沖縄から-「代執行と効力停止」。日本の民主主義が壊される。

 安倍晋三政権は、地方自治法に基づく「代執行」手続きの開始と、行政不服審査法に基づく埋め立て承認取り消し処分の「効力停止」を同時に打ち出してきた。
 この安倍晋三政権の圧政の前に、予想されていたとは言え、驚きを隠せない。
 それは、日本という国はここまで来ているのかという、真底からの怒りの実感である。


 沖縄タイムス(以下、タイムスとする。)と琉球新報(以下、新報とする。)の2015年10月28日の社説は、怒りとそれを越えようという決意に満ちている。
 タイムスは、「安倍政権が『敵・味方の論理』と『勝ち負けの発想』に凝り固まり、『知事権限を無力化した』と得意がっているとすれば、それこそ政治の堕落である。県民の中に渦巻く政権不信と、強権的手法に対する激しい反発。なぜ自分たちだけこのような目に遭わなければならないのかという不全感と魂の飢餓感は、今やピークに達している。危険な状況だ。」、と弾劾する。
 新報は、「権力を乱用した民意への弾圧としか言いようがない。・・・民意を踏みにじるもので、許されるものではない。県が勧告に従う必要性は一切ない。」、と安倍晋三政権を切り捨てる。
 安倍晋三政権のあくどさについて、タイムスは、「反対してもしょうがないかのように県民のあきらめを誘発するのが国のもう一つの狙いだということは、前日の動きからもあきらかである。政府は26日、名護市辺野古の新基地建設予定地に近い久辺3区(辺野古・豊原・久志)の代表を首相官邸に招き、2015年度から県や名護市を通さず直接、振興費を3区に支出する考えを伝えた。県に対してはあらゆる手を使って権限を封じ込め、基地受け入れを表明した3区に対しては財政の支出ルールを変えてまで振興費を支出する。メディアを通した印象操作であり、あまりにも露骨な『アメとムチ』の政策である。」、と暴く。
 手続き上の問題について、タイムスは、「行政不服審査法は公権力に対して不服を申し立てる制度で、『国民の権利利益の救済』を目的としている。そもそも国に不服申し立てをする資格があるのか。防衛省(沖縄防衛局)が行政不服審査法に基づいて国土交通相に審査請求と取り消しの効力停止を求め、国交相はその通りの結論を出す。公平性・客観性を欠いた猿芝居というしかない。『手続き上、一般私人と同じ立場』だと沖縄防衛局は主張するが、安保法といい辺野古問題といい、安倍政権には『法の支配』を軽視した行政権力の行使が目立ちすぎる。行政不服審査法の運用に当たっては『一私人』であることを強調し、地方自治法に基づく代執行手続きについては、一転して国の立場を堅持する。行政権力の行使があまりにも強引なのである。」、と指摘する。
 国(国交省)の「飛行場周辺の住民らが被る危険性が継続するなど重大な損害が生じる」という、いわゆる「一日も早い危険性の除去」論についてタイムスは、「はっきり言おう。長い普天間飛行場の歴史の中で危険性除去に熱心でなかったのは日本政府である。過去に何度か米側から在沖米海兵隊の撤退案が示されたことがあるが、そのつど反対したのは日本政府だ。1996年の日米合意からすでに19年もたっているのである。『一日も早い危険性除去』が普天間返還の第一の目的であれば、普天間はとうに返還されていたはずだ。」、とその虚構を明らかにする。
 あわせて、石井啓一国土交通相の取り消し処分の効力を停止した理由-「普天間飛行場の移設事業の継続が不可能となり、(普天間)周辺住民が被る危険性が継続する」-の説明について、新報は、「住民の安全を考えているように装うことはやめるべきだ。新基地は完成まで10年かかるとされる。10年がかりの危険性除去などあり得ない。普天間飛行場を即時閉鎖することが唯一の解決策である。」、と安倍晋三政権の姑息さを示す。
 さらに、菅義偉官房長官の代執行に向けた手続きに着手することを決めたことに関しての「外交・防衛上、重大な損害を生じるなど著しく公益を害する」との根拠理由について、新報は、「県民は外交・防衛の犠牲になれと言うに等しい。県民は戦後70年にわたり、米軍基地の重圧に苦しんできた。県民の『重大な損害』は一顧だにせず、過重な基地負担を押し付ける姿勢は、知事の言う『政治の堕落』そのものだ。知事権限を無力化するために、行政機関として代執行の手続きに着手する一方で、私人の立場も装う。恥ずべき二重基準を使ってでも新基地建設を強行する政府のやり方には強い憤りを禁じ得ない。」、と強く反論する。


