原発問題-愛媛県知事の再稼働への「同意」を社説から考える。

 愛媛県知事の再稼働への「同意」に対して、愛媛新聞、徳島新聞、高知新聞、大分合同新聞、中国新聞の各社説が掲げた見出しは、次のものである。


愛媛新聞社説- 知事が伊方再稼働同意 将来に禍根を残す拙速な判断だ-
徳島新聞社説-伊方再稼働同意 環境は整ったといえるか-
高知新聞-【伊方原発同意】安全は確保されていない-
大分合同新聞論説-伊方原発の再稼働 愛媛県知事同意は疑問-
中国新聞社説-伊方再稼働「同意」 知事の判断に疑問残る-


 各紙の主張を要約すると、「安全は確保されていないし、環境は整ったとは言えないにもかかわらず、隣接する各県の住民の声を受けとめることなく行われた知事の判断は、将来に禍根を残す拙速なものだ」、ということになる。
 まさしく、今回の愛媛県知事の判断を言い当てている。

 愛媛新聞は、「愛媛の将来とエネルギー問題の針路を左右する極めて重要な判断が、県民不在のまま決められたことに憤りを禁じ得ない。」、と断じるとともに、「東日本大震災後に伊方原発が停止してから、原発なしで電力を賄えている。福島の事故の教訓を生かすならば、知事は思い切って、脱原発へとかじを切るべきではなかったのか。このままでは将来に禍根を残す。」、と指摘する。
 また、その判断の間違いを次のように説明する。
①中村時広知事が四国電力伊方原発3号機(伊方町)の再稼働に同意した。伊方町の山下和彦町長も容認し、これで「地元同意」の手続きは完了したとされる。だが、原発の安全性への県民の不安は拭えてはいない。
②知事は再稼働判断を「白紙」と言い続け、堂々と自らの考えを示し県民に問う積極的な姿勢をみせることはなかった。県民の命を直接預かる責任を負いながら、判断に至る過程で県民の声を受け止めたとは言い難く、拙速と断じざるを得ない。
③知事は判断理由に「(太陽光など)現実的ではない代替エネルギーの比率を高めれば、電気料金は上がる。企業は国際競争力の見地から場所を変えるしかない」と、原発の発電コストの優位性を挙げた。しかし安全対策や廃棄物処理、廃炉の費用に事故の賠償も加えると火力発電よりも高くなると多くの専門家は指摘する。「割安な代替電源がないから」との旧態依然の原発頼みの発想はやめるべきだ。
④伊方町民への説明は、四電による戸別訪問頼みで自治体主催の説明会はなかった。住民への説明をなおざりにすることは行政の怠慢にほかならない。知事は「説明会は(反対派の)パフォーマンスになりかねない。一番丁寧なのは(四電の)戸別訪問だ」と話した。議論の対象の事業者の言い分だけを尊重することは、住民の公平公正な判断を妨げよう。「再稼働ありき」の証左であり、看過できない。
⑤知事は、重大事故時に国が最終責任を持つとの安倍晋三首相の表明など8項目を「条件」に掲げ、国に要望していた。回答が出そろい、自らが設けた条件に達したと自らが判断しただけで、安全性が高まったとはいえまい。首相が「責任を持って対処する」と答えたことをことさらに強調するのは、国への責任転嫁にすぎない。
⑥「高レベル放射性廃棄物の最終処分方針確立」も国に求めたが、処分地のめどを依然立てられず、政策は行き詰まっている。原発が再稼働すれば、核のごみは増え続け、将来の世代につけを回すことになる。こうした現状を知りながら、再稼働を容認することは極めて無責任だといえる。


