安倍晋三政権の経済政策を、毎日新聞に見る。

 2015年12月10日付けの毎日新聞の特集は、「首相現実を見てますか」、と始まる。
 安倍晋三政権の実態を描写し、非常に面白い。
 この特集を考える。
 まず、毎日新聞はこう切り出す。


 「自画自賛」と「大言壮語」のてんこ盛り? 最近の安倍晋三首相の経済政策を巡る発言である。アベノミクスの成果をことさらに強調し、「1億総活躍社会」実現の緊急対策でも、ギョッとさせるような目標数値が並ぶ。「安保」から「経済」へのシフトチェンジをアピールしたいのかもしれないが、一国の首相の「国民への約束」とは、かくのごときものでよいのか−−。

 「『自画自賛』と『大言壮語』のてんこ盛り」。


 実に、安倍晋三政権を言い当てている。
 まったくもって、「一国の首相の『国民への約束』とは、かくのごときものでよいのか」、と。
 それは、逆に、「こんな奴を選んだのか」、と私たちの方に返ってくる。

  その政策は、次のようにぶち上げられました。


「1億総活躍社会」実現への緊急対策
1 GDP600兆円の実現(2014年度は491兆円)
 ・法人税率を早期に20%台へ引き下げる道筋をつける
 ・低所得の年金受給者への3万円支給
 ・最低賃金の全国平均時給1000円への引き上げ(15年度は798円)
2 希望出生率1.8の実現(14年は1.42)
 ・17年度末までの保育施設の追加整備量を「40万人分」から「50万人分」へ拡大
 ・非正規雇用者の育児休業取得の促進
3 介護離職ゼロの実現(年間約10万人)
 ・特養など介護の受け皿の増加分を「38万人分」から「50万人分以上」へ拡大
 ・介護休業給付金を賃金の40%から67%へ引き上げ、休業期間の分割取得を認める


 何とまあ、空々しい数字が並べられていることか。
 それならばということで、安倍首相の発言集。



①「『三本の矢』の政策によって経済を成長させ、(略)経済の好循環を我々は作り出すことができたわけでございます……」
②「『1億総活躍社会』が実現できれば、安心感が醸成され、将来の見通しが確かになり、消費の底上げ、投資の拡大にもつながります」
③「(安倍政権発足以降の)3年間、マイナスからプラスへ、あきらめから希望へ、日本を大きく変えることができました。やればできる!」


 まさに、「『自画自賛』と『大言壮語』のてんこ盛り」。
 切って返す力で、安倍晋三及び安倍晋三政権批判集。


①「アベノミクスが当初の目標通り進んでいないのは明らかです。『国内総生産(GDP)実質2%、名目3%の成長』を打ち出したが、その気配が見えてこない。さらにインフレ目標2%も先延ばしにされている。『新三本の矢』や今回の緊急対策といった新政策を打ち出し、『経済の安倍』で国民の期待をつなぎ留めて政権を維持したいと計算し、あえて大言壮語の勇ましい態度で臨んでいるのでは」(塩田潮)
②「道筋も財源も不透明」(日経、11月27日付朝刊)
③「実現可能性を考えると、いささか乱暴な印象が拭えない」、「緊急対策による予算の上乗せに動くのでは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもの」(産経新聞)
④「民主党政権が最低賃金1000円を掲げた時、自民党は『アンチビジネス以外の何物でもない』と批判した」(枝野幸男)
⑤「とても経済政策と呼べるものではありません」、「目標値と支出項目ばかりを並べているだけで、財源の裏打ちがない。『経済成長すれば財源は増える』との考えかもしれないが、楽観が過ぎる。目標に至る道筋を示すべきです」(武田晴人)
⑥「例えば国民は『賃上げしてやるから消費に回せ』と言われても、将来の社会保障に不安がある以上、貯蓄に走る傾向は変えられない。企業も同じです。不安が消えないから設備投資や人件費を抑え、内部留保をため込む。法人税を下げれば設備投資が増え、経済がうまく回ると考えるのは、現実を直視していない」(武田晴人)
⑦「『所得倍増』の立案には約3年間を費やし、民間の有識者など各方面から1000人ほどの意見を聞いて練り上げた。今回の『1億』のような、思いつきの言葉の羅列ではなかった」(武田晴人)
⑧「『所得倍増』では経済成長を、完全雇用や格差是正などの目的を達成するために必要なものと位置付けました。しかし今回は成長それ自体が目的になっている。高度成長の夢をそのまま投影しているだけで、成長したあの時代に戻ろうよという懐古主義。だから日々現実の厳しさと向き合う国民には響かないのです」(武田晴人)
⑨「これでは『女性はたくさん子どもを産んで、もっと働け』というメッセージしか伝わってこない」(泉宏)
⑩「最終目標である憲法改正のためには、常に経済政策を打ち上げ、国民の注目を引き付けておく必要がある。つまり現実の直視や反省ではなく、『やればできる』と気合充実のヤンキーのような強い姿勢を見せ続けるしかない、と考えているのかもしれません」(泉宏)
⑪「集団的自衛権を行使できるように9条を解釈変更したため、そこは実質的に改憲できたと言っていい。首相の狙いは9条にこだわらず、憲法の条文自体を変えることに移っています。来年夏のダブル選を視野に入れた参院選で『経済の安倍』のまま議席増を果たして改憲の土台を固め、残る任期でじっくり改憲に取り組み『改憲を成し遂げた初の首相』として歴史に名を刻む。『大言壮語』と言われても、花火のように経済政策を打ち上げ続けるのはそのためでしょう」。(泉宏)


