沖縄から-辺野古の周辺地区に補助金を直接交付する枠組みの創設を、あらためて考える。

 防衛省が、辺野古の周辺地区に補助金を直接交付する枠組みを創設したことについては、地方自治を破壊するものとしてその理不尽さをしてきたが、ここでもう一度、2015年11月30日付けの高知新聞と琉球新報の社説をもとに考える。


 事実の経過を、琉球新報から見る。
(1) 防衛省は名護市辺野古への新基地建設をめぐり、地元の久辺3区(辺野古、久志、豊原)に対して直接補助金を交付できる制度を創設した。各区の事業申請に基づき、1300万円を上限に支出する。
(2)交付要綱には「航空機40機、人員千人以上増加する地域の地縁団体」と明記されており、実質的に久辺3区だけを対象にした補助率100%の補助金だ。
(3)新たな法律は制定せず、現行の予算措置内の補助として制度化した。地元3区を移設容認に傾ける以外には目的が見いだせない血税の投入である。ばらまきに等しいつかみ金のような性質だ。
(4)補助対象について「影響の増加に特に配慮することが必要」と記し、将来の負担増に補助金を支出する尋常ではない措置だ。しかも事業の内容は、前名護市長時代の再編交付金の残額を基金にして、名護市が進めている事業とほぼ重なっており、制度の必要性の議論が置き去りにされている。


 疑問・問題点を両社から挙げる。
(1)地域振興に対する国の補助金はこれまで、法に基づき、市町村を通じて支給されてきた。住民への直接交付は、法的にも、公金の適正な管理という点でも疑問が拭えない。即刻、見直すべきだ。
(2)国会の審議も経ておらず、意図的な補助金制度である。政府が自治体を無視した制度をつくるようになれば、地方自治は崩壊しかねず、危険な政策と言わざるを得ない。
(3)政府は3区への直接交付の理由について、移設で3区が受ける影響の大きさを挙げる。だが、知事も市長も移設を容認しておらず、あり得ない前提と手順だ。
(4)3区の住民生活も県市のさまざまな公共サービスの中で維持されている。基地建設や完成後の影響は3区にとどまらず市内外に及ぶ。特定地域への支給は道理が通らない。国がその手で地方自治をかき乱し、財政支出の規律に背を向けた。政権のモラルハザード(倫理崩壊)が一層くっきり像を結んだ。「無理が通れば、道理が引っ込む」は許されない。
 臨時国会が開かれていないため、制度の問題点は国会で全く議論されていない。名護市の頭越しの支出に対し、地方財政の専門家からも法的整合性が取れるのかと、疑問符が突き付けられている。(5-琉球新報)国がその手で地方自治をかき乱し、財政支出の規律に背を向けた。政権のモラルハザード(倫理崩壊)が一層くっきり像を結んだ。「無理が通れば、道理が引っ込む」は許されない。
(6-琉球新報)臨時国会が開かれていないため、制度の問題点は国会で全く議論されていない。名護市の頭越しの支出に対し、地方財政の専門家からも法的整合性が取れるのかと、疑問符が突き付けられている。


 両社は、次のように主張する。
(1)政府は沖縄が直轄地とでも言うのだろうか。辺野古移設には、沖縄県の翁長知事も名護市の稲嶺市長も反対している。政府がやろうとしていることは、札束で住民を懐柔する作戦に他ならない。地方自治をないがしろにした、法治国家とも思えぬ手段だ。
(2)菅官房長官は、今回の補助金制度の正当性について記者会見で「国は法律によらない予算措置や地方自治体以外のものを対象とした補助金交付も認められている」と述べた。安倍政権の傲慢(ごうまん)さがにじんでいる。
(3-琉球新報)露骨な「アメとムチ」をまとった地方自治への介入そのものである。前時代的な分断統治を図る安倍政権の姿にそんな思いを抱く。
(4-琉球新報)1990年代後半、普天間飛行場の移設先として辺野古が浮上した際、自民党政権は大規模な北部振興策を繰り出した。当時の沖縄社会は政権の「アメとムチ」に翻弄(ほんろう)される面もあったが、今は通用しない。
(5-琉球新報)新基地を拒む強固な民意が息づく中、久辺3区直接補助を多くの県民が苦々しい思いで見ており、新基地ノーの民意をかえって強めた。沖縄は分断されない。安倍政権の一手は逆効果を生み出した。


 今回の安倍晋三政権の行為は、高知新聞の主張する「安倍政権の傲慢(ごうまん)さ」が際立つ「地方自治をないがしろにした、法治国家とも思えぬ手段だ」、ということに尽きる。
 琉球新報は、「沖縄は分断されない。」、とその意志を高く掲げる。
 実は、問われているのは、私たちの方だ。
 