 この愛媛新聞の社説が、今回の知事の判断の間違いを十分に暴いているが、他社の意見をいくつか付け加える。
 徳島新聞は、国の責任について、「同意の判断に際し、中村知事がこだわったのは、過酷事故が起きた場合の国の責任である。求めに対し、安倍晋三首相は今月、政府の原子力会議で『事故があった場合は政府として責任を持って対処する』と表明した。再稼働を推進する国が、責任を負うのは当然である。だが、過酷事故が起きれば取り返しがつかないことになるのは、東京電力福島第1原発の事故を見ても明らかだ。国は、どんな責任を取れるというのか。」、と。
 また、規制委員会の新基準について、「知事が同意した前提には、原子力規制委員会による新規制基準の『合格』があるが、規制委は『絶対安全とは言い切れない』と強調している。新基準そのものが、欧米の基準より劣ると指摘する専門家もいる。」、とする。高知新聞も、「そもそも、大前提となっている新基準は決して原発の安全性を担保しているわけではない。確かに耐震性などはより高い基準になったが、自然の脅威は計り知れず、原子力規制委員会の田中委員長は『絶対安全とは言わない』と認めている。四電は愛媛県の要望に応じて、耐震設計時の地震の揺れを基準よりさらに高いレベルにしたが、それとて『絶対』はあり得ない。にもかかわらず、安倍首相は、伊方原発周辺自治体の避難計画を了承した先の原子力防災会議で、国の責任で再稼働を推進し、事故時も対応すると強調した。その責任とは何なのか。」、と国の責任問題とからめて警告する。
 さらに、避難の問題と地方自治体への説明等について、「伊方原発は、佐田岬半島の付け根にあり、半島には約5千人が住んでいる。過酷事故の際に、原発の近くを通って避難することは困難だ。計画では、船などで大分県側に避難するとしているが、天候が悪ければ、それも難しい。シェルター施設の収容人員も不足している。解決しなければならない課題は多い。愛媛県と伊方町の同意だけで地元のお墨付きが得られたとするのも問題である。30キロ圏内の自治体に避難計画の策定が義務付けられているのは、放射性物質が飛散する恐れがあるためだ。それなのに、自治体や住民の同意を得なくてもいいのだろうか。」、と指摘する。


 最後に、愛媛新聞は、「東京電力福島第1原発事故が収束しないうちに、国と電力会社は経済性を優先させ原発回帰した。原子力規制委員会が伊方を『合格』としてから、わずか3カ月余り。議論を尽くさぬまま、原発立地県も追従したといえる。あしき先例となり、原発推進の既成事実化が進むことを深く憂慮する。」、と日本という国のあり方への危機感を表明する。
 また、高知新聞は、「四国の電力需要は差し迫った状況にあるとは思えない。4年半以上を経てなお過酷な状況にある福島県の現状を見ても、再稼働はもっと慎重であるべきではないか。」、と現状認識の見直しを求めている。


 安倍晋三政権と四国電力は、これらの言葉を、本当の意味で真摯に受けとめなければならない。

 以下、各紙の社説の引用。







愛媛新聞社説- 知事が伊方再稼働同意 将来に禍根を残す拙速な判断だ- 2015年10月27日(火)


