沖縄から-民主主義科学者協会法律部会の声明を考える。

 民主主義科学者協会法律部会理事会は2015年12月11日、「沖縄県民の民意に反し、違法に進められている辺野古新基地建設に強く抗議する」 とする「声明」を表明した。
 このことについて、朝日新聞は2015年12月14日、「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の沖縄県名護市辺野古への移設計画をめぐり、行政法や憲法を専門とする法学者らが14日、参院議員会館で記者会見し、『辺野古新基地建設に抗議する』との声明を発表した。国が翁長雄志沖縄県知事を相手取り、埋め立て承認取り消しの撤回を求めた代執行訴訟などの一連の手続きについて「制度の濫用(らんよう)であり違法な決定」と批判している。
 法学者らが加入する『民主主義科学者協会法律部会』(理事長・吉村良一立命館大教授)の理事会声明として11日にまとめられ、14日の会見で発表された。」、と報じた。

 この「声明」について考える。


(指摘する事実)
(1)辺野古沿岸域の埋立ては、深刻な危険性が指摘されている普天間基地の代替としてのアメリカ海兵隊の基地を建設するためだとされている。しかし、辺野古新基地は普天間基地の軍事機能を強化・拡大するものであって、決して同基地の代替ではない
(2)日本政府とアメリカ政府との合意では全ての基地返還が県内移設を条件としているために、辺野古新基地が建設され、普天間基地が閉鎖されたとしても、日本におけるアメリカ軍基地の沖縄への集中率は、73.8%から73.1%に微減するにすぎない。
(主張)
(1)辺野古新基地は、沖縄県民が日米安保条約および地位協定によって軍事的な危険に晒されている状態をけっして改善しない。その建設の強行は、口頭弁論における翁長知事の陳述書にあるとおり、昨年の首長選挙、国政選挙で繰り返し表明されてきた、新基地建設に反対する沖縄県民の民意を踏みにじるものである。
(2)辺野古沿岸域は、ジュゴンなどレッドリスト掲載種を多数育むなど生物多様性の見地から保全上の配慮をすべき地域である。辺野古新基地建設のための埋立ては、広大な海草藻場を消失させ、当該地域に現存する生物の生存の危機に直結する。さらに、辺野古新基地の運用は、キャンプ・シュワブにおける米軍の訓練等によってすでに甚大な騒音被害を被っている周辺地域の環境を一層悪化させる。
(3)埋立承認取消処分に対する執行停止の決定は、国の行政機関である沖縄防衛局が私人になりすまして行った申立てに応じて行われた。それは、国民の権利利益の救済制度である不服審査制度の濫用であるとともに、実質的には代執行の先取りであって、地方自治法に定める代執行の手続を経ないで行われた違法な決定である。
(4)埋立承認取消処分をめぐる政府の一連の対応は、法を弄ぶことで、沖縄県民の民意に基づいて行われた翁長沖縄県知事の判断を貶め、沖縄県における自治・民主主義を蹂躙し、沖縄県民の平和的生存権をおびやかし続けるものである。
(結論)
 私たちの辺野古新基地問題に関する学術的成果と新安保関連法に対する本学会の立場からは、辺野古新基地建設を強引に進めつつある政府の姿勢は、日本国憲法の理念に由来する平和主義、基本的人権の尊重、民主主義という本学会の核心的価値に照らして看過できない。
 私たちは、沖縄県民の民意に反し、政府が違法に進めている辺野古新基地建設工事に強く抗議するとともに、沖縄県における米軍地基地の問題の解決は国民的課題である旨の認識が広く共有されるように、今後、学習会やシンポジウム等に積極的に取り組む決意である。


 こうした結論にたどり着くのは、論理的思考の結果として、当然のものである。
 この声明の「政府の一連の対応は、法を弄ぶこと」との指摘は、残念ながら日本という国の実像である。
 やはり、何度でも指摘するしかない。
 辺野古新基地建設及びその一連の安倍晋三政権の策動は、日本国憲法の「地方自治の本旨」の遂行に違反するものであり、地方自体の自己決定権を著しく侵害するものである。
 また、このことは、ひいては、日本国憲法に盛り込まれた平和的生存権を脅かすものとなる。


 以下、民主主義科学者協会法律部会理事会声明の引用。







「沖縄県民の民意に反し、違法に進められている辺野古新基地建設に強く抗議する」
                            2015年12月11日
                       民主主義科学者協会法律部会 理事会