 最後に、毎日新聞はこのように批判を積み上げた上で、やさしく、「『私はウソは申しません』。池田元首相はテレビコマーシャルでそう語った。今、安倍首相が同じ言葉を口にしたら、国民はどう感じるだろうか。」、とまとめた。



 安倍晋三政権の経済政策について、武田晴人(経済史)さんは、「目標値と支出項目ばかりを並べているだけで、財源の裏打ちがない。『経済成長すれば財源は増える』との考えかもしれないが、楽観が過ぎる。目標に至る道筋を示すべきです」、と正確に指摘する。
 また、安倍晋三という人の「戻りたがり」病を、武田晴人(経済史)さんは、「しかし今回は成長それ自体が目的になっている。高度成長の夢をそのまま投影しているだけで、成長したあの時代に戻ろうよという懐古主義。だから日々現実の厳しさと向き合う国民には響かないのです」、と一刀両断する批判は、まさに、正しい。
 泉宏さんが描いてみせる、安倍晋三の「来年夏のダブル選を視野に入れた参院選で『経済の安倍』のまま議席増を果たして改憲の土台を固め、残る任期でじっくり改憲に取り組み『改憲を成し遂げた初の首相』として歴史に名を刻む。」という大言壮語な野望を、決して許してはならない。

 以下、毎日新聞も引用。







毎日新聞-「1億総活躍」自画自賛するが… 首相、現実を見てますか-2015年12月10日 


 「自画自賛」と「大言壮語」のてんこ盛り? 最近の安倍晋三首相の経済政策を巡る発言である。アベノミクスの成果をことさらに強調し、「1億総活躍社会」実現の緊急対策でも、ギョッとさせるような目標数値が並ぶ。「安保」から「経済」へのシフトチェンジをアピールしたいのかもしれないが、一国の首相の「国民への約束」とは、かくのごときものでよいのか−−。【江畑佳明】

 先月26日、「1億総活躍社会」実現に向けた緊急対策が発表された際、安倍首相はこう述べた。「『三本の矢』の政策によって経済を成長させ、(略)経済の好循環を我々は作り出すことができたわけでございます……」

 ん? ちまたでは「実感がない」との声がもっぱらのようだが……。

 さらにこんな発言も。「『1億総活躍社会』が実現できれば、安心感が醸成され、将来の見通しが確かになり、消費の底上げ、投資の拡大にもつながります」。本当にそんなにうまくいくの?と突っ込みたくなる。

 極めつきは、同29日の自民党立党60年記念式典だ。「(安倍政権発足以降の)3年間、マイナスからプラスへ、あきらめから希望へ、日本を大きく変えることができました。やればできる!」。気合で景気は上向くと言いたいのだろうか。

 「首相が焦りを感じている証拠ではないでしょうか」と推し量るのは、「安倍晋三の力量」などの著書があるノンフィクション作家の塩田潮さんだ。「アベノミクスが当初の目標通り進んでいないのは明らかです。『国内総生産(GDP)実質2%、名目3%の成長』を打ち出したが、その気配が見えてこない。さらにインフレ目標2%も先延ばしにされている。『新三本の矢』や今回の緊急対策といった新政策を打ち出し、『経済の安倍』で国民の期待をつなぎ留めて政権を維持したいと計算し、あえて大言壮語の勇ましい態度で臨んでいるのでは」と言うのだ。

 ところが、新聞各社の社説は「道筋も財源も不透明」(日経、11月27日付朝刊)といった具合に軒並み手厳しい。安保法制審議では政府を強く支持した産経でさえ「政策阻む原因に向き合え」(同日付)という見出しで「実現可能性を考えると、いささか乱暴な印象が拭えない」と疑問を投げかけ、「財務省は来年度予算で社会保障費の伸びを1700億円抑制する方針」なのに、「緊急対策による予算の上乗せに動くのでは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもの」と指摘した。