 愛媛の将来とエネルギー問題の針路を左右する極めて重要な判断が、県民不在のまま決められたことに憤りを禁じ得ない。
 中村時広知事が四国電力伊方原発3号機(伊方町)の再稼働に同意した。伊方町の山下和彦町長も容認し、これで「地元同意」の手続きは完了したとされる。だが、原発の安全性への県民の不安は拭えてはいない。
 知事は再稼働判断を「白紙」と言い続け、堂々と自らの考えを示し県民に問う積極的な姿勢をみせることはなかった。県民の命を直接預かる責任を負いながら、判断に至る過程で県民の声を受け止めたとは言い難く、拙速と断じざるを得ない。
 東京電力福島第1原発事故が収束しないうちに、国と電力会社は経済性を優先させ原発回帰した。原子力規制委員会が伊方を「合格」としてから、わずか3カ月余り。議論を尽くさぬまま、原発立地県も追従したといえる。あしき先例となり、原発推進の既成事実化が進むことを深く憂慮する。
 知事は判断理由に「(太陽光など)現実的ではない代替エネルギーの比率を高めれば、電気料金は上がる。企業は国際競争力の見地から場所を変えるしかない」と、原発の発電コストの優位性を挙げた。しかし安全対策や廃棄物処理、廃炉の費用に事故の賠償も加えると火力発電よりも高くなると多くの専門家は指摘する。「割安な代替電源がないから」との旧態依然の原発頼みの発想はやめるべきだ。
 伊方町民への説明は、四電による戸別訪問頼みで自治体主催の説明会はなかった。住民への説明をなおざりにすることは行政の怠慢にほかならない。知事は「説明会は(反対派の)パフォーマンスになりかねない。一番丁寧なのは(四電の)戸別訪問だ」と話した。議論の対象の事業者の言い分だけを尊重することは、住民の公平公正な判断を妨げよう。「再稼働ありき」の証左であり、看過できない。
 知事は、重大事故時に国が最終責任を持つとの安倍晋三首相の表明など8項目を「条件」に掲げ、国に要望していた。回答が出そろい、自らが設けた条件に達したと自らが判断しただけで、安全性が高まったとはいえまい。首相が「責任を持って対処する」と答えたことをことさらに強調するのは、国への責任転嫁にすぎない。
 また「高レベル放射性廃棄物の最終処分方針確立」も国に求めたが、処分地のめどを依然立てられず、政策は行き詰まっている。原発が再稼働すれば、核のごみは増え続け、将来の世代につけを回すことになる。こうした現状を知りながら、再稼働を容認することは極めて無責任だといえる。
 東日本大震災後に伊方原発が停止してから、原発なしで電力を賄えている。福島の事故の教訓を生かすならば、知事は思い切って、脱原発へとかじを切るべきではなかったのか。このままでは将来に禍根を残す。


徳島新聞社説-伊方再稼働同意 環境は整ったといえるか-2015年10月27日

 四国電力伊方原発3号機の再稼働に、愛媛県の中村時広知事が同意した。

 伊方町長や町議会、県議会は既に同意しており、これで地元同意の手続きは終了したことになる。

 しかし、安全性に対する不安は根強く、住民の多くが再稼働に反対している。周辺地域の避難計画も十分ではなく、再稼働に向けた環境は整っていない。知事の同意は、拙速と言わざるを得ない。

 同意の判断に際し、中村知事がこだわったのは、過酷事故が起きた場合の国の責任である。

 求めに対し、安倍晋三首相は今月、政府の原子力会議で「事故があった場合は政府として責任を持って対処する」と表明した。

 再稼働を推進する国が、責任を負うのは当然である。だが、過酷事故が起きれば取り返しがつかないことになるのは、東京電力福島第1原発の事故を見ても明らかだ。国は、どんな責任を取れるというのか。

 知事が同意した前提には、原子力規制委員会による新規制基準の「合格」があるが、規制委は「絶対安全とは言い切れない」と強調している。新基準そのものが、欧米の基準より劣ると指摘する専門家もいる。

 住民の避難ルートも確保されているとはいえない。

 伊方原発は、佐田岬半島の付け根にあり、半島には約5千人が住んでいる。過酷事故の際に、原発の近くを通って避難することは困難だ。

 計画では、船などで大分県側に避難するとしているが、天候が悪ければ、それも難しい。シェルター施設の収容人員も不足している。解決しなければならない課題は多い。

 愛媛県と伊方町の同意だけで地元のお墨付きが得られたとするのも問題である。

 30キロ圏内の自治体に避難計画の策定が義務付けられているのは、放射性物質が飛散する恐れがあるためだ。

 それなのに、自治体や住民の同意を得なくてもいいのだろうか。

 知事は会見で「原子力の代替エネルギーが見つかるまで、最先端の安全対策を施す中で付き合っていかざるを得ない」との見解を示した。ただ、電力需給には余裕があり、原発がなければ困る状況ではない。