 以下、高知新聞及び琉球新報の引用。








高知新聞社説-【辺野古直接補助】地方自治を無視している-2015年11月30日


 政府は沖縄が直轄地とでも言うのだろうか。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画で、信じがたい政策がまた行われようとしている。

 防衛省が、辺野古の周辺地区に補助金を直接交付する枠組みを創設した。名護市を通さず、頭越しに地域振興を支援する。

 辺野古移設には、沖縄県の翁長知事も名護市の稲嶺市長も反対している。政府がやろうとしていることは、札束で住民を懐柔する作戦に他ならない。地方自治をないがしろにした、法治国家とも思えぬ手段だ。

 地域振興に対する国の補助金はこれまで、法に基づき、市町村を通じて支給されてきた。住民への直接交付は、法的にも、公金の適正な管理という点でも疑問が拭えない。即刻、見直すべきだ。

 創設したのは「再編関連特別地域支援事業補助金」。辺野古、豊原、久志の3区が対象になる。

 政府は、辺野古移設に反対する名護市には米軍再編推進法に基づく交付金を支給していない。このため、3区にも交付金が回っておらず、政府は直接交付できる別枠の制度を既存の予算の枠内で設けた。

 3区長は移設を受け入れる条件として、政府にインフラ整備や補償を要望している。2015年度は防災備蓄倉庫や集会所の整備、放送設備の修繕を求めており、防衛省は最大計3900万円を交付する方針だ。

 しかし、国会の審議も経ておらず、意図的な補助金制度である。政府が自治体を無視した制度をつくるようになれば、地方自治は崩壊しかねず、危険な政策と言わざるを得ない。
 政府は3区への直接交付の理由について、移設で3区が受ける影響の大きさを挙げる。だが、知事も市長も移設を容認しておらず、あり得ない前提と手順だ。

 しかも、3区の住民生活も県市のさまざまな公共サービスの中で維持されている。基地建設や完成後の影響は3区にとどまらず市内外に及ぶ。特定地域への支給は道理が通らない。

 菅官房長官は、今回の補助金制度の正当性について記者会見で「国は法律によらない予算措置や地方自治体以外のものを対象とした補助金交付も認められている」と述べた。安倍政権の傲慢(ごうまん)さがにじんでいる。


琉球新報社説-久辺3区交付金 政権の一手は逆効果生んだ-2015年11月30日


 露骨な「アメとムチ」をまとった地方自治への介入そのものである。前時代的な分断統治を図る安倍政権の姿にそんな思いを抱く。

 防衛省は名護市辺野古への新基地建設をめぐり、地元の久辺3区(辺野古、久志、豊原)に対して直接補助金を交付できる制度を創設した。各区の事業申請に基づき、1300万円を上限に支出する。
 交付要綱には「航空機40機、人員千人以上増加する地域の地縁団体」と明記されており、実質的に久辺3区だけを対象にした補助率100%の補助金だ。
 新たな法律は制定せず、現行の予算措置内の補助として制度化した。地元3区を移設容認に傾ける以外には目的が見いだせない血税の投入である。ばらまきに等しいつかみ金のような性質だ。
 補助対象について「影響の増加に特に配慮することが必要」と記し、将来の負担増に補助金を支出する尋常ではない措置だ。しかも事業の内容は、前名護市長時代の再編交付金の残額を基金にして、名護市が進めている事業とほぼ重なっており、制度の必要性の議論が置き去りにされている。
 国がその手で地方自治をかき乱し、財政支出の規律に背を向けた。政権のモラルハザード(倫理崩壊)が一層くっきり像を結んだ。「無理が通れば、道理が引っ込む」は許されない。
 臨時国会が開かれていないため、制度の問題点は国会で全く議論されていない。名護市の頭越しの支出に対し、地方財政の専門家からも法的整合性が取れるのかと、疑問符が突き付けられている。
 菅義偉官房長官は「3区長から要望書が提出されている」などと述べ、3区が移設を容認、賛同しているという印象を振りまくことに躍起になっている。だが、3区内には賛否さまざまな意見がある。久志区は受け取りの可否を決める区民総会がまとまらなかった。
 1990年代後半、普天間飛行場の移設先として辺野古が浮上した際、自民党政権は大規模な北部振興策を繰り出した。当時の沖縄社会は政権の「アメとムチ」に翻弄(ほんろう)される面もあったが、今は通用しない。
 新基地を拒む強固な民意が息づく中、久辺3区直接補助を多くの県民が苦々しい思いで見ており、新基地ノーの民意をかえって強めた。沖縄は分断されない。安倍政権の一手は逆効果を生み出した。


by asyagi-df-2014 | 2015-12-01 05:44 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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