿恵(パククネ)大統領は慰安婦問題の進展がなければ日本との首脳会談に応じないという強硬姿勢を取るにいたった。

 合意の背景には、日韓共通の同盟国である米国から関係改善を求められていたことがある。それでなくとも日韓の連携は双方にとって自国の外交・安保政策に必須のものだ。

後戻りさせずに

 日韓両国内でも正常化以来最悪と言われる関係に「このままでいいのか」と懸念する声が出ていた。年間500万人が往来する両国関係が停滞したままでいいはずがなかった。
 合意を受けて安倍首相は「この問題を次の世代に決して引きずらせてはならない」と語った。朴大統領もその思いを共有しているはずだ。

 ただし、画期的な合意であっても不満を持つ人々は残る。そうした時に大局的見地から国内をまとめていくのが政治指導者の役割だ。

 韓国政府は、日本が強く問題視する在韓日本大使館前に建つ少女像の撤去にも前向きな姿勢を見せた。韓国で慰安婦問題の象徴になっているだけに簡単ではなかろう。真の和解につながる歴史的合意とするためには、まだ多くの作業が残っている。日韓両国が互いを信頼し、協力していかねばならない。

 日本は、解決策が最終的なものとなる確約を重視した。韓国政府が日本の対応をいったん評価してから、世論の反発を受けると一転して強硬姿勢に転じることを繰り返してきたという思いがあるからだ。アジア女性基金の取り組みを無視されたといういらだちもあった。

 ただ、問題を蒸し返してきたのは韓国側だけではない。政府間で前向きな動きがあっても、日本の政治家やメディアが植民地支配を正当化したり、元慰安婦を中傷したりしたことが、日韓関係をより複雑化させてきたことは事実だ。

 日本にとって韓国は最も重要な隣国である。外交はそもそも互いに譲り合わなければ成り立たない。今回の合意内容について、どちらが多く譲ったかの「勝ち負け論」に陥ることなく、日韓の新時代を切り開く基礎にすべきである。


③東京新聞-従軍慰安婦問題で合意 「妥結」の重さを学んだ-2015年12月29日


 日韓外相会談で、旧日本軍の従軍慰安婦問題を最終決着させると合意した。最大の懸案が解決に向かう。来年は対立から協力へと、流れを変えたい。

 岸田文雄外相と尹炳世外相はソウルで会談し、慰安婦問題を「最終的、不可逆的に解決する」と確認した。韓国政府は今後、問題を蒸し返さないという明確な約束である。

 元慰安婦を支援する財団を韓国政府が設立し、日本政府は財団に約十億円を拠出することで合意した。岸田外相は、安倍晋三首相がすべての元慰安婦に対し「責任を痛感し、心からのおわびと反省の気持ちを表明する」ことを明らかにした。
◆米国が背中押した
 韓国で初めて元慰安婦の女性が名乗りを上げてから二十四年。ようやく解決の道筋ができた。一九九〇年代に元慰安婦の支援事業として取り組んだ「アジア女性基金」や、民主党政権時代に提案された救済案など、これまで蓄積された日本の取り組みが実を結んだといえよう。

 日韓外相は「解決」「決着」という言葉を使ったが、一連の交渉経過を見れば、キーワードは「妥結」という表現ではないか。実は韓国語にも妥結(タギョル)という漢語があり、日韓の辞典を見ると「利害の対立する者が折れ合って、話をまとめる」という部分が共通している。両首脳は当初の主張を和らげ互いに譲歩した。国内の反対世論を説得する決断もしたということだろう。

 両政府とも妥結を急がねばならない事情があった。

 元慰安婦の韓国人女性は生存者四十六人、平均年齢は九十歳近く、交渉をずっと続ける時間的余裕はなかった。また慰安婦問題で関係が冷えこんだままでは、経済、安保など協力すべき分野が進まないという不満が、双方の国内から出ていた。

 日韓双方の背中を押したのは米国だった。オバマ政権は韓国に対し、歴史問題にこだわるばかりでは日米韓の共助体制が崩れていくと批判した。一方で、戦時下の女性に対する性暴力は深刻な人権侵害だとして、日本側に慰安婦問題の解決を迫った。
◆戦後70年談話が転機
 日韓両政府は当初、自説を強く主張していた。安倍政権は昨年、慰安婦問題で日本の官憲の関与を認めた「河野談話」の検証をしたが、国際社会は強い懸念を示した。河野談話の検証が慰安婦問題そのものを否定しかねないと見たからだ。

