沖縄から-沖縄県の国地方係争処理委員会への審査を申し出を考える。沖縄の民意の重みを。

 2015年11月2日に、沖縄県が行った国地方係争処理委員会への審査を申し出について、沖縄タイムス及び琉球新報の社説をもとに考える。
 沖縄タイムスは、まず、この間の経過について、次のようにまとめる。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐる県と政府の対立は、「知事の承認取り消し→沖縄防衛局が国交相に取り消しの効力停止を申し立て→県が国交相へ反論→国交相が取り消しの効力停止、政府が『代執行』手続き開始→防衛局が本体工事着工→県が係争委へ審査申し立て」と複雑で込み入った経過をたどっている。

 この上で、このような国のやり方について、「政府が矢継ぎ早に繰り出す対抗措置は、法の趣旨に反した強引な手法が目立ち『権力の濫用(らんよう)』というほかない。」、と指摘する。
 この指摘の根拠を、①県が係争委へ審査を申し出たのは、新基地建設を急ぐ防衛省の訴えを、同じ内閣の一員である国交相が判断するのは「公平中立の前提が欠落している」からだ。「利益相反」の疑いが強い、②防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき「私人」の立場で取り消しの執行停止を求めたことにも、多くの専門家が首をかしげている。米軍基地を建設できる私人などなく、防衛局の主張に基づく決定には疑問を覚える、③取り消しの効力を止める執行停止と一緒に、取り消しが有効であることを前提とした代執行手続きに入ったことも矛盾する、とする。
 また、沖縄タイムスは、現在の状況を、「政府がこれほど露骨に公権力を振り回して地方公共団体に襲いかかってきたことが、かつて日本の政治であっただろうか。」、と概観する。
 沖縄タイムスは結論として、沖縄県が行った国地方係争処理委員会への審査を申し出を受けて、「『法治国家』である以上、少なくとも係争委の審査と代執行手続きの結果が出るまで、辺野古での工事を完全に中止すべきである。」、と主張する。


 琉球新報は、沖縄県が行った国地方係争処理委員会への審査を申し出について、「これは、日本が公正な国であるかが問われる局面である。」、と国に問いかける。そして、「なぜこれが公正な国か否かの指標になるかと言えば、国家の不公正性を疑わせることがあったからだ。言うまでもなく国の執行停止決定のことだ。」、と続ける。
 さらに、「翁長雄志知事の承認取り消しに対し、沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき国交省に執行停止を申し立て、石井啓一国交相は執行停止を決定した。申し立てた防衛省も受け取った国交省も同じ政府だ。右手で出した書類を左手で受け取るようなものである。まさに茶番劇だ。どこに公正性があろう。」、と鋭く突く。
 また、「係争処理委は第三者機関だ。やっと公正な判定の場に移ったと言える。だが地方自治法は『裁決』や『決定その他の行為』は同委員会の対象外と定める。だから門前払いとなる恐れもある。そうなれば、政府による決定の適法性を国と地方が争った場合、第三者機関が判断する機会を逸することになる。だから『国としての公正性が問われる』のである。その入り口論より、むしろ『私人になりすまし』の適格性こそ、厳格に審議すべきであろう。」、と。
 琉球新報は、国地方係争処理委員会に対して、「れにしても政府の理屈は奇怪だ。現在の普天間飛行場の危険性除去は「緊急性」が高いから、数年かかる移設作業を止めてはならず、取り消しを執行停止するというのである。そこまで言うなら、普天間の「5年内運用停止」をなぜまだ米国に要求しないのか。オスプレイの飛行ルール逸脱も、深夜・未明のヘリ飛行も改善を求めないのはなぜか。支離滅裂も甚だしい。委員会はこの矛盾こそ審査すべきだ。」、と主張する。


 安倍晋三政権の意向を受けて、国地方係争処理委員会が、入り口で門前払いの判断を下す可能性も指摘されている。
 しかし、国地方係争処理委員会は、厳格な審議をしなければならない。なぜなら、この問題は、日本あり方を問うものであるからである。


 最後に、沖縄タイムスは、大きな危惧感を次のように指摘する。


 権力の濫用による弾圧の嵐は、キャンプ・シュワブゲート前で抗議活動を続ける市民にも向けられている。国は警視庁の機動隊を100人規模で沖縄に送り、反対運動の対応にあてる方針だ。
 法を都合のいいように解釈し、外部から機動隊を投入するやり方は、明治政府の琉球処分官が、軍隊と警察を率いて来琉した姿と重なる。
 国家の暴力を行使し何が何でも沖縄に米軍基地を半永久的に押し込めようとする姿勢は、もはや民主国家の安全保障政策とはいえない。政府の基地政策は完全に破綻した。


 安倍晋三政権は、この危惧感の向こう側には、琉球新報の「翁長知事は会見であらためて『(新基地建設を)あらゆる手段で阻止する』と述べた。今後いくつもの法廷闘争に入るだろう。知事一人の思いではなく、民意が不退転だからである。この民意の重みを政府はやがて思い知るはずだ。」、という沖縄の深い民意があることをきちっと知る必要がある。