 新報は、「圧政には屈しない」、とその決意を次に示す。

「国の一連の強権姿勢は、1995年の米軍用地強制使用手続きに関する代理署名訴訟を想起させる。県側の敗訴となったが、訴訟を通して強大な権力を持った国の言うがままになっていては、望ましい沖縄の将来像は描けないことを多くの県民が認識した。
 知事の代理署名拒否を受けて国は97年に軍用地の使用期限切れに対応するため、米軍用地特措法を改正し、暫定使用ができるようにした。沖縄の米軍基地維持のためには、あらゆる手段を講じる姿勢は何ら変わっていないのである。
 99年の地方自治法改正で、国と地方は対等の関係になった。だが、沖縄でそれを実感することはできない。国が沖縄の声を踏みにじっていることが要因である。
 知事選をはじめとする一連の選挙で示された『新基地は造らせない』との圧倒的民意を国が無視し続けることは、どう考えても異常だ。沖縄からは圧政国家にしか見えない。
 自己決定権に目覚めた県民は圧政には屈しないことを国は認識すべきだ。日米安保のため、沖縄だけに過重な負担を強いる国に異議申し立てを続けねばならない。国を新基地建設断念に追い込むまで、揺るがぬ決意で民意の実現を目指したい。」


 東京新聞の「国土面積の1%にも満たない狭隘(きょうあい)な県土に、在日米軍専用施設の約74%が集中し、沖縄県民は、日本や周辺地域の安全保障のために騒音や事件、事故など米軍基地に伴う過重な負担を強いられている。安倍内閣はなぜ、この本質的な問題に向き合おうとせず、選挙で示された抜本的な負担軽減を求める民意をも無視し続けるのか。強権的なやり方で移設を強行しても、県民と政府との溝を深め、日米安全保障条約体制の円滑な運営に支障をきたすだけである。」、という当たり前の考え方を日本全体で共有する中で、新報とタイムスのこの決意が、日本全体の意思でもあることを安倍晋三政権に突きつけなけねばならない。

 以下、各紙の社説の引用。








沖縄タイムス社説-[代執行と効力停止]不信招くあざとい手法-2015年10月28日

 政府は27日、地方自治法に基づく「代執行」手続きの開始と、行政不服審査法に基づく埋め立て承認取り消し処分の「効力停止」を同時に、セットで打ち出した。

 安倍政権が「敵・味方の論理」と「勝ち負けの発想」に凝り固まり、「知事権限を無力化した」と得意がっているとすれば、それこそ政治の堕落である。

 県民の中に渦巻く政権不信と、強権的手法に対する激しい反発。なぜ自分たちだけこのような目に遭わなければならないのかという不全感と魂の飢餓感は、今やピークに達している。危険な状況だ。

 翁長雄志知事が名護市辺野古沖の埋め立て承認を取り消したことについて、政府は27日、「承認になんら瑕疵(かし)はない」として地方自治法に基づき代執行手続きに着手することを決めた。28日に是正勧告の文書を知事に送付、それに従わない場合、国が裁判を提起する。

 同じ日、石井啓一国土交通相は、埋め立て承認の取り消し処分を執行停止する、と発表した。これによって知事の埋め立て承認取り消し処分の効力は失われる。

 27日夕方のニュース番組で、感想を求められた県内の女性は、驚きと不信感の入り交じった険しい表情で語った。

 「じゃあ、私たちはどうすればいいの」 

 反対してもしょうがないかのように県民のあきらめを誘発するのが国のもう一つの狙いだということは、前日の動きからもあきらかである。
    ■    ■
 政府は26日、名護市辺野古の新基地建設予定地に近い久辺3区(辺野古・豊原・久志)の代表を首相官邸に招き、2015年度から県や名護市を通さず直接、振興費を3区に支出する考えを伝えた。

 県に対してはあらゆる手を使って権限を封じ込め、基地受け入れを表明した3区に対しては財政の支出ルールを変えてまで振興費を支出する。

 メディアを通した印象操作であり、あまりにも露骨な「アメとムチ」の政策である。

 問題はそれだけにとどまらない。

 行政不服審査法は公権力に対して不服を申し立てる制度で、「国民の権利利益の救済」を目的としている。そもそも国に不服申し立てをする資格があるのか。

 防衛省(沖縄防衛局)が行政不服審査法に基づいて国土交通相に審査請求と取り消しの効力停止を求め、国交相はその通りの結論を出す。公平性・客観性を欠いた猿芝居というしかない。