 大きな転機は、八月に安倍首相が発表した「戦後七十年談話」だった。首相は従軍慰安婦には直接言及しなかったが、「戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた」と述べた。

 慰安婦問題は六五年の請求権協定によって解決済みというのが日本政府の原則的な見解だが、首相の談話は人道的な見地から救済の余地を示したものだ。韓国側に歩み寄ったといえよう。

 この日の外相会談で言及された安倍首相の見解には、女性の名誉と尊厳という七十年談話と同じ表現があったことに注目したい。

 朴槿恵大統領も妥結に向けて動いていた。慰安婦問題の解決に進展がない限り首脳会談には応じられないという立場だったが、今年に入り「歴史問題と経済、安保などの懸案は分けて対応する」と柔軟姿勢に変わった。

 両政府が歩み寄り、ようやく妥結にこぎつけたことを、重く胸に刻みたい。ここ数年、広がった「反日」「嫌韓」という不幸な風潮を変えていかねばならない。

 今後は両政府が国内世論をどう説得するかが重要になる。韓国の元慰安婦の支援団体「挺身(ていしん)隊問題対策協議会」は、今回の合意を評価せず、日本政府の法的責任を追及している。

 日本の世論調査でも、慰安婦問題で譲歩する必要はないとの回答が多数を占める。政府予算を使って救済を図るのは、事実上の賠償ではないかという批判が予想される。在ソウル日本大使館前に置かれた慰安婦問題を象徴する少女像についても、撤去する確約はなかった。
◆火種は残っている
 歴史問題での火種は消えたわけではない。戦中の元徴用工問題で六五年の請求権協定が違憲だとする訴訟で、韓国憲法裁判所は今月、訴えを却下した。しかし、徴用工問題では地裁、高裁で争いが続いている。

 韓国政府には日韓条約を尊重して、司法判断とは一線を画すよう望むが、日本側も、とりわけ政治家には歴史認識をめぐる発言に慎重さが必要だ。外相会談で弾みがついた関係改善の流れを止めないよう、日韓両国民の努力も求められる。


④読売新聞-慰安婦問題合意 韓国は「不可逆的解決」を守れ-2015年12月29日


◆少女像の撤去も重要な試金石だ◆
 未来志向の日韓関係の構築には、韓国が合意を誠実に履行することが大前提となろう。

 岸田外相と尹炳世外相がソウルで会談し、慰安婦問題で妥結した。

 日本は「責任を痛感」し、元慰安婦を支援する新基金に約10億円を拠出して、安倍首相がお詫わびを表明する。両国は「最終的かつ不可逆的な解決」と確認する。

 韓国は、ソウルの日本大使館前に設置された、慰安婦を象徴する少女像の撤去に努力する。

 これらが合意の柱である。
 ◆新基金は軌道に乗るか
 朴槿恵大統領は岸田氏との会談で、「韓日関係の新たな出発点になることを願う」と語った。

 日本は、1965年の日韓請求権協定で元慰安婦らの補償問題は解決済みと主張してきた。新基金はあくまで人道支援であり、日本の法的な立場は損なわれない。ただ、政府の資金拠出が事実上の国家賠償と誤解されないか。

 岸田氏は「日韓関係が新時代に入ると確信する」と語った。尹氏は「慰安婦の名誉と尊厳が回復され、心の傷が癒やされるよう祈念する」と強調した。

 今年は国交正常化50周年の節目なのに、朴氏の慰安婦問題への過剰なこだわりによって祝賀ムードは乏しかった。合意が、停滞してきた日韓関係を改善する契機となるのか、見守りたい。

 日本は95年にアジア女性基金を設置し、首相のお詫びの手紙や「償い金」などを元慰安婦61人に渡した。だが、韓国側は評価せず、国内向けに説明しなかったため、日本側に不満が残った。

 この轍てつを踏んではなるまい。
 ◆支援団体の説得がカギ
 大切なのは、日韓共同の新基金事業を着実に軌道に乗せるとともに、韓国が将来、再び問題を蒸し返さないようにすることだ。