 民主党の枝野幸男幹事長は記者会見で「民主党政権が最低賃金1000円を掲げた時、自民党は『アンチビジネス以外の何物でもない』と批判した」と憤ったが、「確かに」の感はある。

 「とても経済政策と呼べるものではありません」と一刀両断するのは、東京大名誉教授の武田晴人さん(経済史)だ。「目標値と支出項目ばかりを並べているだけで、財源の裏打ちがない。『経済成長すれば財源は増える』との考えかもしれないが、楽観が過ぎる。目標に至る道筋を示すべきです」

 続けて言うのだ。「例えば国民は『賃上げしてやるから消費に回せ』と言われても、将来の社会保障に不安がある以上、貯蓄に走る傾向は変えられない。企業も同じです。不安が消えないから設備投資や人件費を抑え、内部留保をため込む。法人税を下げれば設備投資が増え、経済がうまく回ると考えるのは、現実を直視していない」

 ここで武田さんは、一人の元首相の名を挙げた。

 池田勇人−−。
 岸信介内閣が新日米安保条約を批准して退陣後、首相となり1960年に発表した「所得倍増計画」で政治史に刻まれる。国民の関心を安保から経済へ向けようとしたのは安倍首相と同じだが、その経済政策の「重み」は大きく異なると武田さんは言う。

 「『所得倍増』の立案には約3年間を費やし、民間の有識者など各方面から1000人ほどの意見を聞いて練り上げた。今回の『1億』のような、思いつきの言葉の羅列ではなかった」

 そしてこうも指摘する。「『所得倍増』では経済成長を、完全雇用や格差是正などの目的を達成するために必要なものと位置付けました。しかし今回は成長それ自体が目的になっている。高度成長の夢をそのまま投影しているだけで、成長したあの時代に戻ろうよという懐古主義。だから日々現実の厳しさと向き合う国民には響かないのです」

 前出の塩田さんも「池田元首相は自信も覚悟も違った」と評価する。記者会見でこう述べたのだ。

 記者 経済拡大の実現などについて、もし失敗した場合、責任をとるか。
 池田 一挙手一投足について、総裁、総理として責任はとる。
 (伊藤昌哉著「池田勇人その生と死」より)
 すさまじいまでの決意といえまいか。

 安倍首相も批判を予想できなかったわけではあるまい。田中角栄首相時代から官邸取材を続けている元時事通信政治部長で政治ジャーナリストの泉宏さんも、今回の女性政策の中身について「これでは『女性はたくさん子どもを産んで、もっと働け』というメッセージしか伝わってこない」と批判する。

 「最終目標である憲法改正のためには、常に経済政策を打ち上げ、国民の注目を引き付けておく必要がある。つまり現実の直視や反省ではなく、『やればできる』と気合充実のヤンキーのような強い姿勢を見せ続けるしかない、と考えているのかもしれません」

 安倍首相の狙いは「9条改憲」にあるといわれてきたが、泉さんは「集団的自衛権を行使できるように9条を解釈変更したため、そこは実質的に改憲できたと言っていい。首相の狙いは9条にこだわらず、憲法の条文自体を変えることに移っています。来年夏のダブル選を視野に入れた参院選で『経済の安倍』のまま議席増を果たして改憲の土台を固め、残る任期でじっくり改憲に取り組み『改憲を成し遂げた初の首相』として歴史に名を刻む。『大言壮語』と言われても、花火のように経済政策を打ち上げ続けるのはそのためでしょう」。

 「私はウソは申しません」。池田元首相はテレビコマーシャルでそう語った。今、安倍首相が同じ言葉を口にしたら、国民はどう感じるだろうか。

「1億総活躍社会」実現への緊急対策
1 GDP600兆円の実現(2014年度は491兆円)
 ・法人税率を早期に20%台へ引き下げる道筋をつける
 ・低所得の年金受給者への3万円支給
 ・最低賃金の全国平均時給1000円への引き上げ(15年度は798円)
2 希望出生率1.8の実現(14年は1.42)
 ・17年度末までの保育施設の追加整備量を「40万人分」から「50万人分」へ拡大
 ・非正規雇用者の育児休業取得の促進
3 介護離職ゼロの実現(年間約10万人)
 ・特養など介護の受け皿の増加分を「38万人分」から「50万人分以上」へ拡大
 ・介護休業給付金を賃金の40%から67%へ引き上げ、休業期間の分割取得を認める


by asyagi-df-2014 | 2015-12-13 06:37 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
画像一覧