 「手続き上、一般私人と同じ立場」だと沖縄防衛局は主張するが、安保法といい辺野古問題といい、安倍政権には「法の支配」を軽視した行政権力の行使が目立ちすぎる。

 行政不服審査法の運用に当たっては「一私人」であることを強調し、地方自治法に基づく代執行手続きについては、一転して国の立場を堅持する。行政権力の行使があまりにも強引なのである。

 効力停止の決定理由として国交省は「飛行場周辺の住民らが被る危険性が継続するなど重大な損害が生じる」ことを指摘する。いわゆる「一日も早い危険性の除去」論だ。
    ■    ■
 はっきり言おう。長い普天間飛行場の歴史の中で危険性除去に熱心でなかったのは日本政府である。過去に何度か米側から在沖米海兵隊の撤退案が示されたことがあるが、そのつど反対したのは日本政府だ。

 1996年の日米合意からすでに19年もたっているのである。「一日も早い危険性除去」が普天間返還の第一の目的であれば、普天間はとうに返還されていたはずだ。

 安倍晋三首相が仲井真弘多前知事に口約束した「5年以内の運用停止」も雲散霧消してしまった。

 政府が決まり文句のように強調する「唯一の選択肢」論も、海兵隊の分散化が進む現状を反映していない。辺野古移設にこだわる理由は米国の中でも失われつつあるのだ。

 そもそもなぜ、「唯一」だなどといえるのか。辺野古に移さなければ日本の安全保障に致命的な悪影響を与えるとでもいうのだろうか。選択肢なき政策こそが大問題だ。


琉球新報社説-取り消し効力停止 許せぬ民意への弾圧 新基地作業は認められない-2015年10月28日


 権力を乱用した民意への弾圧としか言いようがない。

 国は、翁長雄志知事が「新基地建設反対」の民意に基づき前知事の埋め立て承認を取り消した処分の効力を停止した。併せて国による代執行に向けた手続きを進め、県に是正勧告することも決めた。
 民意を踏みにじるもので、許されるものではない。県が勧告に従う必要性は一切ない。
 最終的に、県と国が新基地建設の是非を法廷で争うことになる。裁判での決着に向けて踏み出したのは国の側である。司法判断が出るまで作業再開は認められない。

恥ずべき二重基準

 石井啓一国土交通相は取り消し処分の効力を停止した理由について「普天間飛行場の移設事業の継続が不可能となり、(普天間)周辺住民が被る危険性が継続する」と説明している。
 住民の安全を考えているように装うことはやめるべきだ。新基地は完成まで10年かかるとされる。10年がかりの危険性除去などあり得ない。普天間飛行場を即時閉鎖することが唯一の解決策である。
 沖縄防衛局が取り消し処分の執行停止と、処分の無効を求める審査請求を国交相に申し立てたのに対し、知事はほぼ同じ内容の弁明書と意見書を国交相に送った。だが国交相は効力停止を決定しただけで、審査請求の裁決は出していない。知事が3月に全ての海上作業の停止を防衛局に指示した際の農相と同様、国交相も作業が継続できるようにし、裁決は放置する考えだろう。恣意(しい)的な行政対応であり、許されるものではない。
 行政不服審査法に基づき、知事の取り消し処分の無効を求めて審査請求する資格は、そもそも防衛局にはない。請求制度は行政機関から私人への不利益処分に対する救済が趣旨である。私人ならば、米軍への提供水域を埋め立てできないことからも資格がないのは明らかだ。
 菅義偉官房長官は代執行に向けた手続きに着手することを決めたことに関し「外交・防衛上、重大な損害を生じるなど著しく公益を害する」と述べている。
 県民は外交・防衛の犠牲になれと言うに等しい。県民は戦後70年にわたり、米軍基地の重圧に苦しんできた。県民の「重大な損害」は一顧だにせず、過重な基地負担を押し付ける姿勢は、知事の言う「政治の堕落」そのものだ。
 知事権限を無力化するために、行政機関として代執行の手続きに着手する一方で、私人の立場も装う。恥ずべき二重基準を使ってでも新基地建設を強行する政府のやり方には強い憤りを禁じ得ない。