 その主たる責任は無論、韓国側にある。かつて金大中、盧武鉉両大統領らが歴史認識に関して「今後、過去の問題は出さない」などと明言したのに、国内世論に流され、態度を翻したからだ。

 大統領が交代するたびに、問題が再燃するようでは、外交は成り立たない。安倍首相が日韓合意後、「子や孫の世代に謝罪し続ける宿命を負わせるわけにはいかない」と強調したのは、もっともだ。

 韓国の元慰安婦支援団体は、今回の合意を「被害者と国民を裏切った外交的談合だ」などと批判した。支援団体が設置した少女像の撤去にも反対している。

 慰安婦問題の妥結が長引いた一因は、当事者意識を欠いた、世論任せの韓国政府の姿勢にある。

 朴氏が11月の日韓首脳会談で具体的な妥結案を提示せず、「被害者が受け入れ可能で、韓国国民が納得できる解決策が必要だ」と語ったのは象徴的だ。

 韓国政府が合意を真剣に履行するつもりなら、まず、合意に反対を唱える国内勢力を説得できるかどうかが問われる。少女像の撤去も重要な試金石となろう。

 日韓合意には、両国が国連などで慰安婦問題について、互いに非難、批判することを自制することが盛り込まれた。

 韓国が慰安婦関連資料を国連教育・科学・文化機関の世界記憶遺産に登録する準備をしていることなどが、念頭にあろう。

 国際社会の表舞台で日韓両国が対立している姿を露呈することは双方にとってマイナスだ。不毛な争いには終止符を打ちたい。
 ◆「嫌韓感情」どう収める
 朴氏に求められるのは、自らが煽あおって日本国内で高まった「嫌韓感情」を収める努力だろう。第三国で日本を批判する「告げ口外交」や、韓国系団体が米国各地で慰安婦像を設置している問題への反省も必要ではないか。

 日本の資金拠出については、国内から「譲歩しすぎだ」「朴政権は放置しておけば良い」といった異論が出ている。

 それでも安倍首相が「自分が責任を取る」として、拠出を決断したことには、日韓関係の改善を通じて、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する日米韓の連携を復活させる狙いもうかがえる。

 日韓両国が歴史認識の問題を克服することができれば、最近、中国に急速に接近する韓国を日米の側に引き戻すことにつながる。歴史を外交カードに利用する中国を牽制けんせいしつつ、日中関係を前に進めるという戦略的な意義もある。

 日韓関係にはなお、元徴用工の損害賠償訴訟、日本産水産物の輸入規制、日韓自由貿易協定(FTA)交渉など、様々な懸案が山積している。一つひとつ着実に解決していく努力が欠かせない。


「村野瀬玲奈の秘書課広報室」ブログ
従軍慰安婦の件で韓国政府と元・従軍慰安婦の被害者ハルモニたちから問題を『蒸し返されない』ために日本側がとるべき『戦略』-2015年12月28日


従軍慰安婦制度(大日本帝国軍性奴隷制度)をめぐる史実と、女性たちが当時受けた被害の件で、韓国政府と元・従軍慰安婦の被害者ハルモニたちから問題を『蒸し返されない』ために日本側がとるべき『戦略』を端的に書いておきます。