 翁長沖縄県知事は、本年10月13日に、仲井眞前沖縄県知事が沖縄防衛局に対し付与した辺野古沿岸域の公有水面埋立承認には瑕疵があったとしてこれを取り消す処分(以下、埋立承認取消処分)を行った。これに対し、政府は、埋立承認取消処分の効力を停止するために行政不服審査法に基づく執行停止の決定を行うとともに、政府が同処分そのものを直接に取り消すために地方自治法による代執行の手続をとった。その手続の一環として、現在、福岡高等裁判所那覇支部において翁長知事を被告とした代執行訴訟が提訴され、この12月2日に第1回口頭弁論が開催された。
 辺野古沿岸域の埋立ては、深刻な危険性が指摘されている普天間基地の代替としてのアメリカ海兵隊の基地を建設するためだとされている。しかし、辺野古新基地は普天間基地の軍事機能を強化・拡大するものであって、決して同基地の代替ではない。しかも、日本政府とアメリカ政府との合意では全ての基地返還が県内移設を条件としているために、辺野古新基地が建設され、普天間基地が閉鎖されたとしても、日本におけるアメリカ軍基地の沖縄への集中率は、73.8%から73.1%に微減するにすぎない。辺野古新基地は、沖縄県民が日米安保条約および地位協定によって軍事的な危険に晒されている状態をけっして改善しない。その建設の強行は、口頭弁論における翁長知事の陳述書にあるとおり、昨年の首長選挙、国政選挙で繰り返し表明されてきた、新基地建設に反対する沖縄県民の民意を踏みにじるものである。
 また、辺野古沿岸域は、ジュゴンなどレッドリスト掲載種を多数育むなど生物多様性の見地から保全上の配慮をすべき地域である。辺野古新基地建設のための埋立ては、広大な海草藻場を消失させ、当該地域に現存する生物の生存の危機に直結する。さらに、辺野古新基地の運用は、キャンプ・シュワブにおける米軍の訓練等によってすでに甚大な騒音被害を被っている周辺地域の環境を一層悪化させる。
 加えて、埋立承認取消処分に対する執行停止の決定は、国の行政機関である沖縄防衛局が私人になりすまして行った申立てに応じて行われた。それは、国民の権利利益の救済制度である不服審査制度の濫用であるとともに、実質的には代執行の先取りであって、地方自治法に定める代執行の手続を経ないで行われた違法な決定である。
 総じて、埋立承認取消処分をめぐる政府の一連の対応は、法を弄ぶことで、沖縄県民の民意に基づいて行われた翁長沖縄県知事の判断を貶め、沖縄県における自治・民主主義を蹂躙し、沖縄県民の平和的生存権をおびやかし続けるものである。

 私たち民主主義科学者協会法律部会は、1946年に日本国憲法の成立と相前後して結成された民主主義科学者協会の部会の一つとして生まれ、1957年に制定した規約において「民主主義法学の発展を図ること」を学会の目的としている。私たちは、2012年3月に学会の企画として那覇において沖縄の米軍基地問題に関するシンポジウムを開催するとともに、辺野古沿岸域の視察を行い、米軍基地および基地被害の固定化を進めつつある日米安保体制の現状に対する理解を深めた。また、本年11月の学術総会の企画として開催したコロキウムでは、政府の一連の対応は日本国憲法の下にある法制度を日米安保の下に従属させるものであることを明らかにした。

 法を弄び、民主主義的な熟慮に対し敬意を表しない政府の対応は、本年9月に成立した新安保関連法の審議・採決において政府・与党が示した非民主主義的で反立憲主義的な姿勢と通底している。私たちは、新安保関連法についても本年6月に理事会声明を、本年9月に理事長声明を公表し、その問題点を指摘し、民主主義および立憲主義の擁護を呼びかけてきた。

 私たちの辺野古新基地問題に関する学術的成果と新安保関連法に対する本学会の立場からは、辺野古新基地建設を強引に進めつつある政府の姿勢は、日本国憲法の理念に由来する平和主義、基本的人権の尊重、民主主義という本学会の核心的価値に照らして看過できない。

 私たちは、沖縄県民の民意に反し、政府が違法に進めている辺野古新基地建設工事に強く抗議するとともに、沖縄県における米軍地基地の問題の解決は国民的課題である旨の認識が広く共有されるように、今後、学習会やシンポジウム等に積極的に取り組む決意である。


朝日新聞-辺野古移設、法学者らが抗議声明 一連の手続き「違法」-2015年12月14日20時41分



 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の沖縄県名護市辺野古への移設計画をめぐり、行政法や憲法を専門とする法学者らが14日、参院議員会館で記者会見し、「辺野古新基地建設に抗議する」との声明を発表した。国が翁長雄志沖縄県知事を相手取り、埋め立て承認取り消しの撤回を求めた代執行訴訟などの一連の手続きについて「制度の濫用(らんよう)であり違法な決定」と批判している。

 法学者らが加入する「民主主義科学者協会法律部会」(理事長・吉村良一立命館大教授)の理事会声明として11日にまとめられ、14日の会見で発表された。

 辺野古の公有水面埋め立て承認をめぐっては、翁長知事が承認を取り消したことに対し、行政不服審査法に基づく執行停止を防衛省沖縄防衛局が申し立て、国土交通相が執行停止を認めた。

 この一連の手続きについて声明は「国の行政機関である沖縄防衛局が私人になりすまして行った申し立て」だとして「国民の権利利益の救済制度である不服審査制度の濫用」と批判。「法をもてあそぶことで沖縄県民の民意に基づいた知事の判断をおとしめ、沖縄県の自治・民主主義を蹂躙(じゅうりん)し、県民の平和的生存権をおびやかすもの」と主張している。(編集委員・北野隆一)