圧政には屈しない

 国の一連の強権姿勢は、1995年の米軍用地強制使用手続きに関する代理署名訴訟を想起させる。県側の敗訴となったが、訴訟を通して強大な権力を持った国の言うがままになっていては、望ましい沖縄の将来像は描けないことを多くの県民が認識した。
 知事の代理署名拒否を受けて国は97年に軍用地の使用期限切れに対応するため、米軍用地特措法を改正し、暫定使用ができるようにした。沖縄の米軍基地維持のためには、あらゆる手段を講じる姿勢は何ら変わっていないのである。
 99年の地方自治法改正で、国と地方は対等の関係になった。だが、沖縄でそれを実感することはできない。国が沖縄の声を踏みにじっていることが要因である。
 知事選をはじめとする一連の選挙で示された「新基地は造らせない」との圧倒的民意を国が無視し続けることは、どう考えても異常だ。沖縄からは圧政国家にしか見えない。
 自己決定権に目覚めた県民は圧政には屈しないことを国は認識すべきだ。日米安保のため、沖縄だけに過重な負担を強いる国に異議申し立てを続けねばならない。国を新基地建設断念に追い込むまで、揺るがぬ決意で民意の実現を目指したい。


朝日新聞社説-辺野古移設 分断誘う施策は慎め-2015年10月28日


 米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた埋め立ての本体工事に着手するための手続きを、政府が矢継ぎ早に進めている。

 基地建設を急ぐあまり、行政としての公正さ、公平さを見失ってはならない。安倍政権は沖縄県民の分断を誘うような施策は、厳に慎むべきである。

 政府は、名護市の久志(くし)、辺野古、豊原の「久辺(くべ)3区」と呼ばれる3地区の区長を首相官邸に招き、振興費を直接支出することを伝えた。

 今年度分は3地区で総額3千万円程度で、防災備蓄倉庫の整備などに使うという。

 ただ、区といっても東京23区のような自治体ではなく、町内会のようなものだ。区長は公職選挙法に基づく選挙で選ばれるわけではない。公金の管理や使途をチェックする議会もない。

 政府は「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」が定める基地周辺対策費の活用を検討するという。だが、沖縄県や名護市が辺野古移設に反対だからといって、その頭越しに一部地域にだけ直接公金を支出するのは、税金の使い方として公平性、公正性を欠かないか。

 そもそも、公金の配分が政治的意見の相違で差別されることがあってはならない。

 政府が自らの意向に沿う地域だけに、自治体を通さずに公金を支出できる。そんなやり方が通用するなら、民主主義と地方自治は形骸化しかねない。

 政府が近年、「基地と地域振興はリンクしない」と繰り返してきたのは何だったのか。

 石井国土交通相はきのう、沖縄県の翁長雄志知事が行った埋め立て承認取り消しの効力を止めた。県と政府の対立を、政府の一員である国交相が裁く。その公平性、公正性に疑問がある中での判断だった。

 政府はまた、県の取り消し処分を是正するため、地方自治法に基づく是正勧告・指示や代執行に向けた手続きにも入った。

 これに対し、県もさらに対抗措置をとる構えだ。両者の対立は法廷闘争もにらみ、全面対決の様相である。

 政府の進め方は、たび重なる選挙で辺野古移設に「NO」の意思を示した沖縄の民意を軽く見ていると思わざるを得ない。

 そのうえに、今回の公金支出である。何よりも、県民の間に深い亀裂が生まれることが懸念される。

 歴史を振り返れば、政府の公金支出は、基地の賛否で割れる沖縄を分断させる手段として使われてきた。

 戦後70年を経てなお、分断策で沖縄を翻弄(ほんろう)してはならない。


東京新聞社説-辺野古「移設」 強権ぶりが目に余る-2015年10月28日


 沖縄県民に対して何と冷たい仕打ちだろう。安倍内閣が名護市辺野古に米軍基地を新設するための手続きをまた一歩進めた。政権の方針に盾つくものは容赦しないという強権ぶりが目に余る。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の県内「移設」に反対する翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消したことに対し、石井啓一国土交通相がきのう、処分の一時執行停止を決めた。

 国交相はきょう知事に対し、取り消し処分を是正するよう勧告する文書を郵送し、知事が応じない場合、知事に代わって国が埋め立てを承認する「代執行」手続きに入る、という。