次に列挙してある事柄を日本側が実行すればよいのです。これが、そのための完璧な『戦略』です。

●Fight for Justice 日本軍「慰安婦」―忘却への抵抗・未来の責任4-3 女性国際戦犯法廷と最終判決文
(前略)
1.「慰安婦」制度の設立に責任と義務があること、この制度が国際法に違反するものであることを全面的に認めること。
2.法的責任をとり、二度と繰り返さないと保証し、完全で誠実な謝罪を行うこと。
3.ここで宣言された違反の結果として、犠牲者、サバイバーおよび回復を受ける権利がある者に対し、政府として、被害を救済し将来の再発を防ぐのに適切な金額の、損害賠償を行うこと。
4.軍性奴隷制について徹底的な調査を実施する機構を設立し、資料を公開し、歴史に残すことを可能にすること。
5.サバイバーたちと協議の上で、戦時中、過渡期、占領期および植民地時代に犯されたジェンダーに関わる犯罪の歴史的記録を作成する「真実和解委員会」の設立を検討すること。
6.記憶にとどめ、「二度と繰り返さない」と約束するために、記念館、博物館、図書館を設立することで、犠牲者とサバイバーたちを認知し、名誉を称えること。
7.あらゆるレベルでの教科書に意味のある記述を行い、また、研究者および執筆者に助成するなど、公式、非公式の教育施策を行うこと。違反行為や将来の世代を教育する努力が行われること。犯罪の原因、犯罪を無視する社会、再発を防止するための手段などを調査する努力をすること。
8.軍隊とジェンダー不平等との関係について、また、性の平等と地域のすべての人々の尊重を実現するための必要条件について、教育を支援すること。
9.帰国を望むサバイバーを帰国させること。
10.政府が所有する「慰安所」に関するあらゆる文書とその他の資料を公開すること。
11.「慰安所」の設置とそのための徴集に関与した主要な実行行為者をつきとめ、処罰すること。
12.家族や近親者から要望があれば、亡くなった犠牲者の遺骨を探して返還すること。
(転載ここまで)