 以下、沖縄タイムス、琉球新報の引用。







沖縄タイムス社説-[係争委に不服請求]まずは工事を中止せよ-2015年11月3日

 翁長雄志知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しを、国土交通相が「効力停止」としたことを不服とし、県は第三者機関である国地方係争処理委員会に審査を申し出た。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐる県と政府の対立は、「知事の承認取り消し→沖縄防衛局が国交相に取り消しの効力停止を申し立て→県が国交相へ反論→国交相が取り消しの効力停止、政府が『代執行』手続き開始→防衛局が本体工事着工→県が係争委へ審査申し立て」と複雑で込み入った経過をたどっている。

 政府が矢継ぎ早に繰り出す対抗措置は、法の趣旨に反した強引な手法が目立ち「権力の濫用(らんよう)」というほかない。

 県が係争委へ審査を申し出たのは、新基地建設を急ぐ防衛省の訴えを、同じ内閣の一員である国交相が判断するのは「公平中立の前提が欠落している」からだ。「利益相反」の疑いが強い。

 防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき「私人」の立場で取り消しの執行停止を求めたことにも、多くの専門家が首をかしげている。米軍基地を建設できる私人などなく、防衛局の主張に基づく決定には疑問を覚える。

 取り消しの効力を止める執行停止と一緒に、取り消しが有効であることを前提とした代執行手続きに入ったことも矛盾する。

 政府がこれほど露骨に公権力を振り回して地方公共団体に襲いかかってきたことが、かつて日本の政治であっただろうか。
    ■    ■
 国と地方自治体の間で法令の運用などをめぐり争いが生じた際に調整を図る係争委は、両者の関係を「上下」から「対等」とした地方分権一括法による改正地方自治法で2000年に設置された。

 係争委での審査は過去15年間で2件と少なく、見通しは立てにくいが「国交相の決定は違法な関与行為だ」と翁長氏が強調するのは、公平性が担保されていないからである。5人の有識者委員には、国の関与について法律に基づいた公正かつ適正な判断を示してもらいたい。

 審査申し出の後の記者会見で翁長氏は「沖縄に対しては何でもありだ」「沖縄にしか基地を置かないという考えが見えて大変残念」と怒りをあらわにした。

 「法治国家」である以上、少なくとも係争委の審査と代執行手続きの結果が出るまで、辺野古での工事を完全に中止すべきである。
    ■    ■
 権力の濫用による弾圧の嵐は、キャンプ・シュワブゲート前で抗議活動を続ける市民にも向けられている。国は警視庁の機動隊を100人規模で沖縄に送り、反対運動の対応にあてる方針だ。

 法を都合のいいように解釈し、外部から機動隊を投入するやり方は、明治政府の琉球処分官が、軍隊と警察を率いて来琉した姿と重なる。

 国家の暴力を行使し何が何でも沖縄に米軍基地を半永久的に押し込めようとする姿勢は、もはや民主国家の安全保障政策とはいえない。政府の基地政策は完全に破綻した。


琉球新報社説-県の不服申し出 政府の矛盾こそ審査せよ-2015年11月3日


 米軍普天間飛行場移設に伴う辺野古新基地建設で、知事の埋め立て承認取り消しに対する国土交通相の執行停止を不服として、県が国地方係争処理委員会に審査を申し出た。これは、日本が公正な国であるかが問われる局面である。

 なぜこれが公正な国か否かの指標になるかと言えば、国家の不公正性を疑わせることがあったからだ。言うまでもなく国の執行停止決定のことだ。
 翁長雄志知事の承認取り消しに対し、沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき国交省に執行停止を申し立て、石井啓一国交相は執行停止を決定した。申し立てた防衛省も受け取った国交省も同じ政府だ。右手で出した書類を左手で受け取るようなものである。まさに茶番劇だ。どこに公正性があろう。
 国内の行政法研究者93人は共同で「行政機関が審査請求することを行政不服審査法は予定していない」とし、執行停止は不適法との声明を出した。防衛局の申請を「私人になりすまし」と批判し、「法治国家にもとる」とまで断じている。法の専門家がここまで言い切るのだ、不公正性は歴然としている。
 係争処理委は第三者機関だ。やっと公正な判定の場に移ったと言える。だが地方自治法は「裁決」や「決定その他の行為」は同委員会の対象外と定める。だから門前払いとなる恐れもある。
 そうなれば、政府による決定の適法性を国と地方が争った場合、第三者機関が判断する機会を逸することになる。だから「国としての公正性が問われる」のである。
 その入り口論より、むしろ「私人になりすまし」の適格性こそ、厳格に審議すべきであろう。
 それにしても政府の理屈は奇怪だ。現在の普天間飛行場の危険性除去は「緊急性」が高いから、数年かかる移設作業を止めてはならず、取り消しを執行停止するというのである。そこまで言うなら、普天間の「5年内運用停止」をなぜまだ米国に要求しないのか。オスプレイの飛行ルール逸脱も、深夜・未明のヘリ飛行も改善を求めないのはなぜか。支離滅裂も甚だしい。委員会はこの矛盾こそ審査すべきだ。
 翁長知事は会見であらためて「(新基地建設を)あらゆる手段で阻止する」と述べた。今後いくつもの法廷闘争に入るだろう。知事一人の思いではなく、民意が不退転だからである。この民意の重みを政府はやがて思い知るはずだ。


by asyagi-df-2014 | 2015-11-04 05:25 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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