 安倍内閣の対応は、もはや異常と言うしかない。

 政府は八月上旬からの一カ月間を集中協議期間として、沖縄県側と対話する姿勢を見せていたが、結局、憲法違反と指摘される安全保障関連法成立を優先させる冷却期間にすぎなかったのだろう。

 そもそも知事処分の執行停止の根拠となった行政不服審査法は、一般国民の権利を守るためのものだ。防衛省沖縄防衛局が私人として同じ内閣の一員である国交相に審査を請求したのは、やはり手続きに正当性を欠くのではないか。

 県側は対抗策として、第三者機関「国地方係争処理委員会」に不服審査を申し立てる構えだが、新基地建設に向けた安倍内閣の強権ぶりは、これにとどまらない。

 沖縄基地負担軽減担当相でもある菅義偉官房長官は二十六日、辺野古の新基地予定地に隣接し、条件付きで建設に賛成する地元三区長と会談し、地域振興の補助金を名護市を通さず直接交付する新たな枠組みをつくる考えを伝えた。

 名護市の稲嶺進市長が新基地建設に反対する中、建設賛成の住民もいることをアピールする狙いがあるのだろうが、地方自治に対するあからさまな介入であり、地元分断策以外の何ものでもない。

 国土面積の1%にも満たない狭隘(きょうあい)な県土に、在日米軍専用施設の約74%が集中し、沖縄県民は、日本や周辺地域の安全保障のために騒音や事件、事故など米軍基地に伴う過重な負担を強いられている。

 安倍内閣はなぜ、この本質的な問題に向き合おうとせず、選挙で示された抜本的な負担軽減を求める民意をも無視し続けるのか。

 強権的なやり方で移設を強行しても、県民と政府との溝を深め、日米安全保障条約体制の円滑な運営に支障をきたすだけである。


毎日新聞社説-辺野古移設 力ずくでは解決しない-2015年10月28日


 安倍政権は、沖縄県・米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、翁長雄志(おなが・たけし)知事による埋め立て承認取り消し処分を否定するため、代執行などの手続きに入ることを決めた。翁長氏による承認取り消し処分を一時的に無効にする執行停止も決めた。沖縄との対決一辺倒の政府の姿勢に強い疑問を感じる。

 代執行は、都道府県知事による行政手続きに違反がある場合などに、政府が代わりに執行することだ。地方自治法にもとづいている。

 この制度のもと、国土交通相は、知事に埋め立て承認取り消し処分の是正を勧告、指示し、それでも知事が応じなければ高裁に提訴する。国側が勝訴すれば、知事による取り消し処分を取り消すことができる。

 沖縄の基地問題では過去にも同じようなことがあった。1995年、米軍用地の強制使用に必要な代理署名手続きを当時の大田昌秀知事が拒否したため、政府が知事を相手取って提訴。翌年、政府側が勝訴し、橋本龍太郎首相が代理署名をした。

 今回、代執行の手続きにまで踏み込んだ理由について、政府は、翁長氏による取り消し処分は「違法」であり、普天間の危険性除去が困難になるなど、外交・防衛上の重大な損害が生じるからだと説明する。

 翁長氏が承認を取り消したのが13日。対抗措置として、事業者の沖縄防衛局は、国交相に行政不服審査請求をし、取り消し処分の執行停止も求めた。執行停止は認められ、防衛局はボーリング調査を再開できる。

 だが、行政不服審査法は、国民の権利を救済するため、国民が行政に不服を申し立てることを認めるのが本来の趣旨だ。執行停止が認められても、これだけでは、所詮、国の組織同士のお手盛り的な手法だと批判される。そのため、政府は代執行にまで踏み込んだのかもしれない。

 いずれにしても政府は、知事の取り消し処分を違法と断じ、代執行という強制的な手段に訴えることにした。沖縄との接点を探り、歩み寄ろうというつもりはないのだろう。

 それどころか政府は、地元に対し露骨な分断工作に出ている。

 政府は、条件付きで辺野古移設を容認する辺野古周辺の3地区の区長を首相官邸に招き、地域振興費用を直接支出することを伝えた。移設に反対する県や市の頭越しである。

 区長という行政権を持たない相手に、要望に応じ十分に精査されないカネを出すというのだ。

 なりふり構わないやり方にあきれる。辺野古移設問題は、反対の強い民意と国の政策との乖離(かいり)をどう埋めるかという高度な政治問題だ。異例の手法を次々と繰り出し、力ずくで進めるだけでは解決しない。


by asyagi-df-2014 | 2015-10-28 11:00 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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