また、こちらにも書いてあります。記事全体は背景についての説明もある、もう少し長いものですが、今回の私の記事にかかわる核心部分だけをここでは引用させていただきます。
●レイバーネット
【挺対協報道資料】12.28日韓外相会談に向けて~日本軍「慰安婦」問題の解決とは何か
日本軍「慰安婦」問題の解決とは何か~挺対協が論評
(前略)
翻訳:挺対協
【挺対協報道資料】 12.28日韓外相会談に向けて
(中略)
私たちは、緊急に開かれる2015年最後の日韓外相会談では真に日本軍「慰安婦」問題解決のための正しい協議がおこなわれるよう願い、以下のように明らかにする。
1. 解決の内容に何が盛り込まれるべきか。
すでに私たちは何度も日本政府と韓国政府に要求している。2014年、東京で開催された第12回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議で採択された提言で、また2015年にソウルで開かれた第13回アジア連帯会議の決議で求めた内容だ。
第一に、日本軍「慰安婦」問題解決のために日本政府は、
①日本政府および軍が軍の施設として「慰安所」を立案・設置し管理・統制したこと、
②女性たちが本人たちの意に反して「慰安婦・性奴隷」にされ、「慰安所」等において強制的な状況の下におかれたこと、
③日本軍の性暴力に遭った植民地、占領地、日本の女性たちの被害にはそれぞれに異なる態様があり、かつ被害が甚大であったこと、そして現在もその被害が続いているということ、
④当時の様々な国内法・国際法に違反する重大な人権侵害であったという事実と責任を認めなければならない。
第二に、このような事実認定に基づいて、①翻すことのできない明確で公式な方法で謝罪すること、②謝罪の証として被害者に賠償すること、③真相究明のため、日本政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、国内外の被害者および関係者へのヒヤリング、④再発防止措置として義務教育課程の教科書への記述を含む学校教育・社会教育の実施、追悼事業の実施、誤った歴史認識に基づく公人の発言の禁止、および同様の発言への明確で公式な反駁等をおこなうことである。
2.解決に前提条件はありえない。日本政府は責任を尽くさなければならない。
 解決の前提条件として「平和の碑」の撤去と「二度と問題を蒸し返さないという約束」を提示していることは、安倍政権が表向きには日本軍「慰安婦」問題の解決を口にしながら、実は日本軍「慰安婦」問題を解決する意思がないのだとしか解釈できない。さらにこれは、仮に日本軍「慰安婦」問題が未解決のまま残された場合に、その責任を被害者側である韓国社会に押しつけるための術策ではないかとさえ思われる。
―「平和の碑」は、1992年1月8日に始まった水曜デモが2011年12月14日に1000回を迎えた日に、20年以上も毎週水曜日にその場所で訴えてきたハルモニたちと私たちの歴史を記憶するために建てたものだ。過去の辛い歴史を記憶することを超えて、被害者と市民の1000回もの叫び、20年もの歳月あきらめずに水曜デモをおこなってきた過程を表現したものである。そして、戦争を経験していない若い世代に、生きた歴史教育の場として、人権と平和教育の教室として、被害者の人権擁護活動の象徴として積み重ねてきたその歴史を前向きに評価し、褒め称えて「平和の碑」を建てたのである。ところがこれの撤去を条件とすることは、加害者が被害者の問題解決の歴史を抹消しようとする暴力的な動きであり、新たな障害を作り出すものである。
―「二度と問題を蒸し返さないという約束」をしろという前提条件も、加害者側が出してはいけないもので、ありえないことだ。それは、日本政府の正しい責任履行によって実現されることで、韓国政府が前提条件として約束する事柄ではないからである。
3.私たちは、日本軍「慰安婦」問題解決のため、25年間、諦めずに走ってきた。その成果が国連と国際社会の決議採択、日本政府への勧告を引き出し、韓国憲法裁判所の判決を生み出したのだと思う。また、このような圧力によって、日韓政府が日本軍「慰安婦」問題を外交議題として議論するようになったのだと思っている。12月28日に予定されている日韓外相会談は、25年もの間努力してきた、このような被害者たちの活動とアジアの被害国の女性たち、そして国際社会の努力が実を結ぶような形で結果が引き出されなければならない。
万が一にも懸念される、外交辞令でお茶を濁すような解決ではなく、被害者が心から納得できる、受け入れることのできる、速やかで正しい解決を願う。
※金福童ハルモニの立場
「安倍が謝罪の手紙を出して、10億ウォンで解決するって? そんなことで解決はできないよ。こっそり、誰も分からないように手紙を出しておいて、後でまたそんなことしてないって言うつもりじゃないの? 記者をみんな集めて、その記者たちの前で宣言しなきゃ。日本が、安倍の時代にやったことではないけど、祖先たちが私たちに悪いことをしたってこと、戦場に私たちを連れて行って、あんな凄惨な状況で軍人たちにされたこと、申し訳なかったって、許して欲しいって言わなきゃ。それも、一人でやるんじゃなくて、日本政府の公式的な立場でやらなきゃ。
それから10億ウォン、私たちがお金が欲しくてこんなに長い間こうしてきたと思ってるのかね? 私たちも、今では韓国政府が生活支援金もくれるし、民間団体でこうして面倒もみてくれてるんだから、お金がなくて言ってるわけじゃないじゃない。法的に賠償しろってことなんだよ。
それは、犯罪国家として、罪をおかしたということを認めろってことよ。
そうじやないですか? それから少女像を撤去しろってことだけど、それと問題を解決するのとは関係のない、全く別のことだと思うんだけど、どうしてやたらと少女像をなくせって言うのか分からないね。私たちの国に私たちが建てたのに、どうして日本がああしろこうしろって指図するの? 少女像は私たちの過去の歴史、過去にああいう辛いことがあったってことを、後生に伝えて二度と同じようなことがないように、歴史の勉強をさせる目的で建てたのに、なぜ歴史を消せ、なくせって言うのか分からない」
2015年12月26日
韓国挺身隊問題対策協議会共同代表 ユン・ミヒャン、ハン・グギョム、キム・ソンシル
Created by staff01. Last modified on 2015-12-27 19:49:06
(引用ここまで)

これらのことにさらに、『蒸し返されない』ために日本側がとるべき『戦略』を補強的に付け加えるとしたら、次のことになるでしょう。
▼日本側で出版されている大日本帝国軍従軍慰安婦制度を史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から扱っている歴史修正出版物について、「それらは日本政府の立場とは相いれず、日本政府はそれらの出版物を史実として認めない」と公式に表明すること。
▼日本の政治家、政府高官、政府関係者から、大日本帝国軍従軍慰安婦制度について、史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から蒸し返す発言が出たら、「それは日本政府の立場とは相いれない」と首相自らコメントし、そのような発言をした者の政府内での職を解くこと。
▼なお、日本国首相が在韓国日本大使館前の少女像の前で跪いて謝罪するのも『戦略』としてはたいへんに『有効』です。
従軍慰安婦の件で韓国政府と元・従軍慰安婦の被害者ハルモニたちから問題を『蒸し返されない』ために日本側がとるべき『戦略』としては、これらのことは完璧に近いと私は思います。


by asyagi-df-2014 | 2015-12-31 06:00 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

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