 法学者による学会「民主主義科学者協会法律部会」の理事会が11日にまとめ、14日の記者会見で発表した声明「沖縄県民の民意に反し、違法に進められている辺野古新基地建設に強く抗議する」の全文は以下の通り。


 翁長沖縄県知事は、本年10月13日に、仲井眞前沖縄県知事が沖縄防衛局に対し付与した辺野古沿岸域の公有水面埋め立て承認には瑕疵(かし)があったとしてこれを取り消す処分(以下、埋め立て承認取り消し処分)を行った。これに対し、政府は、埋め立て承認取り消し処分の効力を停止するために行政不服審査法に基づく執行停止の決定を行うとともに、政府が同処分そのものを直接に取り消すために地方自治法による代執行の手続きをとった。その手続きの一環として、現在、福岡高等裁判所那覇支部において翁長知事を被告とした代執行訴訟が提訴され、この12月2日に第1回口頭弁論が開催された。

 辺野古沿岸域の埋め立ては、深刻な危険性が指摘されている普天間基地の代替としてのアメリカ海兵隊の基地を建設するためだとされている。しかし、辺野古新基地は普天間基地の軍事機能を強化・拡大するものであって、決して同基地の代替ではない。しかも、日本政府とアメリカ政府との合意では全ての基地返還が県内移設を条件としているために、辺野古新基地が建設され、普天間基地が閉鎖されたとしても、日本におけるアメリカ軍基地の沖縄への集中率は、73.8%から73.1%に微減するにすぎない。辺野古新基地は、沖縄県民が日米安保条約および地位協定によって軍事的な危険に晒(さら)されている状態をけっして改善しない。その建設の強行は、口頭弁論における翁長知事の陳述書にあるとおり、昨年の首長選挙、国政選挙で繰り返し表明されてきた、新基地建設に反対する沖縄県民の民意を踏みにじるものである。

 また、辺野古沿岸域は、ジュゴンなどレッドリスト掲載種を多数育むなど生物多様性の見地から保全上の配慮をすべき地域である。辺野古新基地建設のための埋め立ては、広大な海草藻場を消失させ、当該地域に現存する生物の生存の危機に直結する。さらに、辺野古新基地の運用は、キャンプ・シュワブにおける米軍の訓練等によってすでに甚大な騒音被害を被っている周辺地域の環境を一層悪化させる。

 加えて、埋め立て承認取り消し処分に対する執行停止の決定は、国の行政機関である沖縄防衛局が私人になりすまして行った申し立てに応じて行われた。それは、国民の権利利益の救済制度である不服審査制度の濫用(らんよう)であるとともに、実質的には代執行の先取りであって、地方自治法に定める代執行の手続きを経ないで行われた違法な決定である。

 総じて、埋め立て承認取り消し処分をめぐる政府の一連の対応は、法を弄(もてあそ)ぶことで、沖縄県民の民意に基づいて行われた翁長沖縄県知事の判断を貶(おとし)め、沖縄県における自治・民主主義を蹂躙(じゅうりん)し、沖縄県民の平和的生存権をおびやかし続けるものである。

 私たち民主主義科学者協会法律部会は、1946年に日本国憲法の成立と相前後して結成された民主主義科学者協会の部会の一つとして生まれ、1957年に制定した規約において「民主主義法学の発展を図ること」を学会の目的としている。私たちは、2012年3月に学会の企画として那覇において沖縄の米軍基地問題に関するシンポジウムを開催するとともに、辺野古沿岸域の視察を行い、米軍基地および基地被害の固定化を進めつつある日米安保体制の現状に対する理解を深めた。また、本年11月の学術総会の企画として開催したコロキウムでは、政府の一連の対応は日本国憲法の下にある法制度を日米安保の下に従属させるものであることを明らかにした。

 法を弄び、民主主義的な熟慮に対し敬意を表しない政府の対応は、本年9月に成立した新安保関連法の審議・採決において政府・与党が示した非民主主義的で反立憲主義的な姿勢と通底している。私たちは、新安保関連法についても本年6月に理事会声明を、本年9月に理事長声明を公表し、その問題点を指摘し、民主主義および立憲主義の擁護を呼びかけてきた。

 私たちの辺野古新基地問題に関する学術的成果と新安保関連法に対する本学会の立場からは、辺野古新基地建設を強引に進めつつある政府の姿勢は、日本国憲法の理念に由来する平和主義、基本的人権の尊重、民主主義という本学会の核心的価値に照らして看過できない。

 私たちは、沖縄県民の民意に反し、政府が違法に進めている辺野古新基地建設工事に強く抗議するとともに、沖縄県における米軍地基地の問題の解決は国民的課題である旨の認識が広く共有されるように、今後、学習会やシンポジウム等に積極的に取り組む決意である。





by asyagi-df-2014 | 2015-12-18 05:50 | 沖縄から | Comments(0)

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