 忘れてはならないのは、再稼働に疑問を持つ住民が少なくないことだ。

 愛媛新聞社が今年2~3月、県民を対象に行った世論調査では、反対が69・3%に上った。30キロ圏内にある宇和島、西予両市の市議や地元団体の代表者らを対象にしたアンケートでも、反対が過半数を占めている。

 規制委は、機器の詳細設計認可などの審査をしており、再稼働は、早くて年明け以降とみられる。

 しかし、「安全・安心」の大前提をおろそかにしたままでは、住民の不安を払拭することなどできないだろう。


高知新聞社説-【伊方原発同意】安全は確保されていない-2015年10月27日


 愛媛県伊方町の四国電力伊方原発3号機が来年にも再稼働する見通しとなった。同県の中村知事が26日、再稼働に同意した。

 東京電力福島第1原発事故後に施行された新規制基準に基づく審査に合格した原発で、地元の知事が同意したのは鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発1、2号機に続き2例目だ。全国で再稼働の流れが加速する可能性もある。極めて重い判断といえよう。

 伊方3号機はことし7月に新基準審査に合格し、今月、愛媛県議会や地元伊方町が相次いで同意していた。

 知事はこれまで、安全性や必要性を含む国の考え方▽四電の取り組み姿勢▽地元の理解―の3条件を挙げ、国の責任について安倍首相が明言する場の設置や経済産業相の地元訪問なども要望していた。知事はこれらが満たされたと判断したことになる。

 しかし、一連の流れには、安全や責任に対する多くの疑問を感じざるを得ない。

 そもそも、大前提となっている新基準は決して原発の安全性を担保しているわけではない。

 確かに耐震性などはより高い基準になったが、自然の脅威は計り知れず、原子力規制委員会の田中委員長は「絶対安全とは言わない」と認めている。四電は愛媛県の要望に応じて、耐震設計時の地震の揺れを基準よりさらに高いレベルにしたが、それとて「絶対」はあり得ない。

 にもかかわらず、安倍首相は、伊方原発周辺自治体の避難計画を了承した先の原子力防災会議で、国の責任で再稼働を推進し、事故時も対応すると強調した。その責任とは何なのか。

避難計画も疑問

 明確な基準がない「地元合意」の在り方も問いたい。

 川内原発では、「地元」を鹿児島県と立地する薩摩川内市に限った。避難計画の策定が義務付けられている半径30キロ圏内の他の自治体が同意対象に加えるよう求めたものの、県が聞き入れなかった経緯がある。

 伊方原発の場合は他の自治体から要求はなかったが、原発の立地環境やリスクも異なるのに「川内方式」を安易に踏襲した。伊方3号機は使用済み核燃料由来の燃料を使うプルサーマル発電が前提で、危険性の高さを指摘する専門家もいる。

 高知県は30キロ圏内に入らないが、福島第1原発と同程度の事故が起きた場合は放射線量も無視できない規模になる恐れがあると、東京の民間シンクタンクは指摘している。しかし、手続きでは蚊帳の外だった。

 四国の電力需要は差し迫った状況にあるとは思えない。4年半以上を経てなお過酷な状況にある福島県の現状を見ても、再稼働はもっと慎重であるべきではないか。

 再稼動の前提である避難計画も課題は多い。

 伊方原発は細長い佐田岬半島の付け根にある。事故の際、半島の奥に住む住民約5千人が避難するには、原発の前を通るか、船で大分県側に避難することになる。実効性に疑問があり、こうした点からも安全は確保されていないと言わざるを得ない。

 なし崩し的な再稼動は許されない。愛媛県や伊方町は引き続き四電や国に厳しく対応を迫るべきだ。高知県も県民に被害が想定される上、四電の大株主である。行政としても株主としても責任がある。


by asyagi-df-2014 | 2015-10-28 05:37 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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